タイムスリップISO53 スタンス

25.02.03

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは




このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。

西暦世の中の出来事このお話の出来事話数
1992新幹線のぞみ登場主人公佐川が若返る
課長解任され平となり、品質保証に異動
第1話 〜 第8話
1993EU統合
日本でインターネット始まる
ISO9001認証にチャレンジ
佐川の成果から本社応援、後に本社転勤
第9話 〜第43話
1994 関西国際空港開業
松本サリン事件
ISO9001認証も一段落
第44話〜第47話
1995
阪神淡路大震災
オウム真理教地下鉄テロ

矢印
今ここ
第48話〜第○話
1996北海道豊浜トンネルで岩盤崩落ISO14001制定前からドラフト(草稿)で仮認証始まる
年末にISO14001制定される
1997ロシア船ナホトカ号沈没油流出
ペルー日本大使館事件
ISO14001認証始まる

1995年4月19日、テレビニュースが1ドル79円75銭と史上最高の円高(注1)となったと報じた。
ちなみに洋子(佐川の妻)が子供のときは1ドル360円だった。1971年に円が変動相場になってからの24年で、円の価値は4.5倍になったのである。

それを聞いて洋子は2年前、夫が突然、未来から帰ってきたと、おかしなことを言いだしたことを思い出した(第6話)。
あのとき洋子は真一が正気なのかどうか、未来の出来事をいろいろ聞いてみた。
既に真一の予言通り、日本の総理大臣が細川、羽田、村山と干支の如く変わるのを見てきたから、妄想ではなさそうだ。それに今年初めの阪神淡路大震災は大当たりで、真一が未来から帰ってきたのか、あるいは未来の記憶があるのかはともかく、真一が正常だと確信した。

そのときいろいろ語った中に、90年代半ばに円高になるからドルを買って、2年ほど持っていて円安となったときにドルを売れば儲かるとあった。
目がお金
テレビが報じた1ドルが79円になったというのはもうピークのようで、これからは下がるだけかもしれない。

一瞬、洋子は出遅れたかと思った。とはいえ為替レートはピーキーな動きはないだろうし、ピークから数円下がったのを気にしてもしょうがない。1ドル80円そこそこで買えれば数円違ってもたいしたことではない。もちろん200万なら10万くらい違うかもしれない。でも、最低値で買い、最高値で売るなんて、そもそも無理だ。
洋子はすぐに預金通帳、貯金通帳、財形の資料などを引っ張り出して、いくらお金があるか調べた。


夜、子供たちが寝てから夫婦はお金の話をする。

妻 36歳の洋子 「ニュースを見た? 円が過去最高値ですって。あなたが未来から戻ってきたとき、阪神淡路大震災の後に円高になるって言ったわね。今がまさにそのときね」


1990年代の為替変動(年平均)
1990199119921993199419951996199719981999
USドル
144.79134.71126.65111.20102.21394.60108.78120.99130.91113.91

注:図の縦方向は、足切りなしの完全比例です。
出典:USドル/円の為替レートの推移(1980〜2024年)
上図の期間で円最高値は1ドル79.75円(1995.04.19)、最安値は147円(1998.10.22)
1990年は、1980年代の1ドル250円台からの円高推移の時期だから比較対象外である。


佐川真一 「チャンスは逃がすことはないよ。買おう、ドルを。間違っても損はしないよ。 とはいえ、今はまだ外貨預金というのができないな。あと数年すれば日本国内でも円を外貨に換えて預金することができるようになる(注2)
それができないから、現状ではドルを現ナマのまま持っているしかないのかな。それじゃ利子がつかないよ。安全のためならトラベラーズチェックだが、発行手数料が1.5%かかるからだめだな。

ところで我が家には、どれほどお金があるの?」


お金の呼び方はコンニャク100万円レンガ1000万円ザブトン1億円だそうです

札束


妻 36歳の洋子 「預貯金みんな集めて550万くらいね。住宅財形はあるけど……家とかじゃなく目的外の使途だと過去の恩恵もパーになるし」

佐川真一 「今1ドル83円くらいで買って128円くらいで売るとして、手数料が最悪3%とすると、500万の3年後の手取りは725万円になる。年利13%なら悪くはないね。
財形は細かく計算すると、解約したほうが若干プラスになるかもしれないけど、まあ乾坤一擲の博打でもないし、無理はよそう」

妻 36歳の洋子 「郵便貯金の金利も去年までは1.3%だったけど今年はたったの0.25%よ(注3)定期でさえ1%を切ったの。郵便局へ行くバス賃で金利はマイナスだわ。
それを考えると、3年据え置きとしても年利13%はすごいわ」

注:ちなみに1980年代の郵便貯金の金利は年8.0%であった。9年積めば元本で2倍なんて時代もあったのだ。 金勘定
2024年8月まで通常貯金が0.02%、3年以上の定額貯金で0.11%であった。100万1年預けて利子は200円であった。
2024年9月から通常が0.1%、3年以上定額が0.13%に(トホホ)

2025年日銀の金利上げによる預金金利の見直しは、まだ公表していないみたい?


佐川真一 「まあ借りてまで勝負することもないが、あるだけぶち込むか?
しかし直美は今17歳、里見が14歳、大学入学金と里美の留学費用か……」

妻 36歳の洋子 「直美は元々国立を受ける気だし、里見は留学するかどうは定かでないし、そのときはそのときよ。ましてふたりともバカじゃないから」

佐川真一 「まあ最悪はそのとき必要額を1ドル120円とかで両替しても良いか、よしやるぞ〜」



*****


1995年度から業界団体の環境部主催で、環境ISO研究会が始まる計画だった。

環境ISO研究会の案内
を出したけど、回答
が遅いわねえ〜
どうしたものか?
吉本
業界団体の吉本
年度首スタートの予定で、2月頃、業界団体で担当となった吉本が各社に案内を出したものの、反応が遅く参加者の回答が揃ったのが5月連休明けだった。

日本の産業界はISO9001のスタートが遅れた反省から、環境ISOには積極的に認証に取り組むことを考えていたものの、環境の規格内容が分からずどの会社も迷っていた。

業界傘下の会社でISOTC委員を出していたところが1社あったが、ドラフト段階の情報提供が遅く、なかなか業界傘下の企業に周知されなかった。

そのために業界団体の幹事である吉本のところには、いったい環境のISOとはどんなものか?、メンバーにはどんな専門家を出すべきか?、ISO9001との関係は?、といった質問が相次いだ。


私が勤め先で環境監査なるものに初めて参加したのは、1994年だったと思う。それは環境監査というものが、まだ海のものともという時代だった。
参加したメンバーは工場の環境施設を運転している古手、本社で業界団体の環境部会に参加している人、そして私は品質監査をしていたという理由で参加した。

しかしそもそも監査基準がない、当然チェックリストもないどころか、基本となるべき監査方針さえないというナイナイづくしだった。
要求事項が定まっていない状況で監査は実行不可能だろう。正直言って監査基準は監査員の思い付きである。

実施後、私は主催した責任者に、環境監査はどうあるべきかという提言を書いて出した。特段の要求事項がないなら遵法監査にすべきだし、とにかくやってみようというなら、監査でなく「気づいたことを上げる点検」とか、「先輩・専門家からの指導」とかにするしかない。
当時、私は環境など縁がなかったが、監査とはどうあるべきかは理解していたと思う。



*****


5月連休明けに、環境ISO研究会発足すると案内が来た。
吉井部長が案内を持って佐川のところに来た。
佐川はこれからのスタンスについて、部長の同意を得ておきたいと会議室に誘った。

吉井 「わざわざこんなところで話をするとは、環境ISOに武者震いか、怯えているのか(笑)」

佐川真一 「私は部長から、気違いとかホラ吹きと思って欲われたくないのです。それで話しておきたいことがあります」

吉井 「伺いましょう」

佐川真一 「家内以外に話したことはないのですが……私は未来の記憶があるのですよ」

吉井 「未来の記憶か……表現を変えると未来から時間を戻ってきたと言うことか。
信じられないが、気違いともホラ吹きとも思わないよ。君の予言が当たるなら……

いや、ちょっと待てよ、ISO9001の認証とか課長解任に灰皿事件とかは、一度体験したことなのか?
君の対応を聞くかぎり、信じたくなるな」

佐川真一 「そうです。一度体験しました。しかし二度目では一度目とは違う対応をして違った結末になりました。
若返ったと知ったとき、単純に同じ人生を繰り返すのではなく、決断と行動において、前回よりより良い対応をしようと考えてきました」

吉井 「分かった。以前、君と話したことがあるが(第45話)、確かにこれからのことを予言というより経験したように話していたな。
環境ISOの審査では恣意的な解釈が激しくて、規格と異なることを要求するという話だったように覚えている」

佐川真一 「ご記憶されていたとは感謝です。私は世の中は正論とか正義だけでは通用しないと知っていても、自分に正直な人生を送りたいと思っているのです」

吉井 「つまり間違いを正していくということですか」

佐川真一 「考えてみれば、それは当たり前のことで、正しいと思うことを言えないのは異常です。
ですが世の中のしがらみはそれを許しません」

吉井 「具体的には?」

佐川真一 「ISO審査で審査員が間違えていても、それを尊重しろという圧力がかかります」

吉井 「どうしてそうなるのかな?」

佐川真一 「ご存じと思いますが、ISO9001の審査は外資系、実際は英国の認証機関に依頼することから始まりました。なんとなればISO9001はイギリスのBS5750規格のISO規格化ですし、10年も前からBS規格で審査がしていたイギリスの認証機関が実績もあり、日本まで審査員を派遣する能力があり、そのブランドイメージも確立していたからです。

日本は己の品質に誇りがあったものですから、ISO9001を軽視していてEU対応で出遅れた。それで環境ISOでは出遅れないようにと皆、待ち構えています。

また、認証制度が金になる、審査員の仕事もとろうと考えて、業界団体は軒並み認証機関の設立しています。
業界で認証機関を作ると言っても、業界団体が作るわけではありません。業界傘下の企業が株主となり、株式会社である認証機関を設立するわけです。

その結果、株主となった企業は、その認証機関に審査を依頼せざるを得ない。そうしなければ認証機関に審査員として出向させることができない……当たり前と言えば当たり前です。
そして自分が株主になっている認証機関となれば審査に問題があっても、転注できない。審査員/認証機関が間違えても、ユニークな……見当違いという意味ですよ……見解でも反論せずに受け入れなければなりません」

吉井 「認証機関や審査員の考えが君と違ったとき、君の判断が正しい保証はないよね?」

佐川真一 「ISO規格は曖昧じゃありません、解釈はひとつしかありません。
イギリスで過去から……環境のマネジメントシステム規格であるBS7750だって、既に数年の審査実績がありますから、どのように理解するかは、イギリスの認証機関に聞けば回答がもらえます」

吉井 「なるほど、どれが正解かは決まると。そしてその正解と異なる認証機関は使いたくないと……

じゃあ、特定の認証機関が正解でない見解であっても、何故それが通用するのだろうか?
いや、これからの社会で通用してしまったのか?」

佐川真一 「認証機関が審査を受ける企業より上だという認識があるからでしょう。それは企業側も認証機関側も持っています。 そして認証機関は己が間違っているという発想がありません。天上天下唯我独尊です。

それだけではありません。審査するにも確固たるルールがあります。
審査員の再審のない終審ではなく、異議申し立てを受け付けなければなりません。しかしこれから雨後のタケノコのように設立される認証機関の中には苦情受付窓口がないところさえあります……ありました。

それから、異議や苦情を申し立てることができることを、審査のオープニングミーティングかクロージングミーティングで(注4)、説明しなければならないとルールで決まっています。これはISO9001も同じです。
しかしその説明さえしない認証機関もあります。今現在のISO9001の審査でそれを欠かさず説明しているのは半分じゃないですか。

前世では私は審査でもめると、別の認証機関の知り合いとか、知り合いがなくても問い合わせて回答を得て、それをもって認証機関に判定の見直しを求めたことは何度もあります。
しかし彼らは『自分の考えが正しい』と言って、異議を聞くまでもなく却下されました。

審査契約は民民の契約です。だから判断が不満なら審査契約を基に裁判を起こすことは法的におかしくありません。審査契約書に定めていないことで不適合を出すのは、明らかな契約違反です。
しかし、かっての私の上長は、そういう証拠や根拠があっても、審査員の言うことを聞けと長いものに巻かれる判断をしました(第10話)。認証機関を替えるという発想もありませんでした。

審査員の判断に従っても、無駄程度ならともかく、審査員の要望に合わせて、わざわざ法違反になる改造をしたことさえありました。
私はそういうことを止めたいのです。包括的に考えれば、それが会社のためであり、担当者のためであり、世の中のためであり、結果として業界設立の認証機関のためであるでしょう」

吉井 「演説は聞いた。
結論は何だ?」

佐川真一 「部長がそういうとき、どういう判断をするのか知りたいのです」

吉井 「長い者には巻かれろと言ったらどうするのか?」

佐川真一 「それは前世と同じですね。そうであっても、私のレベルで最大限、審査員の説得、認証機関の説得をするつもりです。それでだめなら諦めるしかありません」

吉井 「前世はどうだったのかな?」

佐川真一 「前世では懲戒解雇された尾関副工場長は、常に審査員に従えと命令しました。彼との確執で私が負け、会社を辞めました。前世では尾関副工場長はその後も出世して役員になりました。
私はその後、中堅企業で環境管理の仕事をして定年まで勤めました」

吉井 「なるほど、二度目の人生ではその恨みを晴らしたいか?」

佐川真一 「そう解釈してほしくはありません。まっとうなことを通せば、この会社に貢献できると考えているのです。その結果、企業の環境管理のレベルを向上させて行ける……当社だけでなく日本中がそうなって欲しい。
それは本来の環境ISOの目的です。素晴らしいことじゃないですか」

吉井 「君は未来の知識があると言ったな。当然その知識をISOだけでなく、会社の事業についても、個人的な金儲けにも使えるわけだ」

佐川真一 「もちろんです。ただ私は普通に生きていたわけで、過去に戻れるとは思っていませんでした。だから株価や為替の変動の詳細とか、競馬のG1の勝敗などを、覚えているわけはでありません。頭に残っているのは、総選挙結果とか大事故、天災といった程度です。

ここ最近のことで覚えているのは、今年初めの阪神淡路大震災、まもなくのオウム真理教上九一色村の騒動、今は円高ですが2年半後にアジア通貨危機が起き、超円安に変わります。数日前、家内は為替差益を稼ごうとドルを買いました」

吉井 「ほう、3年後の1998年にドルはいくらになる?」

佐川真一 「130円台ですね」

吉井 「よし我が家でも500万くらい買おう」

佐川真一 「簡単に500万と言えるのがうらやましい。儲けるにも元手が要ります。
2年半後に500万が800万ですか、もちろん為替手数料が二度かかります」

吉井 「他にも儲け話はないか?」

佐川真一 「株はこれからも下がりますね。2000年頃が底で7,600円まで落ちます。それから少し上がりますが、2008年アメリカ発の恐慌があって、このときは7,000円になり、その後数年は下がったままです(注5)
2011年に東日本大震災という超大型の地震が起きます」

吉井 「ちょっと待て、大地震?」

佐川真一 「東北地方の太平洋岸が被災地になり、死者行方不明が2万人を超えます。阪神淡路大震災の数倍の規模ですね」


阪神淡路大震災と東日本大震災の比較
阪神淡路大震災東日本大震災
死者・行方不明6,434人18,500人
被害金額6,500億円2兆円

私は東日本大震災の被害額が阪神淡路大震災の3倍とは思えない。放射能もあるし廃炉もどうするのか未定だ。それに原発停止による電力問題もある。日本産の農水産物を輸入禁止した国もある。感じだが10倍以上だと思う。


吉井 「日本は大丈夫なのか?」

佐川真一 「大丈夫じゃありません。一番の問題は原発が損壊したことです」

吉井 「放射能漏れか?」

佐川真一 「放射能漏れは起きましたが、放射能の被害はありませんでした。しかし国内外の風評被害で私の故郷の福島県は大変でしたね。
結果として全国すべての原発の停止、それに伴う日本限定のエネルギー危機でした。

日本の国家とか産業をご心配されたなら、それは大丈夫です。実際GDPの数字からは東日本大震災の影響は見て取れません。
先ほど言いました2008年の恐慌、リーマンショックといいますが、その影響は日本のGDPがかなり下がりました(注6)大地震以上の影響があったのです」

吉井 「日本経済はこれから先どうなるの?」

佐川真一 「日本はズッと経済も政治も迷走します。首相は短期間でどんどん変わります。
村山爺 今の村山は今年(1995)いっぱいで終わりです。次がチェーンスモーカーの橋竜で1998年まで2年間、その後が平成の色紙を掲げた小渕で2000年までの2年間。その次が森喜朗で1年でしたか?

次は小泉純一郎で4年、安倍晋三が1年、福田息子、麻生太郎ときて、2009年に選挙で政権が鳩山民主党に代わります」

吉井 「へえー、ちょっと待て、大地震が鳩山の時起きたのか?」

佐川真一 菅直人 「いえ、鳩山はあまりにもアホで1年持たずに菅直人に代わり、この時地震が起きました」

吉井 「市民活動家あがりじゃ期待できんだろう」

佐川真一 「彼は原子力の専門家と自称して大活躍でしたよ」

吉井 「ほう意外だな」

佐川真一 「冗談というか皮肉です。自衛隊や現場の邪魔をするのに大活躍でした」

吉井 「ああ、そう」

安倍晋三

佐川真一 「結果として2012年に自民政権が復活し、安倍晋三が再び首相になります。彼はデフレを解消しようとしましたが、結局、脱却できませんでした。
しかし経済は回復して株価は23,000円くらいになります」

吉井 「ほう、バブル以降の最高値だな」

佐川真一 「まあ、25年も先のことです」

吉井 「長期低迷だな。経済は分かったが、技術や製品はどうなの?」

佐川真一 「世の中ではエネルギーや温暖化など環境問題がクローズアップされてきます」

吉井 「そういえば環境部設立の飲み会(第46話)での、君の話を覚えている。
フロン問題は解決するそうだな」

太陽光発電

佐川真一 「フロンはもう過去のことになりましたね。エネルギーも枯渇は解決しませんが、代替策は多々検討されています。
驚くことに、日本中に太陽光発電パネルが敷き詰められ、発電量は水力発電量を超えました」

吉井 「それはすごい。ものすごいビジネスチャンスだな」

佐川真一 「太陽光が伸びたのは補助金のおかげもあります。いや、それが大きいでしょう。太陽光を付けない人がつけた人の電気代を払っているにすぎませんよ。
補助金や税制の優遇措置を除けば、太陽光の設備投資が寿命までに回収される見込みはありません
太陽光パネル設置の環境破壊も大きく、事故や災害も起きています。芳しくありません」

吉井 「当社は太陽光発電ビジネスに進出したのか?」

佐川真一 「コンバーターやコントロール機器などはありますが、パネルそのものはもう低価格競争で中国が寡占しています。工事は町の工務店で、大企業が参入できる部分は限定されます」

吉井 「なるほど、見かけだけで旨いところはないか」

佐川真一 「世の中ではインターネットの普及が大きいでしょう。今年windows95というOSがマイクロソフトから出ます。
そのおかげで一般人がインターネットにアクセスできるようになり、一つの文化と言いましょうか社会システムと言いましょうか、ビジネスも情報も買い物も趣味もネットで満たされます」

吉井 「老人も子供も、みながパソコンを使ってアクセスするのか?
難しそうだな」

佐川真一 「難しいことを簡単にするのがwindows95ですよ。
その出現、以降、賃貸マンションやアパートはインターネット接続を備えるのが当たり前になります。もちろんカフェもデパートも」

吉井 「オイオイ、皆パソコンを持って歩くのか?」

佐川真一 「いやいや、今の携帯電話が進化して、ディスプレイを備え入力も容易にできるのです。
そのはしりであるブラックベリーは来年登場するはずです(注7)


ブラックベリー 2014年頃、市の老人大学に行ったら、ブラックベリー9320を使っている老人がいて、まだ持っている人がいることに驚いた。
ブラックベリーは3G回線を使うので2026年までは使えるらしい。
サイズは109×60×12.7で、iPhone SE(138.4×67.3×7.3)よりはるかに小さい。

吉井 「分かった、分かった。君は預言者かタイムトラベラーかはともかく、未来を知っていることは間違いない。
しかしそれで金儲けするとか高い地位を目指すのでなく、環境ISOに拘るのはなぜなの?
ISOなんて特定の業種しか関係ないし、関係ある会社だってISOに関わりがある人なんて、ほんの一部だよ。つまらないじゃないか」

佐川真一 「サラリーマンとしてやりたいことができなかったから、第二の人生では我を通したいということですかね」

吉井 「なにもサラリーマンに拘ることもなく、この会社に拘ることもない。未来を知っているなら競馬でも株でも儲けて、楽しい人生を送ったほうがいいじゃないか。
一回目の人生で会社員時代に理不尽なつらい目にあったから、もう一度同じ人生を生きて、それを正したいと思う人は少ないだろう」

佐川真一 「うーん、そう言われるとそうですね。第二の人生で同じ仕事であっても、少しでも良い仕事をしたいと考えたのは、だいそれたことができない小市民なのでしょう」




吉井 「要するに佐川さんの希望は、これから認証機関ともめるだろうということ。
そのとき認証機関と交渉する権限を与えてほしいということか。最悪の場合、認証機関を替える権限か。

前者については純粋な技術論だ。証拠と根拠をあげて認証機関に討論を挑むのは妨げるものではない。
問題は決裂した場合だな。認証機関の移転は簡単には決められない。当社の経営問題とは言わないが、人事政策も含めたかなり高いレベルで検討が必要だ。

生煮えで済まないが、今後そう言う問題が起きそうなときは早めに情報を入れてほしい。検討はする。
それから審査員の指導によって法違反になるとは、絶対に許せないことだ。そういう問題が起きた場合は、早急に報告を頼む。私が対応する問題と認識してほしい」

佐川真一 「了解しました。
私も身動き取れなくなれば、前世と同じく退職するという逃げ道もありますから」

吉井 「まあ、そうだろうな」



うそ800 本日、思ったこと

書いていて、だんだんと考えが変わってきました。
悪い審査員は掃いて捨てましょう











物語を書き始めるときは、頭の腐った審査員を掃いて捨ててやるぞと意気込んでいたのですが、いろいろ考えると未来の知識で金儲けして優雅な暮らしをした方がよさげです。

なんでISOなんぞに関わるのかと、書き始めたときに戻って、自分を殴ってやりたくなりました。
ただ、全く新しい人生を歩むなら、ISOと関係ない単なる転生物語ですよね。
ISOと銘打つならば、ここは面白いISOの物語にしなければと思い直しました。



<<前の話 次の話>>目次



注1 2025年時点での過去最高値は2011/10/31の75円32銭である。

注2 日本で外貨預金ができるようになったのは1998年である。1996年から3年ほどかけて行われた大規模な金融制度改革を金融ビッグバンと呼ぶ。
これは従来の「護送船団方式」を崩し、金融業界の自由化と国際化を目指したもので、自由、公正、国際的な金融市場を目指したもの。

注3 100年以上にわたる郵便貯金の金利推移をさぐる

注4 正しくは、ISO17021-1:2015の9.7.4.1 f)では「最終会議で説明する」と定めている。実際にはオープニングミーティングでパワーポイントの説明の際にまとめて行う認証機関が多い。目くじらを立てることはないと思う。

注5 株価の長期推移

注6 GDP(自国通貨名目)の推移

注7 blackberryとは、1996年に登場した携帯端末である。キーボードのボタンの配置が、ブラックベリー(西洋藪イチゴ)に似ていることから命名された。
当初はポケベルや電子メール機能から始まり、21世紀になってウェブブラウザー、カメラの機能を持つようになった。
2011年には利用者が8,500万もいたが、iPhoneやアンドロイドの競争に負け、後にアンドロイドOSの携帯端末なども作った。




外資社員様からお便りを頂きました(25.02.4)
おばQさま 今回も興味深い内容を有難うございます。
拝読して思いましたが、もし未来が判っていたとしても、会社員のまま出来る事って、限られていますね。
ドルを買うのは私もやりましたが、その分の儲けは 更に住宅が下がって消滅。
当時も住宅はもう上がらないと思いつつも、さっさと損して売る決断は出来ませんでした。
結局 売った時には買値の三分の一、トホホ。

私が体験したのは設計、生産の海外移転。 当時からオカシイと思っていたし、それで上司を批判してにらまれました。
今のような日本の生産空洞化を危惧したのは私だけでなかったけれど、結局 流れは止まらなかった。
だから未来を知っていても、サラリーマンのまま出来る事は限られております。せいぜい上司ににらまれる前に、転職するか社内公募で国内生産に拘っていた部門に移動することくらい。

311が、もし判っていても、あからさまに言えば狂人扱い。
福島原発で、菅直人を止める事は周囲でも出来なかったし、結果が判っても米軍の横やり&放水での工事中断も止められない。
最悪の回避のために、やるべき事が判っていたから、それを出来なかった原発の所長は憤死されました。
考えてみると、悲惨な事が起きていて、現場でそれを止めようとした人はいて、それでも止まらなかったから悲劇は起きていると判ります。

たぶん、個人で出来るのは、サリン事件の現行犯のジャマくらいですが、それも個人だと命がけ。
テロ行為を停止できても、組織が壊滅しなければ、また犯行は繰り返される可能性もあり。

そうやって考えてみると、自分が、その場で出来る範囲の事しか、変えられない事が良く判ります。
だからこそ、個人が出来る事をやらないといけない事も良く判ります。

外資社員様 もう身につまされて、読むのが辛いお話です。
私もいろんなことがありました。絶対うまく行かないと分かっている仕事を、アホな上長は取ってきたりするわけですよ。それを上手くやれなんて、不可能は可能にできません。
とは言いながらNC機械のテーブルが1500mmしかないのに、3メートルもの加工をした私もまともじゃありません。
それから〇違反だろうってのもありました。まあ小説のようなことをしたわけですよ。アホなボスの間違いを正してもボスには嫌われる。
これはカッサンドラの呪いでしょうか。未来どころか、こうすればああなると分かり切っているのに、どうしようもない。
吉田松陰 ここは偉大なる先達の辞世の句「かくすればかくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂」しか思いつきません。
私のような現場指揮官は、小野田さんの「戦闘は錯誤の連続なり、錯誤を速やかに発見し、修正したものが勝利を得る」を目指して工夫するしかありません。
中野幾次郎他の「失敗の本質」では「戦闘は錯誤の連続であり、より少なく誤りをおかしたほうにより好ましい帰結をもたらす」では、運任せとしか思えません。ここは小野田さんの論理しかありませんね。
と言いつつ、もう未来がありませんので、どうでもいいかな




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