第6回 爆笑!スターものまね王座決定戦 1989年12月5日放送

【司会】  所ジョージ 田代まさし 榊原郁恵

【審査員】

藤村俊二 鈴木邦彦 生田悦子 淡谷のり子 清水国明
峰岸徹 林寛子 大矢明彦 針すなお 保沢紀

1回戦・Aブロック 第1組目

松居直美

岩本恭生

中森明菜のまねで 布施明のまね
デザイアー 霧の摩周湖
オールスターものまね王座「第15回」と「第20回(前回)」の優勝者同士の対決。松居直美はいつもの都はるみではなく、新ネタ・中森明菜で勝負。対する岩本は、前回大好評だった布施明を1回戦で披露。対戦相手を意識しての出し物なのだろう。1回戦の第1組目から会場・審査員を圧倒する、聴き応えある戦い。
結果、松居直美・98点、岩本恭生・98点。生田悦子は(いつも通り)松居の対戦相手に「9点」。しかし、淡谷先生のボタンを押しているのも生田だから、その辺を考慮しての点数かもしれない(淡谷は松居に9点)。いきなりのジャンケンに勝利したのは松居直美。前回チャンピオン、番組開始10分で姿を消すことに。

1回戦・Aブロック 第2組目

笑福亭笑瓶

松本明子

サリーの友達のよしこちゃんのまねで 松田聖子のまねで
魔法使いサリー 赤いスイートピー
いまだ1回戦を勝ち抜いたことのない両者。笑瓶は往年の名作、『魔法使いサリー』の友達のよしこちゃんを初披露。前回の「ねずみ男」と声が変わってないことを司会陣につっこまれる。トン吉・チン平・カン太をグルングルン振り回しての熱演。対する松本明子はいつもの美空ひばりではなく、隠れた十八番・松田聖子を真面目に歌い上げる。
結果、笑福亭笑瓶・87点、松本明子・98点。松本まさかの高得点にビックリ(8点は淡谷先生)。参加5回目にして初の2回戦進出である。

1回戦・Aブロック 第3組目

篠塚満由美

五十嵐ひろゆき

桂銀淑、テレサ・テンのまねで 矢沢永吉のまねで
釜山港へ帰れ 止まらないha−ha
前々回の涙の優勝が記憶に新しい篠塚満由美は、前回好評だった桂銀淑と、テレサ・テンの合わせ技。対する初出場、五十嵐ひろゆきは『発表!日本ものまね大賞』で矢沢のそっくりさんとして登場(後に、北海道のパチンコ屋のCMに本人に無断で出演し、訴訟問題に発展させて話題に)。当然1回戦は矢沢永吉だが、これは前回の岩本恭生(彼も『ものまね大賞』ではジュリーのみを披露)と同じパターン。つまり、矢沢で勝ち抜き、2回戦で全く違う出し物を披露しアッと言わせれば(岩本の場合は布施明)、一気にブレークする可能性があるのだ。ところが、歌っている最中、緊張のためか歌詞を間違えてしまう・・。
結果、篠塚満由美・95点、五十嵐ひろゆき・93点。五十嵐、1回戦突破ならず。他の3ネタは一体何だったのか、気になるところである(この番組の1ヶ月後、『ものまね紅白』では松山千春を披露していたが、いまいちであったことを付け加えておく)。

1回戦・Aブロック 第4組目

ビジーフォー

ピンクの電話

米米CLUBのまねで サルのまねで
FUNK FUJIYAMA アイアイ
ビジーフォーは、冬樹のカールスモーキー石井と、グッチのジェームズ小野田、そして「トリオ・ロス・パンチョス」のときに登場して以来の「木村君(人形)」の3人で米米クラブ。まだ『浪漫飛行』(1990年のヒット曲)が出る前のため、筆者は米米のことをまるで知らなかった(当時小学6年生)。そしてピンクの電話は、ぬいぐるみをかぶって童謡『アイアイ』を。この後恒例となるぬいぐるみ芸の第1弾である。所「デパートの屋上で見ているようでしたねえ」。
結果、ビジーフォー・99点、ピンクの電話・92点。

 

1回戦・Bブロック 第1組目

清水アキラ

ダチョウ倶楽部

加山雄三、田中邦衛のまねで Mr.マリック、ロイ、マギー司郎
のまねで
蒼い星くず 君だけに
清水アキラは前回(研ナオコの『こまっちゃうナ』)も登場したコーラス隊を引っさげて、映画『若大将シリーズ』の一場面を完全再現。若大将(加山雄三)が歌っているときに「カッコイイ!」と声をあげる会場の女の子、そして青大将(田中邦衛)を交えての熱演。対するダチョウ倶楽部は、いつものウルトラマンではなく、前回2回戦でやる予定だった三大マジシャン。3人のインチキマジックが会場には大ウケ、四天王を圧倒する。針「清水アキラさんは、まあ相手がダチョウ倶楽部だからこの辺のところでお茶を濁しておこうという、なんかちょっと全力投球でないようなところが見えました」とシビアな評価。
結果、清水アキラ・93点、ダチョウ倶楽部・94点。ダチョウ、初勝利をまさかの大金星で飾る。清水「だったら谷村やっときゃよかったな」の言葉とともに、1回戦で敗退。

1回戦・Bブロック 第2組目

森口博子

栗田貫一

工藤静香のまねで チャゲ&飛鳥の飛鳥のまねで
嵐の素顔 モーニングムーン
工藤静香そっくりの扮装で会場を驚かせた森口博子は『嵐の素顔』を熱唱。表情と振付で勝負(正直、声はあまり似ていないような・・)。そして栗貫は、前回の3回戦でやる予定だった新ネタ・飛鳥涼。ともに正統派の白熱した勝負に会場騒然。ここのところ序盤での名勝負に必ず登場する栗貫は、つくづくクジ運が悪い。
結果、森口博子・98点、栗田貫一・98点。栗貫は前回ジャンケンで負けているだけに、会場は「森口が勝った!」と大盛り上がり。そして案の定、森口のジャンケン勝利で栗貫崩れ落ちる。これで四天王の半分が消えてしまったことになる。

1回戦・Bブロック 第3組目

コロッケ

パル

いろいろな人のまねで 水谷豊のまねで
イミテーションゴールド やさしさ紙芝居
コロッケは『お笑いスタ誕』以来の山口百恵。途中、「顔がちがう」の歌詞で岩崎宏美、美川憲一、ちあきなおみ、そして「ホクロがちがう」で千昌夫に早変わり。1回戦から気合いの入った出し物、四天王の連敗を防げるか。対するは、売れていない頃コロッケと同じ釜の飯を食っていたパル。前回の『金八先生』に続いて、今回は『熱中時代』の水谷豊に挑戦。確かにどちらが「似ている」かで比べたら、パルなのは間違いないが、迫力やインパクトという面でコロッケにおされていたのが痛い。
結果、コロッケ・98点、パル・93点。

1回戦・Bブロック 第4組目

たけし軍団

しのざき美知

いろいろな人のまねで 宮沢りえ、武田久美子のまねで
あんたが大将 海のトリトン
松尾伴内、大森うたえもん、井手らっきょ、柳ユーレイの4人が登場。金八先生の扮装をした松尾が司会におちょくられるシーンは、今番組屈指の名場面。武田鉄矢、忌野清志郎、谷村新司、宮尾すすむ、アントニオ猪木、田原俊彦、水谷豊、玉置浩二、丹波哲郎、高島忠夫の10人をメドレーで。はっきりいって、ただ数をこなしただけである。対するしのざき、ドラマ『スワンの涙』をやりたかったのだろう、ということは分かった。二組の出し物が終わって、所「終わってくれたことがありがたい」。
結果、たけし軍団・89点、しのざき美知・89点。本日3回目のジャンケン、低レベルな争いを征したのはたけし軍団だった。

 

準々決勝 第1組目

松居直美

松本明子

松田聖子のまねで 太田裕美のまねで
ハートのイヤリング 木綿のハンカチーフ
松居直美は得意の松田聖子。しかしこの回を境に、松居は「都はるみ」も「松田聖子」も封印することになる。そして2回戦は初舞台の松本明子は、今までに誰もやっていない(と思う)太田裕美の真似。意外にも歌唱力のある松本、以後「何を歌わせても上手い」という評価がつくことになる、そのきっかけとなった作品がこれ。以降の彼女の活躍を考えると、ここでの勝利は大きかった。
結果、松居直美・93点、松本明子・97点。強敵を倒した松本は2回戦で泣き崩れてしまう。松居「アタシの方が泣きたいよ!」、そしてお約束「あーあ、都はるみやりゃあよかった」。

準々決勝 第2組目

篠塚満由美

ビジーフォー

江利チエミ、雪村いづみのまねで レイ・チャールズのまねで
テネシーワルツ ELLIE MY LOVE
篠塚はシブイところで「三人娘」の江利チエミと雪村いづみ(あと一人は美空ひばり)を。相手が強敵ということもあり、とっておきの出し物か。この二人をよくご存知であろう淡谷先生もご満悦の表情であった。ビジーフォーは、ウィスキーのCMで当時話題になったレイ・チャールズを、冬樹扮するピアノで熱唱。これぞビジーフォーという作品(いろんな意味で)である。
結果、篠塚満由美・97点、ビジーフォー・100点。今大会初の満点に、所「このゴマカシ上手!」。そう、グッチしか歌ってないのであった。今回の準々決勝屈指の水準の高い対戦、篠塚はただただ対戦相手が悪かった。

準々決勝 第3組目

ダチョウ倶楽部

森口博子

目玉オヤジ、ビル、クリスタルキング
のまねで
小林幸子のまねで
大都会 おもいで酒
1回戦で清水アキラに勝ったダチョウ倶楽部と、栗田貫一にジャンケンで勝った森口博子の対戦。そう、本来ならばここは「清水vs栗貫」の名勝負が生まれるはずだったのだ。残念至極。ダチョウは肥後が目玉オヤジでクリキンの声が高い方、寺門がクリキンの恐い方、余った上島は高層ビルのかぶりもの(『大都会』だけに)でジッとするだけ、というつかみ所のないネタ(おそらくクリキンをやろうとしたら、肥後がプロデューサーに「それ目玉のオヤジだよ」と言われ、そのまま採用になったのだろう。邪推だが)。対する森口も、演歌の大御所を真似するにしては、やや未熟だったか。
結果、ダチョウ倶楽部・84点、森口博子・93点。ダチョウ倶楽部はものまね史上最低点(「8点」が7つも!)を叩き出すという偉業を達成。

準々決勝 第4組目

コロッケ

たけし軍団

舟木一夫、橋幸夫のまねで いろいろな人のまねで
銭形平次 RUNNER
2回戦コロッケの新ネタは正統派・舟木一夫の歌に、途中で橋幸夫のとぼけた合いの手が入るという、たけし軍団にぶつけるにはもってこいの出し物。たけし軍団はサンプラザ中野、金子信雄、谷村新司、さだまさし、松山千春、竹中直人の意味深な6人をメドレーで。最後、大森うたえもんが竹中直人のCMパロディを演じると会場は大ウケ。しかし淡谷先生「どうも、ごくろうさまでした」。
結果、コロッケ・95点、たけし軍団・87点。たけし軍団の飛び道具的なネタに、一見危なそうな顔をしていたコロッケも、点数を見て一安心。

 

準決勝 第1組目

松本明子

ビジーフォー

天地真理のまねで 平尾昌晃、畑中葉子のまねで
恋する夏の日 カナダからの手紙
今日はノッてる松本明子、いよいよ本命・ビジーフォーとの対戦。まさか3つもネタを消費するとは思っていなかったのか、完成間際の天地真理を披露してしまう。しかも何故か禁断のセロテープ芸で。天地真理はそこまで鼻の穴が強調されるべき顔か?と少し疑問が残る。ビジーフォーは冬樹の平尾昌晃をメインに、グッチの畑中葉子のハモりを加えたデュエット。針「天地真理は完成の一歩手前で出してしまったという感じ。平尾昌晃は甘さが足りず、今ひとつであったなあ。」と。しかし、この辛口コメントの前に、針先生は飴玉をノドに詰まらせてしまうという歴史的ハプニングが起こっている。
結果、松本明子・95点、ビジーフォー・92点。生田悦子と林寛子はビジーフォーに8点。松本明子に勝たせようというのが見え見え。「好み」だけで点数を付けるのでなく、もう少し審査基準をハッキリさせてほしいところである。

準決勝 第2組目

森口博子

コロッケ

本田美奈子のまねで 近藤正臣、田村正和、常田富士男
のまねで
1986年のマリリン 雪が降る
四天王、残るはコロッケのみ。相手がいくら森口とはいえ、今の流れでは、気を抜いてしまうと負けてしまうことも大いにありうる。コロッケにとってはここが正念場、そう判断したのか渾身のネタが登場。懐かしの近藤正臣、CMネタを盛り込んだ田村正和、『まんが日本昔ばなし』の声優・常田富士男の3人のしゃべり真似を披露。所も思わず「上手いなあ。手を抜かないなあ」。歌よりもダンスと勢いで勝負の森口に対して、プロとしてしっかりと練り上げた「ネタ」で挑んだコロッケは、四天王としての貫禄を見せた。
結果、森口博子・95点、コロッケ・99点。敗れたとはいえ、森口も今回は大健闘(前回は86点だったのだ)。この翌年からは女性ものまね名人が台頭する時代になるが、その土台を作ったのが今回健闘した森口や松本明子であるといっても過言ではないだろう。

 

決勝

松本明子

コロッケ

美空ひばりのまねで 桜田淳子のまねで
17才 リップスティック
破竹の勢いで勝ちあがってきた松本明子は、満を持しての美空ひばり。今回ノリにノリまくっているだけに、圧倒的な迫力で四天王を追い込む。やっていることは従来と変わらなくても、その日の勢いで何故か輝いてみえることはこの番組では往々にして起こること。今回は松本がそれだった。対するコロッケは前回好評だった桜田淳子を歌い上げるが、歌詞が途中でトンでしまうほどアガってしまう。対戦後の清水国明のコメントを取り上げる。「今日は四天王4組ともにいえることやけど、全員ハンデがあると思うんですよ、四天王だということで。我々審査員は、もし(対戦の中身が)10対10だったら、完全に挑戦者のほう(にいい点を)押してしまうし、茶の間は『こいつは上手くて当たり前』という目で見てるから、それ以上に全力でぶつからなあかんのを、あれ全力じゃないんじゃないかな、120%でやらないかんのに100%で止めてるんじゃないかな、というのが(今回は)あったね。あと、(コロッケは)明子ちゃんの迫力に負けるというか、コロッケは絶対手を抜いてないと思うけど、格闘技でいったら目を見た瞬間に負けてしまうみたいな、明子ちゃんの迫力に押されて、途中すべったかな・・という迷いが顔に出てたような気がした。その辺が、(四天王にとっての)今後の課題だと思いますね」。
結果、松本明子・96点、コロッケ・91点。まさに「四天王ブーム」の真っ只中に開催された今大会、四天王は新ネタに対する周りの期待にどのように応えるかが勝負の分かれ目となった。結果的に、清水、栗田は1回戦敗退、ビジーフォー、コロッケも勢いある松本に敗退、と課題の残る結果になったのは清水国明の言う通り。『ものまね王座』はいよいよ「新ネタ」の時代へ入っていく。コロッケは千昌夫を、清水アキラは五木ひろしを、松居直美は都はるみを、松本明子は美空ひばりを、捨てなければならないときがやってきたのだ。新聞のラテ欄には毎回「オール新ネタ!」の文字が躍る時代、生き残っていくのは果たして誰なのか。


≪熱演賞≫ 森口博子 篠塚満由美

≪努力賞≫ しのざき美知 たけし軍団 ダチョウ倶楽部 ピンクの電話

≪敢闘賞≫ 岩本恭生 松居直美 栗田貫一 清水アキラ