ISO第3世代 136.パンデミック4

24.01.15

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは


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年があけて2020年1月である。中国の詳細不明の肺炎は日本では特段話題にもならず年を越した。日本のニュースではあまり報じられないので、磯原は毎日中国やアメリカのニュースを見ている。中国語も英語もできないが、文字を読んでいて興味があるところを翻訳すれば概要はわかる。
中国や香港の記事には「武漢カゼ」とか「武漢肺炎」という表記が見える。アメリカのニュースに「China Virus」あるいは「 Wuhan武漢 Virus」と書かれたものが多い。


注:「武漢ウイルス」や「武漢肺炎」などの表記は差別的であり、起源が中国と断定しているので使用すべきでないという意見も2020年3月頃に見られる。
私は「2020年1月から2月頃にはそのような表記が多いという事実」を語っている。だから差別的という反論はお断りする。そして私がニュースを見ている限りでは、それ以降もそういう表記は、中国のものにも多い。
なお、WHOがCOVID-19と命名したのは2020年2月12日である。それ以降、英文ではCOVIDという表記が多く、コロナというのは日本だけのようだ。



コロナウイルス流行の初期を忘れてしまったかもしれない。少し概要を述べよう(注1)


コロナ感染者数推移

コロナ流行には第何波と呼ばれるいくつかのピークがあった。
ピークの数は人により機関により異なり、7波とか9波とかいわれる。
第1波から第4波など、その後の山を見るととてもピークには見えない。初期は誰もがこんなに大きな問題になるとは思わなかったから、第1波とか名付けたんだろうね。


WHO(世界保健機構)は当てにならない。あそこはもはや中国の報道機関と化したようだ。WHO事務局長へドロスは2020年1月中国を訪問しても武漢に行かず、 テドロス 習近平と会談だけで中国の対処をほめたたえた。そして3月上旬までパンデミックではないといい、3月11日になってパンデミックだと言い出した。中国からの指示かもしれません。
ヘドロスと中国の関係は私ばかりでなく、海外のマスコミでも報じられている。

あっ、ドロスでなくドロスでしたか、まあヘドロ並みの奴ですから以降へドロスと呼びましょう。ヘドロでもいい。


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2月上旬である。磯原のところに下山がやってきた。先ほど「どこ?」と電話が来た。在席してますと答えると、話があるということだった。
今は社内電話もスマホだから、相手が電話に出ても在席しているとは限らない。ひょっとして北海道にいるかもしれない(注2)
打合せ場に行く。会議室でなくてもよいと下山が言ったからだ。

磯原 「どんなご用件でしょうか?」

下山 「環境管理課で緊急事態の対応とかいう指針を決めたそうですね」

磯原 「タイトルが微妙なので勘違いする人が多いのです。『非常事態下における緊急事態対応』です。
環境管理といいますか設備管理の仕事では、事故が発生するのが必然と言ってはお叱りを受けますが、実際問題として確率の問題です。様々な原因によって事故が起きますし、それを覚悟しておかねばなりません。当然事故に備えて必要な装備を持ち対応手順を決めています。

ただ通常の手順は平常時……緊急事態が定常時というとまたおかしいですが、地震とか台風じゃないということです。実を言って今までは、地震が起きたときに環境施設に事故が起きたときとか、台風が来て被害を受けた後に事故が起きたとか考えていないことが多かった。
現実には地震が起きた後に環境事故が起きれば、交通途絶、通信途絶している場合もありますから、それを考慮した対応策が必要なわけです。

それであの指針は、そういった天災とか起きた場合に環境事故が起きたときの対応を考えるというものです」

下山 「なるほど、よく分かりました。まあ私どもが考えていたことと、無縁ではありませんね。
実は緊急事態対応という手順を決めているのは、環境だけなんです。
ご存じとは思いますが、会社規則には緊急事態対応規則というものがあります。それは環境だけでなく全部門全事業所に対して『法に反すること、近隣に影響を及ぼすおそれのあること、マスコミ報道されるおそれのあるもの、市民団体などの抗議対象になるおそれのあるものが発生した時は、事業所長は直ちに事業本部に報告すること』と定めています。
ただそれだけなんですよ。決めているけど、タイトルだけで具体的手順を決めた下位文書がないのです。

コロナウイルス
コロナウイルス
コロナウイルス
コロナウイルスコロナウイルスコロナウイルス
コロナウイルスコロナウイルス
今回のダイヤモンドプリンセス号の病気はコロナウイルスと言いましたね。今までの報道を見ると、このまま終わるとは思えない。もし感染が広がれば国内移動の制限とか、学校休校まで規制が広がるかと懸念しています。出社するのは安全や保安人員だけということになるかもしれない。
そこから演繹されるのは当社の全部門において、そういう事態になったときの対応を決めておく必要があるということです。

対応策も規制対応、そして危険性対応でいろいろパターンを考えないとなりません。軽いほうはマスクなど感染予防対策、次は必須以外の出張禁止とかでしょうし、更に厳しくなればリモートワーク可能な業務は出社禁止とか、オフィス・現場とも人と人の接触しない対策、最終的には操業停止といろいろ想定されます。

人事としては各事業所、つまり本社はもちろん工場や支社において、それぞれの環境や特性に合わせた緊急事態対応の手順を整備させなければならないと考えました。早急に関係者を集めてその説明と検討を指示するつもりです。

そこで磯原さんに環境管理課で作った指針を説明してもらいたいというお願いです。急遽ですが今週中に開催予定です」


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三日後である。人事主催で本社の各部と事業本部、そして各事業所の総務部長を集めて説明会である。 人事部の挨拶は執行役人事部長である。役員が挨拶するのでは、こりゃ力を入れているなって分かる。

松崎人事部長
松崎執行役人事部長

人人人
人人人

松崎人事部長 「今月初めに起きたダイヤモンドプリンセス号の感染症流行を、皆関心を持っているだろう。この感染症が広まるか、何事もなく収まるかまったく予測がつかない。だがディズレーリが語ったように、我々は最悪を想定し最善を尽くさねばならない。

この感染症が大流行するとして、そのとき我が社が事業継続していくため、あるいは操業停止となっても終息後に速やかに再開するために、どのような策をとるかを考えなければならない。
これは理念とかあるべき姿ではない。具体的に即物的に、皆さんの職場、事業所がどう対応するかをルールに定めて徹底しなければならない。

当社の会社規則では緊急事態対応という規則があるが、A4の1枚物で理念しか書いてない。各事業所においてはそれを展開して、どのような事態にはどう対応するのか、業務の対応をどう見直すのか、などの手順を決めておかなければならない。
それもワンパターンということではない。皆さんも聞いているだろうが、既に外飲みの禁止など報道されているが、そのうち国内移動つまり旅行の禁止とか不要不急の外出禁止、学校休校など具体的な規制も行われるだろう。

我が社の対応もそれに合わせなければならないが、当社の事情を考慮しなければならない。顧客と調達先との連絡をどうするか。保守管理を請け負っている客先もあるだろう。官公庁向けとなると万難を排して対応せねばならないだろう。
それぞれの事情により対応手順は異なる。それを具体的に文書化して、部長が倒れても次長が判断できる、次長が倒れても課長が対応できる、まさに軍隊のごとく指揮継承権を明確にして事業継続を図ってほしい。考えてほしいではない、できるようにしてほしい。
具体的な話はこれからあるが、その意図をご理解いただき実践してほしい」

執行役となると多忙である。人事部長はサッサと退席である。
次からは百田参与が司会進行をする。

桃田 「人事部長よりお話がありましたように、各事業所において非常事態時における対応手順を定めてほしい。きれいごととか形式では意味がありません。実践できるもの、実効のあるものを作ってほしいのです。
とはいえ具体的な見本もなければ作成も難しいでしょう。職場における防災訓練は消防法 で定めているわけで、消火や避難手順を決めているはずです。しかしそれ以外の非常事態対応を定めているのは環境部門くらいです。

本日は環境管理課の磯原課長から環境管理課が作成発行している『非常事態下における緊急事態対応』を参考に、どんなものを作成すべきかを説明してもらいます。
なお、その後質疑応答の時間を取っておりますので、説明中の質問はご遠慮ください」

磯原の出番である。磯原はパワーポイントを映し出す。

磯原 「環境管理課の磯原です。皆さんにお配りしたものは、工場の環境管理部門を対象にした非常事態下における緊急事態対応手順です。ご存じのように環境管理においては事故とか故障が起きると、漏洩事故とか排水基準オーバーなどの事故や違反につながります。それで緊急事態が起きるという前提でこういった手順を定めております。

しかし昨年千葉県に上陸した台風とか、東日本大震災のような災害が起きたときに、環境施設に事故が起きることもありえます。あるいは災害によって施設が事故を起こすことも予想されます。実際に東日本大震災時には保管していたPCB機器が多数津波によって流されてしまったという事態が起きています。
そういう場合、消防を呼ぼうとしても道路が通れないとか、そもそも電話が通じないこともあります。
ということでこの指針は自然災害などが起きているときに環境事故が起きたときどうするかという状況における対応を示しております」

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磯原 「以上で指針の解説を終わります。
皆さんが作ろうとしているものは、これとはアイテムが違います。でも考え方や取り決めることなどは同じでしょう。考えられる危険、事態を想定する。そのときに利用できるインフラによっていくつかの段階を設定する。そしてそれぞれの制約条件下で行うべきことを説明するという形になるかと思います。
では、ご質問があれば」

一斉に手が上がる。

参加者 「感染症の流行対策が当面の課題だが、具体的な危険とか事態というものは、どういうイメージなのでしょうか?」

磯原 「具体的な危険というのは例えば感染が飛沫感染なら、人と人の間隔をあける、マスクをする、仕切りをするということが考えられます。
もちろんどこまでするのか、間隔は何センチか、マスクはどんな種類のものか、仕切りはどんな材質・形状など考えることはいろいろあります」

参加者 「考えることが山ほどあるわけですが、そういうことすべてを予め決めておくわけですか」

磯原 「何事も対処する人の力量によって決めておくことが決まります。どういう事態が起きても即断即決して対応できるなら事前に何もすることはないでしょう。でも多くの人は途方に暮れる、だから事前に方法を考えておくということです。
それから対応手順を、個人の知識にしておいてはいけない。人事部長がおっしゃったように責任者が倒れてもあるいは不在でも、代理者が最善な方法をとれるように知識を共有しておかなければなりません」

参加者 「おっしゃることは分かるけど、現実問題として私たちが対応できるのか?」

磯原 「感染症について私は専門家ではありません。ただ想像するに、みなさんの職場で感染症の人が現れたらどうするのか、職場で倒れた場合どうするのか、どこに運ぶのか、看病するには、器具備品は、想像力があればもっといろいろあるでしょう。そういうのを考えずにいてよろしいわけはないですよね」

下山 「ええと、質問は切りも限りもなさそうです。
提案ですが、人事や総務で草案を作り、それを基に各事業所の特性や周囲環境を反映してその場所用のものとするということでいかがでしょうか。
もちろんその過程で環境管理課の方のアドバイスを頂きたい」

桃田 「下山君、スケジュール的にどうなんだろう?」

下山 「ダイヤモンドプリンセス号はまだ東京湾にいますね。これから国内で感染者がいかほど出るかですが、政府が対策本部を設置するとか規制をするとなると来月上旬以降でしょう。そこで具体的な規制とか国民に対して実施要請がでるでしょうけど、その内容が医学的に常識的なことと異なるとは思えません。

我々自身が対策を考えて、器具備品などを手配しておいても大きな間違いはなさそうです。そんなことを考えると1週間か10日以内に対応を決めて資材購入は必要な工事を始めるべきでしょう」

桃田 「工事とは?」

下山 「既にテレビでは飛沫感染でマスクの有効性を報じています。当然オフィスや工場での飛沫感染を防ぐための規制が出るでしょう。
マスク 例えばオフィスでは隣の人との仕切りとか、机の間隔などは見直す必要があるかもしれません。細かい基準はともかく、すぐに対応できるよう手を打っておくべきです」

桃田 「早急に手配をかける必要があるのか。
もし後から出るだろう政府の指導と違うと無駄になりそうだが」

下山 「ご心配なら話だけしておく……いずれにしても政府が規制を示す前に準備を進めなければならんでしょう。皆が動き出してからでは物が手に入らないでしょう

参加者 「いろいろなケースを考えておくのはムダにはなりませんね。どっちにしても実際のルールを決めたりするには時間がかかります」

磯原は話を聞いていて、ヤレヤレと思った。人事の下山はこちらに仕事を任せる気だ。まあ向こうが思うのは向こうの勝手だ。できないのはこちらの都合だ。


*****

磯原が人事主催の会議で話をしている同時刻の環境管理課である。
ダイヤモンドプリンセス号が東京湾に来てから、工場からの問い合わせが多い。
感染症の流行が想像ではなく現実問題になったからだろう。とはいえ国内の感染者はまだ少なく、マスコミも国民も興味があってもひとごとである。ドリフの志村けんが亡くなって、初めて国民が明日は我が身と思うのはまだ先のことだ。

電話が鳴る。

田中 「ハイ、本社環境管理課です。おお、吉行さん、お久しぶりです」

電話する

吉行課長 「あのさ、出勤停止となった場合の施設管理だけど、相談に乗ってほしい」

田中 「はい、どんなこと?」

吉行課長 「うちの工場では地下水汚染があってさ、オゾンで浄化中なんだ。仮に出勤できなくなるとどうするんだろうねえ〜。
まあ止めても支障はないけど、完了まで行政と約束があるので、操業を停止したので止めましたってはいかないでしょう?」

田中 「緊急時やむを得ない場合には浄化作業を停止するとか、市との覚書に書いてないのですか?」

吉行課長 「そういうのがあれば良かったけど、普通はそこまで考えてないからなあ〜。
ああ、そういう方向で市と話をしてみるよ。とはいえまだ政府が何も言ってないから、こちらからそういう話をするのはどうかなあ〜。問題が表面化してからのほうが話は通りやすいかな」

田中 「それでも良さそうだね。とはいえ地下水汚染浄化はともかく、運転停止とか停電によって危険があるものなど、それだけでなくよく調査してほしい。長期間停電とか運転を停止すると危険なんてものがあるかもしれない」

吉行課長 「了解。施設や設備を再点検するわ、」

別の電話が鳴る。

坂本 「はい、本社環境管理課です」

松本課長 「○○工場の松本です」

坂本 「おお松本課長さん、どうしました?」

松本課長 「うちは薬品などで低温保管しているのが結構あるのよ。停電になったら自家発はあるんだけど、せいぜい持つのは1日だ。感染症対策で停電は起きないかもしれないけど、そうなったらどうするのかねえ〜」

坂本 「それは常温になって爆発とか大気に放散して問題になるのかい? 火災とか毒性の心配がなければ放置しかないでしょう」

松本課長 「まあそうなんだけど、非常に高価だからさ」

話の途中で、別の電話が鳴る。
こんな状態がここ数日続いている。これからも続くのだろう。


*****

人事部主催の会議は終わった。その後の人事部である。
磯原が拘束されている。

磯原 「百田さん、環境管理課がああいった指針を作ったのは、工場や関連会社で感染症の規制が行われるといろいろと問題が予想されるからですよ。今も工場や関係会社から対応策の相談で上を下への大騒ぎなんです。人事の応援までは難しいです」

下山 「そうは言ってもね、能力のある人がしなくちゃならないってこともあるでしょう」

桃田 「そうそう、山内さんのほうには話を通しておくから」

磯原 「山内さんはラインじゃありませんよ」

桃田 「分かっている、人事部長から大川専務に話してもらおう」

磯原 「偉い人同士で話がついても、下のものが対応できませんよ。
これが逆で、環境管理の問題で人事の人を借りるって言ったら対応してくれるんですか?
過重労働をさせないのが人事でしょう」

話は終わりそうない。



うそ800 本日のまとめ

新型コロナ流行は、誰も、国会も内閣も県知事も一般国民も、経験したことのない未曾有の危機だった。
だが人間は考える葦ではないのか?
右往左往するだけでは地面を這うアリと同じだ。自分の知識と知恵で考え、理解したことをもとに計画を立て実行しなければならない。特に知事とかマスコミで発言する人は思い付き、考えなしで言ってはいけない。

そういう意味では政治家や専門家そしてマスコミ人のリトマス試験だった。良いも悪いもいろいろな姿がみられた。
怪しげな専門家をジャンジャン登場させたテレビ局
指示がなければ動けないと語った知事。お前は子供か?


嘘つき
専門家を自称し国会やテレビでいかげんなことを騙り、危うくなると身を隠した奴
コロナにかかった芸能人が我儘を言う。感染するとえらいのか?

当たり前だがうそを語った奴をしっかり覚え、信用しちゃいけないのだ。
だが悲しいことに大衆は忘やすくれ、無能をさらした知事、嘘を騙った専門家、傲慢かました芸能人の罪を忘れてしまった。大衆もアホなんだろう。ボケてんのか?



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注1
注2
今時は当たり前だがFMCサービスなどにより、社員が社内にいようが外出していようが同じ番号で連絡できる。社内にいれば内線で通信費はかからない。

注3
消防法8条(要約)
学校、病院、工場、事業場の管理する者は、防火管理者を定め、施設の消防計画の作成、消火、通報及び避難の訓練の実施、消防設備の点検及び整備、その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。





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