ISO第3世代 132.緊急事態研修会3

23.12.25

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは


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初日の夜は懇親会。工場と本社とは、共同して仕事をしなければならない関係であるが、同時に立場は正反対であり和気あいあいにはなり難い。
お酒
お酒
お酒
だが磯原は元々工場勤務だったし、田中、坂本、石川は工場から転勤して間がないということから同胞と思われて、苦情とか嫌味を言われることはなかった。
その反面、業界団体とつるむのがお仕事だった前任者たちへの怨嗟がひどい。まあ、それは田中も坂本も大いに同感であった。
磯原は幸い工場でクローズする仕事だったこと、石川は入社して間がないことから、あまり本社との葛藤の経験はなくピンとこない。

宴が終わった後、酔いつぶれた石川を除いた4人は、シナリオの見直しを行った。
まず物語をシンプルにする。それによって起承転結でなく、起承だけになったりするが、それは仕方がない。登場人物も多いと訳わからなくなるから、4名以下に止める。そんな感じで切り出して確認後、必要数をコピーした。
真夜中はとうに過ぎていたが、それからまた一杯やって寝た。懇親会で飲んだ時は明日の心配で落ち着かなかったが、その懸念がなくなった今は酒がうまい。


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翌日は午前中に6件ほどロールプレイをした。今回参加したメンバーは一応全員が演技をしたことになる。
シナリオが短くストーリーがシンプルになったことで、大きな問題なく進んだ。
とはいえ、劇中、故意か忘れたか市や消防署への報告義務のあるのを、しないチームがあり、また対応を決めることができず時間が過ぎてしまったチームもあり、それを見ていた面々は実際もそうだろうなあ〜という印象であった。

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午後にはロールプレイの反省会である。
会社によって企業文化があるが、スラッシュ電機は後先を考えずに言いたい放題というのが社風である。そして会議での発言は免罪というのも慣習である。

池神 「お芝居なら決定するというのは簡単ですが、現実には簡単ではないですね。漏洩事故が起きたとき、市役所に届けるかどうか課長は決められません。最低でも部長、後でもめないためには総務部長の了解も必要です」

余部 「それは分かる。上の人になるほどメンツもあるし、後で社内のえらい人が市への届は必要なのか、報告しなくてもよかったのではないかと言い出すからね」

山内 「とはいえ漏洩事故が起きたときは、市に報告が義務なんだろう?」

坂本 「漏洩したものによっていろいろですが、可燃性液体は消防署や市役所ですね」

池神 「そうは言っても漏れた量がドラム缶なのか、一斗缶なのか、ペットボトル程度なのかということで議論になりますよね」

坂本 「確かに法律には足切りまでは書いてないね」

田中 「まあ具体的に数字が書いてなくても、魚が浮いたり、臭いがすれば問題でしょう」

竹田 「ということは、魚が浮いてなくて臭いがしなければ問題ではないということで、市に報告しなくても良いということになる」

池神 「それなら近隣住民も異常に気付きませんよ」

坂本 「この場で届ける基準を決めることはできないが、工場が漏れたことに気づいて回収とかするレベルなら報告はしなくちゃならないよ。

近隣住民は結構見ているからね。工場の敷地内でも、従業員がいつもと違う行動をしていればなんだろうと注目するし、工場の敷地外に吸着マットなんて持ち出したら市役所に電話をする人はいるね。

工場から漏洩しましたという報告がなくて近隣住民から問い合わせがあれば、心証を悪くすることは間違いない」

竹田 「でも私が市に報告しようと言い出せば、部長や工場長の心証を悪くするし、止めるのは間違いない」

山内 「どちらにしても心証を悪くするなら、法違反しないほうがベターだろう」

竹田 「でも行政が気付かない可能性もあるわけですよ」

余部 「でもそれはどう考えても遵法精神がないのと違うか。倫理観がおかしいよ」

坂本 「こう考えたらどうだい、部長や工場長が問題だというのは、市役所が住民に広報したり、マスコミに流すかもしれないからだろう。
例えペットボトル1本の漏洩で市役所に届けたとする。市の職員は大騒ぎすることはなく、魚が浮くほどじゃない、水面に油膜があれば吸着マットで対処しろとか言われるだろうけど、おおごとにはならずにおしまいじゃないかな。

その程度のことで市役所が付近住民に避難しろとかいうはずもなく、マスコミに伝えることもない。
ということはペットボトル1本程度の流出でも市役所に報告すれば、法を守り、後々市からなぜ報告しなかったのかといわれる心配もないということだ」

竹田 「そうは言いましてもねえ〜、偉いさんはネガティブなことを外部に言うなというスタンスですからねえ〜」

井上 「竹田さんの言っていることは分かるよ。課長は軍隊なら前線指揮官だから、問題を目の前にしているわけさ。だから目の前の問題を収拾することが最重要と認識する。
ところが部長になれば事務所で報告を聞き指示を出すだけだから、現場の問題を理解できないのだろう。バレなきゃ問題じゃないっていう感じだな」

山内 「聞き捨てならないなと言いたいところだが、現実はそうだろうねえ〜
しかし君たち、そういう認識というか諦めが、新聞を賑わすスキャンダルを生み出すぞ。例え自分が悪者になっても正義を貫かないとだめだ」

竹田 「山内さん、青臭い粋がりでは通用しませんよ」

山内 「そういう考えでは、いつか犯罪者になるよ。上司の倫理観が問題なら、社内でも社外でもそれを糾弾すべきだ。どうしても通用しないなら会社を飛び出してもいい。犯罪者になるか、そうでないかの大きな分かれ目だよ。

どんな仕事でも法規制に関わる。そのとき上司の考えとか社内の空気で動くことはある。だけど環境部門は事故や違反につながり、人命に関わるし刑事事件になることもある。だから正義を通す気概がなければいかん。
今は公益通報者保護法もある。上司に何を言われても、法を遵守する覚悟がなくちゃ環境課長なんてやってはいかん」

竹田 「まあ……それは正論ですが、でも建前論ですよ」

余部 「そういうことは課長にだけでなく、部長級以上にも徹底してほしいですね」

山内 「もちろんだ。そういうことを伝えるのは私の責任だ。今までも法遵守の重要性を伝えていたつもりだし、これからも伝えるよ。
もし君たち課長クラスが刑事責任を問われたときは、部長への報告とか証拠をしっかりと示すべきだね。死なばもろともだ。

いい格好して自分ひとりで責任を負ってはいかん。そんなことしても会社は面倒見てくれない。懲戒解雇なら退職金もないし、就職口を斡旋してくれるわけでもない。
ならば部長や会社の責任を明白にするのがまっとうな道だ」

竹田 「そんなことを山内さんの立場で語ってよいのですか?」

山内 「おや、私がおかしなことを言っているか?
仮にわしが語ったことの逆『事故や違反が起きたら課長はおとなしく罪をかぶれ。決して会社や上司に罪を負わせるな』と言えばよいのか?
それは倫理的でもなく遵法とは真逆で、それこそ公益通報制度の餌食だ。
責任を逃れたくて『部長決めてください』と言うなら職を辞せ」

余部 「アハハ、まさしくその通りですね」

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午後はこの度作成した事例集の説明と反省会だ。
まずは岡山から事例集が配られ、内容の説明である。

岡山 「昨日、山内参与からお話がありましたように、当社においては事故や違反で行政に報告するようなことが毎年1件は発生しています。内容を見ると実はあまりバラエティーに富んではいません。

一番多いのは燃料や化学薬品の漏洩事故です。次は廃棄物に関わるもので実質犯も形式犯もあります。三つ目には化学物質の管理不十分などが占めています。
形式犯なら問題ないと考えてはいけません。形式犯でも実刑も公表もありますからね。法規制を認識していなかった、あるいは遵守が徹底していなかったと反省しなければなりません」


参考1:実質犯とは加害行為(利益侵害)が発生するもので、環境について言えば不法投棄とか印紙金額不足(脱税になる)などがあり、形式犯とは加害行為が発生しないもので危険物取扱者免状不携帯とか廃棄物契約書の記載不備などがある。

参考2:上記事故発生状況は事実である。
テレビでは排ガスや排水の測定データ改ざんなどが多々報道されるが、件数から言えば水質事故とか廃棄物の不法投棄の件数は、年とともに減少傾向にあるが、未だに環境事故・違反の過半を占める(注1)


岡山 「事故や違反を起こさないように努めることはもちろんですが、起きてしまったときいかに被害を少なくするかを考えておかなければなりません。
計画していた対策してダメだったら、手がなくておしまいでは困ります。一の手を打ってだめなら二の手、三の手と想定しておいて、困難にめげずに事態の収拾に努めなければなりません。

今回お配りした事例集を管理者だけが見るとか、回覧して終わりではなく、自分の工場に類似設備があれば同じ事故、類似事故は起きないか、事故が起きたときの対策はしているか、その対策で大丈夫かなどを、再検討してほしい。

事故が起きるのはやむを得ないと思います。いや現実には機械の故障、操作ミス、外部からの影響などによって、必ず事故は起きると考えるべきでしょう。
だからこと過去の失敗を糧にして再発を防ぐように、発生したら速やかに手を打つようにしたい。
すべてを議論する時間はありませんから、いくつか取り上げて討論したいと思います」

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竹田 「過去の事故や違反をみると、何かにひとつの異常で起きたというのはないですね。すべて何か異常があり、そこにまた別の異常が重なり、結果として事故が起きたというのがほとんどというか全部ですか」

力丸 「屋外タンクからの漏洩という事故が過去から多くあるが、ええと……これはタンク固定のボルトの錆ていて、地震があってボルトが折れてタンクが倒れて重油が漏れ、更に防液堤にひび割れがありと三つが重なったもの。

これはタンクの上限検知のリミットスイッチが故障していたこと、防液提内に漏洩検知装置がなかったこと、満タンになりタンクから防液提内に溢れたのに気が付かずローリーから送油し続けた。
運転手は現場にいたのかいないのか、防液提から溢れれば気が付くだろうが……

またローリーからの給油接続部が防液提の外側にあり下に受けがなくて、更に接続部のパッキンが劣化していたと……
確かに問題がひとつじゃなくて、二つとか三つ重なって起きているわけだ」

力丸 「しかしなんだね、このグラフを見ると当社内だけでも、21世紀初めまでは地下配管からの漏洩が数年に一度は起きていたのが、ここ数年は一度も起きていませんね。
地下配管が禁止されたのはいつでしたっけ?」

坂本 「2005年頃だったかなあ〜、もう10年になるね。
やはり配管を直接地下に埋設する方法では、必ず劣化して漏洩するんだね。今は規制が厳しくなり、ピットを掘ってそこに配管を通すから、配管に力がかからず、また漏れてもすぐには土中に浸透しないようになったからね」

力丸 「あの規制を見たときは改造費用が大変だと思いましたが、結果としては良かったですね」

池神 「今世紀初めは廃棄物の契約書やマニフェストの問題は常にありましたね。それも今はほとんど聞きません」

橋本 「ひとつは担当者のレベルアップがあったと思います。20世紀末に産業廃棄物の管理が厳しくなりましたからね。それが担当者に浸透するに5年くらいかかったのですよ。
またマニフェストは今ほとんど電子化されて、インプット漏れもなくなり期限管理も自動的にできるようになったからでしょう」

山内 「ということは、不具合が多発しているものは、システム化すれば良いということか?」

田中 「すべてができるわけではないです。帳票なら電子化すれば改善になりますが、点検業務の電子化はできません。センサーをつければ自動監視にできるでしょうけど、さっきの話にあったように、リミットスイッチでもセンサーでも何でも、形あるもの必ず壊れます。センサーの異常を検出する仕組みが必要になります」

山内 「一筋縄ではいかんのだな」

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予定していた研修は終了して、終了予定時刻まで30分になった。山内の締めの挨拶である。

山内 「緊急事態研修会と題して行いましたが、主催側の検討不十分もあり、皆さんとしては不満だったかもしれません。私どもとしてはこれに懲りずに、来年も開催したいと考えておりますのでよろしくご協力をお願いします。

開催の理由は初日の挨拶でも申し上げましたし、実際のロールプレイでも感じられたと思いますが、要するに工場では緊急事態があまり起きていない、だから緊急事態に不慣れなのです。そのため模擬的に緊急事態を何度も体験してもらい、いざとなったときに慌てず適切な対応をとれるようになってほしいのです。

最後にぜひご理解いただきたいことを話します。
山内さん

研修センター
この研修会には環境管理担当課長に出席をお願いしています。改めて自分の任務は何かを再確認してほしい。皆さんの責任は重大で、またそれを行う権限も持っています。
その任を執行するにあたり、ロールプレイの反省でも出ましたが、決断を恐れるな、決断から逃げるなと言いたい。

具体例として緊急事態が起きて行政へ報告とか対策を決断するとき、皆さんの話にもあったが上長の了解を得るのではないだろうか。
会社規則でも事故対策の責任は課長にある。上長の顔を見ないで課長が決断しなければならない。

後で問題になるのではないか、大げさすぎないかと心配するより、目の前の状況を心配すべきだし、何よりもその責任も権限も皆さんにある。
そもそも法で定められた通報をして責められる謂れはない。決定権のある者が決定して責められるはずがない。
法で定める通報をせぬことは法違反であり、決定権のある者が決定しないことは、職務放棄で就業規則違反だ。
環境課長なら決定し命令し、指揮をとらねばならない。

もう一歩進んで考えなければならないことがある。
今まで全社的に指揮系統とか通信がマヒしたことはなかったが、東日本大震災ではいくつかの工場が被災して通信が途絶えた。
だがもっと大規模な災害が起きる恐れもあるだろう。あるいは事故や災害にあった工場が外部と通信が途絶することもあるだろうし、交通途絶ということもあるだろう。警察や消防などの支援を受けられないということもあるのだ。
そうなったときは、工場施設の管理者として安全の維持、そして従業員の安全確保のために行動してほしい」


山内 「現在、工場で困ったこと迷ったことが起きると、本社の環境管理課にどうしましょうかと問い合わせてくる。もちろん本社は工場や関連会社に対して種々サービスを提供するために存在している。
組織図
だが相談はともかく、決定権は工場にあると認識してほしい。決して本社が指示命令するわけではない。
それは組織図を見てもお分かりのように、本社組織はラインではなくスタッフであり、工場の上位組織は事業本部だ」

情報途絶となった場合、環境課長は先ほど述べた職責を全うするだけでなく、本来はより上の職階の人が決定すべきことも、環境課長が決断し命令することになるだろう。なぜなら皆の安全を確保するには、工場設備をよく知った者でなければならないからだ。
環境課長は責任重大だ。その責任を認識し誇りをもってあたってほしい」

余部 「質問です。おっしゃることは良く分かります。
しかし工場が外部から途絶するような災害とかをご心配されてますが、そういう事態まで対応する必要があるのですか?」

山内 「東日本大震災の後、一段落してから被災した全工場を歩きました。
どこも震災時に大変苦労されている。崩壊しつつある建屋からの避難誘導、電気系統の火災発生や感電の防止措置、薬品や燃料配管からの漏洩対策、環境施設、排水処理とかタンク類からの漏洩、保管しているPCB機器(注2)や危険物や毒物の紛失防止などなど、

まあ、それらは本来業務でしょう。しかしそれだけではない。
あのとき地震の揺れは半日に及び、屋外に避難すれば雪がちらつき寒風吹きすさぶ。そのため具合の悪くなった人もでた。また交通機関の運休、道路の損壊により、帰宅できない人が大勢いた。
そのために従業員が風雪を避けられる工夫、避難場所の安全確保、トイレの設営、飲料水、具合の悪くなった人の休憩所、更には帰宅する人のグループ編成、安全なコースの確認、することは大変です。
地震ばかりではない。今月だって台風は何度も関東地方を襲っている。災害はいつ起きるか分からない。
環境課長は外部と連絡がつかないときでも、自力で、工場の安全確保と従業員の生命維持を考えなければならない。それが仕事と思ってほしい」



うそ800 本日の覚悟

私は退職すれば災害が起きても人様のことなど気にせずに、自分たち夫婦の安全だけ考えればよいと思っていた。しかしマンションの老人クラブに入ってみれば、マンションに高齢者が多いことに驚いた。
日頃ブラブラしている私は、引退した中で一番若いわけで、ひとたび事が起きれば、私より年長者を支援しなければならないことになる。ヤレヤレ

改めてマンション内をさまよい、いろいろ見て歩くと、私の住むマンションはバリアフリー(Barrier-free)とは程遠い。まさにバリアフル(Barrier-full)である。
高齢者の目で見て、平常時にはマンションは便利で安全であるが、災害時には一転して不便で危険になる。


以前書いたことがあるが、ちょうどこの物語の2019年に台風が房総半島に上陸したとき、福島県でも水害に襲われた。義母の実家付近では阿武隈川の水位が8mも上昇し1階が完全に水没した。95歳になる義母が生まれてから初めてと語っていた。
川面から少し高いくらいでは油断できない。
義母の実家のある集落では、東日本大震災を耐えた家々も、その台風のせいでほとんど建て替えになった。

お暇ならこちらもお読みください ⇒ 快哉せずに振り返れ



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注1
水質事故の状況
環境省資料
国土交通省資料
・環境省 産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)

注2
この物語の2019年末(令和元年/平成31年)時点では、高濃度PCB機器の処理はまだ終わっていない。
 北海道 2022年終了
 東京  2022年終了
 豊田  2024年終了予定
 大阪  2024年終了予定
 北九州 2019年終了
東日本大震災のとき流出したPCB機器は100個程度と報告されている。
東日本大震災のPCB廃棄物への影響について



外資社員様からお便りを頂きました(23.12.25)
おばQさま
しっかりとした結びを有難うございます。(まだ続くならご容赦を)

山内の覚悟は立派なのです。
「そもそも法で定められた通報をして責められる謂れはない。決定権のある者が決定して責められるはずがない。」
まさに正論なのです、その一方で各課長の所属は工場であり、事業部となります。
命令権の無い山内のいう事は、正論でも参考意見でしかないのが残念です。
おそらく山内の言う事に賛同して、問題を隠さずに通報して上長から叱られても、スタッフの山内は庇えないのです。

もちろん、このような講習が無駄だとは決して思っていないのです。
研修の経験は、少なくとも非常事態に直面すれば役に立つのです。
そしておばQさまは、上記のようなスタッフとラインの利益相反については、判った上でお書きになっているのがとても深いと思いました。

外資社員様 毎度ご指導ありがとうございます。
正直言いまして、正論が通らないのは世の常ですね。私は青臭い人間なので、現場の管理者時代は教科書通りのことを言い、いつも上とぶつかっていました。「先輩からお前は下からよく思われるだろうけど、上からは良くは思われないぞ」と言われていました。
偉くなれば強度率とか度数率を良くしようなんてしか頭に浮かばず、ケガ人の痛さを認識しません。ケガも届けなければないことになり、事故も違反も(以下略)
2年位前に池井戸潤の小説批判を書いたことがあります。彼の小説は面白い、でもなんで悲劇が起こる前に誰かが止めなかったのかというほうが重大問題ですね。悪を暴くことより、悪を止めること、そう努めないと会社も世の中もよくならないでしょう。
廃棄物の不法投棄なんて実行犯に利益がありません。なんでするのかとなると、会社に予算がない、不良をなかったことにしたいなんて理由です(新聞報道による)。それほど会社思いなら悪事を働かないほうがより会社に貢献すると思います。
と思うのは私だけなんでしょう。その人には立場もあり、企業風土もあり、上下左右の意見もあり、大変なのだと思います。
おっしゃるように指揮権のある人、根本的には社長が遵法第一を唱えるだけでなく、それを行動で示さなければならないでしょう。
100年前、USスティールのゲーリー社長が「生産第一、品質第二、安全第三」の方針を「安全第一、品質第二、生産第三」とした。それで事故が減ったのは、口だけでなく経営上の判断も現場管理の判断にも徹底して実施させたからでしょう。
ともあれ、ここは私の主張の場ですから、私の考えるあるべき姿を書くのをお許しください。


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