★教科書で学習する

◎教科書で学習しよう 〜教科書は最もよく出来た参考書〜

 様々な参考書が世に出ています。多くの参考書では,「センターでよく出る!」「私大入試でよく出る!」と大げさに書いておりますが,日本史に関してはたいした意味はないでしょう(個人的に思う)。僕の持論で,「看板が大げさな店はまずい」というのがあるのです(笑)が,それと同じです。
 では,一番良い参考書は何か?それは高校で使われている教科書で,ちょっと考えてみれば当たり前のことなのです。「店構えや宣伝は地味でも,客に評判の美味しい店」とも言えるのが教科書です。なかなか,良さは理解してもらえないのですが…。
 教科書で勉強するのがよいという理由は2つあります。

1.入試問題は教科書を基準に作成されている! 
 基本的に出題者は数種類以上の教科書を参考に作問しています(模擬試験も)。それは,高校の授業が教科書を使うことになっており(たてまえですが…),高校のカリキュラムを消化すれば合格点がとれる問題を出題するのが前提になっているからです。ということは,受験生が学習しなければいけない基準となるのは教科書でしかないのです。これは,センター・国公立二次・私大,いずれにも共通していえることです。
 この考え方からすると,出題のレベルにおいて,「どの範囲まで学習すればいいか」「歴史用語をどこまで覚えればいいか」といった質問への解答は「教科書の内容を消化すること」です。
 世の中には,「10年以上に渡って出題された用語のデータベースを蓄積…」などと言っている講師もいますが,歴史は学者の研究とともに変わっていくし,使用される歴史用語も変化します。10年も経過すれば,教科書の内容も変わってきます。それにともない入試問題も微妙に変化します。長年の蓄積よりも,教科書と近年の出題を照らし合わせることが重要だし,それで十分なのです。
 実際に設問単位で見ても,教科書を参考にしたと思われる出題は非常に多いです

2.教科書が通史を勉強するためにもっともよくできた参考書である! 
 これも当たり前なのですが,教科書は基本的に「日本史のプロ」である大学の先生が,それぞれの専門の時代について執筆しています。単純に学者ではない予備校講師が執筆した参考書のほうが,よくできている訳がないでしょう?(笑)しかも,入試問題を作っているのは大学の先生たちです。どうですか,教科書を読んで勉強するのが妥当な気がしてきたでしょう?
 絶賛している教科書の弱点があるとすれば,「難しい!」「面白くない!」などの理由で,多くの受験生にとって読みにくいことです。ただ,冷静に考えてください。大学入試の水準が教科書である以上は,その内容を理解し,消化しなければ,日本史で合格点をとることはできません。大学入試のレベルは,教科書以上でも,以下でもないのです。

 ただし,教科書は原始から現代までの通史のインプットで役に立つものです。それとは別に演習のための問題集などは必要です。
 「教科書を制する者は受験日本史を制す!」ということで,教科書を中心に学習してみてください。経験上,日本史が出来る多くの受験生は教科書をしっかり使いこなしています。
 また,このブログでも,教科書と入試問題を関連させた記事を書いていきたいと思います。


◎「細かい用語」について考える

 「どのレベルまで勉強したらいいのか?」「どこまで歴史用語や年代暗記をすればいいのか?」
 これらの問いは,受験生である以上最もだろうと思います。限られた時間の中で,効率よく学習して高得点をあげたいというのは当然でしょう。今回はセンター試験について考えてみましょう。
 センター試験については「細かい用語は出題されない」というのがあります。生徒に問いかけられることもあります。ところで,「細かい用語って何でしょう?その定義がどうもはっきりしない気がします。僕もこの仕事を始めた頃,「センターは私大と違って細かい用語は出ない」などど言っていたと思います。よくよく考えてみると,これほどいい加減な言葉もないだろうと考えるようになりました。そこで,センターで出題される用語を検証してみましょう。基準として,山川出版社の『詳説日本史B』を使ってみます。

1.センター試験は,教科書の太字の用語だけを覚えればよい→これは論外ですね(笑)

2.脚注は「細かい内容」だからセンターでは覚えなくてよいのか? 
 まず,以下の問題を見てください。センターでも定番の室町時代の守護大名に関する問題です。これが基本的な内容であることは,ちょっと通史を学習した人ならわかると思います。

◆2007年 日本史B 本試験 第3問 問4 16◆

 室町幕府は,地方支配のため,鎌倉幕府以来の守護を置いたが,(c)その権限は,南北朝動乱の過程で,大幅に拡大されていった。…

問5 下線部(c)について,この時代の守護の権限や行ったこととして誤っているものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。

 @ 任国内の耕作地面積や収穫高などを把握するために指出検地を行うこと。
 A 所領紛争などについて,幕府の裁判の判決を強制執行すること。
 B 田地をめぐる紛争で,一方的に作物を刈り取る実力行使を取り締まること。
 C 荘園や公領の年貢徴収を請け負うこと。
(解答は@)

 問題自体は簡単だと思いますが,これは教科書でどのように書いてあるのでしょうか?

●山川出版社 『詳説日本史B』 守護大名と国人一揆 P.117
 …幕府は地方武士を動員するために,守護の権限を大はばに拡大した@。とくに半済令は,軍費調達のために守護に一国内の荘園や公領の年貢の半分を徴発する権限を認めたもので,その効果は大きかった。守護はこれらの権限を利用して国内の荘園や公領を侵略し,これを武士たちに分けあたえて,彼らを統制下にくり入れていった。…

@ 鎌倉幕府の守護の職権であった大犯三カ条に加え,田地をめぐる紛争の際,自分の所有権を主張して稲を一方的に刈り取る実力行使(刈田狼藉)を取り締まる権限や,幕府の裁判の判決を強制執行する権限(使節遵行)などが新しく守護にあたえられた。

 読んでもらえればわかると思いますが,過去にも出題(2003年など)されている室町時代の守護の権限は,脚注に書いてあります。これは,「細かい用語」といえるのでしょうか?さらに以下の問題はどうですか?

◆2009年 本試験 第6問 問2 30◆
A (前略)
 その後駐米大使としてアメリカに赴任した幣原は,ワシントンで実施された国際会議において全権の一人として出席し,(b)海軍軍縮および中国大陸・太平洋における列強諸国との権益調整に尽力した。

問2 下線部(b)に関して述べた次の文T〜Vについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,以下の@〜Eのうちから一つ選べ。 30 

 T 国策の手段としての戦争の放棄を約した不戦条約に調印した。
 U 補助艦の総保有量(トン数)を英・米の約7割とすることに合意した。
 V 主力艦保有量(トン数)を英・米の5分の3に制限することに合意した。

 @ T−U−V  A T−V−U  B U−T−V
 C U−V−T  D V−T−U  E V−U−T
(解答はD)

 この問題は,ちゃんと勉強していない受験生には難しいかもしれませんが,教科書にはどう書いてあるでしょう?

●山川出版社 『詳説日本史B』 社会主義運動への高まりと積極外交への転換 P.318
 …同じ田中義一内閣の時期に,日本の外交は中国政策をめぐって強硬姿勢に転じた@。全国統一をめざして北上する国民革命軍は,広東から長江流域を北上し,各地方を制圧していった(北伐)。…

@ 田中内閣は欧米諸国に対しては協調外交の方針を引き継ぎ,1928年にパリで不戦条約に調印した。…

 実は不戦条約も,脚注なのです!他にも例はありますが,「脚注は細かい内容・用語」というのは否定できるのではないでしょうか。
 もちろん,教科書により内容に差異はあり,一概にはいえません。例えば,実教出版の『日本史B』なら不戦条約は本文中にあります。しかし,センター試験については,本文中の太字だけでもダメだし,本文だけでもダメだということがわかりますね。脚注も含めて教科書を消化する必要があります。

3.山川出版社『日本史B用語集』を基準に考えてみるとどうか 
 センター試験の用語(内容)のレベルどう考えるか,別の角度から見てみましょう。センター試験が,教科書を基準に作られていることは,毎年,実施後に大学入試センターが公表する「問題作成部会の見解」からわかります。それによれば,
「…今後,問題作成に当たって,次の点に留意したい。@教科書頻度に注意する。A高校現場の授業でどう扱っているかに配慮する。…」(平成20年度)
「…今後は,以下の点に留意して問題作成を進めたい。@高等学校教育の範囲と水準を逸脱することなく,平均点を上げるため,標準的な問題を作成するように心掛ける。A高等学校現場での授業に配慮する。…」(平成22年度)
といっており,「教科書の頻度」=「高等学校教育の範囲と水準を逸脱することなく」と考えれば,教科書が結局は出題内容の基準であると考えられます。では,教科書頻度とは何か?それに該当するおおよそのデータがとれるのは,山川出版社『日本史B用語集』です。これは,日本史Bの教科書11種類のうち何種類の教科書に掲載されている歴史用語かというのがわかります。
 それによれば,用語レベルで見た場合,センター試験の9割弱ぐらいの設問は用語頻度I前後の用語をしっていれば解答できるようになっています(ちなみに不戦条約はJでした)。

4.最低限の歴史用語を知っていればセンターで高得点はとれるのか
 できるだけ効率よく,最低限の労力で高得点をとりたいというのは,誰もが思うことです。我々,講師というのもそれをめざして教えています。しかし,なかなかそうはうまくいきません。
 例えば以下の問題を見てください。

◆2010年 日本史B 本試験 第1問 問4 4◆

問4 下線部(d)[鎌倉時代の武士]に関して述べた文として正しいものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
 
 @ 鎌倉時代の武士は,城下町への集住が義務付けられていた。
 A 鎌倉時代を通じて,武士の所領は,嫡子単独相続を原則としていた。
 B 鎌倉時代の武家社会における一族の結合体制を,寄親・寄子制とよんでいる。
 C 鎌倉時代の武士の間では,流鏑馬・犬追物などの武芸の鍛錬がさかんに行われた。
(解答はC)

 テーマは「鎌倉時代の武士」なのですが,鎌倉時代の知識だけで解けるでしょうか?解答以外の誤文に着目すると,@は江戸時代,Bは戦国大名の支配に関連する内容でひっかけています。ということは,鎌倉時代の学習をしたからといって,鎌倉時代の問題が解けるとは限らず,前の平安時代や,後の室町時代,戦国時代,江戸時代まで学習していないと時間の前後関係に関わる正誤問題は解けないのです。
 次に以下の問題を見てください。

◆2007年 日本史B 本試験 第3問 問4 16◆

問4 下線部(c)[浄土宗]に関して述べた文として正しいものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 16 

 @ この宗派を開いた人物の著作に,『正法眼蔵』がある。
 A この宗派では,踊念仏を布教の手段に用いた。
 B この宗派の中心となった寺院に,知恩院がある。
 C この宗派では,戒律を重視して旧仏教を改革した。
(解答はB)

 この問題は浄土宗について問うていますが,やはり誤文を見ると@道元(曹洞宗),A一遍(時宗)などで,浄土宗だけを知っていても解けないようです。ちなみに前期の『日本史B用語集』の頻度は,『正法眼蔵』H,踊念仏H,旧仏教JでこれはI前後の条件に当てはまってますね。知恩院はFです。山川『詳説日本史B』での扱いは,踊念仏は本文太字,旧仏教は本文,『正法眼蔵』と知恩院は新仏教をまとめた表中です。
 つまり,最低限のことを知っていれば問題が解けるとしても,その最低限は何か。一つの指標となるのは,『日本史B用語集』で頻度I前後の用語ですが,9割〜満点を狙うなら少し余裕を持って,頻度Eぐらいの用語(半分以上の教科書に掲載されている)用語ぐらいまでは学習しておく必要があります。しかし,用語だけ知っていればいいというものではないので,結局,教科書に戻ってくるのです。教科書の脚注,表,図版などにも目配りしながら学習すれば,必然的に最低限の用語を学ぶことになります。

 以上,2回にわたって考察してみましたが,要は,センター試験も教科書の内容を過不足なく消化することが重要であるということが言えそうです。

 「教科書を制する者は受験日本史を制す!

 「何が出題されるか」「どこまで覚えればよいか」と心配する必要はありません。つまり,「細かい用語・内容を勉強しなくていい」のではなくて,「教科書の内容をしっかり消化すればいい」のです。そうすれば,センター試験は十分攻略できます!


◎私大入試について考える 〜教科書に掲載されていない語句が出るは本当か〜 2013.2.23追加New!

 残念ながら,教科書に掲載されていない内容が出題されているのは事実です。ただ,考えてみましょう。私大の問題はどのぐらいの点が取れれば,合格できるのでしょうか。早慶や関関同立など一般に難関とされている大学は,日本史で70%前後の得点ができれば合格に必要な点は取れたと考えられます。多めに見ても,80%得点ができれば十分です。それでは,教科書掲載の語句・内容は,入試問題でどのぐらいの割合になるのでしょうか。もちろん,大学によって差はありますが,90%前後は教科書に掲載されている内容が出題されています。つまり,難関私大も,教科書の内容を消化すれば,合格点は取れるということで,教科書に無い語句・内容ができなくても,少なくとも,80%は得点できます。
 実際に日本史が難しいとされている大学の入試問題を分析した結果です(教科書から見る入試問題)。このデータを参考にしてみてください。教科書と山川出版社の『日本史B用語集』を中心にインプットをすれば,合格点を取るのに必要な知識は身につきます。インプットが終わったら,過去問演習で仕上げをしましょう。




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