第24回 オールスターものまね王座決定戦スペシャル
 
1992年9月28日放送

【司会】  明石家さんま 研ナオコ 榊原郁恵

【審査員】

あのねのね 鈴木邦彦 生田悦子 淡谷のり子 峰岸徹
美保純 野口五郎&松本伊代 大矢明彦 針すなお 保沢紀

1回戦・Aブロック 第1組目

鈴木末吉

CCガールズ

井上順のまねで バナナラマのまねで
お世話になりました ヴィーナス
●久々登場の鈴木末吉が、新ネタを引っさげて帰ってきた。筆者は個人的に大好きな「井上順」のものまねである。歌い出し「あ〜すの朝、この街を〜」から全くといっていいほど似ていない(笑)。さんま「末吉さん、あんたものまねする気はあったの?」、野口「末吉さんは、1年に1回こうして会って、『あ、生きてるな』というのが分かればそれでいいです」。声色は全く似ていないけど、雰囲気はなんとなくなんとなく似ていると思うのは私だけ?
●会場をお色気で圧倒するCCガールズ、1回戦第1組目にふさわしく、華やかなステージを披露。本来は3人組のバナナラマを、4人で迫力いっぱいに演じる。相当緊張していたのか、歌い終わった途端に「終わった〜」と喜び始め、さんまにツッコミを受ける。「そんなことじゃ記者会見に臨めんぞ」。言うまでもないが、さんまはこの頃マユ毛の上に小さく「バツイチ」を書いて離婚会見をしていたのだ。
鈴木末吉・88点、CCガールズ・96点。CCガールズ、未だ1回戦で落ちた経験が無し。

1回戦・Aブロック 第2組目

森進伍

松居直美

森進一のまねで レベッカのまねで
襟裳岬 ラズベリー・ドリーム
●「これは1回戦から豪華な組み合わせですよ」とさんまが大絶賛。この番組初登場の森進伍。顔から声から仕草までそっくり。てうか「そっくりさん」なんだから当たり前か。いわゆる「こんばんわ、森進一です」的なダミ声ではなく、森進一本人の軽くハスキーな声を純粋にコピーした感じ。まあ「そっくりさん」だからね。それより、森進伍さんは2回戦以降、誰のものまねを用意していたのかが気になってしょうがない。
●松居直美は『第22回』の準決勝で岩本恭生に敗れたときのネタ「レベッカ」に再挑戦。前回よりは確実にNOKKOの歌い方を掴んでいる。いつも思うことだが、松居は第1声が驚くほど似ているのに、だんだん自分の声に近づいてしまうクセがあるようだ。このNOKKOのものまね、また2年後の『第26回』1回戦で登場するが、さらに磨きがかかっていた。NOKKOのまねは2年おきにクオリティがアップするらしい。
森進伍・93点、松居直美・98点。

1回戦・Aブロック 第3組目

松本明子

わたる哲兵

泰葉のまねで 米米CLUBのまねで
フライデイ・チャイナタウン 君がいるだけで
●松本明子は、1回戦はマニアックな人選で勝負。「林家三平の娘」で、「林家こぶ平の姉」であるシンガーソングライター「泰葉」のものまね。さんま「ちょっと待て、泰葉さんの歌、みんな知らないんちゃうか?」、研「知ってるよねえ?大ヒットしたもんねえ」、さんま「どんな歌?」、研「知らん」。いかにも松本明子らしい、いつもながらの歌唱力で聞かせる。
●さんま「普段は歌手でいらっしゃるんですか?」、わたる「いえ、ものまねやってます。素人のものまね番組から出まして・・・」、さんま「そりゃね、いきなり玄人からは出れませんよね(笑)」。今回はこんなやり取りばっかり(笑)。さて、5度目のチャレンジになるわたる哲兵は、今日も「自信作」の米米CLUB。ミリオンセラー曲であるが、果たして今日の審査員はこの曲を知っているのか(彼はいつも審査員の知らない曲を歌って失敗するのだ)。しかし今回の出し物は、彼の今までのネタの中でも出色の出来だったのではなかろうか。この当時、米米のまねは誰もやっていなかったし(あ、ビジーフォーが少しやってたな)、大ヒット曲をあそこまで違和感なく真似できたというのはスゴイことだ。よく似てたし。
松本明子・97点、わたる哲兵・95点。うーん、どうも松本は「歌唱力」だけで勝ち上がったような気がしなくもない。会場からもミニブーイング。わたるは「また頑張ってきます!」の言葉を残して、またも去って行った。

1回戦・Aブロック 第4組目

斉藤ルミ子

松村邦洋

小柳ルミ子のまねで 南原清隆のまねで
わたしの城下町 秘密戦隊ゴレンジャー
●ルミ子がルミ子に挑戦。驚異の厚化粧、斉藤ルミ子の新ネタは『わたしの城下町』。ものまねの基本ともいえるこの楽曲、当然審査が厳しくなるのは必至である。大矢「いつも通り可愛らしく、歌もお上手だと思うんですよね。もうちょっと艶っぽいほうが良かったかな、と思いました」。
●バウバウ松村は、「ナンバラバンバンバン」の曲に合わせて、擬音だらけのしゃがれた声で「ウッチャンナンチャンで〜す」。しかし南原は「ウッチャンナンチャンです」とは言わないだろう。最初に誰の真似をするのか言わなかったものだから、歌が始まったら会場にいる全員がキョトーン。さんま「司会者も悪いのよ、最初に誰やるか聞かなかったから。でも松村くんはものまねのプロやし、一声で分からせてくれるやろうと思ったら、みんな『オイ誰やこれ?』(笑)」。大矢「ナンチャンは似てましたよ。よく感じを捉えていたと思いますけど」。
斉藤ルミ子・94点、松村邦洋・92点。松村、負けが決まれば、お約束の消化ものまね。今回はジミー大西と高田文夫を思う存分やり、「バウがやれたらいいバウ」。

 

1回戦・Bブロック 第1組目

栗田貫一

しのざき美知

TUBEのまねで 若花田のまねで
あー夏休み シーサイド・バウンド
●珍しく楽な相手とあたった栗貫は、2年前の『第22回オールスター』でも歌った『あー夏休み』に再度挑戦。松居直美の「NOKKO」と全く同じパターンで、「88年」「90年」「92年」と2年おきにチューブをやっている。これまた松居と同じく、2年おきにネタが洗練されているというのも見逃せない。もっとも、88年(『第4回爆笑スター』)のときは、チューブではなく布施明がスベって負けてしまったのだが。
●見た目ほっそりしたしのざき。司会の「え?男の人できたの?」の問いにハニカみつつ「うん」と答えるしのざき。それに対して研は「どこの動物園?」。そんなしのざきも、ネタに入ると一変。肉襦袢にマワシという卑猥なスタイルで、「国技館へ行こうよ、土俵が友達なのさ、ティーバーック!」「キュッと締まったおケツ、若貴のおケツ、ティーバッーック!」と所狭しと暴れ回る。研もさんまもアゼン。さんま「これはじゅうぶん離婚の原因になるね!」。さんま曰く「100mと砲丸投げの戦い」、きよ彦曰く「こんなムゴい対決は初めて」。
栗田貫一・97点、しのざき美知・86点。栗貫チューブ、貫禄が付くにつれて、92点(88年)→94点(90年)→97点(今回)と審査員の点数も上がってきた。

1回戦・Bブロック 第2組目

原田ゆかり

布施辰徳

ペドロ&カプリシャス(前野曜子)のまねで 小林旭のまねで
別れの朝 昔の名前で出ています
●ペドロ&カプリシャスといえば「高橋真梨子(当時は高橋まり)」がボーカルとお思いの方が多いかもしれないが、彼女は実は2代目。初代リードボーカルが、今回原田の挑戦する「前野曜子」。原田がいつも真似するクセのある声ではなく、今回は細く澄んだ伸びやかな声。強敵を相手に大ヒット曲を堂々と歌い上げた。
●ついに大型新人、布施辰徳がデビュー戦の舞台に立った。この世界でコージー冨田がメジャーになる前、いわゆる「本格路線」の王道を歩んでいたのが彼である(「岩本恭生」の路線を受け継いだ、ともいえる)。鈴木邦彦曰く「彼は歌に力がある」。奇抜な衣装で目を引くわけでも、替え歌で笑いを取るわけでもなく、己の表情と声色だけを頼りに聞かせる彼流のものまねは、今後『ものまね王座』を長く引っ張っていくことになる。デビュー作の小林旭も、斜め下45度の目線と、大袈裟すぎないハスキーボイスで審査員を魅了した。
原田ゆかり・92点、布施辰徳・99点。まずは軽く初戦突破、2回戦では早くも四天王が待ち受ける。

1回戦・Bブロック 第3組目

ピンクの電話

桑野信義

ゾウのまねで 和田勉のまねで
クラリネットをこわしちゃった バン・バン・バン
●続いては反則ワザ同士の戦い。ピンクの電話は、全身真っ青な「ゾウ」のかぶりもの。歌が『クラリネットをこわしちゃった』ということは、当然後半の歌詞「パオパオパンパンパン」のところに重きが置かれているわけだ。徹夜で稽古しても点数に結びつかないところが、何とも可哀想というか、滑稽というか・・。
●『ものまね王座』晩年の頃、桑野信義はよく「ネタ選びはまず髪型から」と言っていたが、その草分けとなったネタがこれだろう。誰もが見たら一瞬で「和田勉だ」と分かる風貌である。歌い出しの「とぼけた顔してベベンベ〜ン」から研もさんまも大爆笑。「ベンベンベベベベ和田勉だ、ガッハッハ〜」はものまね王座屈指のヒットフレーズだと思う。後に『ものまね紅白』で本人が登場したときの衝撃といったらなかった。
ピンクの電話・89点、桑野信義・97点。

1回戦・Bブロック 第4組目

ribbon

ビジーフォー

ZOOのまねで レターメンのまねで
choo choo TRAIN 肩にほほをうずめて
●2度目の登場のribbonは、器用にZOOのダンスに挑む。松野の歌が、意外とZOOのボーカルに似ていた。2人のダンスもキレがあって良かった。じゃあ何が足りないのだろう・・?やはり「ZOOの知名度」とか「ribbonの2回戦に対する期待」とかになってしまうのだろう。針すなおも、ご丁寧にZOOのメンバー9人の似顔絵を描いていて、何だか非効率な作業だなあ、と思わずにはいられなかった(笑)。二度とこの似顔絵が使われることは、やはりなかった。
●今回のビジーフォーは、不仲からか、グッチ裕三が欠場。代わりに、モト冬樹とバンドを組んでいるメンバー(確か「モト冬樹とフリーマーケット」とかいう名前だったと思う)で、後年の王座にはソロで出場していた「俵山栄子」が補充された。1回戦は冬樹と紅一点と俵山で、アメリカの3人コーラスグループ・レターメンに挑戦。日本ではFM東京の『ジェットストリーム』で流れていた『ミスター・ロンリー』で有名だ(と思う)。感想は、さすがに上手いなあ。うん、それしか言えん。「似てるか」と言われれば、ひょっとしたらZOOの方が似ていたかも。
ribbon・91点、ビジーフォー・97点。1995年の『第27回オールスター』では決勝進出を果たすまでに成長した俵山栄子が、地味ィ〜に(笑)初勝利を飾った。

 

1回戦・Cブロック 第1組目

しじみとさざえ

ダチョウ倶楽部

プリンセスプリンセスのまねで あのねのね西田敏行のまねで
世界でいちばん熱い夏 赤とんぼの唄
●若干年齢層の高いユニット、しじみとさざえは「私たちは今日は可愛く、プリプリで」。さんま「プリプリ・・君たち、チャレンジャーやなあ(笑)」。篠塚の奥居香、少し声がハスキーすぎるかという気もしたが、そこは熟練の技、上手くまとめあげていた。松下のギター、もう少しなんとかならなかったのか(笑)。
●前回惜しくもスベったダチョウ倶楽部は、審査員長・あのねのねのものまね(←ややこしい)。肥後が「原田伸郎」、寺門が「清水国明」、そして上島が「西田敏行」。あのねのねが歌を歌う横で、西田敏行が紙芝居を引くという趣向(もちろん紙芝居は「赤とんぼ→あぶらむし→かきのたね→あぶらむし→赤とんぼ」の5枚)。歌もなかなか似ていたし、アイデアもよかったのではないか(審査員の清水にいたっては「(紙芝居を)今度使わせてもらお」と言っていた)。肥後が原田の「いたぁ〜い、なにすんのぉ〜」のギャグを終始連発し、会場を湧かせていた。
しじみとさざえ・92点、ダチョウ倶楽部・98点。ダチョウにしては良質なネタで1回戦を突破。

1回戦・Cブロック 第2組目

ケントフリック

レイディーズ

美輪明宏のまねで マリリン・モンローのまねで
愛の讃歌 お熱いのがお好き
●どうもこの番組で勝ち星を挙げられないケント。やはり衣装やメイクなど、不気味さが先に立つからなのか?かつての「梅沢富美男」ばりに、厚化粧たっぷりな美輪明宏を披露。シャンソンを歌うと淡谷先生がニッコリなのは毎度のこと。
●CCガールズの後釜を狙うは、細川ふみえ率いるレイディーズ。おそらくスタッフはお色気路線を増やそうとこの頃必死だったのだろう。残念ながらレイディーズ自体は今回が最初で最後の出演となってしまった(細川ふみえは次回以降も存続)。翌年からは「みるく」の3人が同じ路線で登場することになる。閑話休題、ネタのほうはベタなマリリン・モンロー(それだけかい!)。だって書くことないんだもん。野口「いやぁ本当に、CCガールズもいいし、レイディーズもいいし・・。レイディーズのみなさん、ボク野口です、はじめまして(笑)」。野口五郎はいろんな引き出しを持っているなあ。
ケントフリック・93点、レイディーズ・94点。

1回戦・Cブロック 第3組目

清水アキラ

朝田昌貴

牧伸二のまねで 淡谷のり子のまねで
あ〜やんなっちゃった 別れのブルース
●淡谷先生の大キライな清水アキラと、淡谷先生の格好をした朝田昌貴が登場し、凍りつく会場。清水アキラ、今回の新ネタはウクレレ漫談でおなじみの牧伸二。漫談ネタの途中、「まさかこういう対戦になるとは思いませんでした。やりにくくてしょうがない(笑)」と本気でグチっていた。歌のほうも完全自作のパロディで、「24組真剣勝負、優勝するのは1組だけ〜、あっという間の2時間半、撮ってるみんなは12じか〜ん」など。恐る恐る淡谷さんに聞いてみると・・「牧伸二さん?似てますね」「似てましたか?」「あ?・・・少しね(会場爆笑)」。
●対する朝田は、淡谷先生への勇気あるチャレンジ。さんま「あんた、ひょっとしてチャレンジャーを越えて、毛利さん?(注:毛利衛が乗ったのはエンデバーです)」。男性であのファルセットを出し続けるのは凄い。針先生も「今まで何人か先生のまねをやりましたけどね、一番の出来じゃないかなあ、驚きました」と絶賛。しかし肝心の淡谷先生のほうは、一言「迷惑ですね」のみ。
清水アキラ・98点、朝田昌貴93点。注目の淡谷先生の得点は、清水に「8点」、朝田に「6点」。会場は大騒ぎ。郁恵「それ、逆さまですか?」、さんま「淡谷先生、それ9点じゃないですよね?」、淡谷「6点!!」。

1回戦・Cブロック 第4組目

忍者

笑福亭笑瓶

郷ひろみのまねで 柳生博のまねで
お嫁サンバ 野球拳
●今回はなぜか5人で登場の忍者。同じ事務所の先輩である郷ひろみを、変ちくりんな衣装とモジャモジャな頭で表現するとは変わったアイドルである。歌は、いわゆるものまねの郷ひろみではなく、デビュー当時の幼声を自然に真似した感じ。しっかし、いくらヘンテコな格好でも、会場の女の子はキャーキャー言うんやねえ。野口「ひろみの真似は、やっぱり上手いですよ。音が外れるところなんか、そっくりですね(笑)」。
●笑福亭笑瓶は、またまた素敵な人材を見つけてきた。『野球拳』のメロディーに乗せて、『100万円クイズハンター』の柳生博になりきる。「やぎゅ〜になるなら、一九分けにしやしゃんせ〜。あ奥さん、ちょっとまって、ハンターチャンス!」とリズミカルに。また伴奏の音とピタッと合うところが面白い。最後にはきっちり「ゴールデンハンマー」も登場。このネタを見ると、かつて『平成教育委員会』で柳生博の後ろに座った田代まさしが、玉ネギの断面を描かせる問題で「柳生さんの後ろからみた髪型」をリアルに描いていたのを思い出して噴き出してしまう。
忍者・93点、笑福亭笑瓶・97点。笑瓶の点数が出た途端、会場の若い女の子から冷たい「えぇ〜」の声。

 

準々決勝・Aブロック 第1組目

CCガールズ

松居直美

森高千里のまねで 森山加代子のまねで
17才 白い蝶のサンバ
●CCガールズ、2回戦は4人森高。審査員が口々に褒めていたのが、衣装と踊りと華やかさ。あれ?歌声は?CCの個々のメンバーのアップよりも、野口五郎のアップのほうが多く差し込まれていたのはやりすぎでは?(笑)。最後は4人揃ってお尻をプリン!「M」の文字が4つ並び、これまた嬉しそうな峰岸徹の顔と、「あやぁ〜」と心配げな郁恵の顔。
●松居直美はシブいところで森山加代子(筆者は子供のころ森山良子との区別がつかなかった)。「あなたに抱かれて私は蝶になる〜」のフレーズが印象的なあの歌である。大矢に「よく特徴をつかんでいました。あの掠れそうで掠れない声とか」などと批評されていたが、筆者には松居の普通の歌声にしか聞こえなかったのだが・・・ねえ?
CCガールズ・93点、松居直美・97点。松居、貫禄の勝利。でも確実に2回戦まで勝ち進んでくるCCにも拍手を贈りたい。

準々決勝・Aブロック 第2組目

松本明子

斉藤ルミ子

松田聖子のまねで 沢田知可子のまねで
抱いて・・・ 会いたい
●松本明子は、久々の松田聖子(初期の『爆笑スターものまね王座』では、松本の出し物といえば「松田聖子」か「美空ひばり」であった)。これを何と斉藤ルミ子にぶつけるのだ。松本「(対戦相手が)本家本元なので、胸を借りるつもりで頑張ります」。ん?本家本元は間違いなく「松田聖子」だろ。まあいいや。そんな松本明子だが、歌に入るとさすが貫禄が違う。正真正銘、本物の「ものまね芸人」だなあと思った。
●対する斉藤ルミ子は松田聖子ではなく、新しいバラードで勝負。あの泣きそうになる名曲『会いたい』を熱唱。沢田知可子の真似は今まで誰もやったことがないため評価が難しいが、斉藤が表現したいことは何となく分かった(歌詞をはっきり歌うところとか)。後は審査員のうち何人がこの歌を知っているかが勝負だろう。知らなければどうしても「9点」を付けやすくなってしまうからね。
松本明子・98点、斉藤ルミ子96点。斉藤、いいところまではいくのだが、どうしても、どうしても2回戦が突破できない。

準々決勝・Bブロック 第1組目

栗田貫一

布施辰徳

いろいろな人のまねで 井上陽水のまねで
くちなしの花 少年時代
●準々決勝の目玉カード。どちらもグラサン姿が少し恐い。まず栗貫は『西部警察』に登場する4人をメドレーで聞かせる。渡哲也、二宮係長(庄司永建)、藤岡重慶、石原裕次郎というラインナップ。栗田「(ものまねメドレーという)古典的なパターンに戻ってしまうんですが、いろいろ出してやらないと(布施に)かなわないんじゃないかと思って」。渡と石原の歌に、係長とおやっさんのセリフを交え、よく構成してあった。
●ルーキー・布施辰徳は、「井上陽水さんで」と言った瞬間から会場の期待を一身に受ける。で歌い出したらその期待を上回る完成度に、会場全員が聞き惚れていた。夏に『発表!日本ものまね大賞』で披露したときよりも完成度が上がっていた。この番組で声質をそっくりにトレースできた人は少ないので、余計に驚いてしまう。しかも布施の場合、体格がいいので、上手いうえに歌に迫力が出るのだ。針「大型新人が出てきた感じ」、野口「君の将来明るいんじゃないかと思う」と大絶賛。
栗田貫一・99点、布施辰徳・100点。まあこれは納得の結果か。今日初めての満点を獲得したのは新人の布施だった。高得点を出しながら敗れていく栗田を見て、さんま「なんか甲子園みたいですねえ」。

準々決勝・Bブロック 第2組目

桑野信義

ビジーフォー

バブルガムブラザーズのまねで サーカスのまねで
WON’T BE LONG ミスターサマータイム
●1回戦に続いて卑怯なワザを出してきた桑野。アフリカの部族のような格好で、目の前に竹で出来た檻、右手に槍、左手にビニ本(どんな出し物だ)。バブルの歌に乗せて、「オリ(檻)オリオリオ〜、ヤリ(槍)ヤリヤリヤ〜、やっぱ東京はさむいなぁ〜」と。筆者は本物の歌を聞くたびに、どうしてもこの桑野の歌詞が出てきてしまう(困ったもんだ)。サビの「ウォンビーローン」はもちろん「ビニぼ〜ん」と。ちなみにこの時桑野が持っていたビニ本のタイトルは『ギャルズ通信』である(トリビアルな話題ばかりで恐縮です)。
●ビジーフォーは、懐かしい「サーカス」の真似(「え?綱渡りとか?」というお約束のボケももちろん飛び出す)。主旋律を俵山栄子が、コーラスをモト冬樹、紅一点、ウーロン茶が務め、音楽性の高い素晴らしいハーモニーを聞かせる。本物のサーカスより、こっちの『ミスターサマータイム』のほうが、筆者は好きだったりする。
桑野信義・95点、ビジーフォー・97点。やはり、あんまり正統派で歌うと、審査のほうも厳しくなってしまうのだろう。それにしても、やはりグッチ裕三がいないと寂しいなあ。

準々決勝・Cブロック 第1組目

ダチョウ倶楽部

レイディーズ

ガロのまねで ジューシイフルーツのまねで
学生街の喫茶店 ジェニーはご機嫌ななめ
●ダチョウ倶楽部は扮装もそっくり、懐かしのフォークグループ「ガロ」。ダチョウ倶楽部はたまに懐かしのフォークを真面目に歌うことがあるが、その最初のネタとなったのがこれである。ジモンの歌声がメイン、肥後と上島が微妙にハモる。まあなかなかの出来なのでは。曲紹介のとき、研も思わず「マジだよ、こいつら」。
●初出場で2回戦進出を果たしたレイディーズは、これまた懐かしい、カラフルなテクノポップで知られたジューシイ・フルーツの甘ったるい声を細川ふみえが真似る。曲紹介で郁恵が「揺れる胸元にご注目ください」と言っているが、これもプロデューサーが無理やりやらせたのか?お色気路線なのに、野口・峰岸の顔は一度も映らなかった。
ダチョウ倶楽部・97点、レイディーズ・92点。初の準決勝進出を果たしたダチョウ倶楽部。上島「これ、まさかリハーサルって言ったら怒りますよ」、さんま「俺がもっと怒るわ!」

準々決勝・Cブロック 第2組目

清水アキラ

笑福亭笑瓶

嘉門達夫、他のまねで よしこちゃんのまねで
替え歌メドレー ああ無情
●奇抜な衣装の対戦相手に2度もあたってしまい、さんまも思わず「清水さん、今日クジ運悪い・・」。その清水アキラは、『清水アキラ風・替え歌メドレー(危ない編)』。要するに、今までこの番組で出してきたお下劣な替え歌をメドレーで聞かせるという、なんとも効率のよい出し物である。五木ひろしの「よこはめたてはめ」、淡谷のり子の「窓をあけれババァ〜」、宇崎竜堂の「ここまで来たら、サックせず〜」、山本譲二の「たとえどんなに固くて太くとも〜」など。いわゆる「清水アキラ総集編」といった感じ。
●笑瓶は、名物キャラクター「よしこちゃん」を2年ぶりに(前回は『1986年のマリリン』)。今回は全員サングラスをかけている(みんなグレてしまったようだ)。最後はお約束、トン吉をブンブン振り回し、「あんたたち、オヤツあげないわよ〜」で締める。笑瓶が一生懸命コミカルに演じているのに、研ナオコは脇で『ああ無情』を普通に歌っていた。
清水アキラ・98点、笑福亭笑瓶・89点。

 

準決勝 第1組目

松居直美

松本明子

藤圭子のまねで 竹内まりやのまねで
圭子の夢は夜ひらく SEPTEMBER
●いよいよ準決勝、1組目は女性名人同士の対決。先攻の松居直美は、現在は宇多田ママとして知られる藤圭子のものまね。ハスキーな歌声とあの暗い顔がバッチリ表現できていた。おそらく目線の動かし方までしっかり研究したのだろう。ただ、もう少しうつむき加減で、目線を鋭くしたほうがもっと良かった。
●後攻の松本明子は、めずらしい竹内まりやのまね。かつてグッチが添え物的にやったことはあるが、本格的に歌真似したのは彼女が初めてでは?所々「上手い!似てる!」と思える箇所はあったが(特にラ行の発音)、終始松本明子本人の地声が目立ってしまったのが残念ではある。
松居直美・99点、松本明子・95点。今まで一度も勝てなかった相手に初勝利を飾れた松居、決勝進出に思わず涙ぐむ。

準決勝 第2組目

布施辰徳

ビジーフォー

三善英史のまねで チャゲ石川優子のまねで
ふたりの愛ランド
●新人の恐ろしさを遺憾なく見せつけている布施、3つ目の出し物は「三善英史」。出だしの「あめに〜」から会場全員が驚く(生田悦子の感心しきった顔も印象的)。そう、第一声でドカン!と似せるのはものまねの基本なのである。布施は、後に披露した「美川憲一」もそうだったが、中性的なハスキーボイスが得意なようだ。ピーターとかやらせたら上手そう。
●変則ビジーフォーは、冬樹と俵山のデュエット。冬樹が確信犯的に「チャゲ」(みんなから「ハゲ!ハゲ!」と言われていた)、俵山が「石川優子」に扮し、「なつなつなつなつココナッツ!」を熱唱。ものまね王座で男女がデュエットものまねを披露することは珍しい。歌が上手い2人なだけに、新鮮に聴くことが出来た。グッチが石川優子をやっていたらどうなっていたのだろう。いつもの爆笑路線になってしまい、さらに点差がついていたに違いない(笑)。
布施辰徳・100点、ビジーフォー・97点。布施、2回戦に続いて満点を叩きだす。初出場にして決勝進出というのは、ビジーフォー(第15回)、城之内早苗(第19回)、岩本共生(第21回)に続く快挙である。

準決勝 第3組目

ダチョウ倶楽部

清水アキラ

愛川欽也楠田枝里子トランプマンのまねで かまやつひろしのまねで
ウィ・アー・ザ・ワールド 我が良き友よ
●準決勝の舞台は初めてのダチョウ倶楽部。『なるほど!ザ・ワールド』のパロディだが、まずトランプマン(寺門)の顔が似ている。まあほとんど覆面状態だからキタナイといえばキタナイのだが。それよりも特筆すべきは、竜ちゃんのキンキンの喋り方がそっくり!特に、楠田(肥後)が「トランプが、1枚、2枚、3枚ありますね」と言った後の「あるねぇ」が秀逸!最後のオチ、ハコウマに乗っていたことをばらされてのセリフ「困っちゃったねぇ、枝里子」といい、「さんまちゃ〜ん」といい、キンキンをここまで上手く真似できたのは、後にも先にも竜ちゃんだけだと思う。
●今日は相手が変則ネタばかりの清水アキラは、またまた新作のムッシュかまやつに挑戦。まずカツラがバッチリとフィット、そのままでも十分に似ているのに、センタクバサミを両頬に挟み、顔のゆがみ具合を絶妙に作り上げた。アキラ本人の弁「普通に歌うと、歌のときに似てなくなっちゃうんですよ」。セロテープ芸に代わる第2弾であるが、他に使いどころが無さそうなのが欠点か。
ダチョウ倶楽部・91点、清水アキラ・99点。敗れたとはいえ、ダチョウ倶楽部は今回大健闘だった。

 

決勝

松居直美

布施辰徳 清水アキラ
松原のぶえのまねで 柳ジョージのまねで 橋幸夫のまねで
おんなの出船 フォー・ユア・ラブ いつでも夢を
●ベテラン2組に新人1組が残った決勝戦!まずAブロックは松居直美。前回決勝で披露した「大月みやこ」のときもそうだったが、松居のこういったタイプの出し物は本当に安心して聴ける。まあ悪く言えばワンパターン、ということになってしまうのだろうが。決勝までは何度も残った経験のある松居、今度こそ悲願の優勝を狙う。
●Bブロックは、初出場ながら高得点を連発させて決勝まで上ってきた布施辰徳。決勝には斬新な「柳ジョージ」が残っていた(松居の「松原のぶえ」も斬新といえば斬新なのだが)。今まで誰も真似したことがなく、しかも抜群に似ている十八番、さらに心をうつ名曲とくれば、もう優勝は手中に収めたようなもの。途中に挟み込まれる審査員の誰もが、「すげぇ」という顔で聴き惚れていた。前回の栗貫同様、この歌を決勝まで残せたことは大きかったと思う。
●最後のCブロック代表は清水アキラ。前回、惜しくも決勝で敗れたが(「堺正章」のまね)、そのとき彼が最も悔しがっていたのは、自分のカラーを出し切れずに負けてしまったことだった。その反動からか、今回は大爆発!なぜか水着に浮き輪を着けての橋幸夫。さんま「な、なんでこの格好?」、アキラ「いや、橋さんがこういう格好して歌ったら、きっといいな、と思って(笑)」。誰も思いつかん、そんなの(笑)。歌のほうも彼のカラーがいかんなく発揮されている。終始怪しげな振り付けで踊ったり(よくプールで耳に水が入った人みたいに片足でピョンピョン飛び跳ねる)、途中ウーロン茶を出して「イィウォンチョンチョンコンシントンシャ〜ン」とインチキな中国語を歌ったり(当時流行っていたサントリーのCMの真似)、最後にはTバックまで飛び出したり(淡谷先生の最も恐い顔が登場)、とやりたい放題。前の2人が真剣に歌っていただけに、アキラは「オレだけ場違いじゃねえかなあ?」と何度もつぶやく。さんまに「あの、水着をケツに食い込ませてるときの嬉しそうな顔!(笑)」と突っ込まれていたが、アキラ本人はノリノリで、心底決勝戦を楽しんでいたようだ。

★そしていよいよ結果発表。緊張感が漂うなか、さんまは「僕はこんなドキドキしたのは2週間ぶり!」「(水着姿のアキラに)あんた、この姿で緊張するのヤメぇ!」と舌好調。三者三様、種類の違うものまねに、審査員の得点は果たしてどうなるか。結果は・・・松居直美・91点、布施辰徳・99点、清水アキラ・95点。この瞬間、優勝は布施辰徳に決定した。初出場&初優勝は、『第21回オールスター』のときの岩本恭生以来。どちらも「本格ものまね」という点では共通しているのが興味深い。小手先のテクニックでごまかさない、神に入った歌真似は、まだ顔や地声を覚えられていない頃に威力を発揮するということがいえそうだ。布施はこのあと、怒涛の連続決勝進出記録を樹立する。今回の総合得点「398点」も、前回の栗田貫一と並ぶ最高得点。さらに、今回布施が倒した相手は「栗田貫一」「ビジーフォー」「清水アキラ」「松居直美」「原田ゆかり」と四天王や歴代チャンピオンばかり。まさしく完全優勝だったのではないだろうか。惜しくも敗れた松居と清水は、前回に引き続いて「準優勝コンビ」となってしまった。
正統派歌まねの新しいスターが誕生、そして翌年から「星奈々」ら新しい強豪が誕生することで、『ものまね王座』の本格路線にますます拍車がかかることになる。