タイムスリップ115 未来プロジェクト8

25.10.02

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。




1998年12月初旬
某大学の理学部講師という今村なる人物が、ある週刊誌に「東日本大地震の恐れ」という論を寄稿した。


今村 今回は今村講師を演じます。
ワシも「異世界審査員物語」から、脇役だが大河ドラマに3回連続しての登場じゃ。
テレビドラマなら日本放送批評家大賞とかギャラクシー賞がもらえそうだ。

その要旨は、


10年後の2010〜2012年に、宮城県沖を震源とする大地震が発生する。過去より建物の耐震性の規制も厳しくなり強度も向上して地震による建物被害は少ないが、大きな津波、それも発生後、短時間で海岸に到達するので極めて大きな被害が発生する。

特に懸念されるのは、東北地方の太平洋岸にある原発だ(注1)今の原発は1500年以降に発生した大地震を基に対策している。しかしこの地震は、マグニチュード9と予想される。
津波の高さも現在は6m前後としているが、マグニチュード9では津波高さは15mと予想され、原発の防潮堤や非常用電源の津波対応を見直さねばならない(注2)


かようなものであった。


正直言って、この記事は週刊誌のネタがないための埋草かと思われたのは事実だ。
なによりも今現在、ノストラダムスの大予言の期限が1年後に迫っており、たぶんそれは99%起きないはずだ。その次を担う予言を社会が必要としていると、考えたのではないかと思われた。
とにかく話題になったのは事実で、東北地方を中心として、いつもより3割ほど多く売れたと言われる。

驚くことではないが、この記事は学界からは完全に無視された。
まったく反響がないのに気づいたマスコミが、名のある学者に声をかけたが、ほとんどはバカバカしいで終わりだ。

やっと対応してくれる先生を見つけた。唯一問い合わせに応えた某大教授は、「山内講師は博士号を持っている研究者に間違いないが、過去に大きな成果もなく講師に留まっている。だから彼が書いたものは信頼できない」とコメントした。

このインタビュー映像がテレビで流れ、その後その映像は多方面で引用された。
そんな風にこの話は、過去何度もあった一時のガセ、予言として半月もせずに消えていった。


10年後の地震発生後に、この映像は多数回テレビニュースやワイドショーで取り上げられ、学会の傲慢、閉鎖性が叩かれる元となった。 その結果、この発言した教授は学会からも、一般大衆からも責められ、定年前に退官し引きこもりになったらしい。




1999年1月
門松 年が明け、お正月も明け1月下旬となった。現代ではお正月も今は特別な行事ではなくなり、成人の日もハッピーマンデー(注3)となり、その由来とは無縁となり季節感もなくなった。

成人の日を過ぎて、昨年「東日本大地震の恐れ」を掲載した週刊誌に、再び今村講師の「地震に備えよ」という記事が載った。著者は前と同じく今村博士だ。

そこには1999年に発生するマグニチュード5以上の地震4件の一覧表が載っていた(注4)ご丁寧に地震が起きる月日まで書いてある。なんと直近の地震は来月ではないか。




1999年に発生する地震(M7/震度6以上)
地震発生時刻震央マグニチュード
1999/02/26山形県北部5
1999/05/13北海道 釧路支庁6
1999/07/16広島県南東部5
1999/09/13千葉県北東部5



注:防災科学技術研究所の地震検索でマグニチュードの大きいものを選んだが、ウィキペディアとか新聞検索では、人的・物的被害で選んだりで、上位4件はいろいろだ。
内容は架空の設定とお受け取りください。


今回の記事を見た人は、今村講師の自爆攻撃かと思った。学会や気象庁など専門機関からも無視されて、一時でも有名人になりたい破れかぶれだと思ったのだ。

そういう風潮にも拘らず、この号もその週刊誌は売れに売れた。テレビのニュースでもワイドショーでもコント番組でも、あげくには旅番組では地震の震央とされた場所巡りまで現れた。 もちろん学会や行政は黙殺である。

幸い、震央はいずれも大都市近くでなく、地震の規模も大きくなく、今年の大地震被害は少ないようだ。予知が本当ならば、

ともかく今年発生する地震が、日付まで書いてあるということは自信があるのだろう。 お手並み拝見である。






2月初旬
未来プロジェクト室、今日は定例会だ。


佐山 「1月に出た「週刊□□」を読んだ人はいるかい?」


見回すと皆頷いた。ニュースにもなったから、知らない人はいないだろう。

佐山 「私も知らなかったが、未来プロジェクトの報告を受けて、ウチのトップは大地震対応でいろいろ動いていたと話があった。
まず経団連内で東北地方の太平洋側沖で大地震が起きること、そして最大の問題として津波で大きな被害が出ること、原発の損壊を説明したそうだ。

勿論、そんな話が信用されるわけはない。未来プロジェクトの報告にあったイベントの内、直近に起きるものをいくつか示し、それが実現するのを見せて納得させたらしい。
その結果、東電と話し合いを持ち防潮堤の強化、非常用発電機の見直しをしてもらうことになったそうだ。

経緯の詳細は教えられていないが、結果として経団連加盟の企業が基金を作り、電力会社が行う防災工事に資金援助するそうだ。
もちろん東電だけじゃなく、また地震限定でなく対テロなども含まれると聞いた。
今後、実績を積んだら政府に働きかけて、国策に散り込むそうだ」


石川 広報石川さやか
佐山マネジャー 佐山
技術 伊達伊達隼人
相馬次郎相馬 生産技術
本宮洋子 本宮 総務
吉田 吉田 人事
佐川真一佐川 環境

相馬次郎 「それは浅川さんの願いが叶いましたね」


注:浅川とは、佐山の前任のプロジェクトリーダーであったが、情報漏洩で引責辞任した(第76話)。
大熊町出身の浅川は原発の防潮堤の強化をするのが念願だった。


佐山 「完成するまで、まだまだ大変だと思うよ」

伊達隼人 「当然、これから起きる地震が、未来プロジェクトが報告した通りかどうかが、問われるわけですね」

佐山 「そういうことだ」

本宮洋子 「あのう〜、週刊誌に書いた今村講師は、その意を汲んでのことですか?」

佐山 「それは知らないが、我々の持っている情報からは、そう思える。
というのは彼が予言したのは、未来プロジェクトの報告書にあるものばかりで、書いてないものはない。
ウチのトップが、今村氏に情報提供したとしか思えない」

本宮洋子 「一般人に地震が来ると知らせるためですか?」

佐山 「まったくの想像だが、ただ単にいついつ地震が来るぞと言っても信じないだろう。
まだ猶予は10年ある。これから起きる地震をいくつも当てれば、その先の予言も信じてもらえると考えたのだろう」

本宮洋子 「なるほど、そう言われると納得いきますね」

吉田 「その今村という研究者は、その意を汲んだのか、お金につられたのか・・・」

伊達隼人 「しかし今村氏はどのような研究の結果、あの予想ができたのか、説明できなくちゃならないでしょう」

佐山 「そこまでは分からんね。予言ではなく予知だから、科学的手法を示さねばならんだろう」


注:未来を語るにも、予言、予測、予知といろいろあるが、地震については地震学会の使い分けがある(注5)
「地震予測とは、発生時間、場所、大きさの一部またはすべてを推定すること
地震予知とは、地震予測の中でも特に確度が高く警報につながるもの」

ちなみに予言とは、超越的な能力で断言することで科学的なことには使わない。言い換えると、証拠・根拠がなければ予言と言われるのだろう。


吉田 「ああ、だから科学者を使ったのか。予言者とか占いじゃダメなのですね」

本宮洋子 「未来プロジェクトの報告だけでは根拠がないものね」

石川さやか 「でも、どのようにして今年の地震の発生日が分かったと説明するのかしら?」

佐山 「そこまでは私は分からん」

吉田 「いずれにしても、この東日本大震災の件は、我々の手を離れたと考えてよろしいのですね」

佐山 「そうではあるが、今村氏の動向は今後フォローしておいてくれよ」

吉田 「佐川さんは、もう完全に無関係って顔してますよ。今まで一言も発言しませんでしたし・・・」

佐川真一 「我々がするまでもなく、テレビのワイドショーがやってくれますよ」






時は少しさかのぼる、1998年12月下旬である。某テレビ局から出てきた今村講師はタクシーに乗り、勤務先の大学に戻るところだ。
車の中で、今村は三月前のことを思い返す。そしてこれで良いのか、といろいろ考える。

大森教授
大森教授

あれはまだ暑い9月だった。大森教授に呼ばれていくと、仕事を頼みたいと言われた。教授の頼みは俺にとっては命令だ、話を伺った。

話の内容はろくでもないことだった。どこかの金持ちが地震の予言を広めたいという。その片棒を担げという。要するにデマを広めろと言うことだ。そしてもう一方を担ぐのは大森先生でもなくその金持ちでもなく、金持ちの息がかかった週刊誌だという。

つまるところ俺がガセを書いて週刊誌に載せるという。デマかもしれないが罪にはならないらしい(注6)
大森教授になぜかと聞くと、次のような話だった。


その大金持ちが地震の占いを信じて人々を救いたい。しかし地震が起きると占いでお告げがあったと言っても誰も信じない。だから科学者が研究の結果、地震が起きると分かったと社会に警告して欲しいという。
そして俺はもう准教授も芽がないから、このさいお金を稼いで老後の貯えにしろという。


胡散臭い話といえばそうだが、温情溢れるとも言える。
確かに今、講師をしているが、給料は雀の涙だ。50過ぎたら正規な職員にしてもらえるかと思っていたが、大森先生が定年退職した後は、契約してもらえないようだ。
大森先生は自分が退職した後、俺が職をなくして路頭に迷うのを心配して、ひと稼ぎさせようって腹のようだ。もちろんご自身が火中の栗を拾うのはしないわけだ。

やるべき仕事は、提供された資料が正しいものとして、それが演繹されるようなシナリオを書けば、週刊誌に載せるという。ここまでで手間賃を300万払うという。
そして反響があれば書籍も出せという。それも大衆向けと真面目な研究者向けの本を、両方書くのだと迫られた。
自費出版でなく、その金持ち爺が手配してくれるとのこと。
印税はすべてこちらがもらっても良いという、太っ腹!

どうせ外れても権威も名誉もない俺のことだ。ダメで元々、いやいやダメでも金は入る。万が一当たれば時の人、これは、やるっきゃない。


そう思ってそれからやってきた。論文というのもおこがましいが、一応専門家に見せられるようなものを、まず数万字ほどにまとめた。それと週刊誌用に2,000字にダイジェストしたものを大森先生に提出した。
その後、数回、大森先生や名も知らぬ身なりの良い人たち数名と打ち合わせをし、見直した。

そして週刊誌は発売された。
宣伝もしたようだが週刊誌は売れた。その結果、一般向けの本を書いて同じ出版社から1週間前に発行した。
札束 担当者は、数万部は行きますよと笑顔で言う。こういった本は1万部売れたらヒット、2万部なら大ヒットらしい。
数万部売れたら印税は150万くらいになるのかな?

今日はそんなことでワイドショーに出てきたのだ。
今までは順調だが、来年早々、予言した最初の地震の日になる。
占いが当たりますように・・・




1999年2月26日昼過ぎ
某テレビ局の出演者控室である。
今村講師は何と呼ぶ仕事の人か分からないが、テレビに出る前に身の周りをいじられている。髪を整えられ、上着とシャツそれにネクタイを変えさせられ、あげくに化粧までしているところだ。

ディレクターと自己紹介した人がやってきた。


ディレクター 「今、1時10分です。今村先生のお話しでは地震発生は2時過ぎとおっしゃいましたね」

今村 「2時18分です。遅くとも14時10分には入りたいですね」

ディレクター 「了解しました。そいじゃ14時のコマーシャルのとき入りましょう。
コマーシャルが終わったら、最初にご紹介しますので、地震の予言が14時18分であること、どのような方法で予言されたか話をしてそのときを待ちましょう」

今村 「予言と言いますと、占いのようですので、予知と言っていただけないでしょうか。科学的な研究結果ですので」

ディレクター 「承知しました。それから10分程度お話しいただいて、14時半のコマーシャルで出ていただくことになります」

今村 「承知しました」




某テレビ局のワイドショースタジオである。
5分ほど前に、今村は案内されてコメンテーター席に座っている。心臓はドキドキしている。
テレビに出たのは去年、週刊誌に書いたとき、数局から呼ばれて地震予知の話をしたことがある。それに過去にも地震の話とか予知の話でテレビに出たことがある。

だからテレビカメラに向かって話すことに緊張はしない。だけど今日は予知した通り発生するのかどうか全く予測がつかない。占いが大ハズレという可能性もある。
恥ずかしい思いはしたくないなと思う。

まあ10分間、恥ずかしいのを我慢すれば釈放だ。いくらもらえるものだろう?
昨年、テレビに出たときは、本当にお車代しかもらえなかった。今日は本番だから、当たれば10万くらいは欲しいところだ。他局は予知した科学者を呼べなかったわけで、アドバンテージはあるはずだ。

そんなことを思っていると、MCが声をかけてきた。


司会者 「今村さん、今2時・・・ええと15分です。予知された時間は18分でしたね?」


予知時刻
2時18分

今村 「そうです。山形県北部と推定しています。鶴岡より北の人はご注意ください」

司会者 「今17分、おっ18分になりました・・・・・・どうでしょうか?」


皆スタジオの時計を見る。テレビ画面下には大きくデジタル時計が映される。表示は10秒を過ぎ、20秒を過ぎ、30秒を過ぎた。

今村が夢破れたりと思ったとき、スピーカーから音声が流れた。時計はまだ19分になっていない。


某 「こちら山形の〇〇テレビです。地震です。揺れています。揺れています。
かなり大きい、震度3か4でしょうか?
あっ、ただいま入りました電話によりますと、山形県北部より秋田県南部の方が揺れが大きいようです」


今村は賭けに勝ったとホッとした。秋田県の揺れが大きくても、山形県も揺れたのは間違いないし、時間はピタリだ。
これで少しお話しするとして、10万は欲しい。そして早く帰りたい。


司会者 「今村さん、すごい!、大きな地震じゃないようですが、場所も時間もピタリでしたね。
それじゃ、どのようにして予知されたのか、お話しいただけますか」

今村博士
貫禄あるかな?

今村 「地震予知は昔からテーマでしたし、今も研究が続けられています。
方法は地震計で前兆を把握するとか、地中を流れる電流とか、いろいろやっていますがまだ定番はありません。

私は日本中で発生している地震のデータベースを、コンピュータにかけて、様々な指標から次の地震の推定できないかを考えました。そしてある程度の実験式を得ました。それで今年の地震の推定と、これからの大地震を行い、昨年発表したわけです。今学会発表の論文を書いています」

司会者 「研究が実を結んだわけですね」

今村 「いえまだ一歩踏み出したところです。地震のデータベースが充実すれば、これからますます予知が向上していきます」

司会者 「今日はその第一歩ですね。地震予知おめでとうございます。
それにしてもテレビの放送中に、予知した地震が起きたのは世界初ではないでしょうか」


コマーシャルになり、今村はスタジオから出たが、すぐには帰れそうがない。TV局の偉い人と挨拶したり、番組の出演者と記念写真とか、ニュース用のビデオ撮りとかして、テレビ局を出たのは16時を過ぎていた。


テレビ局を出てタクシーを捕まえようとしていると、数人のサラリーマン風の人が今村を取り囲む。
誘拐か!とギョッとする。


男1 「テレビ〇〇の者です。これから、ウチで出演してもらいたいのですが」

男2 「☆☆テレビです。以下同文」

男3 「すべて同文」


今村は出てきたテレビ局の出口の方を振り向くと、ガードマンが走ってきた。
そしてガードマンに守られてテレビ局に戻る。
レセプションにタクシーを頼むと、レセプションの女性は裏口に車を回すという。
今村は初めから頼めばよかったと後悔した。電車で帰ろうとは小市民である。




翌日、未来プロジェクト室
特に集まる日ではなく招集もかけていないが、ほとんどが集まってだべっている。


本宮洋子 「私たちは佐川さんの語ることが、いつも成就するのを見ているから、驚きもしないけど、日本中の人たちが驚いたでしょうね」

石川さやか 「次の地震は5月か、3回当たれば信用するでしょう」

伊達隼人 「東日本大震災が東日本大地震と、震災が付かないで呼ばれるようになれば良いけど」


注:2011年に起きた地震を、気象庁は「東北地方太平洋沖地震」と命名し、政府は「東日本大震災」と命名した。いずれも正式な呼称である。

地震の被害を「震災」と呼ぶが、「大震災」が命名されたのは、関東大震災(関東地震)、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)のみっつしかない。( )内は地震の名称である。


吉田 「そうですよね。死者行方不明の9割は津波でしょう(注7)津波の地域から逃げさえできれば、死者は減らせますからね」

石川さやか 「それと原発ね」

佐山 「防潮堤の金は経団連が出すんだ、それは東電に頑張ってもらおう」

吉田 「未来プロジェクトの10年がかりのテーマですね」

佐山 「未来プロジェクトはいずれ解散するわけだが、2011年3月11日には、どこかに集まって地震が起きるのを待とう」

本宮洋子 「なんだか、桃園の誓(注8)みたいね」

佐山 「そんな深い意味ではなくO.ヘンリーの『20年後(注9)さ」

吉田 「12年後は、私は何をしてますかね?」

石川さやか 「吉田さんなら取締役人事部長かしら」

佐山 「私は引退して庭にジャガイモでも植えてるのかな」



うそ800 本日の想像

もし2000年時点で、東北地方太平洋沖地震が予知でき、国を挙げてその対策に励んだら、どれくらいのことができるだろうか?
まずは原発の防潮堤に手を打ち、非常用発電設備の耐震、防水を図る。それでメルトダウンを防げるとしよう。

ハテナ ハテナ ハテナ
考え中
津波の到達範囲を示して2000年以降は新築禁止する。
揺れに対応できない廃屋、遊休煙突などは解体撤去する。
もちろんそれらの法律を作る。
当然、東日本大震災後に作られた災害対策基本法や、震災後、改正された既存の法律の改正も織り込む必要がある。

津波が及ぶ地域の人は、地震発生のそうとう前に被災者住宅に居住させる。その前に被災者住宅を建てなければならない。
被災者住宅は恒久的な方が良いのか? あるいは転居、転職を勧めるべきか?

津波が来ない地域の人は、当日朝に避難場所に移動させる。

警察・消防・自衛隊の総出で避難完了確認を行う。
電力会社、ガス会社は供給の停止、危険防止策を取る。
企業は、貴重な設備・機械の撤去を行う。
危険物などの撤去もある(注10)

これくらいすれば人的被害は、どれくらいになるものだろう?


懸念されるのは、そうなれば被災すると指定された地域からは、他所に引っ越す人が大勢発生し、急激に過疎が進むと思う。
それに被災する土地の価格は急激に下がるだろう。それは宅地だけでなく農地も山林も同じだ。そうなると再出発の資金がない。それも何とかしないとならない。

あるいはそれをテコに、日本の土地の利用状況の見直しが行われるのかもしれない。
人が住まなくなった土地に、太陽光発電や風力発電を作るのもよし、廃棄物処理場を作るのもよし、
人がいないなら公害は存在しない。


注:公害は環境基本法で次のように定義されている。
「この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう(第2条3項)」

いくら汚染しても人が住んでおらず「人の健康又は生活環境に係る被害」がなければ公害ではない。もちろん大きな土壌汚染などを生ずれば新たに法規制されるのだろう。


ところで家内の叔母(90歳)は福島県阿武隈山地の山麓に住んでいるのだが、つい最近、熊を見たという。
奥羽山脈にはツキノワグマがいるが、阿武隈山地は面積が小さく奥羽山脈と離れているので、熊はいないというのは昔から定説だった。
目撃者は年老いた叔母だけでなく、複数で警官までいる。見間違えということはない。過疎が進んだ地域は、サンクチュアリ(野生動物保護区)になるかもしれない。



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注1 原子力発電所マップ

注2 福島第一、第二原発津波の高さ14-15メートル
福島第一原子力発電所に到達した 津波の大きさと浸水状況

注3 ハッピーマンデーは、成人の日、スポーツの日、海の日、敬老の日の4つが、第2月曜日または第三月曜日と決めてあり、常に日曜日と連休になるのでハッピーマンデーと呼ばれる。
春分の日、秋分の日は天文学的に決定され、その他の祝日は月日が決まっている。

注4 ・防災科学技術研究所 地震検索ダウンロード

注5 ・地震学会 地震に関するFQA2-1

注6 予言が罪になるかはその影響が、社会問題になるかならないからしい。
予言によって警察や消防の機能がマヒする事態になれば、偽計業務妨害罪となるようだ。
しかし予言が当たった場合、起訴することができるかとなるとこれも状況次第だろう。より大きな危険を防止したと顕彰されるかもしれない。

どの店で食中毒が出るという予言は名誉棄損になるらしい。これも具体的でないと罪にならない。
〇月〇日、大地震が起きると言っても、パニックも株式相場も影響されないなら、罪になりそうはない。

ちなみに「ノストラダムスの大予言」は書籍やTV出演など、一切、訴えられることはなかったそうだ。大きすぎたから、訴えられなかったのかもしれない。

注7 東日本大震災の死者18,131名でその死因は
 溺死 14,308人(90.6%)
 圧死   667人(4.2%)
 焼死   145人(0.9%)
 不詳   666人(4.2%)
津波から逃げられたら死者は9割減る。

注8 桃園の誓い

注9 「20年後」O・ヘンリー

注10 例えば東日本大震災で流出したPCB機器は100個以上になる。
・「東日本大震災のPCB廃棄物への影響について
その他、薬品、工業用毒劇物、液体燃料など多々あり、それぞれ所管官庁が処置対策、今後の予防処置などを出している。






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