私は事業継続マネジメントなんて縁がなかったが、自分のウェブサイトで小説もどきを書いていて、事業継続マネジメントについて若干書くことがあり、規格を読みました。
すると序文から納得いかないことが多々ある。まあ、それは置いといて定義に行ったら理解できないものがありました。
JIS訳がどうしても納得いかないので愚考した事を書く。
定義の内容でなく、文章としてそのJIS訳の文章表現が『私には納得できない』ということである。
ISO22301ではincidentを「event that can be, or could lead to, a disruption, loss, emergency or crisis」と定義している。これはアプリオリだから変えようがない。
それを翻訳したJISQ22301は「事業の中断・阻害,損失,緊急事態又は危機になり得る又はそれらを引き起こし得る事象」としている。
この文章の『事業の中断・阻害,損失,緊急事態又は危機になり得る又はそれらを』の並んだふたつの『又は』を、同等のものとみるか、大区分・小区分とみるかということになる。
ChatGPTに質問すると、日本語訳は不適で『中断・損失・緊急事態・危機そのものである事象、又はそれらを引き起こし得る事象』とすべきと回答した。
なるほど、少し冗長だがそれなら読んで誤解は起きそうない。
そこで私はハツと気が付いた。
日本語では「及び」と「又は」の使い方は決まっている。日常生活では気にしないが、仕事の文書、特に法律では厳しい。どこで線を引くかが問題になれば重大な焦点になる。
ここでは「又は」の問題だから、それに限定して説明する。
「及び」の使い方にもルールがあるが、ここでは省く。知りたい方は国語辞典を引いてください。
「又は」は、ふたつのもののうち、どちらか一方を示す言葉で、英語の「or」と同じ意味に用いられる。同じ階層の三つ以上のものの中からひとつを選ぶ場合は、最後の物事の前にだけ「又は」を用い、他の項目の間に「読点(、)」をおく。
(例1)「甲又は乙」
(例2)「甲、乙又は丙」
「若しくは」は、選択するものに階層がある場合に用いる。一番大きな階層の接続部にだけ「又は」を用い、それ以外の接続部(三階層以上の場合も含む)にはすべて「若しくは」を用いる。このとき大区分が先に来るように「又は」でつながるものを先にする。
(例3)「甲又は乙若しくは丙」
(例4)「東京都又は千葉市若しくは市川市」
イメージがお分かりいただけただろう。
要するにJIS翻訳の文章は、法律を初め日本語の文章の書き方に反している悪文なのだ。
と考えると、JIS訳の文章は、
『事業の中断・阻害,損失,緊急事態若しくは危機になり得る、又はそれらを引き起こし得る事象』
としたほうが良いと思う。いや、そうしないと誤読されても文句は言えない。
「若しくは」が先で「又は」が後なのが気になるが、英文の順序に合せるとそうなってしまう。
しかしながら、上記の改善案も修飾語(s)とそれを受ける「事象」の距離が遠いので、分かりにくい。ここはChatGPT案を採用するのが最善だろう。
もちろんISOで一文のものはJIS訳でも一文にするのがルールらしいが、かってはISOMS規格の一文をJIS訳では二文に分けたものもあったから、日本産業標準調査会も文句を言わないと思うよ。
定義文が分かりにくいのは「or」を馬鹿の一つ覚えで「又は」にしたことであった。
注:ちなみにJISQ22301では、「及び」が284回、「並びに」が19回、「又は」が67回、「若しくは」が4回使われている。
翻訳した人が「若しくは」を知らなかったのではないようだ。
ちなみに使い方がおかしいと思ったのは次の通り。
| 語句 | 及び | 並びに | 又は | 若しくは |
| 使用数 | 284 | 19 | 67 | 4 |
| 疑問あり | 11 | 0 | 4 | 0 |
| 疑問率 | 4% | 0 | 6% | 0 |
蛇足である。
日本語の「読点(、)」の役割は、誤読防止と構造の明確化、並列語句の整理、流れの整理などだとそのたぐいの本に書いてあった。だが読点を打つべきところとして、主語が長い場合、感じやひらがなが連続して読みづらいところ、息継ぎや間のはいるところ、とある。
何か書いてあることに矛盾がありそうだ。
別の本によると、「読点」は息継ぎの印であって、文章の構造を決めるものではないらしい。
英語のカンマ(,)は、文章の構造を規定するが、「読点」にはそういう機能はないという本もある。
日本語は単語の関係を品詞とかつながり・順序で決定し、それは接続詞に依存すると書いてあるのもあった。つまり並列につながるなら「及び」とか「又は」だろうし、階層が違うなら「並びに」とか「若しくは」となる。
英語では並立のつながりなら「and」でつないでいく。それ以外の言葉がない。階層の違いとかは前置詞やカンマなどで明確にする。
だが日本語は「及び」とか「並びに」によって示し、読点などに頼らないとあった。
どの説が正しいのか、事実か否か分らないが、英語の文章を、動詞や接続詞をそのままの関係で、一文を一文に単語も加除せずに、原文の意味を変えず日本語に訳すことは不可能ではなかろうか。
原文の意味を変えずに、文章の構成を変える方が真っ当だろう。
そうでなければ英語原文を正とすると記して、日本語は参考にとどめ、審査に使わないことでどうだろう。
これを書いた経緯は冒頭に書いたとおりだが、内容はいつも書いている末尾の「本日のナンチャラ」部分を、独立したコンテンツにしたものです。
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