お断り |
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。 読んだ本はそのきっかけにすぎない。 だからとりあげた本の内容について知りたいという方には不向きだ。よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。 ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。 |
私は「事業継続マネジメントシステム」の認証に関わったことはない。そもそもISO22301が制定されたのは、私の引退と同時だ。
もちろん規格制定前から、当時存在したアイソス誌に、事業継続マネジメントシステム規格に関係している人の、規格の進捗とか規格の紹介があったから、それなどは読んではいた。 そして東日本大震災前に、多分3社だったと思うが、事業継続の認証を受けたという記事を新聞だったか、何かで読んだことがある。
シニカルな私だから、そういう会社が大災害・・・当時、大災害と言えば阪神淡路大震災のイメージだった・・・が起きたときに、その真価が分かるだろうと思ったことを覚えている。
本音は、そのようなものは認証審査で評価できるはずがないと思っていた。言い方を変えると、BCMを認証するのはリスクが大きすぎる、勇気のある認証機関でなければできない。
ところでISO22301が制定されたのは2012年、つまり東日本大震災より遅い。認証を受けたという会社は、何という規格で審査を受けたのだろう?
それらの認証企業の中には、東日本大震災で被災したところもあったはずだが、認証を受けていない会社に比べてトラブルが少なかったとか、復旧は垂直立ち上げだった・・・・・・という話を聞いたことはない。
認証を受けた会社の、震災後はどうだったかAIに聞いた。
そういう事例を探していて思った。真に有効性が検証されている事業継続の仕組みを作り上げているなら、それを他所の人に見せるはずがない。
また今現在、認証が取引の際に評価されるとは思えない。なぜなら過去の実績の方が、認証よりも説得力がある。認証より実証である。
現実にISO22301制定から14年経った2026年現在でも、ISO22301の認証件数は100件もない
つまりBCMを整えても、認証する意味(効果?)がないと考えているのだろう。
それに事業継続という発想は昔からある。トヨタなどは40年以上前から、交通事故で部品入荷が遅れる・止まると判断したとき、躊躇なくライン停止したと報道されていた。
それは単なる危機管理だと言うこと止めよ。どんな思想も手法も、積み重ねだ。様々な経験により危機管理の経験を積めば、川上には未然防止に広がり、川下には事業停止からの復旧策に広がっていくものだ。
さて、私が自分のウェブサイトに書いている小説もどき「タイムスリップISO」で、事業継続マネジメントシステムが出て来るので、出鱈目はいかん、少しは勉強しようと何冊か本を読んだ
そのとき古い本は参考にならないと思い、2020年以降に出版されたものを選んで読んだ。結果として、それは悪手だったようだ。
事業継続という発想は、別にISO22301が初めでもなく、PAS56が初めてでもない。
BCM規格を作ろうとするはるか前から、事業継続マネジメントに関する論文や本は多数ある
注:面白いことに、時代が遡るほど事業継続のテーマは経営事項になっていく。つまり倒産の危機を初めとして財務関係、スキャンダル、ネットのない時代での情報漏洩などを取り上げていた。
時代が下がるにつれて経営レベルでなく現場レベルのもの、具体的には東日本大震災以降は地震を筆頭とする災害、そして新型コロナウイルス(COVID19)以降はパンデミックと移ってきた。
大分毛色が変わったというのが印象である。
そういう認証するための規格要求の解説本を読むよりも、事業継続とは何かを白紙で考えた本の方が有用だと後になって気づいた。著者が経験した、あるいは考えた事業継続の仕組みを書いた本の方が、要求事項だけの規格よりも真に価値があり、有用なのは間違いない。
見方によれば焦点が合っていないように見えるかもしれないが、認証にフォーカスした情報より、事業継続というものを多面的に見ることができる。
そもそもISO規格があって、事業継続マネジメントがあるのではなく、現実に存在する障害をどうすればよいのかという疑問、悩みがあって、対応を考えるわけだ。それが現実の試練を受けてリファインされたものが、その会社に適した事業継続マネジメントシステムだろう。
そういうシステムの事例がたくさん揃ったとき、それを標準化しようとしたものがISO規格であるべきだろう。
ISO規格にまとめられたものが、素晴らしいとか役に立つかどうかは、誰も検証していない。実際にISO9001以降、ISO9001だけでは不十分なことが実証されている。
ならば多様な人の考える事業継続マネジメントとはどんなものかを知り、それを元にしてBCMを考えた方が間違いない。
と、考えて読んでいると、またまた疑問が現れる。
事業継続マネジメントの以外でも、外乱、内部要因、システムのノイズなどを受けても、タスクを遂行し目的を達しようとしたものは多々ある。そういうものは、どんな仕組みだったかということである。
そういえばロバスト
外部からの影響が大きいとなれば、災害などのような確率的なことではなく、いや確率的であっても、その確率がパーセントのレベルでなく、30%あるいは50%の発生確率である場合を考えれば、該当するものにはいくつも思い当たるだろう。
私は現場監督だったが、パートの人が急に複数休んだとか、入った部品が不良だったとか、事故で停電になったなんて発生確率は相当高かった。
更に言えば、非常事態になるのが必定という分野もある。
言わずと知れた軍隊だ。戦えば勝っても負けても無事ということはない。もちろん国家レベルなら選択肢もあるだろう。一師団を見捨てるとか、艦隊戦で負ければその艦隊は除籍して終わりということもあるかもしれない。
しかし当事者の軍艦の乗組員とか、師団の一員とすれば、攻撃を受けて損害が出たらお手上げというわけにはいかない。使える手段、使えるアイデアを総点検して最善を考え実行しなければならない。
事業継続のもっとも必要な組織は軍隊である。ご異議なかろう。
負け戦を描いた本は多々ある。とはいえガダルカナルとかミッドウェーの起承転結を検討してもあまり意味はない。
戦いが起き、勝ち負けに関わらず被害をいかに修復して、戦い続けたかを書いた本はあまり知らない。
小野田少尉の本くらいかもしれない。彼は敗残兵ではなく、29年間戦い続けていたのだから。とはいえ彼は正規戦ではなかった。
注:正規戦とは、国家の正式な軍隊同士が法律やルールを守り、正面から戦う伝統的な戦争形態。
非正規戦とは正規戦以外の、ゲリラ、民兵、テロなどをいう。国家間の紛争でないテロは単なる犯罪である。
そして事業継続への障害が正規戦であるはずがない。
そんなことを思いつつ、図書館の書架を彷徨っていて見つけたのがこの本である。
| 書名 | 著者 | 出版社 | ISBN | 初版 | 価格 |
ダメージ・コントロール(以下、ダメ・コンと記す)とはなんだろう?
英英辞典でmeaning of damage controlと引くと、
とある。
なにか、あまり良いイメージがない。
なおmeaning of damage control in NAVYで検索すると、
なるほど、海軍のダメ・コンとはそうであったか。
この本は、大日本帝国海軍が発祥した明治初期から、太平洋戦争の敗戦で海軍がなくなるまでの間、軍艦が被害を受けたとき船を沈めずに戦闘を続けるための、考え方、組織、機能、手順、設備、などについて述べている。
なお日本ではダメ・コンとは言わず「応急」と称していたそうだ。
「応急」を国語辞典で引くと
とある。屋外で怪我をしたとき、その場で手当するのを応急処置なんていうけど、あまり良いイメージではない。
読むと階級の変遷、「応急」の組織のトップの兵科は機関だったので将校でない士官に指揮権を渡すのかという問題があって、戦争末期にやっと機関科の士官も指揮継承権を持つに至ったとか、多面的に事情を描いている
しかし日本だからということはないだろうが、「攻撃は最大の防御なり」と公言して応急など眼中にない提督もいたし、軍艦設計の神様、平賀譲中将などもダメ・コンを等閑視していたようだ。
そういう気風の中でダメ・コンを主張することは憚られたらしい
とはいえそういう発想は日本ばかりでなくイギリスもそうだった。ユトランド海戦でイギリスは制海権を取り一応勝ったことになっているが、この海戦でイギリスの軍艦は損傷を受けるとすぐに戦う機能を失ってしまう(速い話がすぐ沈む)ことが明白になった。
この本によるとドイツの軍艦は排水量(軍艦の重さ)の4割が装甲(防護)の重量だったが、イギリスの軍艦はこれより10%少なかった。
アメリカなどはこの海戦の結果を見て、自国の軍艦の装甲に反映した。幸か不幸かイギリスはあまり重要視せず、戦艦プリンス・オブ・ウェールズは参戦したが、それ以降も補強工事はされなかった。
その後、マレー半島沖でプリンス・オブ・ウェールズとレパレスは、日本海軍の飛行機に簡単に撃沈されたが、それは日本軍が優秀だったのではなくイギリスの軍艦がヤワだったからという説もある。
ともかく日本海軍もダメ・コンに関しては自慢できないのだが、太平洋戦争の過程でその重要性を学び体制も技術も上げていく。
戦艦大和なども就役時と沖縄特攻時では、防御もダメ・コン対策も雲泥の差だったらしい。
しかしダメ・コンを頑張っても、物量で負け、航空支援がなければ海の藻屑だ。
日本の軍艦や貨物船は、アメリカ軍の航空機や潜水艦に攻撃された事例はたくさんあるが、何も対策せずに同じ羽目に陥ったわけではない。
輸送船の護衛の強化も大きいが、ダメ・コンも大きい。
なにしろ戦争だから「応急」はまさに緊急だし重要だった。
本書では様々な事例を述べていて、ケーススタディの塊だ。
本書を読んで思ったのは、事業継続マネジメントは、机上の理屈(空論とは言わない)ではないことだ。
非常時には緊急対策の考えも手も物も足りないのだが、復旧段階においても、あらゆるものが足りないのは当然だ。
当然、あるものを使って代用する方法を考えなければならない。それはその場で思いつくとか簡単にできるわけではない。
その一つが人材の活用である。前述の機関科の士官も指揮継承権を持ったということは、機関科の士官も航海術、砲術を知っておかなければならないことになる。実際にこれは結構な負担増だったらしい。
BCM規格においても、要求事項をどう読むかではなく、発生しうる事態において必須なものが喪失したときどうするか。
学問なき経験は、経験なき学問に勝るという。仕組みは整えても、最後は臨機応変に対応する能力が重要になるだろう。
「なんだかんだと好き勝手なことを騙って、ダメージ・コントロールについて書いてないじゃないか💢」というお叱りを予想する。
冒頭に書いておりますように、
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことであります。
私にとって、お話を書く参考になったなら十分であります。
| 期 間 | ヒットしたすべて | 災害・パンデミック関連 | 備 考 |
| 1961~1970 | 1 | 0 | |
| 1971~1980 | 2 | 0 | |
| 1981~1990 | 2 | 0 | |
| 1991~2000 | 15 | 4 | |
| 2001~2010 | 49 | 39 | |
| 2011~2020 | 1830 | 約750 | 東日本大震災とCOVID19の影響と思われる |
| 2021~2026 | 953(備考参照) | 約370(備考参照) | 2026年は06月まで・COVID19関連多し |
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