タイムスリップISO 23.兵庫工場2

24.10.03

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは




このお話は第21話とほぼ同じ日時のお話です。佐川と分かれた山口は、ひとり頑張っているのでしょうか?

本社の山口
佐川さんの指導を
受けて勉強中です
山口は佐川と二人で長野工場と兵庫工場の予定で出張した。ところが長野工場にいたとき野上課長から電話があり、佐川が千葉工場に行ってしまい、兵庫工場は山口一人で行くことになった。

山口は、當山とは仕事に対する意識がまったく違う佐川と1週間一緒にいたので、佐川の仕事に驚くと同時になるほどと思うことは多かった。
そして自分は指導してお金をもらうのだから、相手が質問して応えることができないなら、勉強して相手の問いに答えなければならないと思い知らされた。極楽とんぼのような當山と2年間一緒にいると、そんな当たり前のことを忘れてしまった。
今日行く兵庫工場で、いろいろな質問や相談を受けたなら、逃げずに絶対に答えようと思う。


山口が兵庫工場に来たのは、もう10回くらいになる。今まで當山と一緒に工場を訪問していたが、いつ来ても目に見える進捗がなく、毎回同じ話をしていたような気がする。

先週は佐川と来た。驚くことに、佐川はたった1日で懸案となっていたものを一掃してしまった。悩み事、不明点、取り合いの問題、そんなものをすべて一刀両断してしまったのだ。
「もうご心配はないですね、あとはお宅が動くだけですよ」そう言い切ったのだ。

あれから1週間が過ぎた。となると今回は先週打ち合わせたことの実施確認と、来週何をするのかを話し合えばよいのか?
実際には、実行してみて初めて問題に気付くのだ。この1週間で、新たな問題、不明点が沸いてきたはずだ。それを山口が解消してやらねばならない。できるだろうか?


品質保証課を訪ねると、大木課長と小林さんが待ちかまえていた。

大木品証課長 「やあ、山口さん、待っていたよ。以前は何をしに来たのかと思っていたが、今日は山口さんと話し合うことがたくさんあって、待ち遠しかった」

本社の山口 「じゃあ大木課長が織姫で、私が彦星みたいですね」

七夕祭り

小林さん 「今年の七夕は無事ISO認証して、楽しく迎えたいよ。
(本審査は6/2〜3。是正処置があっても、七夕前に審査登録証が届くだろう)

それはともかく、仕事が進めば進むほどに、問題とか悩み事が出てきて、各部門から問い合わせがたくさん来ている。
俺たちで分かることは回答しているが、分からないことも多くてね……

各部門からの疑問点をまとめているから、まずはそれについて教えてもらおうと思っています」

本社の山口 「ご期待に応えられるかどうか分かりませんが、一生懸命努めたいと思います」

大木品証課長 「それじゃ私は会議なので小林さんが対応するのでよろしくね。問題点が片付いたら、午後から内部監査のまとめというか反省の打ち合わせをしたい。内部監査を受けた部門を呼んでいるから、報告書のまとめと是正回答までを決めちゃいたい。それに同席頼む。
第2回目の監査は今実施中で、実施上の問題や結果については来週議論しよう」


そう言うと大木課長は消えてしまった。


本社の山口 「それじゃ各部門からの質問、疑問の回答を決めていきましょう」

小林さん 「項目別などにまとめていないので、あちこち飛びますがよろしく。
ええと、総務課からの問い合わせです」


工場の規定を改定する方法です。従来から改定箇所がごく小規模なとき、配布部門に手による修正をお願いしています。
例1:「外為法」を「外僞法」とワープロしてしまい、各部門に修正を依頼した。
例2:印紙税改定(1989)の内容が少しだったので、印紙税の金額修正を依頼した。

修正は各部門に配付されている規定に赤ボールペンで二本線で見え消しして、その行の上に赤ボールペンで正しい文章を記載し、その日付を記入し、修正者の修正印を押している。

このような方法はISOではダメになりますか? それとも今後とも行っても良いのでしょうか?

本社の山口 「はあ〜、どうなんでしょうか」

小林さん 「もしダメだとすると手間もそうだが、結構費用が掛かるよね。現状の規定集を全部チェックなんてできないから、すべてコピーして再配布になる。
もちろん以降、改定があればすべてコピーして配付しなければならない」

本社の山口 電話 「失礼して佐川さんに、ヘルプを頼みます」


山口は携帯電話を取り出すと佐川に電話する。
すぐに相手が出る。

本社の山口 「佐川さんですか? 教えてほしいのですが、規定の改定で……かくかくしかじか」

佐川真一 「その答えはISO規格の4.5.2に答えは書いてある。そこを読んで考えてほしい」




小林さん 「ドラえもんの回答はどうだった?」

本社の山口 「回答ズバリは教えてくれませんでした。ISO9001の4.5.2に書いてあるから、そこを読めということでした」


品質保証の国際規格
◇ISO規格の対訳と解説◇
増補改訂版
監修 久米 均
日本規格協会

小林は大きな対訳本を引っ張り出す。

小林さん 「なになに……文字数はたった220文字しかないけど、改定方法なんて見当たらないぞ。どこに書いてあるんだ?」

本社の山口 「一番最後の行の『相当回数の変更が行われた後には、文書を再発行する』しか該当するものがなさそうですが、それってどういう意味ですかね?」

小林さん 「さあ、なあ〜」


そのとき女子事務員がホットコーヒーを持ってきてくれた。
紙コップを置いて、小林さんの手元をのぞき込む。

小林さん 「良子さん、コピー配布したものをさ、相当回数の変更が行われたら、新しくするって意味分かる?」

女子事務員
コーヒーコーヒーコーヒー

女子事務員 「それって、あれでしょ?」

小林さん 「これ、それ、どれ、あれ、なんかボケ老人のようだな」

女子事務員 「余計なことはいい、小林さんは当時若いから知らないかな。私は昔コピー室にいたのよ。当時は今みたく原紙をセットして何枚ってボタンを押すと、コピーしたものを折りたたんで出てくるなんてことなくて、一枚一枚コピー機に原紙とジアゾ(注1)の感光紙を重ねて入れたわけ。だからコピー室に大勢いたのよ」

小林さん 「コピー室の人数なんていいんだよ」

女子事務員 「あら、背景もしっかり説明しようとしたのに……要するにコピーするのは大仕事で、なるべくコピーを減らすことを考えたわけ。

例えば図面改定で部品の品番が進んでも、組立図をコピー配布しないで、各部署で組立図の品番を書き直してもらうのは普通だった。その他、規定なども誤字とか少しの変更なら、各部門で修正してもらうこともよくあったわ。

社外に出すものは、そんなことはできなかったけどね」

小林さん 「そう言われるとそうだったな。会議の配布資料なんて、朱記訂正があるのが普通だった。今はそんなの見ないけど、その陰には無駄になっている紙があるんだろうなあ〜

本社の山口 「私はジアゾというのを見たことありませんが」

女子事務員 「私が入社したのは1975年でジアゾの最後頃だったと思います。
だけどそれだってそれより前よりは進化したものだったのよ。当時コピー室にいた古手の方は青写真という、天気の良い日に屋外で原紙と感光紙を重ねて太陽光で焼き付けていたって言ってました。雨が降ったらできないんですって。

私が入社してすぐにジアゾからゼロックスに切り替わったの。便利だったわ。『ゼロックスを我らに』なんてテレビコマーシャルがあったのよ(注2)

小林さん 「おおお、俺も覚えている。かわいいOLたちがプラカードを持ってデモするんだ、アハハハ」

女子事務員 「それで! 問題は解決したの?」

小林さん 「えっ、問題?、どういう問題だっけ?」

女子事務員 「小林さんの方が、ボケが始まってるんじゃないの」

本社の山口 「少々の変更ならわざわざコピーせずに、変更箇所のみボールペンで修正しているけど、ISOでもその方法は良いかってことですよ」

女子事務員 「良いに決まっているじゃない」

小林さん 「待て、待て、元の質問は」


工場の規定を改定するときのことです。従来から改定箇所がごく小規模なとき、配布部門に手による修正をお願いしていました。

修正はコピーされて配付された規定に赤ボールペンで二本線で見え消しして、その行の上に赤ボールペンで正しい文章を記載し、修正者の修正印を押している。

このような方法はISOではダメになりますか? それとも今後とも行っても良いのでしょうか?

小林さん 「つまり、これはISO審査でOKかNGかとなると、どうなんだ?」

本社の山口 「佐川さんはISO規格を読めば答えが分かると言った。ならばその最後の行を読めば分かるはずです」

小林さん 「ワケワカランことをいくら考えても分からない。杉田玄白みたいじゃないか」

本社の山口 「いえ、これはオランダ語でなくて日本語ですから、考えれば分かるはずです。
ええと『相当回数の変更が行われた後には、文書を再発行する』とは相当な回数を変更しないときは、文書を再発行しないで良いということですよね。
ということは文書を修正することはOKなんだ」

女子事務員 「あの〜、この工場の方法ですけど、例えば規定を少し改定したとき、総務課から『規定改定通知』が来るのよ。だけど差し替え用の規定をコピーしたものは来ないの。そして『規定改定通知』に『○○規定の何ページの<○○○○><□□□□>と書き換えてください』とあるわけ。

それを見て私たちが朱記訂正をして、そこに修正した人のハンコを訂正印として押すの。そして規定改定通知に課長印をもらって、総務に返送するの。それをもってその部門が規定の修正を行った証拠とするわけ。
でまた同じ規定が改定されると、また同じことをするわけ。

でもこの工場では何回も修正を重ねると朱記訂正が多くなり、間違える恐れがあるから、2回までにしている。同じ文書が3回改定されると、3度目はコピーして配布するの」

本社の山口 「今おっしゃった修正方法は、何かルールに決まっているのですか?」

女子事務員 「もちろんよ。ここに規定集あったわね」


彼女はファイルを棚から探して番号見て該当する規定を開く。

女子事務員 「文書管理規定で、規定改定における方法という項番があるでしょう。
そこの第3項に改定内容が小規模の場合と……ここに方法が書いてある。
庶務担当になると、文書管理について教育を受けるから誰でも知ってるわ」

本社の山口 「修正したのを読み間違えたり見逃したりして、問題が起きたりしませんか?」

女子事務員 「本当のことを言って、小林さんが規定を見て仕事したことなんてある?」

小林さん 「ないな、」

女子事務員 「そうでしょう。みんな上司とか先輩から言われて仕事しているわけよ。だから修正を誤っても仕事を間違える人はないね。逆に改定を知らずに仕事している人もいる、アハハハ」

本社の山口 「ともかく総務の問いには、ISOでも問題ないということでよろしいですね」

小林さん 「文書と言えば、製作図(図面のこと)はどうなんだ?」

女子事務員 「もちろん規定で決まっているわ。図面管理規定の配付という章に書いてあるはず。
ええと……と言いながら山口から規定集を取り上げる……ほら、ここに書いてある」

小林さん 「イヤハヤ、質問ひとつとっても大変なんだ。
だけど佐川さんは山口君が質問すると、規格のどこを読めって即答する……すごい人だね」

女子事務員 「私のことも規定をよく知っているねって誉めても良いのよ」

私が高校を出て就職したのは1968年、当時の勤め先ではまさにこの通りのことをしていた。
なおジアゾからゼロックスになって図面改定方法が変わったかと言えば、変わらなかった。ジアゾの場合は感光紙を買ってきて使うだけだったが、ゼロックスはコピー枚数をカウントしてその費用を払っていたようだ。それで必要外のコピーをすることを厳しく禁じた。
出張のとき、時刻表の必要なページをコピーするのは皆していたが、そのようなことは禁じられた。

図面を改定すると、「図面改定通知」というのを添えて配付するのだが、あるとき「図面XXXXの部品表の品番をXXXXに変更してください」と書いたら、課長から呼ばれて、仕事なのだから「変更してください」というのはおかしい。「変更せよ」とすべきだとの仰せ。
まあ、金がかかるわけじゃないからそのように直しましたが、どうでも良いと思ったことを50年後の今でも覚えています。

「お前の文こそ、どうでもいいことだ」とおっしゃるな。どうでも良いことを書くのが私の楽しみです。


注:「配付」と「配布」は意味が違うのは存じております。私は違いを気にしないので(オイオイ)、パソコンがどう変換しようとそのままです。悪しからず

配布:不特定多数の人に配ること。 例:駅前でパンフレットを配布する。
配付:特定の人に配ることをいう。 例:会議資料を配付する。




小林さん 「次行くぞ、これは製造課からの質問だ」


内部監査でライン検査の不合格票の記入が、「読みやすくないから不適合」とされた。
ISO規格の「品質記録」で「すべての品質記録は、読みやすく、関連する製品との対応が識別できなければならない」と決まっていることに不適合だとのこと。
現状は不具合の異常を細かく書くのが大変で、アルファベットと数字で発生場所と症状を、荷札に書き込んで製品に付けている。
しっかりと状況を書けと言われると時間がかかりすぎる。なんとかならないか?

女子事務員 「面白そうだから私も参加して良い?」

小林さん 「いいとも、そのかわり適切な助言を頼むよ。茶々は禁止」

本社の山口 「読みやすいというのは書いている人だけでなく、担当外の人が読んでも分かるようにという意味ですかね?」

女子事務員 「読みやすいって感覚的なものだよね。そういうものをOK/NGって区分できるのかしら?」

本社の山口 「佐川さんはいつも原文を見ろって言ってるね。英語の原文で読みやすいとは、どういう単語なんだろう。
原文は『ALL quality records shall be legible』……レジブルって読みやすいという意味なのかな。
小林さん英和辞典ありません?」

小林さん 「課長の机の上」

本社の山口 「ええと……レジブル、レジブル、あった。読みやすい、読み取れる、筆跡が明瞭と、これって読みやすいじゃなくて明瞭ってことじゃないの」
話し合い

女子事務員 「そうすると正しく訳せば『すべての品質記録は明瞭に』いや『誤読されないように』じゃないの。それならOK/NGは判定できるわね。

『文章が読みやすい』というと、例えば難しい漢字を使わない、複文重文を止めるとか、二重否定を使わないとか、いろいろな意味にとれるわね」

本社の山口 「おっしゃる通りですね。となるとこの質問に対しての回答は『規格の要求は誰にでも読みやすく書くことではなく、書かれた文字が明瞭で読み間違えが起きないことです。記載してあるアルファベットと数字が読み違いを起こさないように書かれているなら問題ない』となりますね」

女子事務員 「待って、質問を読んだだけでは、その内部監査で問題になったものが、文字がはっきり読めなかったのか、文章として分かりにくかったのかは分からないわ。
その内部監査で本当の文章はどうだったのか、それを調べないと」

本社の山口 「それを聞いて気が付いたのですが、私たちがこの文章を読んでいろいろ解釈できるなら、内部監査の記述が不適切と言えませんか。
証拠というか状況をしっかり書いていれば、不適合を出された人も悩まなかったでしょう」

小林さん 「なるほど、内部監査の不適合は証拠と根拠が必要だったね。この文章では証拠となる荷札の番号も読みにくいという状況も書いてない。それを書いていれば悩むことはなかったはずだ。
不適合の記述を確認しないとならないな。
ともかく、一件落着と、次に行くぞ〜」

女子事務員 「ちょっとお〜、そもそも不合格品に付ける伝票が検査記録と言えるの? 検査記録とは検査日報とか月次の報告書とかじゃないのかな?」

小林さん 「良子さん、ご意見は尊重しますが、もうこの件は終わりたいよ。文字通り問題山積だ」

女子事務員 「朝からやってたようだけど何件片付けたの?」

本社の山口 「今10:30だから1時間半かけて、片付いたのは……6件ですか」

小林さん 「杉田玄白の解体新書だよ、まったく」



*****


午前中かけて質問の2割も片付かない。残ったものは山口が預かって佐川に回答を頼むことにする。

午後からは内部監査結果について監査員、被監査部門が集まって、不適合の再確認、是正処置案の検討を行っている。
打ち合わせ 監査のときはお互いに平常心でないというか、緊張してしまい問題ないことを問題としてしまったり、またその逆も多発していた。まさに慌て者の誤とぼんやりものの誤(注3)の応酬である。

お互いに場慣れが必要だろうし、被監査側は不適合はないという確信があれば、余裕を持って審査・監査を受けられるだろう。まあ、今その練習をしていると思えばよい。

先週、佐川に言われた通り、きれいにまとめるのではなく出来事をそのままに書き残すようにする。そうすると自分たちの間違いが記録されて改善が見えるし、もっと大事なことは自分たちが成長した記録になることだ。
もちろん審査員に対するアッピールもあるのだろう。



*****


夕方、大木課長、小林さん、山口が集まって、今日のまとめをする。

小林さん
小林さん
大木品証課長
大木課長
本社の山口
山口さん

大木品証課長 「今日は成果があったようだね」

小林さん 「前回もですが、今日もとても自分が納得する仕事ができたと思います。
言い換えると當山さんのときは納得できなかった。まず彼が語ることが半分も理解できない。當山さんも理解してなかったのかもしれない。

理解していないことを話しても、前進はありません。いつも打ち合わせで、わけわからないことを議論しているという虚しさでした。
今日は100%理解した議論もできた。これはすごい進歩だと思います。
各部門から出てくる疑問や悩みを山口さんと考えると、ISO規格の理解が深まりました」

本社の山口 「過去のことを言われるとつらいですが、私も同感です。今日の質問の中にありましたが、『読みやすく』とか『文書の変更』など、単なる文字面だけでなく、眼光紙背に徹して、その意味を理解しないといけないと反省します」

小林さん 「我々は文章をしっかり読むという習慣が足りないのでしょう。そしてまた自分が書く文章も助詞、名詞、動詞、形容詞、よく考えて書かないと、誤解されるし自分の考えが伝わらないのですね。反省しきりです」

大木品証課長 「それと佐川さんは翻訳でなく英語の原文を読めと言ってたね」

本社の山口 「それもありましたね。佐川さんの偉大さが分かりました。彼は猛烈社員でなく考える人なのですね」

大木品証課長 「佐川さんはワーカホリック仕事中毒なの?」

小林さん 「そういやウチの会社は10年も前から週休二日だけど、彼は今まで土曜日に休んだことはないって言ってたな。ずっと土曜日出勤で毎日残業、それもサービス残業していたそうです。
多くの人は管理職になると時間外が付かないから賃金が下がると言いますが、彼は管理職になって賃金が上がったと言ってました。だけど去年管理職を首になったそうです。どうしてなんだろう?」

本社の山口 「佐川さんの名誉のために言っておきますが、仕事中毒というより仕事を通じて自己実現を図る人という感じですね。
當山さんが辞めたとき、後任には佐川さんしかいないと野上課長と福島工場に行ってお願いしました。

話がついて帰ろうとすると、佐川さんは私を引き留めて、明日から長野工場と兵庫工場に行く。その日のうちに長野に行ってホテルに泊まれと言われました。あの時は驚きました。それほど腰が軽い人とは思いませんでした。
當山さんとそんなタイトな出張をしたことありません」

大木品証課長 「休みもなく働くことが良いことではないが、いざというとき動けない人はダメだね」

小林さん 「我々は大変だと言っても、本審査までのあと2か月です。期限が決まっていることなら頑張れますよ」

大木品証課長 「山口君、各部門の質問で分からないものを佐川さんに回すと聞いたけど、できるだけでも君が考えて回答案を添付して渡すべきじゃないかな。
『どうしたら良いでしょう』というのは子供の使いだ。一人前の人間なら、『この件はこうしようと思いますが、いかがでしょう?(注4)と聞くべきじゃないか」

本社の山口 「おっしゃる通りです。そのようにいたします」



うそ800 本日のお詫び

今回の作品は中身が薄い そういうお叱りが来るかと 懸念 予想 しております。

実を言いまして、40年前の私の上司が、木曜日に我が家に遊びに来るのです。はるばる陸奥みちのくからやって来るのです。
45年に及ぶ私のサラリーマン人生で、上司と言える人は20人以上いますが、お世話になった、教えていただいたと、感謝・尊敬している人は5名です。そのひとりであります。もうよわい83か84になっているはず。お会いできるのはこれが最後かな。

そんなわけで、なんやかんやしておりまして、本日の作品は手抜きですよ、手抜き



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ジアゾコピーとはジアゾ化合物の化学反応を利用したコピーで、1970年頃まで主流だった。アンモニアを使うのでコピー室は臭かった。そして人の汗が付くと色が薄れ読めなくなった。

「ゼロックスを我らに♪」というテレビコマーシャルは、1970年代初めだったと思う。「モーレツからビューティフルへ」なんてフレーズもあった。そういうノリって高度成長期ですね。
ゼロックスが欲しいとプラカード持ったデモは、当時の学生紛争の反映かな?

「慌て者の誤り(第一種の過誤/Aの誤)」とは悪くないのに悪いと勘違いすることで、「ぼんやりものの誤り(第二種の過誤/Bの誤)」とは悪いのに問題ないと勘違いすること。まあどちらもよくあることだ。

「この件はこうしようと思いますが、いかがでしょう?」これは私のサラリーマン人生最後の上長から教えられた言葉。
たぶん初出は土光敏夫さんあたりじゃないかと思う。というのはその上長は「仕事の報酬は仕事」というのが口癖だった。これは藤原銀次郎の言葉で土光さんの座右の銘である。
 cf.「土光敏夫 信念の言葉」による

それは今の人には通じない「坂の上の雲」とか高度成長期の価値観かもしれない。
だが、その価値観で育ち、生き、死ぬなら、もって瞑すべし、我が人生に悔いなし





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