ISO第3世代 157.新しい治世1

24.04.08

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。


ISO 3Gとは

*****

年が明けて2022年1月である。
2022年1月はまさにコロナ流行の第6波が始まった月であるが、年明けはそんな不穏な様子はなかった。月末に第6波でものすごい数の感染者が発生したときは史上最悪と思えただろうが、7月には第6波の倍以上の感染者と5割増しの死者を出す第7波がやってくるのだ。
まさに知らぬが仏である。いや先が見えていたならファイトをなくしたかもしれないから、これで良いのだろう。


注:なぜかは分からないが、第6波以降は感染者が増加しても重症者数は減少している。2021年2月から始まったワクチン接種の効果が表れてきたのだろうか? そう言えば当時の広報ではワクチンの効果の第一は重症化防止、第二が感染防止としていた。
参考:NHK「感染症データと医療・健康情報」新型コロナのページ


田村さんも小林部長も、定常業務は一通り覚えたようで(そうならなくてどうする)日々職務を平穏にこなしている。 佐々淳行に「平時の指揮官・有事の指揮官」という本がある。問題がないときの優秀さは、問題発生時の優秀さとは異なる。

坂本と柳田は、お二人が一旦事あったときにどう対処するのか楽しみにしている。
磯原は違う。問題が起きたときには、ふたりがどうあろうと速やかに最適解を策定しトラブルを収めなければならなければ自分の責任であり、上役が無能だから〜と言ったところで意味がない。
そこが担当者と管理者の立場の違いである。


田村が磯原の机にやってくる。いつも暇になると磯原のところに来てだべるので、また暇になったのかなと磯原は批判的に思う。いや、新任者が機会あれば前任者や知っている人から種々教えてもらうことは重要だろう(タブン)。

田村さん 「ちょっと話をしてもいいかな?」

磯原 「会議室に行きますか?」

田村さん 「いやいや、重大なことじゃない。教えてほしいことがあるんだ」

磯原 「では、ここでよろしければ」

オフィスチェアー 脇で話を聞いていた柳田が、空いている机の椅子を田村のところまで転がしてくる。

田村さん 「柳田さん、ありがとう。ついでだからコーヒーも頼むよ」

柳田 「私は構わないのですが……規則ではありませんが『本社基本マナー』という通知が総務から出ているのです。
そこに『管理職であっても飲み物などは庶務や部下に頼むな』とありまして、傍から見られるとまずいですよ」

田村さん 「そうなのか!本社は厳しいなあ〜、いや機会均等法の最先端なのだな。
分かりました。私が取ってくるよ。磯原君も欲しいか?」

磯原 「私はコーヒーカップに注いだものがあります」


田村は立ち上がって給茶機に向かう。


磯原 「あれを作ったのは柳田さんと総務のキヨちゃんだよね。柳田さんも結構ワルですね」

柳田 「いいの、いいの、ちゃんと躾けないと後々困るんだから」


湯気の上がる紙コップを持って田村が戻ってきて、柳田の持ってきた椅子に座る。磯原は仕事を止めて椅子を田村の方に回す。


湯気
紙コップ

田村さん 「もう三月になるけど、いろいろな仕事があって私一人の手には負えないねえ〜。製品省エネとか広報関係とかの仕事も結構手間がかかるものだね。
それで思ったのだけど、本部長室兼務になっている君は、省エネのみ担当しているということだが、それ以外の分野にも兼務者を置けないものだろうか。
だいぶ前に打合せしたときに、小林君が本部長室にいる者は部下を持たないルールになっていると言ったが、君をみると兼務者なら良いのだろう?」

磯原 「あの話ですが、私はどの規則に定まっているのか存じません。ただ省エネの報告については他の環境関連の仕事と違うところがあります」

会社規則を知り尽くしている磯原が「存じません」というのは「そんな規則はないよ」という意味である。

田村さん 「どういうことだろう?」

磯原 「工場省エネといっても本社・支社、工場、そして健保関連の施設なども含めて計画を立て行政に報告しています。それをまとめる部門がありません。そのため私はそれぞれの計画や実績のとりまとめをしています。

それに対して輸送エネルギーでしたら各事業本部の計画と実績を、ロジスティックス部がまとめています。田村さんはそれをチェックするだけでとりまとめとか新たな資料を作ることはありません。
製品省エネは、冷凍機の効率5%アップ、トランスの鉄損5%減といっても足し算できません。それで全製品まとめた省エネ計画というのはありませんし、実績をまとめる必要もありません」


( oωo ) トランス効率97%なら損失5%減は不可能だが、損失3%の5%を減らすなら容易そうだ(タブン)


磯原 「私の想像ですが、複数の部門で担当しているもので、そのまま報告できないものについては、本部長室でデータの処理とか資料作成を行う作業をする兼務者を置いているのだと思っておりました」

田村さん 「じゃあ法改正などで、複数の部門に関わるような検討はどうするのだろう?」

磯原 「残念ながら私にも分かりません。おっしゃったことズバリの事例としては、10年前にREACH(EUの化学物質規則)がありました。そのときは環境部がありました。それで各事業本部の関係者を一時的に環境部に集めてひとつの課を設け、対策を検討したと聞きます」

田村さん 「なるほど、環境全般を担当している部門があったから問題なかったのか。しかし今後もいろいろな規制の登場があるだろうが、そのときはどうするのだろう?」

磯原 「それこそ田村さんが旗を振ることになるでしょう」

田村さん 「右も左も分からない私には何もできないよ」

磯原 「方法はいくつもありますよ。プロジェクトを立てるのが一番簡単ですね。そこに関連する部門から要員を集めて、対応策を成果とするだけです。
あるいはプロジェクトでは管理が弱いなら、生産技術部に環境管理課と同じレベルで一時的な部署を設けることも考えられます。そうすれば管理者の指揮権と人事権は確定しますからプロジェクトよりは強制力が出ます。
環境管理課内に設けるのは無理でしょう。元々環境管理課はその分野の仕事をしていません。

兼務者を置くのが本当にご法度なのかどうか知りませんが、兼務には限界があります。兼務者には兼務発令時に、双方の負荷を何割ずつと決めてあります。私がここに来たときは70:30で本部長室が7割と言われていました。今は本部長室が3割とされています。
ただ山内さんのときは、本部長室の仕事も環境管理課の仕事も全部山内さん指揮でしたから、彼は環境管理課全員を使って本部長室の仕事と環境管理課の仕事をしていました」

田村さん 「なるほどなあ〜
山内さんと同じ方法はとれないのか?」

磯原 「そもそも職掌上、環境管理課の仕事と本部長室の仕事は違います。本部長室の仕事をするなら……ええと以前、小林部長と三人で打ち合わせたとき(155話)環境管理課の職掌を見直すような話だったと記憶しています。
環境管理課が本部長室の環境に関わる仕事をすると決めることは問題ありません。ただそのとき追加される仕事量次第で、環境管理課の工数を考えなければなりません。

現状では田村さんの手間がかかっているなら、田村さんの望むデータとか様式で提出するようにさせるとか、報告のたびに、形式や様式を含めた打合せを持つとかで改善できるのではないですか?」

田村さん 「なるほど、考えてみるよ」


頭の後ろで手を組む 磯原は頭の後ろで手を組んで考える。田村さんはバリバリやるという感じではないな。上西センセイほどではないが、周りから大事にされて出世したタイプなのか?
なりふり構わず仕事に立ち向かう、山内さんのような人は稀有なのだろう。
まあ少しずつは前進している。致命的な問題にならなければ良いと思うしかない。


*****

1月末のある朝、岩手工場から廃酸を入れたタンクの配管が凍結で破損し、漏洩したという報告が入った。
余部から連絡を受けた磯原は坂本さんを呼び、3人で協議を始める。


磯原 「まず余部さんから状況の説明をお願いします」


余部がホワイトボードに岩手工場から報告があったことを列記する。
産業廃棄物業者の都合でその日は廃酸の回収に来ることができず、満杯になったために通常は使わない屋外貯蔵タンクに廃酸を保管した。

その日は寒気が来たため、最高気温が氷点下で夜間の最低気温は氷点下10℃ほどであった。そのためにタンク及び配管の中の廃酸が一部凍り、バルブ接続部が破損して廃酸が漏洩した。
朝気づいて周囲を確認したところ、防液提の内側は連日降雪があり除雪が不十分のために防液提の容積が足りず、溢れて構内の側溝に入り、一部は公共水路に漏れたと推定する。
行政へは報告済。

工場周辺の水路の表面は凍結し、その上にかなりの積雪があり下流数か所にて水を調べたが、水のpHは数箇所測っただけである。
現在、対応を行政と協議中

坂本 「廃酸といってもいろいろあるけど、なんだろうね?」

余部 「筺体の溶接部の酸洗いだそうで、薄い塩酸とのことです」

坂本 「塩酸は凍るのかい? わしは見たことないが…」

余部 「濃度次第ですね。塩酸そのものの凝固点は零下百度くらいだけど、濃度が薄ければ水と同じです。濃度10%くらいなら零下10℃くらいで凍るでしょう」

磯原 「外の気温が零下10℃くらいとあるけど、凍りますかね?」

余部 「私も詳しくないが、放置しておくと塩酸が蒸発して水になるんです」

磯原 「ああ〜なるほど、ということはpHも上がるから、危険性は下がるわけですね」

余部 「理屈はそうですが、濃度とか温度などの情報が足りませんから何とも言えません。酸が弱くなったとしても、液で取り除いた異物とか有害なものが含まれているかもしれない」

磯原 「分かりました。ここで得られた情報はそんなところですか。
ではウチの対応ですが、放っておくわけにはいかない。余部さん、今から盛岡まで行ってほしい。
今……9時40分か……10時半の新幹線には乗れるでしょう。盛岡まで2時間少々。10時半頃に乗れば14時前、工場15時着として向こうの状況確認はできるでしょう。その後、対策状況確認をして夜早めに出れば今夜中に東京に着きます。もしくは泊まって翌日対策まで確認してほしい」

余部 「私一人ですか?」

磯原 「現状確認と先方がしっかり対応しているかの確認ですから一人で十分でしょう。
事業本部と連携を取ってください。事業本部から環境担当が行くなら一緒の方がいいですね」

余部 「こちらに来て初めての仕事ですから、一度先輩の仕事を拝見したいですね」

磯原 「事業本部から誰が行くのだろう。ちょっと待ってね……」


磯原は電話をする。

磯原 「岩手工場の漏洩事故の件ですが……お宅からは行かない? 分かりました。私どもでは確認のために出張します。
電話する   ・
  ・
了解です。
  ・
  ・
事業本部からは行かないそうだ。それも問題じゃなかろうか?
それじゃ、初めてということもあり坂本さんも一緒に行ってください」

坂本 「任せてください。私は何度か訪問したことがありますから、課長とも担当者とも面識があります」

磯原 「時刻表を見ると10時18分、37分、45分とあるようですから速やかに頼みます。
坂本さん、先方への連絡とかよろしく頼みます」


東北新幹線
東北新幹線

磯原は田村さんと生産技術部長にメールを入れておく。二人に報告するというのも手間だなと思う。
職制無視だった山内さんの方が動きが早かったのは事実だ。だが山内さんのしていた仕事は課長の仕事だ。となると自分がしなければならないことだなと少し反省する。


午後一番、磯原のメールを読んだのだろう、小林部長がやってくる。

小林さん 「おい、磯原君。岩手工場で塩酸漏れだって! 状況はどうなんだ?」

磯原 「現時点、あの情報しかありません。状況確認と工場の対応状況確認のために坂本さんと余部さんを出張させました。あと1時間少々で到着すると思います」

小林さん 「2名出張というのは問題じゃないか?」

磯原 「余部さんはここに来てから、まだ工場の事故対応は初めてなので、坂本さんを指導ということで出しました」

小林さん 「費用管理をしっかりしろよ」

磯原 「ハイ、心得てます(ヤレヤレ小姑根性か)」


小林部長と磯原が話しているのを見たのか、田村さんもやってくる。

田村さん 「磯原君、岩手工場の漏洩事故はどうなんだ?」

磯原 「今、小林部長とお話をしていたところです。
ここではなんですから、会議室に行きましょう」

  ・
  ・
  ・
  ・

小林さん 「まず、こういう事故が起きたときの動きはどうなっているのかね?」

磯原 「基本的な職務分担というか責任範囲についてご理解いただきたいです。
工場の管理は当然ですが、事業本部です。事故の予防、事故発生時の処置、対策、行政対応、すべての責任は事業本部です。もちろん実際には工場であり、その環境管理課が行います。
各事業本部の本部長室には環境担当が決められていて、その方が工場の指導や事故発生時の対応をみることになります。

今の状況を説明しますと、工場から事故発生の報告が環境管理課と事業本部の環境担当に入りました。環境管理課への報告は、会社規則で、定められた報告事項に該当した場合、定められた本社組織に報告しなければならないと規定されているからです。
細かく言えば工場の環境管理担当部長、普通は製造管理部長ですが、その方から本社生産技術部長つまり小林部長にメールが来ています。私にはその写しが来ておりました。

事業本部の環境担当者に電話で確認しましたところ、ご本人は事故発生の連絡を受けている。状況が混乱しているようだから、午後に再度状況を確認して事業本部としてどう対応するか考えるとのことでした。

私は雪がだいぶ積もっているということでしたので、状況確認がしっかりされているかを懸念しました。それでベテランの坂本さんを指導ということで余部さんとふたりを午前の新幹線で行かせました。
そろそろ連絡が入ると思います」

田村さん 「そうか、人を出したのか。さすが仕事が早い。
事業本部から人を出さないと言ったが、そういうことで良いのか?」

小林さん 「むしろ私は環境管理課から二人も出すとはいかんと思いましたよ」

磯原 「工場や関連会社で事故や違反が起きたとき、所管する事業本部とか環境管理課が立ち会うというルールはありません。後で大問題になった場合は、対応を問われるでしょうけど。
事業本部が大問題ではない、工場が対処できると判断したならば、それまでのことです。
同じく、私が環境管理課から出張させたのは、万が一に備えたということです。それと生の情報を収集することは、工場の事故予防には重要です」

田村さん 「分かった。それで良い。
ところで先ほどの話だが、環境管理課から人を出したとして指揮系統とかはどうなるのだ?」

磯原 「工場の事故発生のときの命令権は当然ですが工場長にあります。
事業本部の環境担当者は工場長の判断などを本部長に報告する、目付みたいなものです。もちろん実際には事業本部の環境担当者となると、事業本部の他の工場の事故や違反の際も立ち会いますから、工場の環境課長などより、はるかに経験もありますし目が肥えています。ですから行政やマスコミとの対応には強力な助っ人になるでしょう。それで工場の対応の指揮を執ることも多いです。

本社環境管理課はなんのためかとなりますが、もし問題が大きくなって本社でマスコミ対応とか行政対応となったときのために、サステナビリティ担当役員への報告と、会社としての対応を考えることになります。

田村さんには異常発生時は常に私の方から報告しますが、特段アクションは不要と思います。専務に報告するか否かは田村さんが判断してください。社長や他の役員などから問い合わせがあると思えるものは、お伝えするのがよろしいと思います。

工場で処理できるレベルであり、大ごとにはならないと判断した場合は、環境管理課は即物的な対応はしません。その事故の情報を社内に通知して自主点検を促すことになります。
現実には社内だけでなくスラッシュ電機グループで事故や違反が起きますと、ほぼ100%環境管理課が出向いておりますので、一番事故や違反を見ているのが環境管理課ということになります。それで現場では種々助言とか指導を行うわけで、実質的に対策の中心となることも多いです。
そのためにも環境管理課のメンバーの経験を積ませることが必要で、今回は新人といっても元工場の環境課長だった余部さんを嘱託になった坂本さんの助手として派遣しました」

田村さん 「よしよし、じゃあルーチンに沿って行動しているということだな。
それでとりあえずは出張者の報告待ちということか?」

電話する

磯原の社内用スマホが鳴る。
  ・
  ・
数分話して電話を切る。


磯原 「出張した坂本さんからでした。工場に入って漏洩現場に着いたところだそうです。環境管理課の塚本課長に会ったそうですが、テンヤワンヤしていて、挨拶だけして若手に事故現場と工場のそばを流れている側溝というか排水路というか、そのあたりを見ているところだそうです。

工場外は積雪が数十センチあり、道路以外は除雪していないこと、道路と側溝の間は雪の捨て場になっていて高く雪が積まれていること、そのために側溝に降りるのも大変だとのこと。更に側溝の水面には氷が張っていて、その上に雪が積もっていて、漏洩状況の把握が困難ということです。

案内してくれた若手の話では、下流側に数か所で雪を掘り氷に穴をあけて水を汲んでpH測定をしたそうです。測定値は7.5から7.8だそうです。平常値ですね」

小林さん 「私が元いた工場に聞いてみたのだが、7.5超えたら異常と言ってたぞ」

磯原 「その程度で異常ということはないでしょう。工場からの排水基準は8.6ですよ。
工場の上流は畑地ですので、肥料が流れ込んだりしたのかもしれません。
いずれにしてもアルカリ側ですから、この度の廃酸流出とは関わりないです。仮に漏洩した酸で中和されていたとすると、上流はもっとpHが高くなるはずです」


注:河川のpHの環境基準値はいくつかの類型が定められており「6.5(あるいは6.0)〜8.5」となっている。
汚染されていない川で6.5〜7.5である。酸性雨や大気中のCO2が溶け込むと酸性になる。pHがアルカリになるのは、暖かい季節に藻が発生し光合成によってCO2が消費されたり、肥料の硝酸態窒素が田畑から流入することで起きる。
定常的に工場排水で河川水のpHが影響されるようなことは現代の日本ではない。


田村さん 「いずれにしても状況を把握したらまた連絡があるのだろう。
定時までに連絡をするように指示してください。定時後に打合せしよう。事業本部の担当者を呼ぶように。異常があればその時点で打ち合わせしよう」

磯原 「承知しました」


*****

翌日昼過ぎに坂本と余部は帰ってきた。
設備の容量などから漏洩したのは、7%塩酸で約120リットルと推定された。上流と下流方向に約10キロpHを測定したが、pHの値に特段の違いはなかった。漏洩量が少ないことと、いつもより多い雪解け水で中和されたと推定された。
残ったタンクの廃酸を調べた結果、有害物質が含まれておらず、その面でも異常はない。
結局、市当局に顛末書と是正計画そして完了報告をすることで了解が得られた。


湯気
湯気
マグカップ

余部さんは勉強になったと思うし自信もついただろう。坂本さんも教師役ができた。田村さん、小林部長もトラブル発生時の経験ができた。なべて世は事も無しだ。
磯原はそう思ってコーヒーを飲んだ。

こんな商売をしていると、全く問題が起きないなんてことはない。ある程度の頻度でトラブルが起きると覚悟しておかねばならない。トラブル発生が想定した頻度以下なら、管理限界内と思う しかない べきと磯原は考える。

それと為政者が代われば方針も考え方も、少々、いや大きく変わるのも常。
こちらはそれに合わせるのも宿命、口うるさいのは聞き流すしかないと磯原は思う。



うそ800 本日の要点

管理者は新しい職場につくと、お山の大将になろうとする 権威を確立しようとする。それで俺はすごいと見せようと、今までの方法を批判したり、己の過去の実績を自慢をしたりする。

現実はこんなものです

そのとき決して天狗の鼻を折らないように注意が肝要である。
同時に、何も分からない管理者によってシステムを悪くしないために、相手の言いなりにならないことが重要である。

相手を貶めず、相手の言い分を拒否する、これ大事也



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