及び・並びに・又は・()しくは

26.06.29

私は事業継続マネジメントなんて縁がなかったが、自分のウェブサイトで小説もどきを書いていて、事業継続マネジメントについて若干書くことがあり、規格を読みました。
すると序文から納得いかないことが多々ある。まあ、それは置いといて定義に行ったら理解できないものがありました。

JIS訳がどうしても納得いかないので愚考した事を書く。
定義の内容でなく、文章としてそのJIS訳の文章表現が『私には納得できない』ということである。


ISO22301ではincidentを「event that can be, or could lead to, a disruption, loss, emergency or crisis」と定義している。これはアプリオリだから変えようがない。
それを翻訳したJISQ22301は「事業の中断・阻害,損失,緊急事態又は危機になり得る又はそれらを引き起こし得る事象」としている。 この文章の『事業の中断・阻害,損失,緊急事態又は危機になり得る又はそれらを』の並んだふたつの『又は』を、同等のものとみるか、大区分・小区分とみるかということになる。

ChatGPTに質問すると、日本語訳は不適で『中断・損失・緊急事態・危機そのものである事象、又はそれらを引き起こし得る事象』とすべきと回答した。
なるほど、少し冗長だがそれなら読んで誤解は起きそうない。


そこで私はツと気が付いた。

日本語では「及び(and)」と「又は(or)」の使い方は決まっている。日常生活では気にしないが、仕事の文書、特に法律では厳しい。どこで線を引くかが問題になれば重大な焦点になる。
ここでは「又は」の問題だから、それに限定して説明する。
「及び」の使い方にもルールがあるが、ここでは省く。知りたい方は国語辞典を引いてください。

「又は」は、ふたつのもののうち、どちらか一方を示す言葉で、英語の「or」と同じ意味に用いられる。同じ階層の三つ以上のものの中からひとつを選ぶ場合は、最後の物事の前にだけ「又は」を用い、他の項目の間に「読点(、)」をおく。
 (例1)「甲又は乙」
 (例2)「甲、乙又は(へい)

()しくは」は、選択するものに階層がある場合に用いる。一番大きな階層の接続部にだけ「又は」を用い、それ以外の接続部(三階層以上の場合も含む)にはすべて「若しくは」を用いる。このとき大区分が先に来るように「又は」でつながるものを先にする。
 (例3)「甲又は乙若しくは丙」
 (例4)「東京都又は千葉市若しくは市川市」


イメージがお分かりいただけただろう。
要するにJIS翻訳の文章は、法律を初め日本語の文章の書き方に反している悪文なのだ。
と考えると、JIS訳の文章は、

『事業の中断・阻害,損失,緊急事態若しくは危機になり得る又はそれらを引き起こし得る事象』
としたほうが良いと思う。いや、そうしないと誤読されても文句は言えない。
「若しくは」が先で「又は」が後なのが気になるが、英文の順序に合せるとそうなってしまう。

しかしながら、上記の改善案も修飾語(s)とそれを受ける「事象」の距離が遠いので、分かりにくい。ここはChatGPT案を採用するのが最善だろう。
もちろんISOで一文のものはJIS訳でも一文にするのがルールらしいが、かってはISOMS規格の一文をJIS訳では二文に分けたものもあったから、日本産業標準調査会も文句を言わないと思うよ。


定義文が分かりにくいのは「or」を馬鹿の一つ覚えで「又は」にしたことであった。


注:ちなみにJISQ22301では、「及び」が284回、「並びに」が19回、「又は」が67回、「若しくは」が4回使われている。
翻訳した人が「若しくは」を知らなかったのではないようだ。
ちなみに使い方がおかしいと思ったのは次の通り。

語句及び並びに又は若しくは
使用数28419674
疑問あり11040
疑問率4%06%0


蛇足である。
日本語の「読点(、)」の役割は、誤読防止と構造の明確化、並列語句の整理、流れの整理などだとそのたぐいの本に書いてあった。だが読点を打つべきところとして、主語が長い場合、感じやひらがなが連続して読みづらいところ、息継ぎや間のはいるところ、とある。
何か書いてあることに矛盾がありそうだ。
別の本によると、「読点」は息継ぎの印であって、文章の構造を決めるものではないらしい。
英語のカンマ(,)は、文章の構造を規定するが、「読点」にはそういう機能はないという本もある。

日本語は単語の関係を品詞とかつながり・順序で決定し、それは接続詞に依存すると書いてあるのもあった。つまり並列につながるなら「及び」とか「又は」だろうし、階層が違うなら「並びに」とか「若しくは」となる。
英語では並立のつながりなら「and」でつないでいく。それ以外の言葉がない。階層の違いとかは前置詞やカンマなどで明確にする。
だが日本語は「及び」とか「並びに」によって示し、読点などに頼らないとあった。

どの説が正しいのか、事実か否か分らないが、英語の文章を、動詞や接続詞をそのままの関係で、一文を一文に単語も加除せずに、原文の意味を変えず日本語に訳すことは不可能ではなかろうか。
原文の意味を変えずに、文章の構成を変える方が真っ当だろう。
そうでなければ英語原文を正とすると記して、日本語は参考にとどめ、審査に使わないことでどうだろう。



うそ800 本日のいきさつ

これを書いた経緯は冒頭に書いたとおりだが、内容はいつも書いている末尾の「本日のナンチャラ」部分を、独立したコンテンツにしたものです。







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