ISO第3世代 103.鞍替え2

23.09.11

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

*****

山内はジキルQAの橋野取締役に電話をする。
なんとか移転のネゴをとったから一応話しておこう。 電話する

ジキルQA橋野取締役 「ジキルQAの橋野です」

山内 「山内です、元気かね?」

ジキルQA橋野取締役 「やあ、お久でもないか。お宅の大きな組織がネギをしょってやって来るようだから、わくわくして待っているところさ」

山内 「それじゃ期待に応えなければならんな。ウチの本社と支社のISO14001認証をお宅に委託することになった。審査時期は夏頃を予定している。まだ先だからこれから詳細を詰めていくよ」

ジキルQA橋野取締役 「組織の人数8,000人と聞いてるぞ。めったにない大口でありがたいよ」

山内 「8千だって、それほどじゃない。品質環境センターに出してたのは6,000人強だったはずだ」

ジキルQA橋野取締役 「ああ、パートとかアルバイトは勤務時間換算か。それにしても差が大きいが、まあいろいろあるんだろう。どうせ6,000人でも8,000人でも審査工数は同じだ。ということはお値段も一緒だ」

山内 「くれぐれも君の会社が素晴らしい審査をすることを期待している。それだけは念を押しておく。今日電話したのはそれを伝えたかったからだ。頼むぞ。
それから知ってると思うが、わしはラインじゃない。そのうち磯原から審査依頼の話を持っていくはずだ。今後の窓口は磯原課長にお願いする」

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電話を切り橋野は少し考えてから内線をかける。

ジキルQA橋野取締役 「米村部長ですか? 橋野です。
スラッシュ電機の本社のISO14001がウチに移管するようだ。
……
めでたいと言えばめでたいのだが、ちょっと気になることがあってね。
向こうから言われたのだが……あの会社の工場のいくつかはウチで審査しているよね。過去の審査で法違反という指摘を出して、向こうは違反でないと反論したがそのまま押し切ったことがあるかね?
向こうはその後、行政に相談したが問題ないことを確認したいという。
……
そうなんだ、またそんなことを起こせばすぐに移管すると脅されたよ。
それでまず過去3年くらいの審査報告書を調べてほしい。その中に法違反という指摘事項があれば、その内容といきさつを調べてほしい。頼むよ。
……
向こうが予定している審査は株主総会終わってからのようだ。今1月末だから依頼してくるまでひと月やふた月あるだろう。とはいえいつ依頼に来るか分からん、半月くらいで報告を頼む」


******

環境管理課の電話が鳴った。着信音で外線と分かる。
柳田が受けて一言二言話すと磯原に声をかけた。

柳田 「磯原課長、品質環境センターからお電話です」

磯原 「柳田さん、課長って呼ぶのは止めてください。よその人に聞かれたら問題になります」

柳田は😛舌を出す。
磯原はこの人もそういう仕草をしなきゃ、最高の秘書になれるだろうにと思う。もっとも真面目なら、ふざけてヒラを課長などと呼ばないか。
磯原は柳田が人事部の下山の奥様だと知らない。知ってればまた違った感想を持つのかどうか?

磯原 「お待たせしました、磯原に代わりました」

潮田営業部長 「磯原さん、品質環境センターの潮田です。いろいろお世話になっております。
さっそくですが、御社が本社のISO認証を移転されると聞きました。この度いろいろとご迷惑をおかけした結果だとは推察いたしますが、弊社にとりましては大規模なお客様でして……」以下延々と続く

磯原 「そんな噂が流れているのですか、困ったなあ〜
正直言いまして、あれだけの事件が起きたのですから、何もなしでは済みません。確かに社内でも認証機関を代えようという意見もあります。

電話する

また認証を止めようという意見もあるのです。10年前と違い、今ではビジネス上ISO14001認証が必要なことはなく、また認証してもメリットがありません。そんなことから非製造部門である本社支社は、認証不要という声も大きいのです。
いずれにしても審査は繁忙期を避けて6月から夏を予定していますので、まだ先の話です。現時点では未定としか言いようありません。
今後も認証を継続して御社に依頼するようであれば、改めてお願いに上がります」

潮田営業部長 「確かに現在は認証機関移転とか認証返上などが増えているのは事実です。しかし御社のような有名大企業であれば、そうは簡単にいかないでしょう。認証を止めれば環境経営度ランクにも響くでしょうし……」

磯原 「先日、御社の会議に参加させていただきました。そのときにしっかりした是正策を立てて私どもに提出してほしいとお願いしております。
あれからだいぶ日が経ちましたが、まだいただいておりません。認証を受注しようとするなら、もう少し誠意を見せていただいても良いのではないですか」

磯原はいい加減のところで強引に電話を切った。まだジキルに話さえしていない。どこから話が漏れたのか? それともあんな事件が起きたから疑心暗鬼なのか?


******

磯原と岡山の打ち合わせである。

磯原 「ジキルに移管するという噂が流れているようです。社内は山内さんが根回ししてOKを取っているのですが、偉い人に品質環境センターを支持する人がいるのか、それとも業界設立を優先しろという人が外部に漏らしたのだろうか?」

岡山 「それは認証機関鞍替えに大きな影響がありますか? 取り止めになるとか?」

磯原 「どうでしょうねえ〜、業界団体に参加している企業でも、業界が設立した品質環境センターに審査を委託していない企業はたくさんあります。
それに通信系の大手のN社は、品質環境センターの1割株主であり取締役を出していますが、すべての工場が別の認証機関から認証を受けてますしね」

打合せ

岡山 「ほう、そういう会社もあるのですか。じゃあ事業所のいくつかを別の認証機関から認証を受けても関係ないですか」

磯原 「おいおい、我が社の30ある工場の内、以前から14工場は品質環境センターじゃないんだよ」

岡山 「へえ! 半数近くが業界系以外ですか。それは知りませんでした。となるとしがらみは問題ないとして、出向者はどうなるのでしょう?
そのN社では審査を依頼せずに出向者は出しているのですか?」

磯原 「株主だから取締役を出してはいるけど、出向者は出してないようだ」

岡山 「となると鞍替えすれば、現在出向している人が返されるわけですか?」

磯原 「いやいや、ウチはまだ本体の16工場と関連会社が数十社も審査を受けているから、そんなことはできないよ。せいぜい本社を鞍替えしないように暗躍するだけだろう。ウチの偉い人を動かしたりしてね」

岡山 「それなら一応社内で了解は得ていても、これから変更するなという圧力がかかってくる恐れはありますね。変更することのハードルは高いけど、変更するのを止めるハードルは低いでしょう」

磯原 「そうだね、まあそれは山内さんにお任せだな。
ええとその話はおしまいにして、ジキルへの要求事項をまとめておきたい。
ええと先日訪問時に確認したことは(第101話)

以上については、向こうは口頭で了解している。
その後に気が付いたことだけど、審査時に不適合を出されたがその時点で弊社が納得しない場合で、その後不適合でないことが判明した時は、所見報告書から不適合を削除するというのと追加したいな」

それと大柴事件を反省して、審査員は面接して諾否を決めたいのだけど、それはちょっと無理かなあ」

岡山 「面接して決められるならベターですが、一般的に言って審査員が審査中に暴力沙汰を起こすことまでは考えてませんからね。こういう事件があったから派遣する審査員に問題を起こすなと言ってほしいという程度でしょうか」

磯原 「そうでしょうねえ〜、ま、それについても岡山さんが考えてください。
おっと、今までのことは私が気付いたことです。岡山さんが気付いたことを追加してください。
今度ジキルを訪問した時は、我々の要求に対応できるという回答を得られなければ、ジキルには移転しないこと、了解した場合には一筆とること、これが岡山さんのお役目です」

岡山 「了解です。簡単じゃないですか。
認証機関というと、なにかこちらより目上というか上の立場に思えますが、コールセンターとか清掃業者と同じサービスの請負業者です。
愛想の悪いコールセンターとか掃除が下手くそな清掃会社なら、転注は当然です。審査の品質が悪い認証機関を鞍替えするのも、顧客として当然です」

磯原 「そう思う人は珍しいよ。みな認証機関とか審査員はお上と思っているようだ。いまどき公務員でも頭が低いのにね。
ともかく今度訪問するときは、向こうの様式を埋めておくこと、認証を受ける組織の概要、組織体制、事業の状況とかだ」

岡山 「大丈夫ですよ。訪問はいつですか?」

磯原 「山内さんからもう少し待てと言われているのです。まあ審査予定日は半年以上先ですからね。審査契約は来月か再来月でしょう」

岡山 「私がISO認証に関わったのは研究所と工場ですが、やはり年末と年度末の審査は無理ですね」

磯原 「ここは本社だから、株主総会のある6月と人事異動のある4月から5月頭はスケジュール調整が大変だ。
言い忘れたけど、支社を含めて各部門と調整して希望日程を決める必要もある」

岡山 「分かりました。私がいた研究所と工場では5月連休と夏季連休の前後もダメでした」

磯原 「ま、そういったことを調整してください。
まだ時間的には余裕がありますから、数日後に二人で打ち合わせましょう」

岡山 「了解しました」


******

スラッシュ電機は認証機関 品質環境センターの1割株主である。だから10人いる取締役の1人を出している。それが品質保証部長の足立部長だ。品質環境センターへ出している仕事を転注するにあたって、そこの取締役に断っておかねばならない。


*どうでもよい話
認証機関は財団法人、社団法人、株式会社のいずれかである。
株式会社なら取締役がいるわけだが、その数はさまざまだ。契約審査員を除いて社員数100人程度の会社で取締役が4人から10人だ。石を投げれば……10人はいささか多いのではなかろうか?
認証機関の取締役の人数を調べようとしたが、会社概要というところを小さな文字で書いているところ多し。また社長のみ表示して他の取締役を表示しないのも多い。情報公開しようよ!


山内参与は品質保証部長と打ち合わせを持った。まあ、どちらも組織的には生産技術本部の中だし、机も歩いて30歩の距離だ。

品質保証部環境担当
足立部長足立部長 山内参与山内参与
矢矧さん矢矧さん 磯原磯原

足立部長 「なんか以前このメンバーで打ち合わせしたことがあったね」(第18話)

山内 「2年くらい前になりますか、やはりISO審査で問題が起きた時でした。問題が起きた時だけ集まるとは悲しいですね。共同して品質や環境の推進とかしたいものです」

足立部長 「本日は環境の認証機関を移転するとか聞きましたが」

山内 「昨年末の本社のISO審査で、トラブルが起きたことはご存じと思います」

足立部長 「審査員が応対した人に暴行を働いたそうですね」


注:殴る蹴るをしなくても、大声で暴言を吐くと暴行罪になることもある。


矢矧さん 「ひどい人がいたものです」

山内 「そのとおりです。それで品質環境センターへ再発防止策を立ててほしいという要請をしておりました」

矢矧さん 「認証機関ですから立派なものを作ってきたのでしょう」

山内 「ところが日にちが過ぎても、出してきません。事件からまもなくふた月になります。
ということで罰というわけではありませんが、被害者が社外の大手顧客の子女であるということもあり、我が社としても見える対応が必要となっております。
我々の是正処置として認証機関を移転することにしました。
是正処置を出してほしいと要請したのに、それに応えないなら当然と考えます。

当社が1割株主であり複数の出向者も出しておりますことから、いろいろ差し障りが予想され、人事とか秘書室、出向者を出している事業本部には話をして一応ネゴは取れました。
あそこの取締役をされている足立部長には、もっと早く話しておくべきと思いましたが、向こうの対応が遅れ遅れなこともあり、我々としては最後まで先方をフォローして今になってしまったということです」

足立部長 「まあ私が向こうに行くのは三月に一回の取締役会だけで、取締役会も事件が起きてからはまだなかったから手遅れというわけじゃありません。
再来週に取締役会がありますので、そのときに話をしてほしいということですね」

山内 「左様です。ご理解いただきありがとうございます。議題あるいは話題になったとき、一方的な説明であれば、当社の見解を述べていただきたいのです。
我が社からあそこにISO審査を依頼している事業所は多数ありますが、全部じゃありません。問題となった本社・支社のみISO認証を移転することになります。ですから出向者云々ということは言われないでしょう」

足立部長 「審査料金としてはいかほどでしたか?」

磯原 「交通費とかひっくるめて支払う金額は300万程度かと思います」

足立部長 「1件の審査としては大きいですね。取締役会で必ず話になるでしょう」

山内 「それで本日、こちらの事情を説明いたしますので、足立さんが問われたとき捌いてほしいというのが願いです」

足立部長 「分かりました。向こうには向こうの論理と事情があるでしょうけど、こちらにはこちらの論理と事情がありますからね。状況を教えてもらえれば大丈夫です。お任せください」

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足立部長 「お話はよく分かりました。ソドムのアブラハムではありませんが、品質環境センターがどのような提案なり妥協をすれば移転を取りやめますかね?」


注;旧約聖書 創世記 第18章
ソドムとゴモラの二つの都市があまりにも乱れているので、神が滅ぼそうとする。それをアブラハムが住民に良き人が50人いれば滅ぼさないでほしいと願い、神がそれを了承する。するとアブラハムは40人ではだめか、30人ではと尋ね、10人いれば滅ぼさないという言質をとる。
しかしソドムには良き人が10人いなかったので、神の怒りが下り廃墟となった。
現在の研究では、隕石で都市が破壊されたことから生じた伝承とされる。


山内 「既に時間切れだと言ってください。
実はどこから話を聞いたのか、あるいは自分たちが疑心暗鬼になったのか、10日ほど前に品質環境センターの潮田取締役から磯原に電話がありまして、認証を移転すると聞いたがしないでほしいと要請がありました。
そのとき磯原は昨年からこの事件の再発防止策を出してほしいとお願いしているが未だ頂いていない、もう少し真摯になってほしいとお願いしています。
そしてそれから更に10日以上経過しています。
仏の顔も三度、神様も見放すでしょう」

足立部長 「分かりました。その話になったときはそのような趣旨で、変更は決定事項であると話しましょう」


******

2週間後、認証機関 品質環境センターの取締役会である。
社長含む常勤取締役5名はもちろん非常勤取締役5名がそろう。
四半期の経営状況の報告があり、退職とか採用の報告がある。人員が少ないから従業員の退職や、 会議室机 雇用も報告される。
借財もなく固定客のおかげでビジネスの競争も激しくなく、売り上げは年度首の計画とほとんど変わらない。

いやいつもはしゃんしゃんと終わり高い昼食を食べて解散だが、今回はスラッシュ電機における暴行事件の報告がある。
常勤の取締役にとって、いきさつは十分知っているしもう済んだことという認識だが、非常勤取締役は噂は聞いていても、詳細は今回初めて聞いたわけだ。

潮田営業部長 「スラッシュ電機さんがへそを曲げてスラッシュ電機の本社・支社の認証を移転するかもしれないのです」

某取締役 「スラッシュ電機の気持ちは分かるけど、ウチとしては引き止めなくちゃならんでしょう。その対応はしているのですか?」

潮田営業部長 「何度か電話して移転しないようにお願いしています」

某取締役 「そりゃ、あなた……こちらが誠意を見せなくちゃ」

潮田営業部長 「誠意ってなんですか? まさかヤーサンのように札束とか」

足立部長 「弊社の担当課長がいうには、何度も是正処置を出すようにお願いしているとのことです。しかし事件からふた月経っても一向に出てこないとのことです。それは誠意がないとしか思えません」

某取締役 「お客様に頭を下げるだけではだめでしょう。具体的アクションがなくちゃ。是正計画をもっていってないの?」

潮田営業部長 「確かにまだ是正処置案をまとめて提出はしていません。内部では審査員に教育とか計画しております」

朱鷺取締役 「私はマナー教育と沈着冷静な審査ができるようロールプレイをすることを考えていたが、スラッシュ電機からきた方がそれでは不十分と言って拒否された。そこから進展はない」

某取締役 「マナー教育と審査のロールプレイですって。朱鷺さん、それは冗談ですか?」

朱鷺取締役 「いえ真面目な話です」

潮田営業部長 「それが……スラッシュ電機さんの要望が高くて、ご満足されないのですよ」

某取締役 「そういうものが是正処置とは思えないね。ISO審査でそういう是正処置が出てきたらOKするんですか?」

潮田営業部長 認証機関の社長 朱鷺取締役
某取締役

コーヒー

品質環境センター鈴木取締役
某取締役某取締役
足立部長 某取締役某取締役

品質環境センター鈴木取締役 「まあ、組織によっては未熟なところもありますから、OKせざるを得ないこともあります」

某取締役 「ウチはISO認証をする会社ですよ。未熟な組織ではないはず。範となるような是正処置を考えてほしいですね。今の話を聞いて呆れましたよ」

潮田営業部長 「どんな方法ならよいのですか?」

某取締役 「被害者側が穏健だったから良かったものの、へたすればこれは起訴、裁判ですよ。そうなれば珍しい事件だからマスコミは当然報道するでしょう。それも関西限定でなく、全国報道でしょう。社名も出るでしょうし、事件の詳細は報道されるでしょうね。
もしかしたら第三者認証制度の息の根が止められたかもしれない」

朱鷺取締役 「そんな大げさな」

某取締役 「冗談ではありません。大ごとだと認識して、それなりの対応をすべきです。
今のお話を聞いて、私は恥ずかしくてここの取締役を辞めたい」

潮田営業部長 「足立さん、移転を思いとどまる条件はありませんか」

足立部長 「問題がここまで来ては無理ですね。担当課長からはもう待つことはできないと言われてきました」

潮田取締役は天を仰いだが、今までにやることはたくさんあっただろうと周りの人たちは冷たい。

認証機関の社長 「ウチの認証件数は全部で3,000件はある。1件くらいどうってことはない」

潮田営業部長 「でも規模は6,000名でトップテンに入りますよ。売上300万くらいでした」

認証機関の社長 「ウチの売上の平均が60万そこそこだ、すると5社分か。潮田取締役 その分営業頑張ってくれ」

某取締役 「社長、頑張っても袋に穴が開いたままでは、そこからこぼれて意味ありません。
しっかりした是正処置を取ってもらわないと困りますよ」

某取締役 「そうです。最終責任は社長ですよ。本来なら社長が菓子折り持って、移転をやめてくれとスラッシュ電機に行かなければならないでしょう」

某取締役 「これはこの会議では納得できません。株主総会でしっかりした是正処置を取らないことの責任を追及されますよ。いえ、私は帰社したら内部で検討いたします」

認証機関の社長 「分かっている、分かっている。朱鷺取締役それに鈴木取締役も、潮田取締役に協力して是正処置を早急にまとめてください」

潮田営業部長 「ちょっと待ってください。なぜ営業部長が審査で起きた問題の対策責任者なんですか。担当取締役は審査部長である鈴木取締役ではないですか」

品質環境センター鈴木取締役 「ちょっとちょっと、渉外窓口は営業でしょう」

勇将の下に弱卒なしの真逆のようです。無責任経営者の下には無責任管理者、無責任担当者しかいないのかもしれません。
おっと、最後のパートは全くの想像です。まあそんな認証機関もあるんじゃないかな〜、タブン



うそ800  本日の暴露話

認証機関とのやり取りのトラブルはけっこうあった。
私の現役は2012年までだけど、いろいろな思い出がある。

審査用の書類をひと月も前に送っていたのだが、審査間際になって認証機関からいつ送るのかという問い合わせが来た。
既に送りましたよと回答すると、向こうは必死に探したようだ。後で聞いたらこちらが送った書類を予定していた審査員に渡したが、スケジュールの関係で審査員が代わり、受領していないと思ってこちらを督促したという。お客様を督促する前にすることがあるだろう。

認証機関とのやり取りは9割が電子メールだったが、メールをもらってないと言われたこと数知れず。我々は電子メールが消滅する魔のバミューダ海域と呼んでいた。
消失するメールはランダムではなく、なぜか督促とか回答を要する認証機関に都合の悪いメールが消失しやすかった。ISO七不思議のひとつである。


電子メールが消滅する魔のバミューダ海域
eメール
矢印
eメール
矢印
eメール
矢印
eメール

あるとき審査スケジュールが送られてきたのを見ると、自分の会社のものではない。たぶん弊社のスケジュールを他社に、他社のスケジュールを弊社に送ったのだろう。あるいは二社テレコになったのではなく、何社かごっちゃになったのかもしれない。
これは機密漏洩ではなかろうか?

所見報告書作成を自動化しようと、認証機関それぞれ工夫している。エクセルのマクロを利用して固有名詞を入れて述部を選択する仕掛けの会社があったが、日本語になっていない。ChatGPTまでいかなくてGoogleの翻訳でさえ、もっと立派な文章になる。
そういうおかしな文章を見ると自分はしっかり書こうという気持ちになる。「我以外皆我師」である。


我以外皆我師われいがい、みなわがし」とは、「自分以外、誰もが先生である」という意味。宮本武蔵の言葉と思っていたら、宮本武蔵の小説を書いた吉川英治の造語だそうです。
侍 「万事において我に師匠なし」は間違いなく宮本武蔵の言葉だそうです。
私も「ISOにおいて我に師匠なし」とカッコよく言いたいけど、本当はA認証機関の社長、B認証機関の取締役、ISOTC委員だったCさんとDさん、文書管理の専門家Eさん、我が同志のぶらつくたいがぁ様と名古屋鶏様、その他 多くの方から薫陶を受けた。
皆さま、ご指導ありがとうございます。

ちなみに「三人行へおこなえば、必ず我が師あり」は論語にある。意味は「三人に会えばひとりは素晴らしい人がいる。その人を見習いなさい」という意味。
私はこれよりは「我以外皆我師」のほうが好きだ。だって他人を評価して上下をつけるなんて失礼なことだし、残り二人から学ぶ機会を損なってしまう。三人に会えば、三人の長所を盗むべきだ。



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