ISO第3世代 102.鞍替え1

23.09.07

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

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山内参与から認証機関移転、俗にいう鞍替えの検討を指示された磯原は、ここ2週間、認証機関を訪ねたり呼んだりして、審査を依頼するときの見積もりやこちら側の要望に応えられるかヒアリングをした。また取引先や関連会社で、ここ1年くらいの間に鞍替えしたところを探して、訪問して実際の効果やトラブルのヒアリングをした。
もちろん一人ではない。ときによっては岡山と一緒にあるいは別行動で、調査、分析、まとめをおこなった。

今日は山内への報告会である。

磯原 「ご指示をいただいた認証機関移転について調査しましたので報告します。
一言で言えば、今の時代ではまったく取るに足らないことだということです」

山内 「取るに足らないとは?」

磯原 「ISO14001でsignificantを『著しい』と訳してますが、『取るに足らない』はその対義語のinsignificantで、文字通り著しくない、目立たないありふれた、、論じる必要もないという意味です。
要するに多くの企業が鞍替えをしていて珍しくもないのです」

山内 「それほど重大と考えることはなかったということか」

磯原 「そうです。もちろん検討することは、コストも含めて多々あります。
詳細は岡山さんから説明してもらいます」

岡山 「我が社で最初の事例は、認証規格がISO9001でしたが、ある工場で新分野への進出の際、それまでの認証機関がその製品分野の認定を受けていなかったために、その製品だけでなく工場全体を別の認証機関に鞍替えしたもので、もう20年も前になります。
次に1990年代初頭にISO9001を英国の認証機関で認証して、その後登場したISO14001を認証するとき別の認証機関で合わせて認証した事例など4件ありました。
我が社の工場や研究所それに本社で認証件数が34で、鞍替えしたのが過去20年で4件ですから移転発生率は年0.6%になります。

公表された統計はないのですが、我が社の取引先でISO認証規格はいろいろありますが合わせて約2,600社、その中から200社抜き取りして過去の取引先調達調査票と調べたところ、平均して年1〜2%鞍替えしていることが分かりました。
本社資材部にお願いして、最近認証機関を移転した取引先13社にアンケート調査しました」


注:私は認証移転率の統計を見たことはない。10年前、私が勤務していた頃の取引先、関連会社の鞍替え状況を見ると、年率1%を少し超えていた記憶がある。今はもっと高くなっていると思う。

ちなみに正社員の年転職率は2022年7.6%という。意外に高い数字だ。9年で社員の半数が入れ替わることになる。
とはいえ終身雇用という慣習が成立したのは太平洋戦争後である。それ以前は年転職率は30%くらいだったそうだ。雇用保険も健康保険も年金もない時代なら永年勤続という意識はないだろう。


岡山 「アンケートを見ると認証機関を変えた理由は、審査費用の低減、形式的な審査やマンネリ化の打破、マネジメントシステムの有効性改善という回答でした。もちろん回答が、本音か建前かは分かりません。
マネジメントシステムの有効性改善というのも意味不明です」

山内 「かなりの割合は審査時のトラブルに嫌気がさしてという理由じゃないのかな」


注:現役時代、知り合いから聞いた話である。
彼の勤め先の審査で無理難題を言われてもめたが、結局審査員に押し切られた。それで次回審査時には認証機関を変えたという。現実にはそういうケースが多いのではなかろうか。
それを聞いて、毎回ろくでもない審査員に参っていた私はうらやましくて仕方なかった。


岡山 「正直言ってそれはあるでしょうね。ただアンケートに本音を書いてくれるかどうか。
先ほど述べた我が社の事例のような認定範囲の問題とかMS規格によって認証機関が異なっていたものを同じ認証機関にしたなどは、今回の回答ではありませんでした。
想像ですが、そういう事例は初期的には起きても、制度が成熟した現在では起きないだろうと思います」

山内 「となるとウチが認証機関を変えても、特段何か評価されることはないな。早い話が悪く言われるような……」

岡山 「ノンジャブでもJAB認定でも、評判の悪い認証機関はありますね。そういうところに移転した場合はコスト削減のためとか、うるさいことを言わないところにしたと陰で言われるかもしれません」

山内 「なるほど、ところで岡山君が意味不明といったが、マネジメントシステムの有効性とはどういうことかな?」

岡山 「まずISO審査によって会社の仕組みが良くなるという考えがあるのでしょう。だから今までの認証機関では会社が良くならなかったが、認証機関を変えれば効果が出るだろうという期待を持ったのかと」

磯原 「会社のマネジメントシステムを良くすることが、認証機関にできるとは思えませんね」

山内 「磯原はできないと思っているのか?」

磯原 「システムとは、組織・機能・手順です(アメリカ軍の定義)。ですからマネジメントシステムを良くするとは、組織つまり会社組織を見直すのか、機能となると各部門の取り合いとか仕事を変えるのか、手順ではプロセスとかプロシージャを変えるのでしょうか?」


注:US Googleで経営用語などのウェブサイトを検索すると、processとはインプットからアウトプットに至る一連のタスクやアクティビティをいい、procedureとはプロセス内の個々のタスクやアクティビティを行う手順を言うとある。
別の解説ではプロセスは経営者の手順で、プロシージャは従業員の手順とある。


磯原 「ISO審査では、職制改正も組織の職務分担も作業手順も、直接的には不適合を出せる要求はありません。できることはいろいろな問題があればその原因究明と是正を組織に求めるだけです。それも認証規格の範囲内だけです。ISO14001で経理や資材部門の手順が悪いと指摘するのはお門違いです。
となるとISO審査でマネジメントシステムを良くすることはできないとなります」

山内 「会社を良くするのはISO規格でもなく審査でもなく、企業だということか」

岡山 「思考実験です。
磯原さんが審査員として、訪問した会社の管理者の職務分担が組織名と大きくずれているとしたとき、その会社が見直すよう提言しませんかね?」

磯原 「中小企業に行くと、そういうことはけっこうありますね。組織や仕事内容に関わらず、古手になると課長になり、勢力を持つと部長になる。だけど長は付いているけど管理職じゃないとか。逆に社長の息子は肩書を持たないけど、社長の代わりになんでも決定しているとかね」


*どうでもいい話
1980年代後半のこと、当時 私の勤め先が○潟県の100人ほどの会社に部品製造を委託した。その会社に「長」の着かない人がいた。その方は営業も技術もトラブルもなんでも担当していた。そして取引先から冗談半分で「専務」と呼ばれていた。やがてご本人の会社でも「専務」と呼ばれるようになり、社長も「専務」と呼ぶようになったというホントの話がある。もちろん私も「専務」と呼んでいた。
後に本当の役員になり「常務」になったと聞く。ご存命なら95は超えただろう。


磯原 「それはおかしいと思うかもしれないけど、ローカルルールと思えばすべて説明ができる。ISO規格で関係するものは『組織の責任・権限を割り当て伝達する』とあるだけだ。
この会社では課長とか部長は部門の長ではなく、階級だという言い方もある。30歳で係長という階級になり、40歳で課長になり、50歳で部長にすると思えばおかしくない。

総務課と総務課長の職掌範囲が、一致していなくても会社が決めれば問題ない。仮に診療所の管轄が製造部でも、その会社の決まりといえばそれまでだ。アルバイトは人事課でなく雇う部門で採用するという会社もある。
ちょっと違うかけど、江戸時代に飛地とびちがあるのは普通のことだったし、現在でも他の市町村の中に別の自治体の区域があるところもある。飛業務とびぎょうむがあってもおかしくない」

岡山 「過去のいきさつからそういうことが起きるかもしれませんが、改善したほうが業務の効率化とか誤解をなくすことになりませんか?」

磯原 「誤解をするのは外部の人だけだろう。少し前、とある関連会社に監査に行った。工場長がその「工場全体」の長なのかと思ったら、そうじゃないんだ。そこの製造部門の長なんだよね。
だから設備増加の届を忘れているというと、それは「○○事業所」の施設管理課の仕事だという。有資格者が退職するけど手を打ってないというと、それは「○○事業所」の総務課の仕事だという。それじゃ監査の対象が「○○事業所」なのかというと、事業所長は工場長の上司ではない、工場長と同格なんだ。

結局、「○○工場」の環境監査を「○○工場」と「○○事業所」の環境監査に変更して対応してもらった。


*どうでもいい話
1994年頃○山市にいたとき、ISO9001を認証したいという会社から、指導に来てほしいと言われた。本当はまずいのだろうけど、囲碁仲間からの個人的な依頼だったので行った。すると上記のような組織でどうしようかという話だった。
私はそんなこと気にしないであるがままに説明したら(マニュアルを書けば)良いと言った。もちろん経営者としては事業所長と工場長の二人が対応しなければならないだろうけど。
人事上の処遇からそういう組織になったらしい。確かに効率的な組織かどうかは疑問だ。
ダブルワークなどと言われる前に……数回行って説明したが一回飲ませてもらっただけで謝礼は頂てません。


岡山 「あっ、でもそれって支社も同じですよね。支社長は支社の代表者であるけれど、ビジネスの責任者ではない。営業活動は事業本部ごとの各営業部長が推進しており、支社長に決裁権限はない。支社長は大家さんとしての役割しかありません」

磯原 「それに近いね。ただ支社の場合、組織表上は営業部門も一応は支社長の下にある。先の例は組織表からして別々だった」

山内 「わかった、わかった。要するに磯原先生のお説は、ISO審査でマネジメントシステムを良くすることはできないということか?」

磯原 「ISO審査の目的は、規格適合か否かを判定することですからね。適合あるいは不適合と判定すれば、仕事は終わりです。不適合は改める必要がありますが、改善するかしないかは企業の裁量です。
効率と適合とは無関係です。ISO14001の序文に『技術やパフォーマンスが異なっていても、共にこの規格の要求事項に適合することがあり得る』とありましたね」

岡山 「でもISO審査では改善の機会というのを出せますよね」

磯原 「改善の機会は『マネジメントシステム認証スキームの要求事項によって禁止されていない限り特定し、記録してもよい(ISO17021-1:2015 9.5.4.2)』とあるから、禁止されてないだけだ。しなくてもよい。
改善の機会といってもあるべき姿とか方法を示すことはできない。また他社の事例を示すなど具体例もダメだし……それは規格だけでなく審査契約の守秘義務に抵触するから訴訟の恐れがある。

だから改善の機会として、漠然と示唆したり、禅問答のようなことを語っても、マネジメントシステムの改善に役立つのかどうか。
マネジメントシステムを良くするという認証機関は、そういう規制を気にせずに語っているのかな? それとも別の手法があるのだろうか?」

山内 「ISO審査でマネジメントシステムを良くすることは難しいのは良く分かった。それならISO認証で会社を良くしようとするより、経営コンサルを頼んだほうが良くないか?」

磯原 「そりゃ当然です。経営コンサルは与えられた課題を解決しなくちゃ金になりません。ISO審査は適合か不適合かを決めればお金がもらえます。それに年に1回数日しか来ないし、知りたいことがあっても質問もできない。
困ったとき声をかければ、必ず来て教えてくれるコンサルの方が、改善の目的に合致してます」


山内 「すまん、本題に戻す。マネジメントシステムを良くするは置いておこう。
ええと、あとなんだっけ?」

岡山 「審査費用低減です。審査料金は一日の単価かける審査工数です。高いところは一日一人十数万ですが、安いところは一桁万円です。老舗認証機関は高いですね。
単価は多様な要素があります。認定を受けてないところは安いですね。認定費用が掛かりませんから。

財団法人系では出向者の人件費は派遣元の負担割合が多い。契約審査員が多ければ人件副費がかからない。
オーバーヘッドの要素も大きいです。神田の雑居ビルと丸の内とでは、床面積単価が3倍は違うでしょう。オフィスが場末にあれば安いけど、一流企業の客は来ないかもしれない。

おっと、驚くことに審査工数も違うのです。JAB認定であっても、認証機関によって12人日と15人日の違いがありました。ノンジャブならもっと違うかもしれませんね」

磯原 「審査工数はIAFの『品質、環境及び労働安全衛生マネジメントシステム審査工数決定のためのIAF 基準文書(IAF MD5)』というもので定めているけど、そもそもがIAFの文書だから、認定を受けてない認証機関は無関係なのかな?」


注:認証や認定に関わる文書類は、JABのウェブサイトのトップページ「サービス一覧」⇒マネジメントシステム認証機関の認定にある「文書類」をクリックするとたどれる。


山内 「審査単価も審査工数も違うのか。それでいくらくらい違うのか?」

岡山 「審査料金は高いところと安いところでは倍は違いますね。品質環境センターもジキルQAも共に高いほうです。ジキルのほうが高かったかな?
とはいえ審査費用が違っても数十万、対応する我が社の人件費のほうがはるかに大きいですから、5万10万のちがいは考慮することはないでしょう。

それに社員に対する環境教育を要求されたら、本社・支社で8000人ですから、1時間も教育したら人件費だけで1億飛びますよ、アハハハ。
環境教育が必要なんてアホなことを語る認証機関もあります。余計なことを言わず、まともな審査をしてもらうことが第一です」

山内 「まあ、そうだろうな。しかし認証機関の費用構造って面白そうだ。契約審査員、出向者、派遣の事務など人件費をいかに薄めるか、あるいはロハの人間をかき集めるかということが最重要に見える」


注:ロハ(ただ・無料)の人間がいるのかというと、あるのですね。
出向者の賃金は派遣元と受け入れ先で負担しますが、その比率は0対100から100対0まであります。派遣元負担が多くなると利益供与という問題になります。
ところが財団法人などでは受け入れ先の負担ゼロというケースもあるようです。


岡山 「私も調べていて気づきました。第三者認証制度はビジネスモデルとしては脆弱というか欠陥なのですか?」

山内 「わしは、そういう標準化されたサービスの提供というお仕事を金儲けにしたという発想に驚くね。常識で考えると解が見えない。提供するものがまったく同じなら、価格競争しかない。
もっとも現実に提供されるサービスは月とスッポンらしいが。標準化を教えるビジネスが標準化できないとは別の意味で悪い冗談だ」


岡山 「最後は形式的審査とか、マンネリを打破したいというものでしたね」

山内 「形式的審査とは何だろう?」

岡山 「あれでしょう、規格を頭から読んでいって、組織は著しい環境側面についての取り組みを計画していますか? とか、この取り組みに際して、技術上の選択肢、財務上、運用上及び事業場の要求事項を考慮しましたか? なんて質問ですか、アハハハ」

山内 「ハテ、そう問われても、わしは何が何だか分らんぞ」

磯原 「そんなISO的言い回しを理解できない人が正常で、分かる人はISOウイルスに冒されているのですよ。
それにそういう文章で質問する人は何も考えていないのでしょうね。回答が得られるとでも思っているのか?」

岡山 「そのような禅問答ができる人がISO事務局になれるのです」

磯原 「中世の欧州で縫い針の先端に何人の天使が立つことができるか議論したのが神学論争と言われるけど、あと10年もしたらISO認証では高い金をもらって馬鹿な議論をしていたとISO論争と揶揄されるのかな?」

山内 「磯原と岡山を組ませたのは間違いだったか。脱線しないで報告しろ

岡山 「あっ、すみません。規格の文章を読んで、審査員が期待する回答が返ってきたら適合、そうでなければ不適合というのが形式的審査と言われるものです」

山内 「そういう質問に何の意味があるのかな?」

磯原 「審査員は規格要求を質問して回答を得た、企業側は審査員が満足する回答をしたと両者共、簡単に役目を果たしたと満足できるでしょう。客観的には全く意味のない言葉遊びにすぎません」

山内 「つまり何の意味もないということか」

磯原 「真面目な話、規格を理解してない審査員も役目を果たし、内容を理解してない企業側もトラブルなく審査を終えることができたという意味があります。
どっちにしろISO審査などその程度のものでしかありません」

山内 「品質環境センターの審査というのもそんなレベルだったのか?」

磯原 「12月の審査では山内さんは経営者インタビューだけでしたが、あの質疑というか歓談というか、何か意味がありましたか、いや審査員と話して得るものがあったでしょうか?」

山内 「まったくないな。とはいえ専務が時間を無駄にしないために、わしがDH代打として登場したことは有効だったと思う」

岡山 「どんなお話でしたか?」

山内 「三木さんと言ったな。方針を見直したのかどうかという質問があった(第93話)。まあ聞かれたから答えたが、あれを聞いて時間の無駄と思ったね」

磯原 「三木さんはあそこではトップスリーに入る審査員ですよ。どこが問題でしたか?」

山内 「質問が漠然としていた。『環境方針を見直しましたか?』だったと思う。だからある程度気の利いた人なら、何も知らなくても適当に回答できる。
本当に方針を見直したかどうか知るには、現実に起きた社会の変化、法規制、災害、事故、流行などを取り上げて、それをどう評価したのか方針に反映したのかを具体的に聞くべきだな。

アメリカでは英語を話しますね、中にはスペイン語も話しますなんて会話では誰でもできる。サンフランシスコのどの地区ではスペイン語、ここでは中国語が……というふうな具体性がなければ真に知っているかどうか分かるはずがない」

磯原 「おっしゃる通りです。ただインタビューを受ける人には、山内さんのように常在戦場という人ばかりでなく、志村けんのバカ殿みたいな人もいます。三木さんとしてはインタビューを受ける人がボロを出さないように気を使ったのでしょう」

山内 「それはつまり幇間ほうかん稽古だな。未熟な審査員は門弟に勝てないし、腕の立つ審査員は幇間稽古か…
磯原よ、鞍替えを考えるより、一足飛びに認証返上を考えるべきだろうか?」


チャンバラ

注:幇間稽古とは剣客商売によく出てくる言葉。男芸者である幇間のように、客を喜ばせるためにあまり厳しくせず、時々打たれて客を喜ばす道場主がする指導を言った。


磯原 「現時点ではジキルQAのお手並みを拝見していません。中には素晴らしい剣客もいるかもしれませんよ」

岡山 「先日の橋野審査員は自信たっぷりでしたね。あの言葉だけ聞けば勇将の下に弱卒無しなんでしょうか?」

磯原 「どうかなあ〜?、当社でジキルQAから認証している工場が、3つあったと思う。その一つの工場の審査で、 コンプレッサー 騒音特定施設を増設しているがその届をしていないという不適合を出したことがある。振動特定施設は1台でも増設したら届をしなければならないが、騒音特定施設は届けを出したときの数の倍を超えたときに増設を届けることになっている。
まあ、それを知らなかったんだろう。私が本社に来る前のことだった。

私が本社に来てそれを見つけて気になったので工場にどう処置したのか問い合わせたのだけど、届けようがない、つまり是正しようないからそのままなにもしなかったという。翌年の審査では審査員も変わりフォローもなかったという。
それを見ると品質環境センターとレベルは変わらないって感じですね」

山内 「ほう、それは興味深い。橋野に嫌味を言っておかねばならんな」

磯原 「嫌味ではありませんが、だいぶ前に橋野さんにお会いしたときそのことを話しました」

山内 「そしたら?」

磯原 「アハハハと笑ってました。その後何もなかったですから、審査員に注意したのかさえ怪しいです。
ですから鞍替えしたら十分チェックするつもりです。場合によってはさらなる鞍替えでしょう」

山内 「なるほど……聞いてみなければわからんね」

岡山 「山内さん、一向に進みませんがよろしいのですか?」

山内 「いやいや、いろいろな話を聞いて勉強になったよ。認証返上する前に異なる認証機関の審査をいくつか見学したいね」

磯原 「認証を止めてしまうなら無用ですが」

山内 「本社は認証不要という気持ちは強くなったが、工場や関連会社はまだ不透明だ。実態を知らないと判断がつかないからね」



うそ800  本日の思い出

業界系某認証機関はどうしようもないとか、外資系の某認証機関は値段も高く審査の質が高いと言われていた。
私は、業界系某社の審査は何十回か見学した。外資系の某社の審査も10回くらい見学した。
部外者の立ち合いはご遠慮願いますなんてあるが、その会社の作業服を借りて後ろに座っているだけなら審査員もお釈迦さまも気が付かない。
ときには名刺を作ってやるから会社の人間として対応してくれと言われたこともある。さすがにそれは断った。

結果であるが、確かに審査の質は違ったけど、環境法の知識がないことは大差なかった。



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外資社員様からお便りを頂きました(2023.09.08)
おばQさま
本旨と関係無い 後書きへの突っ込み ご容赦を。

>外資系の某認証機関は値段も高く審査の質が高いと言われていた。
これについては「朱に交われば赤くなる」を体験しました。

試験機関のISO認証 17025
大分前に、外資の認証会社を採用 その会社は、既存 認証機関の問題を嘆き、それを解消しますと理想を仰っていました。
17025は測定「不確かさ」という理論的な説明が必要なので、確かに合理的な審査をしてくれました。

トレーサビリティや誤差論が判っていないと「不確かさ」の計算と定義が出来ませんので合理性は重要。
同じ審査を某日系認証会社に問い合わせた時には、根拠もなく「ありゃ簡単ですよ」と言われたので驚き。

その外資で、何年か認証を継続していたら「根拠となるエビデンスを示さずに不適合」を出したり、社長を出したら「延々と自慢話」 今回の記事にもある無駄な経営者インタビュー試験機関の認証は、土壌汚染、成分分析など、安全や輸出入には必須な審査で、未だに認証は多いのです。

結局、売り手市場になれば、自分に厳しくは難しく、簡単な方へ流れてゆくのでしょうね。
だから、この外資も、14000や9000シリーズの認証のように売り手市場が終わらないと、謙虚な態度にならないのかもしれません。

外資社員様 毎度ありがとうございます。
「権力は腐敗する傾向を持ち、絶対的な権力は絶対的に腐敗する」というイギリスの政治家の言葉があります。
やはり何事においても競争があり、いつ逆転されるか分からないという緊張感がないとダメなんでしょうね。
政治なら自民党一強では絶対にダメ、いつでも政権交代できる状態が望ましい。けれど野党第一党はもう屑でしょうかない。これは困った。

ISO認証においても、業界設立の認証機関とか親方日の丸とかだと、固定票ならぬ固定客ですから、もう胡坐をかいて左うちわ、あまり競争が激しいと緊張感で消耗するかもしれないけど、公平な競争は絶対に必要ですね。

ところで認証機関への外部からの検証が認定審査であり、内部監査の要求はありませんが、公平性を保つよういろいろ要求があります。
では認定機関には内部監査などを要求しているのかとなると、JABではそういった文書を公開していません。ほかの認定機関はどうなのでしょうか? 内部牽制があるのでしょうね?
IAFに加盟している認定機関同士の相互検証があるそうですが、有効なのですかね? そういったことも公開されていないようです。少なくてもJABのウェブサイトでは見たことありません。
仮にも認定機関はなくても良いなんてことはないと思いますが???


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