タイムスリップ123遵法監査7

25.11.06

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。




第122話から続く
翌日、〇〇事業部の石原氏 石原から佐川に電話があった。話をしたいが都合は良いかという。OKすると数分も経たない内にご本人登場。小会議室で話す。


石原氏 「ウチの佐々木が『本社では務まらない、工場に返して欲しい』というのです。
心当たりありますか?」

佐川真一 「ありありです。工場ではどうだったのか知りませんが、彼は仕事が自由にできると思っているようです。
ご存じと思いますが、今、全社に遵法点検をしろという指示が出ています。それで監査部から、環境についての遵法監査の実施にあたり、環境部へ協力の要請がきていて、今その対応をしております。

私は毎日午後、監査に出すものに監査の教育をしているのですが、それに監査部が陪席して力量評価されています。その結果、監査部から、彼だけは監査に出さないで欲しいと言われています。

その理由は、指示されたことをしないからです。私は『会社はしたいことをする場でなく、命じられたことをするのだ』と言っているのですが、納得しないのです。
話合い
昨日も彼は、遵法監査をするのではなくシステム監査、つまり体制ができているかどうかの点検をすべきというのです。
監査部がいるところでですよ。ちょっと何を考えているのか分かりません。
正直、扱いに困っています。

とはいえ、申しましたように全社の遵法点検をしなければならず、それに引き続き関連会社の遵法監査も行う予定です。彼も監査の頭数に入っていますから、どうしようかと考えているところです」

石原氏 「佐々木の話では、本社はすごい人ばかりで、付いていけないということでした」

佐川真一 「そういうこともあるのかなあ〜。私は逆に、彼が環境部の我々をレベルが低いとみていて、教えてやろうとしているように見えます」

石原氏 「まさか、そんなことはないでしょうが、佐川さんは彼が使い物にならないとお考えですか?」

佐川真一 「使い物にならないのではなく、彼を使いこなせない自分の不甲斐なさを感じています。
ただ先ほど言いましたように大変な状況で、彼が抜けると人数が足りません。
私から質問ですが、彼の話をどう受け取ったのでしょうか?」

石原氏 「彼に会ったのは彼が本社に来てからで、まだ1週間です。彼と話した時間は、佐川さんの方がはるかに長いでしょう。
知っているのは、彼は結婚しているが子どもはなく、奥さん共々、引っ越して、越谷とかに住んでいるとか、その程度です」

佐川真一 「引っ越したばかりですか。転勤も簡単じゃありませんね。
私としては工場では彼に何を期待しているのかですね。私は工場からここに来て、6年になります。今年50になりますから、もう工場に戻るのはありません。あと数年課長をやって役職定年になれば出向と、先は見えてます。

佐々木さんはまだ30前ですから、工場で環境課の主力としてゆくゆく環境課長を任せるつもりなら、こちらで鍛えてというのが目論見でしょう。
ただこちらとしては教育といっても、OJTで実務の上で学んでもらう、ことしかできません。もちろん工場では体験できないことができる良い場所だと思います。
いずれにしても、本人が好きなことをしたいでは困ります」

石原氏 「佐川さんの言いたいことは分かりました。工場というか事業本部として、彼をどうしたいかということがまずあると、そして本社がそれに対応できるかということですね」

佐川真一 「それともう一つ、彼が何をしたいのかです。期待に応えられないのでは彼も不幸です。
というか、そもそも彼の本社転勤は、何を目的としていたのでしょう?」

石原氏 「きっかけは環境部が、環境担当経験者を社内募集したのです。それに工場が応じたわけです。
まあ、もう少しで役付きになる年齢だし、箔を付けるということかな」

佐川真一 「もっと具体的なことがあるでしょう。例えば排水処理を学ばせるとか、他の工場の実態を見て来いとか」

石原氏 「いっとき本社に来るというのは、そういう具体的で明確な目標をもっての異動なのですか?
佐川さんはどうだったの?」

佐川真一 「私はこちらに来たのは40過ぎでしたから育成という意味はなかったですよ。
当時はISO認証が急がれていて、工場でISO認証の得意な奴がいるから本社に応援させて他の工場の指導をさせろということでした。
半年間は応援扱い、その後は正式に転勤という流れです」

石原氏 「あっ、思い出した。佐川さんは、品質のISO認証請負人と言われてましたね。
確かに佐々木君の転勤は理由がはっきりしないね」

佐川真一 「私も彼をどう育成したいのかも聞いてないのです。
時間ばかりかけても仕方ありません。石原さんの話は伺いました。ちょっと考えさせてください」




小会議室を出ると吉井部長が席にいる。部長を引っ張ってまた小会議室に戻る。
石原氏はとうにいない。

佐川真一 「ご存じかもしれませんが、佐々木君がちと問題児なのです」

吉井環境部長 「お前も問題児だが。奴は何が問題なのだ」

佐川真一 「彼はISO規格が素晴らしいと考えているようで・・・・・・それは構わないのですが、遵法監査でなくISO規格の監査をしろと言うわけです。
考えるのは結構ですが、講習のとき何度も同じ主張をします。監査部の北川さんはそれを見て、監査部監査には派遣するなと釘を刺されました。

あげくに昨日もまた北川さんが見ている前で、同じことを主張しました。
私が『会社はしたいことをする場でなく、命じられたことをするのだ』と言っても納得しません」

吉井環境部長 「で、お前の言いたいことは?」

佐川真一 「そもそも彼を本社に呼んだのは、何をさせようとしたのかです。工場の若手育成なのか、今回の遵法監査のためか、工場から研鑽させてほしいと言われたのか?」

吉井環境部長 「大分前、春頃だがお前から、これから間もなく不祥事が各社で多発する。その対策をしておくべきと言われた。元々の話は環境部を解体すべきか・否かという話からだったと思う(第116話)。

お前の意見を受けて、人事の下山君と当面環境部解体はしないこととし、逆に環境部の補強を図ったつもりだ。
それで大谷、山本、佐々木と排水、廃棄物、電気と経験者を揃えたつもりだったが」

佐川真一 「お考えは、よく分かりました。
山本、大谷は経験者ですが、佐々木は、電検の資格は持っていても、電気保安の実務はしてなかったようです」

吉井環境部長 「じゃあ、何をしていたの?」

佐川真一 「ISO認証だそうです。残念ながら我々と180度違う考えです」

吉井環境部長 「あー、お前の言うことは分かった。それでは使い物にならないか。
しかしなあ〜、ワシは募集するとき、環境設備の経験3年以上の者という条件を付けてたんだがなあ〜。後で文句言っとくわ。
さて、どうする。矯正しようがないなら、返すしかないぞ」

佐川真一 「このままでは工場に返しても、向こうでも困るでしょう。しつけ直してくれということなら、こちらは頑張るしかありません。
ただそうなると遵法監査の工数の問題となります」

吉井環境部長 「山口がいるじゃないか」

佐川真一 「ISO14001の指導は、まだ完全に柳田企画に移管していないのです。
彼が柳田企画の支援と、審査トラブル対応で動いています」

吉井環境部長 「無理があるのは分かったが、みんなでその無理を分け合うしかあるまい。柳田企画にも頑張ってもらおう。
そうすると監査員は、お前、山口、山本、大谷と4名は確保できるだろう。
そして監査部から拒否されたなら、佐々木は監査に出さず勉強させろ。こちらで事務処理や統計のまとめとか、あるいはテーマを与えて検討させるとか」


ドアがノックされて少し開き、石原氏が顔をのぞかせる。

石原氏 「おお、吉井部長もいたとは都合が良い。
佐々木の話でしょう? 話に加わってよろしいですか?」


石原が向かい合っている二人と90度の方向に座る。

石原氏 「工場に問い合わせましたよ。前もって聞いておけばよかった。とはいえ、事前には話してくれなかっただろうな」

吉井環境部長 「ということは工場でも問題児だったわけか?」

石原氏 「お察しの通り。彼は会社の費用で認証機関のISO審査員研修を受けたのですが、研修を受けたのは、他にいないので天狗だったそうです。

佐々木
山口はダメだ
その他大勢
楽な方が良い

ISO14001認証のとき、お宅の山口さんが指導に行ったそうですね。山口さんの指導を見て自分の考えと全く違うので、ダメ出しして研修機関で習った自分の言う通りにしろと主張したそうです。

山口さんと直接会ったことはなかったようですが、事あるごとに山口さんを批判、誹謗していたそうです。
とはいえ工場は理屈が通って楽な方が良いわけで、山口さんの指導に従って実行し問題なく認証してしまった。佐々木としては立つ瀬がなかったでしょうな」

吉井環境部長 「八つ当たりだな
石原さん、ワシも文句があるんだが、今回環境部で募集したとき、環境施設実務3年以上という条件を付けといた。奴は実務経験がなかったというじゃないか」

石原氏 「工場では電検2種が必要で、資格を持っている嘱託の方が担当しているそうです。
彼は電検3種を持っていて、後継と考えていたのですが、電検2種にチャレンジする気配もなく、早い話が余していたそうです。
というわけで吉井部長からの30前後の若手が欲しいという話に、厄介払いと・・・
おっと私も先ほど聞かされたところです」

吉井環境部長 「ウチで要らないとなると、どうなる?」

石原氏 「工場は引き取らないでしょうね。関連会社でもどうでしょう、健保会館なら出向を受けるでしょう」

吉井環境部長 「分かった。
佐川、もう一度、本人と話して今後を決めろ。どのように決定しても通してやる」

佐川真一 「了解しました」




その頃、環境部の工場管理課である。
山本、大谷、佐々木の三人は、今のところ勉強が仕事だ。
公害防止管理者試験を受けろと言われているので、とりあえず受験申請は出した。しかし会社で公害防止の参考書を開いての勉強はさすができない。
会社では前日の講義の復習とか、それに関連する法令とか会社規則を読むのが仕事だ。教えられたことを覚えないと監査に連れて行かないと言われているから必死だ。
特に週末に今週の試験をすると言っていた。明日じゃないか。

今日の朝から、佐々木はソワソワしていて、心ここにあらずである。


山本 「佐々木君、なんだか落ち着かないようだね。昨日のことを気にしているのか、他に悩みでもあるのかい?」

佐々木 「いつも僕は課長とぶつかってしまうのです・・・」

山本 「アハハハ、確かに」

大谷 「ここじゃ、なんだから、会議室で話しようか」


三人は立ち上がり会議室の空き室を探し、佐川たちの隣に入る。

山本 「気を悪くしないで欲しいけど、佐々木君はこだわりが強いんじゃないか。あまり我を出さないことだ。
課長が遵法監査をすると言うなら、それに従うべきだ。課長が間違っているとか、法や会社規則に反しているわけじゃない。
俺たち組織に属しているわけで、理由なく上の決定に反対はできないよ」

大谷 「それとさ、傍から見て、君は反対のための反対、駄々こねとしか見えないよ。
会社は、企業不祥事があるかどうかを心配している。今することは、遵法体制を確立することでなく、まず過去・現在に違法がないかを点検することじゃないか」

佐々木 「監査で既に起こった違法を見つけたとして、できることはないよ」

山本 「法違反を絶対に無くすとか、あってはならないと考えるのは現実的ではないよ」

大谷 「お葬式と同じで、あって欲しくないけど、必ず起きる。そうなったとき対応を考えないとね。
非常時は必ず起きると考えて対応を決めておき、起きたらそれなりに対応するしかない。
日本じゃ、もし戦争になったらと考えると戦争が起きるから、戦争は絶対に起きないと考えろなんて言う人がいて困るね、アハハ」

💭💬
話合い

佐々木 「それなりに対応するって、どうするの?」

山本 「君はそういう経験ないの? 日常茶飯事ではないけど、ときどきはあったね。
俺は廃棄物担当だったから、マニフェスト票記載が不十分とか、回収期限過ぎなど起きた。そうなると業者に行ってヒアリングしてきた。

顛末と対応策を持って行政に相談すれば、大きな問題でなければ、適切に処理して記録に残しておけばよいと言われる。
違反があっても立ち入りで見つかるより、こちらから正直に相談した方が良いのは当たり前だ」

佐々木 「でも未記載を修正はできないでしょ」

山本 「世の中に手の施しようがないなんてことはない。違法でもミスでも、それなりの対策をしなくちゃならない。
何事もまずは市に相談して対応することだよ。手はあるというか、しなければならない」

佐々木 「そうなのか・・・・・・」

大谷 「私の経験では何年か前に、重油タンクに給油中に、ホースのつなぎ目から漏れて側溝に流れたことがあった。
ウェイダー




そのときは消防署と市役所に通報したし、胸までのウェーダーを着けて柄杓で汲んだよ。やる前は悲壮だったけど、やってみれば面白く熱中したよ」


注:ウェーダーとは防水性のブーツで、丈が太ももまで、腰まで、胸までといろいろある。
下半身が水に浸かる作業や釣りのとき着用する。


佐々木 「どのような処罰があったの?」

山本 「会社として顛末書と恒久対策案を提出した。市の環境課と消防署のOKがでて対策したよ。
あのときは工場長と総務部長が市と消防署にお詫びに行ったと思う。
なんとか一件落着した」

佐々木 「そうなのか・・・」

大谷 「君もあまり考えすぎないで、言われたこと、できることをするという考え方したら気が楽になるよ。」

山本 「課長はおっとりしているようだけど、数多のトラブルを経験してきたらしい。
少し前まではISO14001の指導をしていて、審査で工場で不適合があれば、認証機関に乗り込んで判定を覆したんだぜ」

佐々木 「そりゃ、本当かい!

山本 「君は環境部のサーバーを見てないのか? 俺は暇さえあればサーバーを漁っているんだ。面白いよ・・・いや、勉強になる。

部の第一階層に『ISO認証関係』というホルダーがある。第二階層にさまざまなホルダーがあり、課長や山口さんが1995年頃から検討していた記録がある。審査が始まってからも、異議申し立てした記録とか対策もいっぱいある。
あれを一通り読めばISO14001はマスターできるね」

佐々木 「知らなかった、それは僕も読んでみたい」




打ち合わせを終えて、佐々木は山本に教えられた通り、環境部のサーバーを、あちこち"つまみ読み"する。人事考課関係はもちろんないが、部門費の使用状況、部員の勤怠、年計の計画、実施状況、種々の議事録、出張報告、工場からの問い合わせと回答、業界団体の会議議事録、ありとあらゆるものが一覧できる。
もし悪意のある人が、サーバーの全データを全削除とかコピー持ち出ししたら問題だなと心配する。

後で庶務担当にそんなことを聞くと、毎日バックアップを取っていること、アクセスした人の記録を取っていることで、破壊テロにも盗難にも手を打っているという。
当社のPCはFDDなし、USB接続端子は塞がれていて、解除は課長の許可が必要。メール送信は記録され、何を添付したか分かるという(注1)
問題は離籍時にPCを使われることだが、その際の責任はその人にあると言われてゾッとした。スリープまでの設定時間を短くしよう。3分ならよいだろうか?

山本が言った『ISO認証関係』というサブホルダーを見つけた。
準備段階、初期の指導状況、認証機関選択、不適合対応、ホルダー名を見ただけで興味津々である。


準備段階のホルダーを見ると、BS7750の検討から始まっている。佐川はその規格を購入し、ISO14001のドラフトが出るまで、いかにそれに対応するかを検討していたのだ。
そしてまとめたのが市販されたISO認証指南書だ。
それが出版されたとき工場の環境課で回覧があり、会社が加盟している工業会で編集したもので、著者割引で購入できるからぜひ勉強しろとあった。
佐々木はISO審査員研修を受けていたから、そんなもの必要ないと歯牙にもかけなかった。
もし読んだとしても研修会で講師が語ったことと180度違うから、呆れて放り投げたことだろう。

BS7750対訳本
BS7750
オレンジのギザギザは汚
れではない。デザインだ

佐々木はサーバーにあった、規格解釈の検討経過を見て、佐川とレベルの差を思い知らされた。
佐川はBS7750の規格を読み、その要求を事細かく検討しているのだ。

ISO14001の解説本に、規格策定時にイギリスの環境管理規格BS7750を参考にしたとあったので、佐々木はその存在を知っていた。しかし入手までして読もうなんて思いもしなかったし、どんな内容か調べもしなかった。


それと驚いたのは、佐川と認証制度側とのやり取りの記録である。
規格解釈のやり取りでは、先方が佐川に問い合わせているものもある。佐川が教える側なのだ。それも相手の肩書がただの審査員ではない。皆、取締役や技術部長である。やり取りした中にはイギリス人もいるが、さすがにそれは佐川からの相談だった。

その他、国内では著しい環境側面の決定ではメジャーな方法であるスコアリング法について、当社の海外工場の環境部門宛に、公文を出して先方の事情を問い合わせている。また外国でスコアリング法が使われているかも調査している(第61話)。
根拠なくスコアリング法を疑うのでなく、多面的にその正統性(正当性?)を確認している。

彼は自分が思うだけでなく、様々なことを調べ、それを踏まえて発言しているのだ。
とても佐々木が考えるレベルではない。だから彼の発言は、どこでも重く受け止められているようだ。


確かにこれでは一審査員から聞いたなんて根拠では、相手にされないのは分かる。佐々木が審査員研修講習を受けたと鼻にかけていたが、佐川から見れば小学生がテストで100点取ったようなものだったのだ。
ジワリと汗が出る。




午後からは排水の法の規制についてだった。水濁法があるが、そのままでなく条例での上乗せ規制と横出しがあること。だから条例を見ないと監査にならないとか・・・

上乗せ規制
法で定める以上に
厳しく条例で規制
矢印
法規制矢印横出し
法で定める範囲や物質
数より広く条例で規制

規制される物質には何があるか、それは何に使われ、どんなとき数値が増えるか、測定方法、代用特性、測定義務、報告義務、などなど、監査の予習が必要なことは多い。

話を聞いていると面白いが、覚えたかと言われると記憶できるものではない。右から左だ。
大谷に知っていたかと聞くと、自分の工場にある設備とそれに関わる測定義務や規制値だけだという。実際そんなものだろう。

今日は佐々木の講義妨害もなく、静かに進んだ。
聞きに来ていた北川もおとなしかった。




講義を終了すると、佐川は佐々木から話をしたいと声をかけられた。
皆が部屋を出ていくのを待って話を始める。


佐々木 「今までいろいろ文句言ってすみません」

佐川真一 「議論を吹っ掛けられるのは構わない。ただ理屈が通っている話をしてほしい。論点をずらしたり、筋の通らない話は困る。会社では議論が目的じゃなくて、結論が目的だからね。

それから組織論くらいは理解してほしい。上長の指示が気に入らないこともあるだろう。だが日本は自由の国だ。いやなら転職すれば良い」

佐々木 「はい、分かりました。
それで少し前まで工場に返してもらおうと考えていましたが、もう一度チャレンジを許してほしいのです」

佐川真一 「ああ、良いとも。だが心意気だけでは評価しないよ。君も知っているように、私自身が監査部と吉井部長から、君の扱いで評価されている立場だ。
君がしっかりと仕事ができるということを立証、つまり実績で示してもらいたい。気は心なんて世の中通用しない。

昔は実力主義なんて言われたが、今は成果主義(注2)だそうだ。『俺はできる』では意味がなく『成し遂げた』ことに価値がある。まあ、当たり前だよね。

ピッチャー

もちろんそれが正しいとかでなく、会社では評価されるということだ。
なんでも同じだよね、すごい球を投げるピッチャーでも、勝利しなければ無価値だ」

佐々木 「では遵法監査で成果を見せます」


佐川真一 「 期待してるよ。期待外れだと君はここにはいられない。
工場に戻りたいと言っても、出身工場が引き取るかどうか分からないからね」



うそ800 本日のリアル度

どうなんでしょうねえ〜、100%ありえなくもなく、ありそうにもない。
正直言えば、世の中そんなに甘くないと思いますよ。私の経験では、仕事をしない人間は、職制からだけでなく、同僚からも排斥されます。それはイジメなのかどうなのか?

会社と言ってもいろいろあるけど、普通の会社は一人一日でこれくらいできるだろうというのを設定し、それを基に人員を配置する(注3)無理な仕事を少ない人でやれというのはブラックであるだけでなく持続可能性がない。持続可能な会社であるには無理できないのです。

どんな社会でも自由にものを言えるのは、仕事ができるという条件でのみ、許されると思います。
まあ、人並以上に仕事ができても良い上司に当たらないと、佐川の前世(第7話)のようになってしまうのが現実。私の実体験です。



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注1 会社支給のPCのメール受発信は、会社が管理する業務利用の範囲内であるため、管理者が内容を確認することは法的に許容されている。ただし、私的利用が禁止されているわけではない。
私的利用を禁止するには、社内規定に定める必要がある。

注2 実力主義は1960年代以降、西欧の評価方法を真似て徐々に広まった。だが競争の激化とか格差が生じたこと、実力とは何かという曖昧もあり、賃金の一部など限定的に留まった。

1990年代半ば、バブルが崩壊し、そこから続く不況下で年功序列や過去の観衆からの脱却を目指して唱えられたのが成果主義である。
2000年代になると成果主義の問題が露呈し、能力主義や職務主義といったものとの総合的な評価に移りつつある。

こういったものは善し悪しが付けられず、実地で検討され中庸なところに落ち着くのではないか。

注3 直接作業は工数計算できるけど、間接作業・事務はできないなんて言う人もいる。そんなことはない。テイラーの時代からオフィスの標準化、時間管理はあったのだ。
そんなこという会社はそれこそ標準時間も把握していない古い企業である。
参考
「補訂版 図解 労働時間管理マニュアル」森 紀夫、日本法令、2024






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