ロシアのウクライナ侵攻に思う

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ロシアの侵攻が始まって以来、胸に滞った思いを言葉にするのが、ずっと憚られていました。世論は「プーチンは酷い!ロシアは残酷だ」の大合唱で「ロシアがこのような選択をせざるを得ないよう追い詰められた」と言うと、プーチンの味方をするなんて非国民だ、と言われそうな雰囲気だからです。でも今までに巨大軍需産業の犠牲になってきた人たちを思い、これからの私たちの身に起きることを考えると、やはり今、思っていることを書いておこうと思うようになりました。

「戦争反対!ウクライナの人たちが可哀そう」その通りだと思います。戦争がひとたび起こってしまえば、殺すか殺されるかで、人が尋常な精神でいられなくなることは、私も占領下のイラクを縦断したとき、見聞きし、体験もしました。

私も、軍事侵攻したプーチン大統領の選択を決して支持するものではありません。ただ、今の西側諸国の報道は、ロシアがいかに残虐かと言うことに終始しているように見えます。イラク戦争の時、フセイン大統領がいかに残虐かと報道され続けていたように。私たちは、連日流され続ける残虐な報道に感情を支配されてしまい、なぜ戦争が起こってしまうのかを考えることができなくなっているのではないでしょうか。その議論なしでは、いつまでも戦争はなくならないし、これからの日本を考えると、自分たちの問題でもあり、避けては通れないことだと思うのです。

元米空軍軍人で、現在シカゴ大学の教授をしている国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏が「いま起きている戦争の責任はアメリカとNATOにある」と、次のように主張しています。

「この戦争はロシアとウクライナの戦争ではなく、ロシアとアメリカ&NATOの戦争であり、アメリカは自国民の死者を出さないために、ウクライナ人を人間の盾にしている。プーチンは何度もNATOと話し合いを持とうとしたが、NATOが相手にしなかった。プーチンがこれ以上、領土拡大を目論んでいるとは思えない。ロシアは広大な自国の領土を抱えており、その保全だけで手一杯だ。
アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナと、米国は常に軍事介入を繰り返し、戦争はもはや米国の文化やビジネスの一部になっている」

英エセックス大学の『コンバセーション』誌は3月9日、ピーター・ブルーム経営学教授の「世界の巨大軍需産業は静かに、戦争から数十億㌦を稼いでいる」と題する文章を掲載し、同教授はそのなかで次のように述べています。

 「巨大軍需産業はすでに約5000億㌦(約60兆円)の武器を両陣営に供給し、かなりの利益を得ようとしている。アメリカはウクライナに90㌧以上の軍事物資と、昨年だけでも6億5000万㌦(約780億円)の援助をしたが、さらに3億5000万㌦(その後5億㌦と発表)の軍事支援を約束した。EUは4億5000万ユーロの武器を購入し、ウクライナに輸送している。」

 アメリカはこれら兵器の操作を教えるために、ウクライナに軍事顧問団を常駐させ、この8年間ドンバス地域での実戦を通して1万人以上のウクライナ軍兵士を訓練し、使用させてきたのです。これは最近のウクライナ報道でも、軍事専門家や元外交官などが明らかにしていることです。

アメリカはウクライナにNATO加盟を強く勧め、ウクライナを武装化させ、2021年10月23日にはウクライナに対戦車ミサイルシステム(ジャベリン)180基を配備させ、ウクライナ軍に、東部のドンバス地域にいる親ロシア派の人々にドローン攻撃をしかけさせました。

以下はAERAに掲載されていた「父ウクライナ人、母ロシア人の女性が語る心境」という題の記事の抜粋です。彼女の叔母は、ドンバス地方に住んでいるそうです。

「ドンバス地域の人たちは8年間怖い思いしています。普通のマンション、道路、バス、学校とかにバンバン攻撃を受けてきた。いつ、どこで爆撃を受けるかもわからない。対してウクライナのキエフの人びとは、普通に遊んだり、お酒を飲んだり、外国へ遊びに行ったりしていた。8年間、プーチンがこの地域の人びとを食べさせていたのです。食べ物を、ロシアからトラックで送っていたと聞いています。ウクライナからは全然ないんです」「ウクライナ人とロシア人は仲良くしたい。ロシア軍がウクライナ国内のすべてのベースを爆破したら、話し合いになるのでは。昔からNATO(北大西洋条約機構)は、すごくロシアのことをいじめた。ウクライナはロシアに近いから、もしたくさんベースがあったら、モスクワを攻撃するようになるでしょう。ロシアはそれは嫌なんです」

彼女は今回の侵攻については、「プーチンも8年間我慢して、本当に頭に来たからだ」と話す。だが、プーチンについては独裁者だと言って、こう続けた。

「ロシアはシロクマのイメージですよね。冬眠したクマは起こされて、お腹が空いていて、コントロールできなくなっている。それが今の状況」

その一方で、これまでのウクライナ政府のやり方には相当不満があるようだ。

「ドンバスでは毎日、ミサイルが飛んでいるんですよ。だから、今、ドネツクの人はこう言っている。『今、ウクライナの人は怖いんですか。私たちは8年間、ずっとそういう思いの生活でした。毎日、毎日、爆弾がどこに落ちるかわからなかった』」爆弾はウクライナの軍隊から発射されてきたという。

「ウクライナは、ドンバスは自分たちのテリトリーだからロシア人を追い出したいと言っている。だけど、8年間のうちに、爆弾で街は半分もない。3分の1だけ残っている。あとは石だらけ」

「ウクライナのドンバスで8年間ずっと戦闘が起きているのに、ほとんどニュースになっていない。今は、ウクライナはかわいそう、ロシアが悪いという論調ばかり。ロシアはウクライナをとるつもりはないと思います。ドネツクとルガンスクからウクライナの軍隊を追い出したいだけ。ロシアの一部にならないけれども、2つは独立した地域になると思います」(AERAdot.編集部 上田耕司)

ロシアがウクライナに軍事侵攻するよう、バイデン大統領のアメリカが挑発行為をエスカレートさせていた時、ゼレンスキー大統領は「これ以上、煽るのはやめてくれ!」と叫んでいました。堪忍袋の緒が切れたプーチン大統領が、軍事侵攻を始めてからも、両国が停戦交渉し、交渉がまとまりそうになると、アメリカとNATOは、絶え間なくウクライナに軍事援助を増強し、停戦交渉の邪魔をしました。そして戦争を長引かせようとしています。ウクライナとロシアの間で停戦交渉が進み、ウクライナが中立国になれば「NATOの東方拡大」ができなくなるので、軍事支援を増強し資金提供し続けているのです。

その結果、より多くの人が犠牲になり、アメリカ(軍需産業)はその分だけ利益を得ています。ウクライナは、軍需産業が莫大な利益を得るための犠牲なのです。

ロシアの蛮行は許せないけれど、戦争が起きる原因を見つめなおさなければ戦争は無くならない。なのに日本はアメリカに追随した思考しか容認せず、プーチンが悪いと、ロシア敵視論調ばかりで、アメリカ(巨大軍需産業)が原因を作っていることなど、全く報道されませんし、知ろうともしません。

これでは日本は戦争を起こさない方向に向かうことができなくなってしまいます。ロシア敵視一辺倒でなく、ロシアの言い分も聞くことが必要と考えます。そもそもウクライナが中立することが、なぜいけないのでしょう?ウクライナがロシアの要求を受け入れて中立していれば、この戦争は避けられ、無辜の民間人を死なせることにはならなかったのではないでしょうか。

いずれアメリカ軍も日本から出ていく日が来るでしょう。

その時も、ロシアや中国を敵視するのですか?

アメリカの核の傘下を出れば、日本は折角、憲法9条を国是としているのですから、できるだけ早いうちに中立し、周辺国を敵視するのではなく、分かり合えるよう話し合い、譲歩できるところは譲歩し、相手を尊重する国にならなくてどうするのでしょうか。

自衛隊は災害救助隊として再編成しなおし、日本だけでなく近隣諸国に災害が起こった時にも、武器ではなく食料を持って救助に行く。そういう態度を貫けば、わざわざ他国が攻撃してくるでしょうか?周りの国を信用せず、敵視してばかりでは、核武装する方向に向かうしかなくなります。私は、そんな日本であって欲しくありません。憎しみの種を蒔かれる隙をみせない、そんな国であってほしいと、心から祈るものです。

2022.4.20 ヤスミン植月千春



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