ISO昔話3 認証準備1

26.09.07

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。

注2:ISO昔話とは



前回の続きです。
初めてISO認証することになった企業の対応は、どんなものだったでしょう?
体験したり見聞したりしたことを書いてみます。

会社といってもピンからキリまであります。大企業と小企業の違いもありますが、そればかりでなくISO9001認証に関してなら、ルールが文書化されているか・いないか、品質保証を要求された経験があるか・ないか、が大きいでしょう。


1990年頃は会社の仕組みが文書化されていないところも多く、不文律でさえなく人治政治が行われていた会社も多かった。小さな会社では厚労相の雛形を固有名詞を変えただけの就業規則しかないところもあった。

バブル崩壊後、世の中が企業統治について、ハラスメントのコンプライアンスだけでなく全般について企業ガバナンスの要求、企業の経営指標の透明化などが進む過程で、企業のルールの文書化が進んできました。
ですからISOのおかげでそれが文書化されたのかというとそうではなく、世の中の変化に対応するためだったと思います。


だからISO認証しなければならないとなったとき、ルーチンワークで処理できた会社、大プロジェクトを立ち上げた会社、何も分からずお祭り騒ぎをした会社、担当者一人に任せてしまう会社、いろいろありました。
前話で外部からISO認証しろと言われた会社は、その後いかがでしょうか?




1992年7月
ここは前話で一番目に登場した某電子機器メーカーの、日本工場である。
ある日、設計と営業と品質管理の課長が品質保証課長の席にやって来た。


品質管理(●●)課だけでなく品質保証(●●)課がある会社は、たぶん品質保証要求を受けたことがあります。当然、品質保証を理解しているはずです。


川田設計課長 「ECってありますよね。それが今度EUになるって聞いてますか?」

品証課長 「知ってるよ、それがどうしたの?」

営業課長 「EU統合で域内に輸出している製品の製造者にISO9000認証が要求されるそうだ。
欧州拠点の安藤さんからの報告だ」


営業課長 品証課長

川田設計課長
品質管理課長
営業課長 品質保証課長 川田設計課長 品質管理課長

品証課長 「当社ではイギリス向けの製品はイギリス工場で生産していた。イギリス工場はBS5750の認証はしていたよな。
あれだけではまずいのか?」

営業課長 「イギリス製の販売はイギリス国内にだけで、イギリス以外の欧州向けは日本製だ。だから日本工場は新たに認証しなければならない。
言い換えると日本工場がISO9000を認証すれば、イギリス国内もフリーパスだ」

川田設計課長 「ということはイギリス工場は、BSの認証からISO認証に切り替えないといけないのか?」

営業課長 「なこと向こうで対処するだろう。
それでこの工場は、ISO認証しなければビジネスが継続できない。
ところで日本ではまだ認証機関は立ち上がっていないようだ。欧州では既に認証機関が活動しているそうだけど、やはり認証の本場はイギリスだろう(注1)

品証課長 「あと5か月か、まあ社内の準備は、どうにでもなるだろう。
ところで日本国内で短期間に認証機関を探すのは無理じゃないか。営業部はイギリスに駐在員を出していたな。イギリスの認証機関を頼めるかな?」

営業課長 「もちろんだ。来年3月に審査ということで良いかな?」

品証課長 「認証の期限次第だね。それで良いのか?」

営業課長 「大丈夫、大丈夫。一番問題が起きないのは、イギリス工場を認証しているところに日本工場の審査を依頼することだね。規格解釈で揉めては困る」



品証課長は考える。客先からの品質保証要求は年に何件も対応しているから、ルーチンワーク(決まりきった仕事)だ。
品質保証課で品質保証を担当しているのは3人いる。誰に任せるか?
ベテランは薬事、原発、NTTといろいろ受け持っているから、二番手の馬場にさせようと決めた。


品質保証課といっても品質保証業務だけを担当しているわけじゃない。
品質保証業務には、その他に計測器管理、部品の信頼性試験、製品の信頼性試験、製品クレームなどの分析なども含まれる。


品証課長 「君にはISO9001認証をしてもらいたい。期限は今年度中だ。
認証機関はイギリスに依頼する。認証機関の選定と依頼は営業のイギリス駐在員がしてくれることになっている。
打ち合わせ 君がなにか認証機関に要望とか打合せることがあれば、営業と話をしてほしい。営業経由で先方と話してもらう」

馬場 「分かりました。まずはここにISO規格があるかですね。なければ手配しなければ」

品証課長 「予算は、認証機関関係は営業持ちだ。
ウチは規格とか参考書を買うとか講習会費用などあれば、予算案を作って欲しい。
マニュアルも作ることになるだろうが、翻訳を外注するならそれも含めておかないといかんな」

馬場 「分かりました。今、私が担当している仕事はどうなりますか?」

品証課長 「今の担当はS社のOEMの電子楽器の品質保証か・・・
分かった、別の者に引継ぎをさせる。状況をまとめてくれ。来週でも後任と打ち合わせよう」



馬場は技術管理課に行く。JISが置いてある棚でJISZ9901を探すがないようだ。
技術管理の担当にISO規格を買って欲しいというと、担当者は立ち上がって、書架から「標準化ジャーナル(注2)を数冊、持ってくる。目次をサッと見て、次の号を見て、また目次を探す。

目当てのものを見つけると、JIS規格毎にJIS規格票を買うより、ISO9000シリーズ全部が入っている対訳本があるという。その方が安いという。

聞くとJIS規格票ひとつで4,000円くらいするが、8本くらいのISO規格が収録されている対訳本は13,000円だという。
発注して3日あれば入るという。
どちらにしても3日なら同じだ。対訳本の購入を依頼して品証課に戻る。

注:JIS規格票とはよく見かける、A4サイズのグレーの表紙の冊子である。
JIS制定後に発行された対訳本にはISO規格名とJISQ○○○○と併記されているが、 JIS規格票 JIS制定前に発行された対訳本には、当たり前だがJIS規格名は併記されていない。

私の経験では、後者には正式なJIS規格の文章と異なることが多々ある。どちらにしても、英文を正として仕事をしなければならないことは同じだ。

ところでこの規格票は、金箔ででもできているのかと思うほどの値段だ。ページ数の少ない薄いものでも2,000円、厚めになると〇万円という価格になる。だから違法コピーを使うようになるのだね。

ISO審査が始まった頃は審査員もコピーしたものを使っていた。今は対訳本を使う人が多い。日英両方が載ってしっかり製本された対訳本の方が安いのだ。
1990年代前半は、審査前に会社が審査を受けるJIS規格を持っているか確認されたが、今もしているのだろうか? もちろんコピーを出したら違法だ。


帰り道、さっき標準化ジャーナルで読んだ中にあった、ISO認証と言っても3種類あることを思い出した。必要なのは9001なのか、9002か9003なのか、営業に確認しないといけないな。

それから気が付いたことがある。
顧客からの品質保証要求は取引が始まる時点で良いが、ISO認証というと審査時に既に既定のルールとして運用されていないとならないはずだ。
となると課長からのインプットにはそれが入っていない。
ハテナ
馬場

システムの運用期間はどれくらいだろう。審査予定まで5カ月しかない現状では、6か月の実績などと言われたらお手上げだ。ここは認証機関に要確認だ。場合によっては審査日を遅らせないとならない。
どうせ欧州統合など、まだ1年先だろうけど(注3)

待て、要求事項すべてを精査するとなると、1週間はかかるだろう。
まずは営業に認証機関を決定する前に、こちらの要求と要確認事項を提示して先方に確認してもらいたい。
それと、ULなどは随時ラインのチェックに来る。ISO認証にも有効期間があるだろう(注4)


レベルの高い会社でも、それなりに要検討事項があるようです。




1992年9月中旬

ここは前話の二番目に登場した、東北〇〇県の従業員300名の電子機器組み立て工場。

加藤
加藤営業部長
私は営業部長の加藤である。
客先に出張して調査してきた技術部と品管の若い者二人の報告を受けた。ISO認証とはULと同じように、工場に審査に来て合格なら認証されるのだが、違いもいろいろあるという。

まずはISO認証とは完全な民間の仕組みであり、ISO規格を使った完全なビジネス(金儲け)らしい。自社でもなく客先でもない第三者に見てもらって品質保証のレベルが水準を満たしていると認められたということに過ぎない。

そしてUL認定を受ければアメリカで販売できるが、ISO認証には、何の効力もメリットもあるわけではないという。今回はたまたまEUがISO認証を域内移動の許可条件としたということに過ぎない。

更にULと違うのは、製品そのものが対称ではなく、製品固有の性能などの評価はしない。
審査の対象は、設計、調達、製造、出荷までの仕組みとその運用である。ただ図面がどのように製造に展開されているかのチェックをするという。
じゃあULの審査から製品の部分を取り去ったものかというと、経営者の面接というか審査をするという。ますます、わけが分からない。

出張者は客先からISO9001とISO9002の英文規格のコピーを頂いてきた。出張報告会議で規格が英文しかないので、どうしようという話になった。


実は、ISO9000sが1987年に発効されたのち、日本語に翻訳されてJIS規格として前年末の1991年10月に発効されていた。
情報入手を客先に依存しているこの会社では、翻訳したJIS規格があると知らなかった。客先も知らなかったのだろう。

我々の中に英語の文書を読める奴なんていないぞ、どうするという話になって、技術部長の姪が英文科を出たけど、バブル崩壊で就職できず、家で翻訳の仕事をしているという。それで技術部小経由で、その人に翻訳を頼んだ。
それからマニュアルを作る必要があると知り、それも日本語版を作成したら翻訳をお願いすることにした。


その翻訳をした竹藤という女性と、設計の内藤がISO認証の準備を命じられた。竹藤は英語に明るいし、内藤は会社の実情に明るいからという理由だ。とりあえず竹藤は臨時雇いになった。
竹藤はフリーランスの翻訳業が不安定なので、できれば社員になりたいという話だった。
ということで今二人は、認証への取り組みをどう進めるかを考えているところだ。


内藤
品質保証の国際規格
◇ISO規格の対訳と解説◇
増補改訂版
監修 久米 均
日本規格協会
「ISO規格が日本語訳されていましたので、購入しました。せっかく竹藤さんが翻訳してくれたのですが・・・」

竹藤 「私が翻訳したものとJISの文章が、概ね同じでしたので安心しました。
とは言っても、あちこち日本語訳が違うところがありますね」

内藤 「どんなところが違いますか? 私が見ると同じに見えます」

竹藤 「私は契約書の翻訳なども頼まれます。日本語でも契約書は単語の意味するところが、普通使う意味合いといろいろ違います。
それで知り合いの司法書士に教えを乞いました。彼らは英語と日本語の対照表を持っていて、この単語は日本語ならこういう表現にすると決めているようでした。

ISO規格も要求ですから、契約文書ですよね。 ですから日本語訳するとき、そういう考えで単語を選ばないとならないと思います」

内藤 「具体的にどんなところですかね?」

竹藤 「Management Representativeが管理責任者と訳されてますけど、管理責任者ってなんでしょうね?
文字通り読むと経営層の代理者ですが、意味合いとしては担当者くらいの感じです。つまりsales personは営業従事者という範疇語ですが、sales representativeは販売に従事しているというニュアンスですね」

内藤 「その人の職階が低くてもRepresentativeなの?」

竹藤 「仕事を示すので職階とは関係ないです。

明確という言葉が沢山使われています。でも原語はいろいろなのですよね。
『4.10.2 工程内の検査及び試験』では『positive』を『明確な』と訳していますし、『4.6.3 購買データ』では『clearly discribe』を『明確に記述する』としているし、『4.12 検査及び試験の状態』では『identify』では『明確にする』と訳しています。
あっ、『4.11 検査及び試験の記録』では『define』も『明確にする』としていますね。

ええと英語で『identify』は『他と違う点を明らかにする』とか『見分けがつくようにする』ことなのね。『positive』は『確信を持つ』とか『間違いない』でしょうし、『clearly』とか『Clarification』は『曖昧をなくす』とか『はっきりさせる』、『define』は『定義する』ですから『決める』でしょうか。

だけど日本語訳はぜーんぶ『明確にする』に訳している」

内藤 「皆、明確にしてはまずいですか?」

竹藤 「部品が混じっているのと、基準があいまいなこと、基準を決めてないのを、すべて『明確でない』と表現した規格で審査できるのかしら。おかしいでしょ。
それじゃ、審査員が明確でないとすれば、そのすべてが明確でないことになり、不適合にできちゃう。

ISO規格の英文では、保管するときや不良品が混じらないようにしろ、目盛はしっかり読み取れるようにと、各状況において要求することが違います。一般論として『明確にしろ』と言っているわけじゃない。

だから不適合にするには識別が要求されているときは識別が、目盛がはっきりしていることを要求している所では目盛が読み取れるか、そういうことでしょう。
全部ゴッチャにしたら、曖昧で論理的ではないわ」

内藤 「曖昧を敵にしては神々の戦いもむなしいと言いますから、JIS訳が怪しいなら我々は英語原文を基に考えた方が良さそうですね」

竹藤 「JIS訳を読んだだけの審査員と、英語のISOを読んだ審査員とでは、判断が変わりそうですね」


これは例え話ではない。審査の場では多々発生した。
環境目的と目標の二つの計画が必要と語った高名な審査員がいた。ちょっと考えるとprogramme(s)の (s) の意味することを、理解できなかったと思われる(注5)それとも読み飛ばして気付かなかったのかもしれない。

T審査員さん、あんたのために日本のISO認証は多大な迷惑そして損害を受けた。その責任を認識しているかい?

不鮮明なことだ
読みやすいとか、分かりや
すいじゃない
鮮明であることだ

会社の規定を見て「この文章は分かりにくい。illegibleだから規格要求に不適合です」と語った審査員は数多い。

legibleを「読みやすい」じゃなく「鮮明な」と訳さなかったのはなぜか?
標準調査会の責任も大きいぞ。
そんなことで出された不適合は数千件に上るだろう。

誤判断の責任を誰が負うのかって?
21世紀、第三者認証制度は下り坂だ。それはそういうもろもろの結果だ。第三者認証が犯した過ちは第三者認証に帰って来る。
天網恢恢疎にして漏らさず、汝の咎は常に汝の前にあり、逃れ得ず。
正義は成就する。


ここで例を挙げたどの会社でも、審査で揉めそうな気がするのは私だけでしょうか?
どうしてなのでしょう?




1992年10月末
ここは前回登場した、埼玉県の従業員32名、機械加工の小さな町工場です。


発注元の家庭用プリンターメーカーの赤井購買課長と担当者青木がやってきました。
完成品の受入検査とか異常時の対応などは担当者が来れば済んでしまいます。わざわざ課長がやって来るとは何事でしょうか!

二人は社長室で打ち合わせです。
こちらは社長と工場長の二人です。


佐藤社長 佐藤社長水島購買課長 水島購買課長
机
工場長工場長青木 青木

水島購買課長 「いつもお世話になっております。ヨーロッパがいくつにも国が分かれていると、国際競争力もないからと、第二次世界大戦後から国家間の協力というか、経済の規模を大きくしようということを進めてきて、いよいよ仕上げになったようです。

まもなく統合されると、欧州域内での人と物の移動を自由にする動きになっています。ところがなんでもフリーパスにはできないと、移動できる製品は一定の品質以上ということにするそうです。
具体的にはISO9000を認証している工場で製造されたものに限るそうです」

佐藤社長 「先週、青木さんから電話で伺ったことでしょうか?」

青木 「そうです。電話だけでは情報が伝わらないと、課長から直々にご説明したいと伺いました」

佐藤社長 「青木さんからはISOはとても難しいと伺いました」

水島購買課長 「弊社もまだ認証しておりませんが、認証するのは大変難しいと聞いております。
EU統合後、輸出品は、品質保証の国際規格と呼ばれるISO9000を認証した工場で生産したものに限られます。

お宅に委託している製品も弊社のブランドで欧州に輸出しています。それでお宅にISO9000を認証してほしいというお願いです。
これも時代の流れです。ISO認証できないと、他所さんの仕事も取れなくなるでしょうね

佐藤社長 「御社の願いは弊社にとって命令ですわ。
認証に挑戦するのはしかたないにしても、そのISOというのはどんなものなのでしょう?
そのように難しいのでは、御社からいろいろ指導していただけないと、我々だけでは無理です」

水島購買課長 「基本的に工場管理についての規制ですね。
工場を管理するにはいろいろなことをしているわけですが、品質に関わることをしっかりやれということです。

といっても曖昧模糊(あいまいもこ)でしょう。例えば注文を受けるときには、納期や数量を達成できるかを確認せよなんてのがありますね」

工場長 「それって当たり前のことですよね」

水島購買課長 「当たり前ですか? 御社ではよく従業員が運動会やお葬式で休んで生産が遅れたと、泣きついてきますけど」

青木 「2,000個の注文だったけど、不良が出たので員数不足なんてこともありましたね」

佐藤社長 「誠にあいすみません」

水島購買課長 「まあ、それを要求事項と言いますが、そういったものが何十とあるわけです。
もっともすべてちゃんと理由があるわけで、おかしな要求事項はありません」

佐藤社長 「何十とあると言いますと、他の要求事項はどんなものですか?」

青木 「計測器はしっかり校正すること、公正期限過ぎたものは使ってはいけないとか、使う図面は最新であることなどですか」

工場長 「先月でしたか、御社から貸与されているゲージの校正をお願いしたところ、御社の計器室が混んでいて間に合わないから公正期限を過ぎてもそのまま使って欲しいと言われましたね」

青木 「そういうことありましたか」

工場長 「図面変更があったけど、改定図が届いたのは生産に入ってからということもありましたね」


オイオイ、これでは発注者・受注者ともISO以前のようです。
大事なことにはもっといろいろあります。まずは下請け、孫請けの認証の必要性の確認もありますし、また認証する規格がISO9001なのかISO9002で良いのかですね。
まあ、知らぬが仏です。
審査に入る前に認証機関のレベルを見ておくのも大事です。当初、認証機関を探していたとき、左右QAは安心だと聞きました。でも仕事がいっぱいでと断られました。


「おばQの勤めていた会社は、どのレベルだったのか?」とご質問されそうです。
分からない

高卒で英語不得手の私が訳したものを使って、皆が仕事したのですから、まあ、レベルは低い方でしょう。
でも使命を果たしたのは事実ですから。




うそ800 本日の気分
チャンピオン
ISO認証は、システムの善し悪しじゃねえんだよ。
気分だ!、気分だ!
いや、気合いだ!、気合いだ!、だったかな?



<<前の話 次の話>>目次



文末脚注
  1. そもそも品質保証の発祥はイギリスであった。第二次大戦でドイツを爆撃するのだが、不発の爆弾が2割とか2割5分とか言われた。
    爆弾 それを改善するために品質保証が考えられた。 その後、イギリス経済が低迷してサッチャーが首相になると、イギリス産業復興を賭けて行政機関が調達するあらゆる調達品において、品質保証を要求した。
    まず品質保証の規格BS5750を制定し、それによって審査をして認証を受けないとならなくなった。
    その結果は・・・・・・・・変わらなかった。


  2. インターネットがない時代、日本規格協会の出版物や新しいJIS規格などの情報を発信していた月刊誌。1990年当時は、新しく発行される規格や改定の情報を得る唯一の手段だった。
    2010年に情報発信がネットに移り休刊となった。


  3. EU統合は1993年11月1日であった。しかしISO認証は1994年末までで良かったはず。


  4. 認証が始まってから1995年頃までは半年ごとに審査が行われた。その後、半年か1年か審査のインターバルを選べるようになった。1996年頃から1年ごとに一本化された。
    なお半年ごとに審査を受ける場合は、1年ごとの場合の半分の審査工数だから審査費用は約半分になる。しかし審査員の旅費とか審査を受ける手間を考えると、1年ごとが安くついた。
    最初の頃はそういう細かいこととか、認証機関の鞍替えなど説明しない認証機関も多かった。みな認証をゲットすることに気を取られ、更新を考えるほど余裕はなかったようだ。


  5. ISO14001では、改善のための目的・目標を立て、それを実現するための計画を作らねばならない。ここで目的とは大きな目標とか到達点という意味で、目標とは途中の目標とか経過点を意味する。
    なお規格に「計画は実行せよ」とか「達成せよ」という要求事項はないが、ISO的には、ルールは守るのが当然、計画は達成するのが当然という考えだ。

    さて問題になった規格の文言はどうかというと、初版1996年版では「The organization shall establish and maintain (a)programme(s) for achieving its objectives and targets.」である。
    なお、2004年版でも似たような言い回しであったが、2015年版以降ではtargetがなくなって、objectiveのみになった。これでは両方必要か否かという議論は起きない。
    ちなみにprogrammeはイギリスでのスペルで米語のprogramと同じ単語である。国際協定とかISO規格ではイギリス綴りを使うことになっている。さずが大英帝国(正式国号)である。

    論争になったのは「 (a)programme(s) for achieving its objectives and targets」をどう読むかであった。御高名なT審査員は「目的と目標を複数を達成するために複数のプログラムが必要だ」と語った・・・だけでなく、1個しかない場合は問答無用で不適合にした。
    反論には耳を貸さなかった。審査を受ける側の異議、抗議を聞かないのはISO17021違反ですから。
    計画表
    ところで英語の場合、可算名詞(数えられる名詞)のときは、単数・複数をはっきりさせる。文章の場合も単数あるいは複数が明確にならば、a programmeあるいはprogrammesと表記する。

    しかし両方のケースがある場合、単数を想定してカッコを付けて冠詞を、複数を想定して複数形をカッコで示す。
    つまりこの場合は、ずばり「 (a)programme(s) for achieving its objectives and targets」となる。
    だからこの文章を読めば、計画がひとつでも複数でも良いことは明白である。目的目標を実現する計画は複数ないと不適合とは完璧な間違いだ。

    複数形のとき不規則変化する名詞の場合は、例えば「(a) child/children」あるいは「(a) goose (geese)」のように記載する。これは法律、契約書、論文や規格では、記述するときの決まり事である。

    ということを考えると、目的・目標を実現する計画を作成しなければならないが、それはobjectivesを達成するため全体を網羅した1枚物でも良し、全体計画と短期計画があってもよく、部門ごとの計画に分けても良いのである。それはobjectivesの大きさ次第で決まるだろう。

    何も目くじら立てて目的と目標それぞれの計画が必要だ、なければ不適合だと叫ぶことはなかったのだ。
    ところでT審査員には、誤った判断で世の中に迷惑をかけたことの謝罪と賠償を要求する。







うそ800の目次に戻る
ISO昔話の目次に戻る

アクセスカウンター