ISO第3世代 124.移転後の審査6

23.11.27

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは


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スラッシュ電機の初回審査の最終日である。午前中は審査員が意見交換したのち報告書を取りまとめ、午後イチから審査側と受査側の打ち合わせである。
普通と違い、受査側は余裕で審査側は緊張している。

午後になり、審査結果の報告である。
加藤が代表して概要説明の後に審査結果を報告する。

半藤 高藤 内藤 加藤審査員
半藤 高藤 内藤 加藤リーダー
審査側

山内参与 磯原 岡山
山内参与 磯原 岡山
受査側

クロージングミーティング

加藤 「概要は申しあげたとおりです。御社の環境マネジメントシステムは規格要求を満たしており、認証の推薦をいたします。
以上が結論です。

ええと、なお一層の改善のための気づきを2点申し上げます。
まずひとつは会社規則についてです。
審査の過程でいくつかの会社規則や法規制からの逸脱があったことの説明を受けました。それは通常の職制によるチェックや内部監査、あるいは他事業所で発見された不適合の水平展開として注意喚起の連絡を受けたことにより発見されたものです。

PDCA もちろん、それはシステムのPDCAが良く回っていると証拠と言えます。しかし散発的であっても、そういった逸脱が発生したのはなぜかを突き止めて、対策をすることは必要です。

もちろん機械製品や電子部品などではコストや技術から受け入れる故障率を設定して、それ以下であるなら手を打たないという判断もあるでしょう。何事も費用対効果です。失敗コストより予防コストが高くつくなら、発生したNGをリジェクトすることがベターでしょう。
しかしオフィスワークにおける不具合発生は、機械において公差を厳しくするとか設計から改めなければならないということでなく、コストアップなしに仕事の仕組みを変えたり手順の見直しで対策できることもあります。

そしてこれらの問題の原因を拝見した結果、審査開始時に山内参与からお話があったことを思い出しました。オープニングで山内参与は山本五十六の言葉を引用してお話されましたが(第119話)、そのとき『会社規則を定めた目的・意義が理解させていないのではないか』とありました。
今回の審査結果、まさにそれが会社規則や法規制からの逸脱の原因ではないかと思えます。

今年度、御社では『会社規則を読もう』というキャンペーンを行っておられます。大変すばらしい活動です。今までに発信されたメルマガを、いくつも読ませていただきました。
そこには、さまざまなケースをとりあげて会社規則ではどう決まっているか、どう対処すればよいかというケーススタディがあります。非常に良く作られていると感心します。

加藤
しかし個々の規則の目的は何かをまず示して、その目的を果たすために規則通りしなければならないということを示すものは少なかったように思います。
大事なことは、会社規則があるから守ることではなく、なぜその会社規則が作られたのかではないかと思うのです。


当日休暇についてのメルマガがありました(第115話)。
『当日休暇のときは事後に休んだ事情を説明しなさい』というルールでした。もちろんそのルールを決めた理由があるわけです。当日休暇をとっても当人だけの問題で済むならともかく、外部・内部の多くの人に影響することもあるわけです。
となると当日休暇を取ったとき、翌日通院した証拠を示すことは、本人に悪意がなかったことを証明はしても、当日休暇によって起きた問題を解決できるわけではありません。それでは本来の目的と無縁です。

当日休暇を取った理由よりも、自分が休んだことの影響を上長・同僚に伝え対応策を説明し要請することが大事でしょう。もちろんケガや病気などそれもできない場合もあるでしょうけど、可能な限りそうすることが社会人の責任です。
そういう観点からは、証拠作りのために病院で診断書をもらうなど主客転倒です。

言いたいことは会社規則を守ることは必要ですが、その前に個々の会社規則の制定の意図を教え理解させないとならないということです。その結果、制定の意図とルールのベクトルが合致していないことが判明し、会社規則の見直しにつながるかもしれません。それはまた結構なことです。


別の見方をしてみましょう。
どんな仕事でも、速く、品質が良く、楽にできる方法を採用するのは鉄則です。そしてどの会社でも長年の経験と失敗の積み重ねで、それらの観点で最善の方法を会社の方法に選び、御社の場合は会社規則として制定しているはずです。標準化そのものですね。
そしてそれは常にあるいは定期的に見直しされているわけです。

であれば従業員は仕事をするとき、基本的に会社規則が定める方法をとることが適切であるはずです。
しかし先ほど述べた『会社規則を読もう』キャンペーンを必要とするほど読まれていないのはなぜなのかということになります。
会社規則の存在を知らなかった、読まねばならぬとは知らなかった、作業の手順が書いてあるとは知らなかった、読んでも役に立たない、読むひまがない、いろいろ事情があるのでしょう。
それを考えるのはこの場のテーマではありません。

それについてどうするべきというのはコンサルになってしまい、私どもは申し上げられません。そういう気づきがあったということを申し上げます。

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もうひとつの気づきがあります。それは組織の役割についてです。
組織が大きくなると、ひとつの機能別組織ではなく、製品や分野ごとに組織を分けて事業部制をとるのが一般的というかセオリーになっています。

ナポレオン そもそもの起こりは19世紀初頭、優秀な指揮官であるナポレオンと戦うために、対仏大同盟側は師団というものを考案しました。
通信手段と能力が限定されているとき、一人の指揮官が全体を指揮することはできません。それこそそれができるのはナポレオンくらいだったのです。
それで作戦を立てる機能と権限を持つ軍の単位をつくり、それを師団(Division)と呼んだのです。

規模が大きくなれば人間の管理能力を超えてしまうから、管理できる大きさのものに作戦能力を持たせるというのは当たり前のことでしょう。
その考え方がビジネスに広まったわけです。英語では軍隊の師団も事業部も同じくDivisionですが、日本ではビジネス分野では事業部と訳されます。日本では軍事用語をビジネスに使うのを嫌いますね。


機能別組織と事業部制組織

では組織は、常に一方向に成長していくのかとなればそうではありません。

では今でも師団という名前は残っていますが、意味するところは変化しています。
アメリカ軍は今世界中に展開していますが、司令官なるものは3名だそうです。世界を三つに分けて3名がゾーンデフェンス、アメリカ軍はゾーンオフェンスかもしれませんが……担当地区の軍事行動の指揮を執っているわけです。
ナポレオン時代から170年経ってコミュニケーションツールが発達して、昔流に師団単位に作戦を立てるのではなく、陸海空全体を包括的に作戦行動をとれるようになったわけです。
師団の名前は残っていても、その裁量範囲は狭くなっているわけです。


機能と権限をどう分けるかということは、ビジネスだけでなくそのスタッフ機能である環境管理についても考えなければなりません。
御社の場合、環境管理については本社の機能が強い。それは組織としての強さよりも、担当者の能力が際立っているという要因が大きいように思えます。それもひとつの問題ではありそうです。

それはさておき、いくつかの事業部でヒアリングしたことですが、工場や関連会社で問題が起きたときに、本社の環境管理課が即応体制で指導してくれるということを聞きとりました。
具体例を言えば、法規制などについて本社に問い合わせれば、ほとんどを即座に教えてもらえる。事故や違反が起きたときは、直ちに発生事業所に赴き、行政やマスコミの対応をしてくれるそうです。

それはコミュニケーションや移動ができる場合においては、極めて有効であり効率的なのでしょう。
しかし昨今、大災害が散発しています。そういう事態が起きて情報通信が途絶した、あるいは移動手段が崩壊したとき、中央集権的環境管理は危ういのではないかと考えます。

どうすれば良いのかというのは、これまた私どもはアドバイスできません。
ステゴサウルス ただそういう事態においても機能するよう冗長度を持たせるのか、あるいは恐竜が二つの脳を持っていたと言われますが、そういう対応策を用意しておくべきと申し上げておきます。
緊急時の即応だけでなく、社会インフラが崩壊したときへの対応も考えておくべきです。

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非常に漠とした話でありますが、以上2点の気づきをオープニングに山内参与から頂いた宿題の回答といたします。
以上で報告を終わります

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山内は少し空間を見上げて沈思黙考の後に話始めた。

山内 「長期間にわたる審査ありがとうございました。私どもは審査前にいろいろと注文を付けましたが、さすが大日本認証さんは期待に応える審査をしていただいたと受け止めております。
正直言って、不適合はゼロにできないと考えております。それは弊社だけでなく、一般論として横領のない会社はなく、社内犯罪のない会社もないと私は考えています。横領がないとか社内犯罪がないという会社は実態を把握していないとも思えます。

現在は技術の進歩も激しく、社会の変化も速い。5年前なら想像もできなかった犯罪が考えられ行われている、また大規模なシステムでは、そもそもバグ出しは不可能ではないかとさえ思えます。
そういう状況ですから不具合を見つける、再発防止策をとるという繰り返しが、現実の企業の姿でしょう。

山内参与
非常にありがたい気づきを2件頂きました。意味するところはよく理解します。審査ではアドバイスはいただけないとのこと、残念です。
お話しされたように、東日本大震災では有線電話が不通、携帯も混雑でつながらないという事態になり、交通網の寸断で現地に行くことも叶わないという体験しております。おっしゃることは仮定ではなく、現実の事態と認識しています。

事業部の話をされましたが、分散と集中はサインカーブのように揺れ動いています。机上のパソコンにしても、シンクライアントとファットクライアントをいったりきたりしています。
これからは単にIT技術の進歩とか移動手段の進歩に頼るのではなく、想定外のときどうするか、それも自動監視が使えないとかのレベルではなく、電源がないとか身動き取れないという極限状態を想定しなければならない。
そのとき最終的に守るものは何かということを改めて考え、対応策を講じるようにしたいと思います。
ありがとうございました

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双方異議がないのだから、所見報告書案に署名して終わりである。
管理責任者で経営者代行である山内が、報告を承ったから関係者を集めた報告会は不要といい、これで審査は終了である。

岡山と磯原が審査員たちを受付窓口で見送った。
シャンシャンと進んだので、まだ14:20だ。
スラッシュ電機ビルから出た審査員4名は、歩道上で別れの挨拶をして散っていった。

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男 男
男

彼らも1週間ぶりの帰宅だ。ああいう商売も好きでなきぁできないなと、山内は9階の窓から仲町通り見下ろして思う。
見送りから会議室に戻ってきた岡山は、柳田さんと石川君を呼んで、ペットボトルの片付けや、会議室の机や椅子の配置を標準状態に戻している。
山内は腕組みして考えていたが、口を切る。

山内 「磯原君よ、ちょっとここで話し合いをしようや。
オーイ、岡山、それに石川、片づけを終えたらここに残ってくれ。
それから柳田さん、ホットコーヒーじゃなくてアイスコーヒーを6人分頼んでくれ。口寂しいからタルトかケーキでも頼むよ」

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部屋の片づけを終わり皆が座るとすぐに、柳田がトレイにコーヒーフロートと茶請けを載せて部屋に戻ってきた。
コーヒーフロート コーヒーフロート コーヒーフロート コーヒーフロート
皆がアイスコーヒーを一口飲むのを見て山内は話を始める。

山内 「まずは岡山君、ISO審査対応、ご苦労様でした。君は今までISOと関わりがなかったと聞いている。良い経験になっただろう。
石川君も本社のISOというものを堪能したのではないかな。工場ではISO審査と言えば審査員にやられっぱなしだろうけど、本社のISO審査は我々が審査員を審査するものだ。
ともかく一段落したわけだが、課題は残る。

あの加藤氏が語ったことはまったく正しい。会社規則を守らないのは、会社規則を読まないからではなく、会社規則が存在する意味を知らないからだ。
そう言えば柳田さん……ああ、まんじゅうを食べながらで良いから聞いてくれ」

柳田ユミ 「まんじゅうじゃなく、タルトタルトです」

山内 「あの『会社規則を読もう』のメルマガは終わりではなく、あと半年続けると思う。加藤審査員が言ったように、これからはその会社規則が作られたいきさつとか、何のために作られたかの目的を語ってほしいな。
もちろん毎回ってことはないが、理解を深めるような形で」

柳田ユミ 「かしこまりました。会社規則を読めば、どれでも第1条には目的が書かれているのですが。
法律でも制定が古いとか下位の法律はともかく、基本法や上位の法律の第1条は目的です」

石川 「へえ〜、法律の第1条って目的なんですか?」

柳田ユミ 「そう言うようでは、君は法律を読んでいないね」

石川 「すみません」

山内 「まあ、どんな規則だって習慣だって始まりはあるものだ。その始まりを知れば、それにどんな意味があるのか、あるいは意味がないのかを知ることができるだろう」

柳田ユミ 「おっしゃることは分かります。温故知新、メルマガメンバーに周知いたします」

山内 「頼むわ……、ええと本題に戻ると、今の気づきのひとつは我々というか環境部門の問題ではない。教育というくくりで見れば人事部担当だ。
当面対策はメルマガの運営に注意を払ってもらうこととするが、恒久的にはだな……岡山君よ、ISO審査のまとめを書いてくれると思うけど、そこで会社規則の目的について教育が必要ということを一文入れてくれ」

岡山 「会社規則の目的といいますと?」

山内 「今のわしと柳田さんとの会話を聞いておらんのか😠
会社規則の存在意義と言っても、概念というか一般論としても意味じゃない。個々の会社規則を読めば、多くの場合『この会社規則は、○○業務についての手順を定める』とか、『この細則は○○規則に基づき○○業務の手順を定める』という風に書いてあるのだよ。
ここでいう目的はpurposeだ、objectiveではない。その規則が作られた理由、事情だな。何のために作られたかだ」

岡山 「分かりました。新入社員研修などにおいて会社規則の説明するとき、その会社規則は何のために制定されたか、読む前にそれを理解してないと意味がないと……」

山内 「まあ、そういうことだ。その辺を上手に文章にしてくれ」

岡山 「承知しました」

山内 「じゃあ加藤氏の最初の気づきの対応は柳田さんにメルマガに盛り込むこと、岡山君には審査を受けた報告に、人事にて種々教育において会社規則の目的や意義を盛り込んでもらうことを記述すること、以上でよいね。

さて、気づきの第二点だが、これは完全に環境管理課のマターである。
工場の環境管理業務というは、完全にスタンドアロンでできるものだろうか?」

磯原 「中小企業を考えれば、他に頼ることなく営んでいるわけで、我が社の工場の規模なら完全にスタンドアロンでもできるでしょうね。
ただ何事も費用対効果です。工場で一式整える場合と、工場では現場対応の部分だけにして、長期的展望とか法改正に備えた対応を考えることは本社に置くのか、工場には作業者レベルだけおいて、技術的なことはすべて本社で取りまとめるのかなど、分担割合にもいくつか考えられますね」

山内 「長期計画などは本社が握っているほうが良いということか?」

磯原 「良いというか、投資計画や更新計画を考えるとですね……例えば省エネ法では事業拠点を複数持つ企業の場合は、企業全体で省エネを図れとしているわけです。
つまり法対応では、個々の工場で対応しようというのは時代に合いません」

山内 「ということは加藤氏の語ることは現実に合わないということか?」

磯原 「そうではありません」

山内 「お前はいったい何を言っているんだ、白黒はっきりせい」

磯原 「一律にはできないということです。
法律で全社まとめろといっていることは、全体的に対応しなければなりません。それ以外のことは条件によって最適解は異なります。

現在の工場は事故や違反が起きたときに、工場独自に対応する力がないということが現実です。熊本工場の漏洩事故のとき(第64話)、本社から行かなかったなら真の原因究明は難しかったでしょう。あるいは岩手工場の記録改ざん(第83話)でも同じです。

法規制以外をすべてをスタンドアロンとするのは、効率的にもコスト的にも合わないです。しかしコストが合わなくても、緊急時対応のためには最低限の環境管理は自己完結しなければならないわけです」

山内 「自己完結するものと集中管理するものがあると……なるほど、漏洩事故が起きたとき、本社にどうしましょうでは困るわけだ。漏洩事故が起きましたがこういう処置をとりましたという報告が欲しいわけだ。今はそれさえできないと……」

磯原 「実を言って、そうしてなったのは私の責任かもしれません」

山内 「というのは?」

磯原 「3年前、私がここに来たとき、当時の環境管理課のメンバーで工場の支援をしていた人はいませんでした。皆さん業界団体に行ってお遊びのような資料作りとか、踊るばかりで進まない会議に出るのがお仕事のようでした。
しかし工場や関連会社からは日々たくさんの相談や問い合わせが来ていました。私も工場にいましたから、それを放っとくわけにはいきません。担当とか関係なくそれに対応しました」

柳田ユミ 「あのとき磯原さんの周りの人たちは、わざわざ貧乏くじを引くことはないのにって笑ってましたよ。
そんな人たちは、みんないなくなっちゃいましたけどね、アハハハ」

石川 「いなくなった……飛ばされたってことですか」

岡山 「今、田中さんが毎朝メールをチェックしていることですね」

磯原 「そうです。そうしたことで、本社の環境管理課は工場や関連会社の信頼を得たわけですが、その過程で工場の人たちが自ら考えるということを止めてしまったようです」

山内 「なるほど、とはいえ磯原のせいで工場の人が考えなくなったわけではあるまい。工場の人たちが怠けたのは工場の責任だ。
要するに緊急事態になったとき、自分たちで目の前の修羅場を何とかしようとする心構えと知識を持つ必要があるということだ」

柳田ユミ 「もう東日本大震災のとき環境管理課にいた人は、私一人になってしまいました。あのとき岩手工場も宮城工場も福島工場も連絡が途切れました。特に福島と宮城は工場が崩壊しましたから、電話が通じてもその場に誰もいなかったようです。携帯電話も基地局の多くが被害を受けましたからねえ〜」

山内 「緊急事態が起きるかもしれないから備えるという時代から、必ず起きるから待ち構えている時代に変わったからね。
ともかくスタンドアロンとは言わないが、緊急時は他の支援を受けずとも対応できる体制と能力を持たねばならん」

磯原 「すぐには無理ですが、今年度一杯くらいにその際の対応ルールを定め、対応すべきものについての運転や通報の手順を定めて教育を行うということでいかがでしょうか?」

山内 「お前は課題があると、すぐにその対応を始めるのだな」

磯原 「いつか起きるのではなく、必ず起きるなら、それは明日かもしれません。早急に対応すること、それが我々のタスクでしょう」

山内 「よし年末を目標に進めてくれ。おっと、岡山はもう暇になったわけだから、磯原、岡山に担当させろ」

岡山 「私は研究者でして、緊急事態対応なんて知らないのですよ」

山内 「磯原の指示を受けてテキストと手順つまり会社規則の作成だな、そしたら工場の環境課長を集めて教育をする。それから工場規則への展開を図らせろ。
それをすれば岡山も一人前になる。良い機会があって幸いだな」

岡山 「私は不幸です」

石川 「今回のリーダーだった加藤さんの最後の話は、昨年末の審査のリーダーの三木さんよりも深い意味のあるものでしたね。加藤さんはすごい力量をお持ちなのでしょうか?」

山内 「石川君は『巨人の肩に乗っている』という言葉を聞いたことがあるかい?」

石川 「いいえ」

山内 「ニュートンが書いた手紙の言葉といわれているが……元の文章は結構長い『私が遠くを見渡せたとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからである』と書いていたそうだ。意味は『先人たちが積み重ねた発見やアイデアを知っていたから新しいことを発見できた』と解されている。

たぶん、加藤氏は三木さんに会って、教えを乞うたに違いない。我々が何を望んでいるか、どんな話をすれば喜ぶのかを聞いたと思うよ。
三木さんは過去に真面目な審査をしたが、メンバーの審査員たちがトラブルばかり起こした。私が希望したものとは違うと苦言を呈したので忸怩たるところがあっただろう。
三木さんのことだ、仇を討ってほしいと加藤氏にいろいろ伝えたのだろうと思う。まあ、何事もそういう積み重ね、繰り返しで進歩していくんだろうなあ〜」

磯原 「山内さん、ISO認証を継続するか返上するかについてのお考えは?」

山内 「お前も、もう一歩進歩せんといかんなあ〜。わしの意見を問う前に、みんなと話し合ってみろ」

磯原 「はい、わかりました。
ええと、ISOも一段落したから、暑気払いを兼ねて打ち上げをしよう。石川さん、幹事をやってください。申し訳ないが、一番年下が幹事をする習わしだ」

石川 「えっ、それじゃボクでなく、柳田さんじゃないですか」

柳田ユミこはばからしゅうありんすバカなこといいなさんな、わちきはオババでありんす」

岡山 「この人は都合が悪くなると、突然花魁に変身するんです」

山内 「石川君、わしも呼べよ」

石川 「了解です」



うそ800 本日 予想するご意見

加藤氏のセリフで今回の半分を使っているという声が聞こえる。
私は審査員をしたこともなく、もちろん審査リーダーをしたこともありません。だからせめて小説の中では演説をぶちたいななんて……ことはありません。
まあ私の会った審査員はいずれも、よく聞き取れない小さな声で、ああだこうだとつまらない話をしただけでしたね。

ジョン・F・ケネディ

ですから思うんですよ、
リンカーンの「that government of the people, by the people, for the people」のゲティスバーグ演説とか「the torch has been passed to a new generation of Americans」のケネディの大統領就任演説まではともかく、活舌の良い、論旨明瞭なお話を期待したいです。
なにせリンカーンやケネディと違い、審査員はお金をもらって話しているわけです。落語家とか漫才師並みまでは求めませんが、適切な音量と明瞭な声で聞く価値のあるお話を期待したいものです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
本日の文章は9千字超です。全文読むのに20分はかかったでしょう。お疲れ様です。
週2回更新していますが、累計で最低で300カウント、多い時は400カウントお読みいただいております。ありがとうございます。



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