お断り
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。読んだ本はそのきっかけにすぎない。だからとりあげた本の内容について知りたい方には不向きだ。
よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。
タイトルは忘れたが読んでいた本で、この本を引用していたので、図書館から借りてきた。
図書館に予約して受け取るまで2週間くらいかかる。私はその間に7〜8冊の本を読んでいる。だからタイトルを忘れても、「ボケ」と言わないでください。
書名 | 著者 | 出版社 | ISBN | 初版 | 価格 |
「日本経済 本当はどうなってる?」 | 生島ヒロシ 岩本さゆみ |
青春新書 | 9784413046961 | 2024/05/15 | 1050円 |
正直言って手に取って一目見て、うさん臭い感じがした。だって生島ヒロシの対談本である。生島ヒロシ氏を嫌っているわけではないが、テレビでひょうきんな彼を観ていると、真剣に経済を語る人には思えなかった(ゴメンナサイ)。
もっとも池上彰は真面目な顔で語っても、ウソと間違いばかりだ。
対談のお相手というか主役は元為替ディーラーとあるが、所属は「生島企画室」とある。「生島企画室」とは、生島ヒロシが運営する芸能プロダクションだ。
吉本興業に大学教授や評論家がざくざくいると同じく、生島芸能プロでも、御用学者を抱え込んでいるのかと思った。
ますます怪しい。
怪しい経済
学者 評論家といえば、筆頭は常に予言が外れる紫髪の妖怪、浜 矩子が目に浮かぶ。
似たようなのに森永卓郎なんてのもいる。森永は外為法とか著作権法など知っているのか心配だ。法を知らずに経済を語れるのかと疑問になるが、世の中のマスコミはそんなことは気にしないようだ。
そう言えば森永卓郎も、ベルキッスとかいう芸能事務所所属だ。
学者として名を成すには、芸能プロダクションの所属するのが第一歩なのだろうか?
そんなことが思い浮かび、芸能プロダクションに所属する人の著作では……と思ったのを許してほしい。
とまあ、そんな先入観を持って読み始めた。そして10ページも読まないうちに、その先入観は打ち砕かれた。
読み始めてすぐに、この岩本さゆみ氏はまっとうだと思った。彼女の予言が外れるか間違いかは、ハッキリ言って私は分からない。だが語り口も語る内容も、緑髪の妖怪のような、恨み・妬みと思い込みと上から目線の語り口でなく、普通の人である。だから読んでいて、いや〜な気持ちにならない。これ大事、
そして話の内容がマクロからミクロ、家計に渡るが、聞いて変だとかそうじゃないと思うことがなく、自分が感じていることと変わらないのでスッと頭に入って来る。読むのが楽だ。
そして「私は門外漢ですから、あくまでも一意見として受け取ってほしいのですが(p.67)」などとおっしゃる。ケチのつけようがない。
そして生島ヒロシの合いの手もよろしい。
マスコミは、日本が
だが岩本さんは、為替レートが円安ドル高になったためのGDP減なのだから意味がないという。円ドルのレートが15円変われば、GDPはドイツと逆転する。
本には書いてないが、同じく一人当たりGDPは韓国と日本は逆転する。
日本はドイツより経済成長率が高いけど、円安になっているからドル換算では低く見えるということです。
同じことを語っている人もいる
注:図はニッセイ基礎研究所の日本とドイツのGDP推移引用
岩本さんはビッグマック指数🍔をその例に挙げる。
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日本の円が安いのだから、本来なら日本のビックマック指数🍔は高くなるはずだ。ところが日本では、アメリカよりも43.9%も安く、韓国より14.1%安い
なお、ドイツはなくてユーロ圏があるが、それより日本は46%安い。
ならば、日本の円の方がアメリカや韓国よりも購買力があることになる。
外国との比較で、日本が低下したというのは為替上のことであり、実際に日本が衰えているのではないということだ。そして為替レートは需要と供給の見えざる手によるのではなく、公定歩合によってずらされていることになる。
岩本さんは語る。
名目GDPは生産数量に市場価格をかけたもので、物価変動の影響を受ける。
実質GDPとは、物価変動の影響を取り除いた国内総生産(GDP)のこと、その年に生産された財の本当の価値を示す。実質GDPのほうが、経済の実状を表す。
日本の名目GDPが少ないのは為替レートはのせいだと言えば、「円が高ければ、国際競争力が弱くなり経済成長率は低くなる」と憎まれ口を叩く人もいるだろう。
だけど2024年は年間通して円安で、元旦は142円、その後140〜160円の間で推移した。今より10円以上円高だったわけだ。しかしそのとき輸出競争力がなかったわけではない。
確かに民主党政権時代のように1ドルが75円(2011年10月)になったら大変だが、140円くらいなら全然OKだろう。
それでも今(2025/01/02)の157円より13%円高だ。
どう考えても1ドル157円(2025.01.01)というレートはおかしいだろう。
じゃあ為替レートを変えたらよいのにとなると、それは金利・公定歩合の問題だ。
その他いろいろ書いている。
対外純資産のこと
日本は2010年以降、貿易収支は赤字である(注3)。
貿易収支とは「自動車を売ってお金をもらい、石油を買ってお金を払う」という経済活動の結果だ。
貿易収支が赤字なら大変だ、赤字が続けば外貨がなくなり、来年石油を買うお金はあるのだろうかと心配するかもしれない。
しかし日本は今では物を売ってお金を得るのではなく、所得収支といって海外に作った会社から配当を受け取ったり、海外で投資したお金の配当金、貸し付けたお金の利子など得て国際収支を黒字にしている。
今では、貿易収支の何倍もの所得収支があるのです。
注:貿易収支の額は輸出・輸入とも所得収支より大きいですが、その差額である黒字額は所得収支の黒字に比べて小さいという意味です。
貿易収支なら、その成果は物を作った人や流通に関わった人に分配される。しかし所得収支は手足を動かす人がおらず、お金を持った人・企業に入る。だから国民全体への分配がされない。
これは困った。
家族全員が働けばそれぞれお金を稼ぐが、株を持っている父は配当があるけど、稼いでいない息子たちはピーピーしている感じかな。
ただ日本が終わるわけではなく、産業構造が変わってしまったということ。
日本企業は、1980年代後半から海外生産に移すことを始めた。そしてバブル崩壊もあって、競争力のない会社は淘汰されてしまった。
バブル崩壊を生き延びた企業は臥薪嘗胆を重ね、バランスシートをピカピカにして、海外に設備投資、あるいは土地や銀行に投資して、今はその配当を受ける身分になった。言って見れば製造業改め、金融業か投資会社になってしまったのだ。
そして自分たちが汗水流して今の優雅な生活を得たのだから、分け与えることはないと思うのもありだろう。
そういえばバブル真っ盛りの1990年頃、これからの日本はアイスランドのように、金融立国すべきなんて語った評論家がたくさんいた。
人口40万のアイスランドと同じことが、人口1億の日本にできるわけないだろう。30年後金融立国とまでは行かないが、貿易収支をはるかに資本収支が超えた今、評論家の語った日本が実現したが、国民全部の幸せにはならなかったようだ。
そのアイスランドであるが、2008年サブプライムローンから発した世界金融危機でデフォルトしてしまった。IMFの支援で頑張って2011年に回復した。
これはアイスランドが小国だから可能であって、世界3位の規模の日本を救うことは、どこの国にもできないだろう。
もちろん日本の大企業がしていることを、日本の家庭でもできないことはない。1990年頃から、家計を引き締めて少しずつでも優良株を買うとか、土地や建物に投資していたら企業と同じことが今できたかもしれない。
だが今から頑張っても時期を失したかもしれないし、元々が資金的に無理かもしれないし、また大企業と違い交渉力もないから、買い物を評価することが難しく変な物件をつかまされるリスク大きい。
もちろんバブル崩壊やリーマンショックで、ミニアイスランドになったかもしれない。
そして岩本さんは、なんと、なんと、すぐに円ドルのレートは反転して100円くらいになるという。それはマック指数から見ればおかしくはない。
紫髪の妖怪は、円は安くなる一方で日本は破滅すると常々語っているが、岩本説はその反対だ。
但しそれにはきっかけが必要で、トランプ大統領に代われば……という。
果たしてどうだろう?
ところで今のご時世、物価が上がっていることが大きな問題になっている。
岩本さんは、日本の為替レートの問題とは別に、世界的に物価が上昇しているから、日本の物価が上がっているのは、円ドルレートのせいだけではないという。
それはウクライナ戦争や中東がきな臭いから、アメリカが戦争に備えているからだという。戦争のためにドルを必要としているからというが、その論理の連鎖は私には難しくて理解ができない。
世界中の消費者物価が上がっているのは、IMFが作った消費者物価指数の推移のグラフを見れば一目瞭然だ
コロナは2020年からだが、その影響は見えない。2022年からの急上昇は間違いなくウクライナの影響だろう
これを見ると、日本の物価上昇はまだましだ。いやいや、他国に比べれば問題だと言えないレベルか? 日本に住んでいて良かったと思うしかない。
もちろん物価にスライドして賃金が上がれば損得はない。
アメリカでは誰もが年収1,000万なんて聞くと驚くが、日本で2000年頃の物価の倍になっていれば、今も給与の倍になっていなければ暮らしていけない。
日本人の平均年収は426万
日本は物価が上がっても賃金が上がらないと反論があろうかと思うけど、物価を考慮した前出図表4でも日本の購買力は他国を圧倒している。だから日本は物価上昇で大変だとしても、他国はそれ以上大変だということだ。
人より良ければ良いとは言わないが、それほどひどくないというのも事実だ。ホームレスの人口比を見ても分かるでしょう
その他、政府債務について、一般会計と特別会計に分かれていることについて、消費税について、引退後の生活費についてなど語っている。
どれも面白いし、ためになる。
日本経済は盤石ではないし、衰退している状況でもない。我々が考えて行動することによって変化するのだ。
ただ老後の資金は4,000万確保しようというのには、大きく庶民感覚から離れている。2,000万でも大騒ぎしたのに、浮世離れしている
生島ヒロシとか岩本さんたちの暮らしは、一般庶民の倍ということなのだろうか?
この本を読んでいて気付いたことが一つ。
物価とかGDP比較に、まったく韓国が出てこない。比較対象は、G7(アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、日本)である。それ以外は岩本さんの眼中にないようだ。
本日の元気
「夢と希望とサムマネー」とチャップリンが映画の中で語ったそうだ(p.178)。生きていくにはその三つが必要とのこと。
歳をとると、夢も希望もシュリンクするし、財産は
それでも生きたいという欲望はあるぞ!
元気を出せ、大声を出せ……金は出さなくて良いです。
ロシアは2022年2月24日にウクライナに対して武力侵略を開始した。 日本人はウクライナ戦争を遥か彼方と思っている。しかし欧州は狭い。ウクライナから、ベルリンまで770km(青森から京都)、パリは1500km(札幌から福岡)、ロンドンでも1600km(札幌から鹿児島)しかない。 ![]() | ||
「2,000万円問題」とは、2019年に金融庁が発表した報告書に発する騒動です。この報告書で、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯が、毎月の収入と支出の差額が約5.5万円不足し、30年間で約2,000万円の資金が不足すると報じた。 この問題をきっかけに、マスコミ、一般人が2千万もない人はどうするのかと大騒ぎになったことを言う。 ちなみに私は2千万どころかその半分くらいしかないけど、引退して13年普通の生活をしている。車もないし、贅沢はしてないけどね。 ![]() |
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