まず、「AX シリーズ」(通称)の説明からしておこう。
AX シリーズとは、アスキーから発売されていた PC-6001 用ゲームソフトパッケージ『AX-1』から『AX-10』のことを指す。各パッケージには1〜4本のゲームが収録されていて、2800 円程度の価格ながら、非常に優れたゲームが揃っていた。当時の PC-6001 ユーザーなら、おそらく大部分の人が知っていたタイトルの筈だ。
今回取り上げる『ブルースカイ』は、その中の『AX-9』に収録されていた作品だ。また、今後もこの[雑文3]では AX シリーズの他の作品を取り上げる可能性は大いにある。御存知でない方は、そんなシリーズがあったのだな、と程度に憶えておいて頂ければよろしいかと思う(御存知ない方が読んでいらっしゃるとも考えづらいのだが)。
『ブルースカイ』は、固定画面のシューティングゲームだ。プレイヤーが操作するのはふたつの照準で、ひとつは画面内を上下左右に動き、もうひとつはひとつ目の照準の真下の地平線上を左右にのみ動く。
自機の武器は二種類のビームで、「ハイ・ビーム」はひとつ目の照準に向けて放たれる早いビーム、「ロー・ビーム」は、ふたつ目の照準に向けて放たれる遅いビーム。それぞれ、連射は効かないが、両方を同時に撃つことはできる。どちらも、画面中央最下部に向かって撃つ時が着弾までが一番早く、そこから照準が離れるほど遅くなっていく。つまり、『ミサイルコマンド』にとてもよく似たシステムだ(今日日この喩えがどこまで通用するのか判らないが)。
自機は常に前進している。走る姿は画面に登場しないが、モニターの奥に映る山並みがどんどん近付いてくるので、それとわかる。前進につれて、画面端にゲージで示されているエネルギーはどんどん減っていく。山並みが目一杯近付くと、一面クリアとなり、エネルギーが回復して、再び別の山並みが遠くに見えてくる。そうしてひたすら、戦車は山々を越えて進んでいく。
エネルギーは攻撃を受けた際にも減るのだが、これがこのゲームで一番ヘンテコなところで、遠くに見える地平線上に爆弾かミサイルが落ちると、攻撃を受けたと見なされる。逆に、敵の飛行機や戦車を撃って破壊すると、エネルギーが増える。つまり、爆弾やミサイルを地面に着く前に落とし、敵をできるだけ多く倒すことが、このゲームの目的になっている。(この辺のことは一切説明書に書かれていなかった。)
敵は黄色の戦闘機と、青色の爆撃機、地上を走る戦車、そして各面のゲスト飛行物体、となっていた。画面を右から左、あるいは左から右に横切って消えていくのが基本的な動き。
戦闘機はものによって速かったり、宙返りをしたりするが、滅多に爆弾は落としてこない。一方爆撃機は横切る間に一回は確実に爆弾を落としてくる、一番注意すべき相手だった。戦車は地上を走っているだけで、攻撃は何もしてこないカモだが、倒しても増えるエネルギーは微々たるものだった。ゲストは各面ごとに変わって(たしか 10 面で1周したと思う)、目を楽しませてくれたが、あまり特殊な能力もなく、強かった印象はない。
このゲームで先に進む最大のコツは、とにかく爆撃をひとつも喰らわないことだ。普通に走りきるだけのエネルギーは充分ある。ミサイルは速くて落とせないことも多いが、ダメージも小さいので気にしても仕方がない。爆弾だけは地面に着けてはいけない。低空でもハイ・ビームを使って、確実に落とせるようにしたい。その上で余裕があれば、初めて飛行機を積極的に狙うべきだ。ロー・ビームのことは忘れていい。タイムラグがありすぎて当たらないし、爆弾を狙って一発外したら後はない。せいぜい閑な時に戦車を狙う程度しか使い途はないと言っていい。
正直地味なゲームだったが、多数の飛行機が画面狭しと飛び回る様は見ていて楽しかったし、最初は簡単で 3〜4 面から難しくなるゲームバランス、次を見たくなる各面のゲスト敵、ときちんと工夫がこらされていた。なかなか遊べるゲーム、と言っていいだろう。
忘れられないのは、タイトル画面で流れる曲だ。PSG 三声をフルに使い、音色にも工夫を凝らし、短いながらもとても印象的なフレーズだった。間奏部分に入っている、ぶっ壊れているとしか言いようのない音の羅列と共に、今でも頭の中で鳴らすことができる。