このゲームは、おれが初めてゲームセンターで出会ったゲームだと言っても過言ではない。
当時はいくつかのゲームを並行してやり込んでいたから、これだけを最初というのは正確に言えば違うが、そのいくつかのゲームの中でも、初めてやったゲームという印象がどういうわけかおれの中にはある。
主人公は「バブルン(1P 側)」と「ボブルン(2P 側)」という名前の小さな竜で、2方向レバーで左右に歩き、右ボタンでジャンプ、左ボタンで泡を吐くことができる。
今では珍しくなった横視点・固定画面のアクションゲームで、床はジャンプすれば下から上には通り抜けられる。面によっては面の底部に穴が空いていて、そこから落ちると面の天井の穴から落ちてくる。目的はその面の敵(最大7匹)を全滅させること。全滅させると次の面に進み、100 面クリアすればゲームエンド。
ユニークなのは、敵の倒し方だった。上で「泡を吐く」と書いたが、主人公の吐いた泡はふくらみながら飛んで行き、膨らみきるまでに敵に触れるとその敵を泡に「くるむ」ことができる。敵のくるまった泡を、主人公の角や背びれでつつくなり、上から踏むなり壁に押し付けるなりして割ると、敵を倒すことができる。
泡はひとつ割れると、隣接している泡も「連鎖」して割れる。これにより、何匹かの敵を続けてくるみ、まとめて割ることができる。まとめ割りは得点が高く、EXTEND バブル(6文字揃えると残機が増える)も出やすくなるため、可能な限り狙いたかったが、特に面が進むとリスクも非常に高くなった。
敵の種類は8種類。走るだけの敵、跳ね回る敵、横方向に強い敵、縦方向に強い敵、空を飛ぶ敵……、と過不足なく用意されており、それが全 100 面すべて違う地形に、巧みに配置されている。面数の多い強みで、難しい面と簡単な面がうまく散りばめられており、適度な緊張を保てるようにデザインされていた。
アイテムとフードの種類が恐ろしく多かったのも忘れられない。アイテムは、単純なパワーアップから、取った瞬間にその面をクリアできるもの、果ては向こう数面をスキップしてくれるものまで、さまざまに主人公を助けてくれた。フードは取っても得点が入るだけだが、どれもおいしそうだったし、入る得点の幅が大きかったので、取る前に得点を想像するのが楽しかった。
泡には、敵を倒す以外の使い方もある。主人公は泡に乗るとジャンプすることができ、それを利用すると楽になる面がある。後半に進むと、巧みに用いなければクリアすることができない面すらあった。
さらに、全ての面には「気流」があって、泡は必ずその気流に沿って動いていく。大抵の面では流れは遅いが、それでも放っておくと泡はどんどん遠くへ行ってしまう。まして気流の速い面となると、何も考えずに敵を泡にくるんでいては一生倒すことはできない。床の形は同じでも、気流によって全く違う面になる。目に見えない要素がゲームを左右するのは面白かった。
2人プレイが、断然簡単だった。敵の数は変わらないから、倒す数は半分ですみ、一匹の主人公を狙ってくる数も半分だったからだ。面によっては、ひとりが吐いた泡にもうひとりが乗ることで、簡単に進むことができたりもした。おれたちはいつも二人で遊んでいた。なんとなくある程度パートナーが決まっていて、バブルンとボブルンのどちらを使うかもわりと決まっていた。違うパートナーと組んだり、いつもと反対側の席に座ると、なんだか変な感じがしたものだった。
可愛いキャラクター、きらきらした独特の音色の BGM、ユニークな内容。とても水準の高いゲームで、今見ても 18 年も前のゲームとは思えない。長い間あちこちのゲームセンターに置かれて、インカムを稼ぎ続けていたのも肯ける。
おれは今でもごくたまに、このゲームにコインを入れる。昔はおれよりゲームの上手いパートナーの座っていた、左側の席に座ってゲームを始める。もうクリアできるほどの腕はない。それでもこのゲームは懐かしく面白く、容赦なく敵は襲ってきて、まとめ割りの爽快感は当時と変わるところがない。薄暗かったゲームセンターで、壁に向かって置かれたテーブル台に必死にかじりついていた頃と、変わらぬ楽しさがそこには詰まっている。