タイムスリップ128 監査実施5

25.11.24

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。




127話から続く。
会議を終え環境部に戻ると、吉井部長、佐川そして山口が集まって、遵法監査トライアルの続きをどうするかを考えた。


佐川真一吉井環境部長山口
佐川課長吉井部長山口

トライアル監査をしても本チャンの環境遵法監査をしないで済むわけではない。トライアルでは環境法すべてを監査しているわけではないからだ。
トライアル数を多くすれば負荷が増えるばかりだ。だから数を多くはしたくない。

吉宗機械が持っている工場は30数か所ある。1割やれば様子は分かるだろうということになり、3カ所、あと二つやってみることにした。

松本さんから兵庫工場をしてほしいと強い要請があったので、一か所は決まりだ。吉井部長が佐川の出身工場のレベルを見たいというので、もうひとつは福島工場になった。
全員で行くこともあるまいと、佐川が2名、山口が1名を率いて行うことになった。人数が違うが監査工数(注1)は事業所の規模や仕事内容によって違うから、それに応じて日数を変えることにする。兵庫工場は3人で二日、福島工場は二人で三日とした。

分担は佐川が古巣に行くのもやりにくいだろうと、佐川が兵庫、山口が福島工場担当になった。
三人が話し合った結果を簡単にまとめて監査部の北川さんに送る。主催者は監査部だから、環境部から工場に接触はしない。




その頃、千葉工場の大木部長と兵庫工場の小林が電話で話をしていた。兵庫工場は大木部長の前任地で、小林の上長だった(第18話)。


大木製造管理部長 「聞いたかもしれないが、今、監査部が環境遵法監査を計画している。大々的にする前に、監査のトライアルとして、今週、そのトライアルを千葉工場でしたんだ」

小林 「はあ〜、それは初耳です。最近、不祥事(注2)がいくつか報道されていますから、本社は未然防止に躍起になっているのでしょう。

そう言えば今年初めでしたか、総務部と人事部の両部長名で、昨今企業不祥事が散発しているので、各事業所において遵法点検と事故のリスクを調査して、不祥事の防止に努めることという通知が出ているそうです。

実を言ってそれを知ったのは数日前でした。私も知らなかったくらいですから、工場ではそんな通知を無視していたようですね」

大木製造管理部長 「まさしく、その通りだ。千葉工場でも何もせずにいたのよ。そのつけかどうか、2週間ほど前に遵法監査トライアル実施の通知があり、一昨昨日(さきおととい)から三日間やられたよ。その結果、不具合多発でひどいもんだった。
工場長が、すべての部長、課長を集めてお叱りだ。まあ、あれほど悪ければ仕方ない。

何と言っても監査のさなか、正門から出ようとしたトラックが、歩道を歩いていた小学生を撥ねちゃったんだ。怪我は軽くて幸いだった」


転ぶ
💥
トラック

小林 「そりゃ、大変ですね。でもそれって監査と関係あります?」

大木製造管理部長 「実はその直前に現場巡回していた監査員が、正門を出入りする車のほとんどが、一時停止してないことを指摘していた。
それを指摘したのは誰だと思う?」

小林 「見当も付きませんよ」

大木製造管理部長 「環境部の佐川さんだ。覚えているか?」

小林 「おお、覚えていますよ。あの人がいなければISO9001認証はダメだったでしょう。ISO14001の認証のときは、彼も偉くなったのか、もっぱら山口さんが来ていました」

大木製造管理部長 「監査員がすぐに気付くような異常を、当たり前に感じていたことが問題だよ。
遵法監査はISO審査とは全く違った。環境目的とか環境側面なんてどうでもよくて、該当法規制の一覧表も要求しない。

その代わり、法の届け出、測定値、資格者、看板、管理状態、作業方法、そういった現実が法を守っているか、基準値を満しているかを徹底的に調べる。見方によれば当たり前だな。
法規制を守っていれば、法規制を認識しているはずで、一覧表はいらないよ」

小林 「問題ってどんなことでした?」

大木製造管理部長 「いろいろだよ。危険物庫の看板の責任者名が何年も前に退職していた人だった。届け出はどうなのかと追っていくと、危険物保安監督者の変更も届けていなかった。それだけで罰則があるんだよ。これから消防署に相談に行かないとならない。
その他、排水の測定値を書き換えていたり、決められている保護具を着用していないとか」

小林 「アハハハ、いろいろあって、大木さんも大変でしたね」

電話する
● ● ● ● ● ●
電話する

大木製造管理部長 「お前な、俺はさ、お前がそういう目に合わないようにと親心で電話してんだぞ」

小林 「はあ?」

大木製造管理部長 「事業本部長がこのままでは済まされない。ウチの事業本部がしっかりしていることを見せたいと、次のトライアル監査を兵庫工場でしてくれと監査部に頼んだ。
だからこうして電話して、お前に監査前に十分点検しておくよう伝えたかったわけよ」

小林 「えっ、それって本当ですか? 何も聞いてませんよ」

大木製造管理部長 「昨日の話だから、監査部が正式に通知するには1週間後だろう」

小林 「それは大変だ。ご存じと思いますが、品質でも環境でも、ISOとか顧客の監査の担当は、みんな私なんですよ」

大木製造管理部長 「知ってるさ、昔のよしみで教えてやろうと思ったが、聞く耳がないとはつれないじゃないか。
ところでお前とこではMSDS揃えているか?」

小林 「そういうものがあることは知ってますが、どうだろう?」

大木製造管理部長 「調べておけよ、勿論調べるだけでなく全化学物質・・・化学物質って言っても特別のものじゃない、塗料とかグリスとかだ。揃っていないとダメだ。10日くらいで揃えられるか?」

小林 「いくらなんでも無理でしょう」

大木製造管理部長 「まあ、お前んとこも管理が悪そうだな」

小林 「その〜、千葉工場で問題になったことを教えてもらえますか?」

大木製造管理部長 「もちろんだ、本部長の期待する名誉挽回を頼むぞ。実を言って事業本部の松本さんから兵庫を支援するように言われている。
君がこちらに来るまでもない。質疑応答の速記録をワープロ起こしして送る。それを読めば指摘された内容は分かるはずだ。是正するのは大変だけどね」

小林 「ありがとうございます。課長と部長にも伝えておきます。
兵庫の監査は時期的にはいつ頃になりますかね?」

大木製造管理部長 「まだ決まってない。だけどウチは通知があって実施まで半月だったから、早ければ2週間後、遅くても3週間後かな」

小林 「了解しました。直ぐに事前点検と対応の準備をします」




あっという間に半月が過ぎ、兵庫工場の環境遵法監査のトライアルである。
監査チームは、監査部の坂口、事業本部の松本、環境部は佐川、大谷、佐々木である。

工場の規模が小さいこととアッセンブリ工業なので、監査は二日間である。3人は工場の中と外、そして書類監査を1日半かけて行い、二日目の15時から終業時まで結果報告をした。
最終日に工場を15時に出たとしても在来線の乗り継ぎもあり、東京駅着22時なので、最終日を金曜日にして監査終了後に泊って翌日帰ることにしたのだ。


注:こんなことどうでも良いだろうが、実際に出張で監査に行っていると、スケジュールが気になり、自分が納得できないといい加減な予定は書けない。




クロージングミーティングである。


坂口 「監査のまとめを報告します。
問題の数は少ないですが、早急に対処が必要なものがいくつかあります。昨日朝のオープニングミーティングで申し上げましたように、この目的は工場の評価とかランク付けではございません。

企業不祥事が多々報道されていることに鑑み、当社ではそのようなことがないように、もし不十分なところがあれば速やかに手を打つことを目的としております。
ご理解いただきご協力をお願いします。
では詳細説明は、環境部の佐川課長から行います」

佐川真一 「既に問題は巡回中あるいは書面審議中に担当の方とお話しして納得を頂いております。ここでは項目と概要のみ報告します。

工場の裏側の民家に騒音苦情の看板がありました。『吉宗機械出ていけ』とかなり過激な文句でありました(注3)
伺いますと市役所にも相談しているが、決着の見通しがないとのこと。手の打ちようがないのかもしれませんが、テレビなどで報道されると大変面倒になると思います。
本社の公報や法務部に協力を求めて、早急に鎮静化を図っていただきたいと思います」



注:こういう看板は、プロが作ったように完璧でなく、板もバラバラ、並び方もバラバラ、書体も大きさもいろいろな手作り感満載なんだよね。


公害苦情で一番多いのは、昔も今も騒音である(注4)
例外は、テレビ朝日のダイオキシン放送があった1999年から2010年頃までの期間は、大気汚染(ダイオキシンは煙とともに広がるから大気汚染に入る)は騒音の倍以上の苦情があったが、それ以降は低下している。

時代が下がると工場の騒音苦情も法基準を超えるものは少なく、トランスの唸りとかインバーターモータ特有の音への苦情などが多くなっている。
そういった音は他人が気にしなくても、当人が気になるとどうしようもない。


佐川真一 「次は裏紙の使用についてです。
環境意識が高まって、最近オフィスでは裏紙使用が広く行われています。兵庫工場では昨年のごみ焼却炉廃止にともない、裏紙の使用を始めたそうです。
しかし裏紙使用によって、行政つまり市役所などで情報漏洩事故が多々発生しています。兵庫工場では情報漏洩防止に最初使用した面を塗りつぶしています。そのためのトナー使用などの費用計算をすると、裏紙を使うメリットがないという説明でした(注5)
流行にとらわれることなく、損得をはっきりさせて、リサイクルする・しないを決定すべきと思います。

同じく一般ごみの分別ですが、当地の行政の区分より細かい分別をしています。従来は社内のゴミ焼却炉で燃やしており、それによる分類を継続していると聞きました。市の焼却炉に委託なら、市の分別に合わせるべきです。


アホー、アホー
ビオトープ
自然を大切に
草草草草 草 草草草草
どこでもビオトープを、荒
地と思っている人が多い。

テントハウスの倉庫脇の約200坪がビオトープと看板がありました。現状を見ますと雑草が生えているだけで、ビオトープと言えるのか疑問です(注6)手入れしないと緑地と認められない恐れがあります。


社内調達している部分組立品に不良品があった場合は、契約で現品を兵庫工場で処分せず、返却することになっている。この運搬を運送会社に委託して品名を廃棄物としているが、廃棄物なら当地と送り先の両方の県の許可を持つ廃棄物収集運搬業でなければならず、またマニフェストを発行せねばならず、現状は違法です。

向こうで手直しや分析などするなら廃棄物ではなく、要解析品あるいは要修理品などと表示して廃棄物として取り扱わないこと。


使用している全物質のMSDSが揃っていない。また入手したMSDSには、製造会社がネット上に公開しているバージョンでない旧版もある。早急に全物質のMSDSの最新版を入手して、使用保管している場所で利用できる体制を作ること。

現場に作業主任者の表示がない。安衛法に反する。
 例:有機溶剤使用、鉛作業


現場の有機溶剤少量保管庫に指定数量の2割を超えて保管しているところがあった。
市条例で指定数量の2割以上を保管場所は保管基準があり、市への届け出が必要(条例違反)。


たまたま、行政が立ち入りして排水を取水していたが、会社側が立ち会っていない。採取場所の確認や異常のないよう立ち会うこと。


指定数量以上の危険物保管庫は、常時施錠が必要だが、就業時間中はカギをかけず、シャッターも開けたままになっている。
消防法、毒劇物法違反


製造部門に構内外注している組立ラインがあるが、職場防衛隊の体制に入っていない。
消防法違反



佐川真一 「以上のようでした。
個々の問題については、各担当課長に説明して納得頂いております。
特にご質問があれば承ります」

竹内工場長
竹内工場長
兵庫工場
竹内工場長
「うーん、なんだ、これは相当悪いということかな?」

佐川真一 「監査は他の工場と比較しても意味がありません。工場はそれぞれユニークですから、設備とか材料によって法規制に該当・非該当があり、規制を受ける法律がたくさんある工場、ほとんど規制を受けないところさまざまです。 お宅としては、規制を受ける法規制を良く把握して対応していただければよろしいかと思います」

松本さん 「本部の松本です。佐川課長が言いましたが、比較することよりもこの工場をより良くしていけばそれでよろしいと思います。

お聞きと思いますが、2週間ほど前、千葉工場の監査を行いました。ハッキリ言って、この工場と比較にならないほど問題がありました。
しかしそれを聞いて安心するのも間違いです。もし行政の立ち入りなどあればこの工場が問題になり、千葉工場に立ち入りがなければ無問題です。比較するのは止めましょう」

坂口 「昨日のオープニングミーティングでもお話しましたが、昨今、企業不祥事が多発しています。今、全社に遵法監査をすることを検討しております。千葉工場とこの兵庫工場にした監査は、全社に監査をする必要があるかないかの予備調査です。

この結果を分析して、計画している環境遵法監査を行う予定です。そう考えると、今回の結果はお互いにトライアルということで割り切りましょう。
そして今後行う予定の環境遵法監査で、問題がなければ良いわけでもないのです

竹内工場長 「えっ、どういうこと?」

坂口 「目的は、この工場で不祥事を出さないことです」

竹内工場長 「ああ〜、なるほど、そうだね」

坂口 「そう考えると問題が見つかれば見つかるほど、良かったと言えると思います」

松本さん 「そう割り切るのが精神衛生上もよろしいでしょう」

竹内工場長 「交通事故が起きないだけよかったか。
あっ、みんな、今の言葉は聞かなかったことにしてくれよ」




山口組の福島工場のトライアル結果は、かなり兵庫工場よりも良かったらしい。とはいえ、違反も事故のリスクも複数あった。
いずれにしても全社に対する遵法監査は、必須だというのが吉井部長の見解であった。

そして出てくるのは必ずISO14001認証とは何なのかという疑問というか反語である。


吉井環境部長 「佐川よ、ISO14001の意図は何だ?」

佐川真一 「遵法と汚染の予防です」

吉井環境部長 「ISO認証は、それには少しも役に立ってないようだな?」

山口 「それにはいろいろ考えられます。
ひとつは規格が遵法と汚染の予防に役立たない可能性
ひとつはマネジメントシステム上にISO規格が実現されていない可能性
ひとつはマネジメントシステムを守っていない可能性
ひとつはISO審査が規格適合をチェックしていない可能性
まあ、二番目三番目は、四番目の見逃しがあれば問題化するわけですね」

吉井環境部長 「なるほど、元々ISO規格を守っても違反や事故が起きる可能性があるということか。それはありえるな。元々ISO規格文言がULや二者間の品質保証協定と違い、漠然としているからな。
それと規格を最低限で満たしても審査は適合になるハズだ。ということは規格を満たしてもレベルは松竹梅とあるということか(注7)

ISO規格を満たした仕組みであっても、認証審査は抜取で遵法を保証しないとガイド66に書いてあるのかな?(注8)
いずれにしてもISO認証は遵法と汚染の予防に効果はないようだ」

佐川真一吉井環境部長山口
佐川課長吉井部長山口

山口 「それを語るには二つの方法があると思います。規格の要求事項の不足を証明するか、運用した組織の実態から証明するかです。それも個々の論ではなく、多数の事例を検証しないと何とも言えません」

吉井環境部長 「山口はISO認証を素晴らしいと考えているのか?」

山口 「そうではありません。現実に千葉工場でも福島工場でもISO認証して3年、審査費用として払ったお金はいずれも1,000万を下らないでしょうし、内部費用はその数倍。それだけ元は取っていないのは間違いありません」

吉井環境部長 「ちょっと待て、少しなりとも回収していると思うのか?」

山口 「工場案内とかカタログ類に〇〇工場はISO14001認証工場ですと書けるでしょう(注9)ないよりは信頼が少しアップしますよ」

吉井環境部長 「それって、気は心程度で、ほとんど意味がないんじゃないか」

佐川真一 「認証開始して満3年、まだISO14001の信用はありますよ。あと・・・そうですね、10年は信頼されると思います」

吉井環境部長 「10年の根拠は?」

佐川真一 「私が未来を知ってるってご存じでしょう。認証件数は増加中です。それは認証を受けようとする企業が、認証すれば改善になるか、あるいは社外の評価が上がると考えている、つまり信頼されているわけです。

2009年をピークにISO14001の認証件数は減少始めます。それは認証にそういう期待を持たなくなった、少なくとも費用対効果はないと考える企業が増えるということでしょう」

吉井環境部長 「そうか・・・・・・」

山口 「その先はどうなるのでしょうか?」

佐川真一 「その先は私も分からないです」



うそ800 本日の回答

前話で外資社員様からお便りをいただき、ISO審査の守備範囲というか価値の問題提起があった。
あれから私が考えたことを綴る。
外資社員様への1週間遅れのレポートである。

まず経営者にとって、いや社会にとっても、会社の『仕組みが良いこと』よりも、『違反をせず事故を起こさないこと』が重要だ。仕組みは単なる手段だ。

じゃ、「遵法と汚染の予防」が意図であるISO14001規格、あるいはその認証は、遵法と汚染の予防に役立っているのか?
現実には認証企業の不祥事は、たくさん報道されている。

ISO規格は現実の遵法と汚染の予防に無力なのか?
ISO審査では遵法と汚染の予防に貢献しないのか?

私はそうではないと考える。ISO規格も認証審査も「遵法と汚染の予防」に寄与すると考えている。
ただ規格要求はともかく、審査の考え・方法を変える必要があると思う。

ISO審査の規格、ISO17021では初版から現行版まで「マネジメントシステムの認証審査は、法令順守の審査ではない」という記述がある。また共同コミュニケでも認証の意味を限定している。

ISO/IAF共同コミュニケ: 認定されたISO14001認証に対して期待される成果
「定められた認証範囲について、認証を受けた環境マネジメントシステムがある組織は、環境との相互作用を管理しており、以下の事項に対するコミットメントを実証している。
A. 汚染の予防
B. 適用可能な法的及びその他の要求事項を満たしていること。
C. 環境パフォーマンス全体の改善を達成するために環境マネジメントシステムを継続的に強化していること。」

自ら始めた認証ビジネスの効用を自ら決めるのは、それはそれでよい。


だが、世の中はそれだけではなく、実際に「遵法と汚染の予防」をしてくれないと困る。
ではどうすれば「遵法と汚染の予防」を成せるのか?

期待することは、各ステップ(タスク)の仕組みが規格要求を満たすことでなく、システムのアウトプットが遵法を汚染の予防になっていなければならない。

現在の審査を考えてみよう。
下図の左が現行審査である。


遵法監査の図

上、左図は現行の審査を表す。
各ステップ(タスクとかアクションと呼んでも良い)毎に、規格要求事項と比較し、要求事項が反映されているかを確認する。
パフォーマンスは見てないのだ。嘘だとは言わないで欲しい。ISO17021に「法令順守の審査ではない」と書いてあるからね。

現実の会社、工場ではノイズどころかものすごく外乱があり、それを乗り越え、遵法と汚染の防止に努めながら、ビジネスを進めなければならない。
その状況を確認するには審査/監査でパフォーマンスを見なければならないのは自明だ。各ステップが規格要求を満たしていても、外乱があってもロバストに頑張るとは限らないのだ。

外乱だけでなく人間も組織も機械同様にノイズも発生するし、エラーも起きる。
それを防ぐ、あるいは検出しシステムがフィードバック(反省)できるかは、個々のステップの静的な検証ではだめなのだ。ではどうすれば良いかとなると、システムのアウトプットを調べてまともか否かを見れば良い。
ISO規格で言えば、法規制の把握、文書管理、教育訓練、是正処置などを個々に見るよりも前に、アウトプットを見て違反やリスクが起きたか、起きる恐れがあるかを見ることだ。


具体的にはISO規格要求事項を忘れて、法違反、リスクの恐れをしっかり点検する。検出したら、それを防ぐであろう規格要求事項に当てはめて不適合にするだけで良い。
プロセスアプローチと何が違うかといえば、全く違う。個々のステップ(タスク)を見て規格適合かを判断するのでなく、システムの各段そして最終段のパフォーマンスを見ることだ。

システムをしっかり見なければ、意味がないとおっしゃるだろうと予想する。
『システムが不完全でもたまたま上手く行っていて、違反も事故も起きてないだけだ』言われるだろう。
たまたま上手く行っているなら、偶々でない方が大きな部分を占めるわけで、数回審査/監査を行えば必ず見つかる・・・はずだ。
何度、審査/監査をしても、事故も違反も起きてないなら、それはフィードバック機構が有効であると考えられないか?

絶対に許さない と書いていて気が付いた・・・本当は書く前から分かっていたよ・・・その方法は、遵法監査と同じことじゃないか?
つまり、遵法監査を行う結果、違反やリスクがあれば、それを是正することによってシステムは改善されていく。
おっと、この場合、規格要求事項は知っているが、法令も事故のリスクも分からない審査員はご退場願うことになる。

認証の実効が出て審査の価値が上がれば「スコアリング法」とか「有益な環境側面」とか「方針を覚えろ」なんて迷信は、ドライアイスのように消え去るだろう。



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注1 仕事の大きさは、とりかかる人数とそのときの所要日数をかけて表す。かけ算したものが工数となる。
この考えは建設業でも製造業でもソフト屋でも同じだ。機械を使用する場合でも、オペレーターに比例するならその考えは使われる。
1人が1日できる出来高を人日(にんにち)という。人工(にんく)も人日と同じ意味で使われる。

10人が5日で完成する仕事は10×5=50人日とあり、これが工数だ。

工数が50人日の仕事は、10人なら5日、10人なら2日半でできる計算だ。しかし50人かけても1日ではできないことが多い。それは個々の作業が並行にできずシーケンスになるものもあり、養生や試験など必要なものがあるから。

注2 1999年の不祥事で大きなものは
東海村JOCの臨界事故:安全性より効率を優先してマニュアルを守らず。
東芝クレーマー事件:クレーム対応が悪かったと言われる。
神奈川県警:警官が覚せい剤使用した事件を隠蔽した上に、虚偽報告などがあった。
埼玉県警:桶川ストーカー事件で消極的な対応だったことを捜査調書改ざん

注3 現役時代、某関連会社に環境監査に行ったとき、工場裏手の民家に縦1m横3mほどの大きな看板がブロック塀の上にあり、「〇〇社出ていけ」とあり、ギョッとした。
聞くと電源トランスの超低周波が問題という。市役所とか町内会とかにも確認してもらったが、その被害者は他になく、皆首をかしげていた。法的には問題なく、測定してもなんら検知できず、その後も未解決のままだった。

注4 典型7公害の種類別公害苦情受受件数の推移

注5 レーザープリンタでA4片面文字をプリントするときのトナー代は、全面塗りつぶし(あるいは網目)だからモノクロで1枚約20円になる。A4のPPCは1枚1.5〜2円だから考えるまでもない。
いったいどこのアホが片面使った紙のを塗りつぶして使おうなんて考えたのか!

なお、プリンタメーカは裏紙使用自体、プリンタの故障の原因になるとして非推奨(するなという意味)である。
唯一のメリットは「環境に配慮しているような気になれること」と世間では言われている。

注6 工場立地法Q&A
Q: コケや雑草でも緑地として認められますか。
A: 地面が被われた状態になるものなら緑地の種類は問いません。ただし、雑草地を緑地とする場合は、植生、美観等の観点から良好な状態に維持管理されている場合に限り認められます。

なお、ビオトープという言葉は法令で使われておらず、定義もない。用語としては広義・狭義があり、環境省では「開発によって失われたり損なわれたりした地域の生物多様性を保全・回復するため、また都市に住む人々が自然に触れる機会を増やすために、人工的に造成された生物の生息空間」としている。
荒地(放置)ではなく人が作り維持していることを条件としている。

注7 ISO14001の1996年版から2015年版に至るまで、序文には下記の文言がある。
「環境技術及び環境パフォーマンスの到達点が異なる場合であっても、共にこの規格の要求事項に適合することがあり得る」

注8 ISO17021には初版から現行版まで「マネジメントシステムの認証審査は、法令順守の審査ではない」という記述があるが、Guide66の1999年版を確認したが、該当する文章はなかった。
ISO/IEC Guide 66:1999

注9 製品や梱包にISO認証とは書けないが、カタログなどに「この製品を製造している工場はISO認証しています」と書くことはルール上問題ない。







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