26.07.16
最近読んだ何かに「社会財」という言葉があった。日々、多数の本やさまざまなコンテンツを見ているから、何に書いてあったか忘れた。ただISO認証関係のものだったのは間違いない。

「社会財」とは何だろう?
ISO認証ビジネス界隈では、10年ほど前までは盛んに使われていた言葉だ。特に
飯塚の父つぁんが「ISO認証制度は社会財である」なんて言っていた。
彼の主導なのか流行なのか2010年代前半には、認証機関のエライサンとかアイソス誌では頻出語だった。受験生なら覚えなければ・・・いや覚えることはない(笑)
私は学がないので「社会財」と言われても ? となるだけだった。
当時、よく聞く言葉だったが別に定義を気にするような文脈でもなく、セールストークくらいに思って調べもしなかった。
流行時から10年が過ぎ、今もその言葉を使っている人がいるからには、ひょっとして深い意味があるのかと思った。しっかり理解しておかねばならない。
「社会財」とはどんな意味だろう?
そもそも「社会財」という熟語が存在するのか?
- まずは辞書を調べた。
ネット辞書ではどうだろう?
- Weblio辞書・・・・・・・なし(「なし」は掲載されていないこと)
- コトバンク・・・・・・・なし
- デジタル大辞泉・・・なし
- 非営利用語辞典・・・なし
紙の辞書ではどうだろう?
- 広辞苑
第2版・・・・・・なし
第6版・・・・・・なし
第7版・・・・・・なし(近くの図書館分室になく本館まで電車で行きました)
- 大辞泉第2版・・・・・・なし
- 大辞林第4版・・・・・・なし
- 現代用語の基礎知識
2010年版・・・・・・・・・なし
2016年版・・・・・・・・・なし
2026年版・・・・・・・・・なし
いずれにしても一般語としては「社会財」という語はポピュラーではないようだ。
また経済学などで定義された専門語でもない。
- 論文
では論文では使われているのだろうか?
論文と言えば CINII である。早速調べた。
| 論文発表時期 | 「社会財」を含む CINII収録論文 | 備考 |
|
| 1960~1970 | 0 | |
| 1971~1980 | 4 | |
| 1981~1990 | 1 | 社会財団8件 |
| 1991~2000 | 4 | 社会財団112件 |
| 2001~2010 | 3 | 社会財団117件 |
| 2011~2020 | 3 | 社会財団8件 |
| 2021~2026 | 2 | |
実際に「社会財」をキーワードに検索すると、上表の備考欄に記載した数がヒットする。
CINIIに収録されている論文数は、1年間に約140万~170万件である。それを考えると百万分の2、2ppmと微々たる数である。
ヒットしたものを見ていくとその多くは「社会財」ではなく9割が研究を助成した機関の名称として「社会財団」という名称のものが含まれている。その他、固有名詞としての「佐川交通社会財団」とか「社会財政」などもあった。
なお「社会財団」という呼称は法的なものではない。1990年代は環境、社会貢献、社会的責任などが流行言葉であり、社会に貢献している財団であると主張するため、表現を工夫したものと思われる。
(実を言ってAIはそう言っている。)
公益法人制度改革により財団法人の性格が変わり、一般財団法人と公益財団法人に別れたのは2008年であった。
これによって公益のための存在は公益財団法人(公財)と記載されるから、社会財団という呼称を使わなくなったと思われる。
上表を見ると年代がピタリと合う。
上表を見て分かるように、論文で「社会財」という言葉は1970年代から使われているが、非常に少ない。
では「社会財」を使っている論文・書籍では、「社会財」をどう定義しているのか?
実際の論文まではたどり着けたものは4件であった。そのいずれもその論文の中では「社会財」を定義せずに、既にある言葉として使用していた。
その意味は、公共財とか行政サービスと近いようだが、著者により非常にバラエティーに富んでいる。中には子供は家族に属するが同時に社会に属するから、社会財というべきという文章もあり、はっきりいって多種多様だ。
「社会財」という語を使う場合、既に認知され意味が共有されているという発想はできないと思うがどうだろう?
よって「社会財」という熟語を使うなら、文の最初に定義を示さねばならない。
- 法令
法令で「社会財」が使われているかを調べた。
「e-GOV法令データベース」で、法律、施行令、省規則を対象に検索した。これは一瞬ですむ。
その結果は、1件も使用されていない。
- JIS規格
JIS規格で使われているか、JIS検索で用語検索をした。
その結果以下の3つの規格でのみ使われている。
JIS規格は10,900件あるので、0.3‰、270ppmである。たった3件でもCINIIより1,000倍も比率が多い。
- JISQ24510:2012 飲料水及び下水事業に関する活動-サービスの評価及び改善に関する指針
- JISQ24511:2012飲料水及び下水事業に関する活動-下水事業のマネジメントに関する指針
- JISQ24512:2012飲料水及び下水事業に関する活動-飲料水事業のマネジメントに関する指針
「社会財」が使われている文章は、いずれも規格の中で1か所で「水事業の一般的な目的」の項の中で、同文で「水は社会財と考えられている」という文章である。
なお、定義はされていない。
実はJISQ24510~2はISO24510~2の翻訳規格である。英語原文と和訳を比較しようとしたのだが、ISO規格は2025年改定まで進んでいるが、JIS訳は2015年以降のISO規格改定を反映していない。古い版は項番の取り方も内容もまったく異なり、完全に対応する個所はない。
要するに同じ版の英語と日本語が私の手元にない。
類似の意味を表しているセンテンスは次のとおりである。
ISO原文
As water is considered a “social good” and activities related to water services support the three aspects (economic, social and environmental) of sustainable development, it is logical that the management of water
直訳すると
水は「社会財」とみなされ、水関連サービス活動は持続可能な開発の3つの側面(経済、社会、環境)を支えるため、水の管理は当然のことと言える。
*正直言って「social good」を「社会財」として良いのか否か定かではない。
JIS翻訳文
水は"社会財"と考えられており、サービスに関する諸活動は、持続可能な開発を三つの側面(経済面、社会面及び環境面)で支えられている。
なにぶんにも一対一で原文と対応する翻訳文がないので推定である。
social goodsの意味はGoogle USAでは次のようであった。
Social good refers to actions, programs, and services that provide broad benefits and positively impact the largest number of people possible. It encompasses initiatives focused on community well-being, such as environmental protection, quality education, healthcare access, and social equality.
Google翻訳
「社会的善」とは幅広い利益をもたらし、できるだけ多くの人々に良い影響を与える行動、プログラム、サービスこれには、環境保護、質の高い教育、医療へのアクセス、社会平等など、地域社会の福祉に焦点を当てた取り組みが含まれる。」
例がたくさん挙げられているが、物や制度というよりも、事業活動、ボランティア活動、慈善活動、提案、など運動とか活動という意味に使われるようだ。
それを踏まえてGoogle翻訳は「社会財」でなく「社会善」としたのか?
英語で「public goods(公共財)」と「social goods(仮:社会財)」はまったく違う。
「public goods(公共財)」は非競合性(ある人の利用が他の人の利用を妨げない)と非排除性(誰も利用を妨げられない)を持つ。
他方、「social goods(仮:社会財)」はより広範なもので、厳密な経済的定義にとらわれず、社会の幸福と平等に貢献することを目的とした国家提供のサービスだという。
第三者認証制度は、国家とも関係なく(民間の制度)だし、上記のsocial goodsのニュアンスでもない。
どう考えてもsocial goodsを名乗れないのではないだろうか? とはいえpublic goodsとも思えない。
- 検索エンジン(日本語)
最近の検索エンジンは検索すると、該当するウェブサイトを表示する前に、検索語について簡単な解説を表示するようになっている。その冒頭文を下記する。
- Google検索
社会財(または公共財・社会資本)とは、社会の全員が等しく恩恵を受けるサービスや施設です。具体的には、公園、道路、学校、警察、きれいな水などが挙げられます。これらは民間企業が利益目的で作るのが難しいため、国や自治体が税金を使って提供・管理しています。
社会財を公共財や公共サービスと同一とみなしている。
回答の出典として非営利用語辞典を示しているが、非営利用語辞典には該当する記述はなかった。
- Copilot検索
社会財とは、社会全体の利益や生活基盤を支える財やサービスであり、公共財や社会資本を含む広義の概念です。
回答の出典としてWIkipedeaを示しているが、引用元のウィキペディアには社会財の言葉なし。前者もそうだが、出典がウソっぽいのに呆れた。
- AIの回答
- ChatGPT
「社会財」は、昔から広く使われてきた言葉というより、比較的新しい概念です。特に1990年代以降、経営学やCSR(企業の社会的責任)、ESG、公共政策などの分野で使われることが増えました。
意味は文脈によって多少異なりますが、共通しているのは、社会全体にとって価値があり、多くの人が恩恵を受けるものという考え方です。
例えば、次のようなものが社会財と呼ばれることがあります。
・教育
・医療
・治安
・環境
・信頼できる情報
・健全な法制度
・文化や歴史的遺産
・地域コミュニティ
これらは個人だけの利益ではなく、社会全体の利益につながるため、「社会の財産」という意味で「社会財」と表現されます。
公共財との違い
「社会財」は「公共財」と混同されることがありますが、厳密には異なります。
公共財は経済学の用語で、「一人が利用しても他人の利用を妨げず、利用を排除しにくい財」を指します。典型例は国防や灯台などです。
社会財はもっと広い概念で、「社会にとって価値があるもの」全般を指します。経済学の厳密な定義というより、政策や企業活動で使われる概念です。
例えば、教育は授業料が必要なので経済学では公共財とは言えませんが、「社会財」と呼ばれることはあります。
昭和の辞書には載っていないことも多く、近年になって
・CSR
・ESG
・SDGs
・ソーシャルビジネス
・非営利活動
などの広がりとともに使われる機会が増えました。
似た言葉に「社会資本」がありますが、こちらは別の意味です。
社会資本:道路、橋、上下水道、港湾などのインフラ(英語では social capital ではなく social overhead capital や infrastructure の意味で使われることが多い)。
社会財:インフラに限らず、社会全体の利益になる価値や仕組みを含む広い概念。
つまり、「社会財」は**「社会全体のためになる財産」という考え方を表す比較的新しい言葉**であり、厳密な学術用語というより、政策や企業経営、メディアなどで理念を表現するために用いられることが多い言葉だと言えるでしょう。
- Gemini
「社会財」という用語は一般的な学術用語ではありません。
①企業などが「我々は社会財だ」と主張するのは「自分たちは私利私欲のためだけの存在ではない」と強調するための表現と思われる。
経済学において「公共財」は「競合性がない」「排除できない」といった明確な経済的性質で定義されるが、「社会財」はそうした経済学的な定義に沿ったものではなく、あくまで企業の「理念」や「広告表現」の範囲内です。
②「ソーシャル・アセット(Social Asset)」の直訳的表現とも考えられる。
但し、英語で「何々はSocial Assetという表現はあるが、我々はSocial Assetだ」ということはまずない。
③近年のトレンドである「パーパス経営(企業の存在意義を問う経営)」や「SDGs」の文脈で、「自分たちのビジネスは単なる金儲けではなく、社会にとっての『かけがえのない価値(財産)』である」と宣言したいという意図と思われる。
- Googleで"社会財"で検索してヒットしたもの
- 公共財としての子ども : 社会経済理論の視点から
CINIIでヒットしたものであった。
著者が、公共財と社会財の違いを理解しているのかそうでないのか分からない。
- 「社会財」としての第三者認証制度(JQA)
「マネジメントシステムの第三者認証制度は、道路や鉄道、電気や水道と同じように、社会に欠かせない「インフラ=社会財」なのです。」
この文章は「社会財=公共財」と認識している。社会財という新しい言葉を使う意味は何だろう?
- 社団法人住宅生産団体連合会 社団法人住宅生産団体
「住宅は私財でありながら公共的な性格を持つので社会財である」
この理屈は、前提として社会財が定義されていなければ意味がない。だがこの資料の中にはそのような定義がない。
この団体の中では共通認識なのかもしれないが、それにしてはこれ以外のコンテンツがヒットしないのはおかしい。
いずれにしても非論理的なのは間違いない。
- ソーシャルメディアが社会財・政治財に与える影響:平和構築の視点から
社会財とは、教育、きれいな水、医療、安全、共感、理解、共同体意識など、社会関係に役立つものを指す言葉である。政治財とは、社会財を保護し生み出す制度、法の支配、意思決定プロセスのことである。
よく分からない。
- 山口揚平: ブルー・マーリン・パートナーズ代表取締役
(社会財とは)お金の別称である
これは経営者が書いているもの。
こう言い切るのは潔くてよい。
- 大学教授を初め、数多くの人が定義なしで使用しているのが多い。
- ISO認証関係の機関はどうだろう?
主たる機関のウェブサイトを、キーワード「社会財」でサルベージした。
- JRCA 日本要員認証協会 なし
- JACB日本マネジメントシステム認証機関協議会
- JAB 日本適合性認定協会
・JAB Annual Report2012 平成23年
「ご挨拶
(前略) 製品や要員の認証、試験所の認定など適合性評価制度の社会財としての利用はまだまだ拡大させることが必要であると考えています。」
という文章がある。
その下に英文も併記されている。
we believe that it is necessary to increase the use of the certification of products and personnel, and of the accreditation of laboratories and such like, as a means of benefitting society
ちょっと待って!、日本語と英語では意味が違うのではなく文章が違うように思います。
英語不得手な私ですので、Google翻訳に頼みました。
Google翻訳結果
「社会に貢献する手段として、製品や要員の認証、試験所等の認定の活用をさらに拡大していく必要があると考えています」
ChatGPTでも翻訳しましたが、ChatGPTは二通り提示しました。
直訳
「私たちは、社会に利益をもたらす手段として、製品認証や要員認証の活用、ならびに試験所などの認定の活用を、ならびに試験所等の認定の利用を増やすことが必要であると考えています。」
日本語らしくすると
「私たちは、社会に利益をもたらす手段として、製品認証や要員認証の活用、ならびに試験所などの認定の活用を、さらに拡大していくことが必要であると考えています。」
Google翻訳は「利益をもたらす」が「貢献する」となっていて、上品な感じです。
ともあれ、自動翻訳では「社会財」という言葉は出てきません。英語の文章では「社会財」に対応する名詞・名詞句があるとも思えません。日本語を英語訳したなら一対一でないのはなぜでしょう?
語数を合せ、句読点まで合わせるISO規格の翻訳とは、だいぶ趣が違います。
ともかく和文を読むと「製品や要員の認証、試験所の認定などは社会財である。その利用を広めよう」という意味であるのに対し、英文は「製品や要員の認証、試験所の認定などは社会に利益をもたらすものだから利用を広めよう」であり、「社会財」なんていう余計な熟語を知らずとも分かる。日本文は分かりにくくしただけか? あるいは分かって欲しくなかったのか?
あるいはJABの見解は「社会財」とは社会に貢献する手段」とか「社会に利益をもたらす手段」を意味するのか?
しかし、それも変だ。
人の営みはすべて社会、世間、他人様に役立とうとして生きているはずだ。ならば製造業とかサービス業を置いといて、第三者認証は社会財だというのはいささか尊大・傲慢ではないか?
前述した「社会財」という語を使っている論文と違い、ここで「社会財」なる語を持ち出す必要はなかったようだ。
まあ15年前は良いとして、今もその残渣というか熟語を使った文書があるということは、そういう精神が残っているのか?
いずれにしても英語では「社会財」に相当する単語は使われていない。しかも日本語でも「社会財」はポピュラーではない。
いったいこの挨拶の文章はどういうお考えで単語を使っているのだ?
露骨に言えば、日本文は分かりにくくありがたみがあるような文章として、英文は突っ込まれるのを避けようと平易な文にしたとしか思えない。
- JQA日本品質保証機構
上記の資料などを読んでいると、「社会財」と語っている人々が、その意味を理解しているのかどうか分からない。むしろ「社会財」という言葉を使って文章を書こうと無理している感じだ。
すべての言葉、文章はコミュニケーションのために存在する。コミュニケーションとは言葉や態度、表情などを通じて、互いの考えや感情、情報を伝え合い、共有する行為のこと。
ひとりよがりの言葉を使ってはコミュニケーションになりませんよ。
ISO認証機関、認証機関の業界団体、認定機関の言う「ISO第三者認証は社会財」という言葉には、大した意味はなさそうだ。
その証拠に2000年代末から2015年の間でしか使われていなかったことがある。単なるいっときのキャッチフレーズだったようだ。
2015年というと、ご存じSDGsが登場した年。うがった見方をすれば、2015年まで「社会財」を叫び、新しいキャッチフレーズが登場したからSDGsに切り替えた・・・なんてことはないよね?
そうなのか?
最近私が見かけた文章は、記憶力が良い認証制度関係者が、つい使ってしまったのだろう。
しかし、当時、様々な論説で「社会財」に重大な意味があるような言い回しで使っていた方々はどのような解釈であっいたのか?
当時の思いなどを聞かせてもらえば理解が深まるかもしれない。
ISO審査では規格の言葉を厳格に使っていた審査員もいたし、拡大解釈どころか規格に書いてない文字を読む審査員もいた。
指導的な立場の認定機関、認証機関の業界団体はしっかりしてほしい。
本日の話をまとめると
流行や社会の動きを振り返って、今では理解できないことを「あれは何だったのか?」という。
ISO業界の機関sが語っていた「ISO第三者認証は社会財」という言い回しは、まさに「あれは何だったのか?」に当たるだろう。
私の想像だが、2006年にISO9001第三者認証の減少、2009年にはISO14001も減少に移り打つ手が見えない。ISOビジネス業界は大いに困り戸惑っていたのではないか。
そんな状況で、ISO第三者認証は価値あるものなのだ。社会の財産なのだと言いたかったのかもしれない。
もちろん一般人相手ではなく、認証ビジネス内部の人への元気付けだったのだろう。
ところで、私が最近読んだものに「社会財」という語句があったことだが、時代遅れとみなすべきか、意味を知らないで使っているのか、〇〇の一つ覚えで文章には必ず社会財を入れるのか、判断に困りました。
ご異議、ご異論ございましたら、ぜひともお便りをお願いします。
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