[ファミコン版との違いを教えてやる]

いや、いい移植だったと思いますよ。

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■『ツインビー』 コナミ/アーケード,1985

初代のツインビーについて書いておこう。

『ツインビー』は 1985 年、『ゼビウス』の2年後に発売された。縦スクロールのシューティング、8方向レバーと空中攻撃/地上攻撃の2ボタンという操作形態はゼビウスのフォロアーと言って差し支えないが、ポップで派手な演出はむしろ真逆と言うべき方向性だった。丸っこい自機、野菜や文房具をモチーフにした敵たち、これでもかとばかりのパワーアップ。有名な作品だし、プレイしたことのある方も多いかも知れない。

ツインビーはしかしアーケードでは不遇なゲームで、あまり基板は売れなかったようだ。筆者がゲーセンに出入りするようになったのは発売2年後に当たるのだが、ほぼ全くと言っていいほど見なかった憶えがある。無論当時はある程度旬が過ぎたゲームは急速にロケーションから姿を消したものだが、それにしても後年に至るまで目にした回数が少なかった。バブルシステムというシステム基板(このゲームが第1弾)が特殊な電源を必要としたことと、このわずか2ヵ月後に同じコナミから名作『グラディウス』が発売されたことが影響しているのかも知れない。『グラディウス』は少し後になってしばしば見かけたが、『ツインビー』はそれに比すると明らかに少なかった。いずれにしても定量的なデータはないが、感覚的にはかなりの差があったように思う。

このゲームは翌年ファミリーコンピュータに移植されてブレイクすることになる。そこから延々とシリーズ作品がリリースされたのも、ファミコン版の人気があればこそだった。実際よくできている移植で、ゲームの本質の部分はほぼ移し切れている。ただそれだけに小さい差異が逆に気になるところはあって、「アーケードではねえ……」と言いたくなる。要するに今回は、筆者がそういうくだを巻くというのが主旨である。前置きが長かったがご了承願いたい。

アーケードとファミコンでの最大の違いは、個人的には「アーケード版のツインビーには両腕がある」ということだと思っている。アーケード版のツインビーは、両手で一発ずつ爆弾を投げられた。つまり2連射が可能だった。やられた時も当たった側の腕を失い(敵弾であっても胴体に喰らえば即死だし、体当たりでも腕に当たるだけなら腕を失うだけで済んだ)連射ができなくなり、両腕を失って初めて爆撃ができなくなる。
分身が爆弾を投げられることも記しておくべきだろう。アーケード版では分身は3体つくのだが、それぞれに爆弾を2発ずつ投げられた。じゅうたん爆撃と言ってもいいほどの攻撃力だった。

対地火力が強い分、地上物の攻撃の激しさもファミコン版とは桁違いだった。単純に地上物の数も弾の数も多かったが、特にもぐらの嫌らしさが光っていた。ツインビーはゼビウスと違って大雑把に狙っても地上物に向けて爆弾を投げてくれるのだが、もぐらは弾を撃った後地下に潜ってしまうので、出た瞬間をきちんと狙わないと倒せない。もぐらにかまけているうちに空中物への対応がおろそかになってやられるのはよくあるやられパターンだった。

ファミコン版は同時にひとつしか爆弾を投げられない。敵弾を1発受けると両腕を失う。両腕を失った状態でもう一度敵弾を受けると死ぬ。そしてもぐらは居ない。地上物は添え物に近い扱いで、特殊アイテムを出すことを含めてもやや存在感に乏しかった。

救急車についても若干ルールが異なった。アーケード版では両腕を失くさない限り救急車が出て来ない。前述の通り地上物の攻撃が厳しいので、片腕でも結構厳しい戦いになる。でもとりあえず爆撃はできる。わざと両腕を失くせば救急車が来てくれるが、失敗して死ぬ可能性もあるし、救急車が来るまでの腕なし状態が地味にかなりきつい。中々悩ましい選択を迫られる。

その代わりといってはなんだが、アーケード版の救急車は両腕を失くせば何度でも来る。ファミコン版では腕を失えば必ず救急車は来るが、1機につき一度しか来てくれない。悩む余地はないが、アーケード版にあったジレンマはなくなってしまった。

地上物に関連したところでは、アーケード版ではボス戦でもスクロールが止まらない、というのがある。各面で一定時間進むと、画面が暗くなり、空中物の出現が止まり、ボスが登場する。アーケード版ではその間も画面のスクロールは続いていて、地上物も出現して攻撃してくる。ファミコン版ではスクロールが止まり、地上物は出現しない。

アーケード版ではボスを倒した時点で画面が明るくなって次の面に進む。そのため、速攻でボスを倒せばあまり地図上でも先へ進まないし、倒すのが長引けばどんどん先へ進んでしまうことになる。だから、各面について決まっているのは空中物だけで、地形はプレイごとに進み具合が変わってくる。

これについてはファミコン版の方がよかった。5面の後半、中央に川の流れる河岸段丘のような地形で、激しい空中物の攻撃に晒される、俗に「風の谷」などと呼ばれたシーンを憶えている人は当時のプレイヤーには結構居るのではないだろうか。アーケード版にも谷はあるのだが、5面の前半に来たり、2周目にもなれば4面のうちに谷に着いてしまったりすることもあった。マップが固定されている方が一貫した展開になってよかったと思う。

さて、ずいぶん長くなってしまった。他にも「黄ベルの出現数」「ボール」「鬼の金棒みたいな敵」など、書いておきたいことはあるのだが、もうここまででも長過ぎるので別の機会に回すことにしよう。
繰り返すが、ファミコン版は当時としては素晴らしい移植だった。ただ、アーケード版にはまたちょっと違った面白さがあったことも確かだ。もしファミコン版は好きだったけどアーケード版は遊んだことがない、という方がいらしたら、ゲーセンで見かけたときに是非コインを入れてみて欲しいと思う。

メモ




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初公開:2008-03-12/サイト収録:2009-09-13