タイムスリップISO73 未来プロジェクト1

25.04.17

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。



ISO14001のFDISも出て、次はISO14001の認証指導、そして柳田企画に移管すれば環境ISOはおしまい。次はグループ企業の環境監査制度の確立と考えていた佐川に、降って湧いたのが「未来プロジェクト」である。
つまり佐川の記憶というか知識を、企業経営に役立てようという発想である。

2022年まで生きた記憶があるといっても、その記憶は断片的であり曖昧である。例えば東日本大震災の起きた日時は覚えているが、リーマンショックの日時は覚えていない。大地震(注1)と言えるものは年に一度は起きているそうだが、東日本大震災を除けば地震後も報道が続いたものくらいしか覚えていない。


注:一般に震度6強以上を大地震と呼んでいるようだ。それに該当する地震は2010年から2025年の15年間で15回あった。しかし年に2度3度起きたこともあるし、1度もない年が7年もある。発生が均等でなくランダムだから、年平均1回とは言えない。

記憶をたどり、思い出した種々の出来事の前後関係から今後25年間の年表を作っていく。カテゴリーとして政治、経済、国際情勢、事件、災害……考えることは多々ある。
関心を持ったものしか記憶にないから、完璧なものにはならないだろう。

記憶に残る大事件でもいつ発生したか記憶が定かでないので、それが起きたとき、子供たちの学校、どこに住んでいたのか、どんな仕事をしていたか等から、発生順番を推定する。そして出来事の前後関係を考えて起きた年を推定する。少なくても順序は思い出せる。それを基に年表を作っていく。

そして思い出した出来事、その発生時期、どんな影響があったのか、結果どうなったのか、どうすれば良かったのか、事前対策としては……そんなことを考える。
激動と枕詞が付けば明治維新とか第二次大戦とかが続くが、自分が作った年表をみると現代も激動の時代だと思う。いや、激動でない時代など、あったのだろうか?


アメリカ同時多発テロ まずはこの流れを、未来プロジェクトのメンバーに、共有してもらうことが必要だろう。
アメリカ同時多発テロ事件を教えても、誰も止めることはできないだろうけど、企業の対応をもっと上手くできる糧となるなら、それで良いと思う。

例えば事件後、少しの間(注2)アメリカ上空を飛行機は飛べなかった。もし前もってひと月分くらい輸出を上積みしておけば、ビジネスで有利になったかもしれない。
新婚旅行だって行けなくなったから(注3)行き先や日程を変えることも考えないとならない。

またこのとき飛行機が飛ばないから飛行機雲ができなくなり、夜間の気温が1℃低下したという研究もある(注4)これも何かの参考にならないだろうか。



*****


夕方、人事部の会議室である。
出席者は下山次長、佐藤さん、総務部長、中山さん、生技部長、高見さん、吉井部長、佐川、そして初めてお顔を見た浅川さんの9名である。

ここで「さん」付けの人は平社員というわけではない。役職定年になったとか、佐川のように工場では課長クラスだが本社では管理職でないという人もいる。

l事業本部l人事部
浅川さん
浅川さん
下山
下山さん
佐藤さん
佐藤さん




吉田部長
吉田部長
吉井
吉井部長




中山さん
中山さん
佐川
佐川
江本部長
江本部長
高見さん
高見さん
l生産技術部l

注:事業本部はいくつもあるだろうが、どこかは知らない。他のみっつの部門と違い、ビジネス(金儲け)をしている人という意味です。


下山 「降って湧いたことではありますが、未来プロジェクトというのを設けることになりました。これから起きる事件や災害あるいは流行などを予測して、対応を考えるものです。
今7月です。三カ月くらいで最初の成果をだしてもらう。その状況によって継続するか解散するかを考えることになります。

プロジェクトにはメインとなる部門を決めますが、今回は特殊なので社長室になるのでしょうけど、そうもいきませんから人事部が担当となります。プロジェクトマネージャーとして浅川さんにお願いします。

メンバーは浅川さんをリーダーに、ここにいる佐川君の他、自推他推を加えて全部で5ないし7名くらいと考えています

浅川さん 「ええと、目的、パーパスではなくobjectiveは何ですかな?
目指すところ、達成目標を明確にしていただかないと……」

下山 「話が前後しました。まず冗談抜きの話ですが、ここにいる環境部の佐川君が今後20年の歴史というか未来を知っているというのが前提です。
これについてはなぜと問うのはなしで、公理というかアプリオリと考えてください」

浅川さん 「考えずに受け入れろということだな」

下山 「そう御理解ください。
それで佐川君の見る、これからの20年の変動、政治、経済、災害、国際問題などの流れから、企業としてどういう対策、対応を取るべきかということを、提案してほしいということです。

景気の動向のように直接的なものもあるでしょうし、外国の戦乱によって資源調達の問題とか、特殊な部品や材料の需要の変化なども考えられるでしょう。
そういうことを考えてほしいと思います」

浅川さん 「20年先というとかなり先の話だ。プロジェクトとしては短期間、できれば今年とか来年早々に起きる問題をあげて、その対応を提言しないと価値を示せないね」

吉井 「未来予測が正しく対応も正しいと、立証するにはそうでしょうね。
しかし例えば大地震が起きるというのを1年読み違っても、大地震の対応を示すとかだけでも価値があるのではないかな」

浅川さん 「それでは未来を知っているという意味がないね。単なるリスクに対する予防処置だ」

吉田部長 「まあ、確かにそうだな」

メダル

佐川 「1996年も半分過ぎてしまいました。今年のこれからの出来事、事件、災害というと……アトランタオリンピックは来月下旬開催ですが、日本のメダルは金3、銀6、銅5になります。これでよろしいですか?」

浅川さん 「それは予言が当たるかどうかの試金石ということか?」

佐川 「そう受け取っていただいて結構です。当社の経営には無関係ですけど。
その他と言えば……日にちは覚えていませんが、9月に野茂(注5)が大リーグでノーヒットノーランを達成します。

11月にバンダイが「たまごっち」という携帯ゲームを発売します。ものすごく流行して品不足になります。
12月にはペルーの日本大使館がテロリストに占拠される事件が起きます。このあたりになると、海外駐在員の安全対策に関わりますか」

浅川さん 「スラスラと語るところを見ると、立派な予言者だな。
私が懸念しているのは『ノストラダムスの大予言』のような曖昧模糊では、予言が当たったのか否かが分からない。客観的に見て『当たった・外れた』が判断できないと意味がない」

佐川 「私は水晶玉を見て予言するのではなく、未来の記憶を思い出すだけです。皆さんが、20年前を思い出してみてください。上司の移り変わりの順序を正しく思い出せますか。ましてや異動日など忘れているでしょう。何かがあったのは、どこに勤務していたときくらいしか思い出せないと思いますよ。
ですからイベントの起きる順序が前後することもありますし、日付が思い出せないものも多いです」

浅川さん 「佐川さんは未来の記憶があるのか?」

佐川 「どうでしょうか、一回人生を経験して、若返ったと理解すべきかもしれませんね」

浅川さん 「それを真面目に考える意味があるというわけかな?」

佐川 「言い訳がましいのですが、私がその未来の記憶を活用しようと、売り込んだわけじゃありません。私が未来の記憶があると知った人が、会社の経営判断に使えないかと思いついたのです。
私は個人的に為替相場で稼ぐくらいで満足ですが」

中山さん「現実に灰皿事件では、事件発生を止めることはできなかったけど、抑え込めたと思います」

浅川さん 「灰皿事件とは?」

下山 「佐川君が女性社員が怪我するのが目に浮かんだので、それを救ったという事件です。証拠がないわけではないです。
浅川さんは先ほど申しましたように、アプリオリと考えることはできませんか?」

浅川さん 「つまるところ管理者はタスクを果たしたか否かですよ。具体的な目標があり、それができるリソースだと確認できなければ、仕事を受けたくはないね」

吉井 「まあ、それは当然ですね」

佐川 「その疑問というか問いには、先ほど言った『たまごっち』とか、野茂のノーヒットノーランが成就したら信頼できますか?」

浅川さん 「なんともいえんな。野茂はいつでもノーヒットノーランどころか完全試合でもできるんじゃないか? 時間の問題だよ。
それにたまごっちだっけか、そういうものはたくさん登場して、もてはやされるのも普通にあることだ」



*****


結局、初回は、プロジェクトの責任者予定が乗り気でないと言ったところで、お開きとなった。これじゃ開始以前に空中分解かと佐川は苦笑する。



*****


座る人人
自席に戻り机上整理して終業時刻より30分ほど過ぎた頃、佐川がエントランスを出ると、今日の会議で会った浅川さんが、受付の前にいくつか置いてあるサイコロチェアに座っている。
無視して通り過ぎるのも何かと思い、佐川は近づき声をかける。


佐川 「浅川さん、誰か待っているのですか?」

浅川さん 「君を待っていた」

佐川 「それじゃだいぶ待ったでしょう?」

浅川さん 「お宅の庶務に聞いたら君はめったに残業しないという。だから終業時から1時間くらいで退社すると思っていた」

佐川 「それはまた……何か御用ですか?」

浅川さん 「君は飲める口か?」

佐川 「人並みには」

浅川さん 「そいじゃ神田あたりで飲もう」

グラスビール瓶グラス
焼き鳥

神田駅近くの居酒屋に入る。
ビールとつまみを頼んで乾杯をする。何のための乾杯なのか?


浅川さん 「未来を知っているとか若返ったとか、普通信じる人はいないよ」

佐川 「私もそう思いますね。先ほども言いましたが、私が会社にプロジェクト立ててやろうと言い出したわけじゃありません。

たまたま私が女性の怪我を救ったもんだから、その理由を問い詰められて、ガラスの灰皿を投げつけるのが分かったから防いだと言っただけです。
それを聞いて驚くだけでなく、事業に役立つのではないかと考えた人がいたということです」

浅川さん 「君は為替相場とか言ったね、儲かっているのかね?」

佐川 「答える義理もないと思いますが、お教えしますよ。
昨年円がものすごく高かったとき、少しまとまったお金を両替をしました。今1ドル30円くらい高くなりました。とはいえ元手が少ないので儲けは大したことありません。
1,000ドルで3万円、1万ドルで30万。元手が1000万円とかあれば大きいですが、それほど手持ちがありません。
吉井部長は500万円ほどドルを買ったと言ってましたけど」

浅川さん 「分の良い賭け事はないか?」

馬

佐川 「私は競馬をしないので、過去のG1など全く興味がありません。覚えていれば結構な稼ぎになったでしょうね。
ロトなんて毎回の当選番号を覚えているわけありません。宝くじは当たり番号も知らないし、その番号を買う方法もない。
あまり役に立ちません、アハハ」

浅川さん 「そういうのがビジネスで役に立つと思うか?」

佐川 「為替とか株などは具体的な日付とか時間など覚えてませんから、あまり役に立ちませんね。長期的な推移は分かりますが」

浅川さん 「じゃあ、だめじゃないか」

佐川 「ただどうですかね、トレンドとか流行とか新製品の登場なんては役に立つ情報でしょう。
それと大地震ですか」

浅川さん 「これから大地震が起きるのか? 直下型とか?」

佐川 「2022年までには関東を襲う地震は起きません。
ただ東日本大震災というのが2011年に起きます。地震もすごかったですが、津波で大勢の人が亡くなります。中でも一番の問題は福島県の原発の事故ですね」

浅川さん 「福島県? 放射能漏れとか?」

佐川津波が襲って、冷却用の電源が壊れてしまいメルトダウンします(注6)水素爆発がおきて大量の放射性物質が外部に放出された。
元々津波の高さの想定は6.1mでしたが、実際には15mだったそうです」

浅川さん 「メルトダウンだって! 福島県のどこですか?」

佐川 「ご存じないでしょうけど大熊町というところです」

浅川さん 「当然住民は避難したわけか?」

佐川 「そうです。地震が発生したのは2011年3月11日、それ以降大熊町だけでなく、双葉町、浪江町、富岡町、楢葉町、葛尾村は全域が避難対象、一部が避難対象は、南相馬市、飯舘村、川俣町、田村市、川内村、伊達市と大変なことになりました。

立ち入り禁止が一部解除されたのが3年後の2014年、段階的に解除が広まりますが、私が現在に戻った2022年でもまだ帰れない区域がありましたね」

浅川さん 「私は大熊町出身だ。そういうことになったのか……
原発のある町は電気代が安い(注7)からハッピーと思っていたけど、ダモクレスの剣の下にいたわけだ。
そのメルトダウンを防ぐ方法はなかったのか?」

佐川 「調査報告書では、地震と津波で冷却ポンプを動かす電源が破壊されたのが原因と言われてます。
ポンプを動かす非常用発電機が3,000〜5,000kWといいます。4,000馬力とか7,000馬力の発電機なんてそこらにありませんよ。イベントや災害用の電源車(注8)では話になりません。護衛艦のエンジン(注9)くらいでしょう」

浅川さん 「非常用の発電機を用意してあれば良かったのか?」

佐川 「用意していたのです。しかし津波が襲ってきて破壊されてしまったのです」

浅川さん 「ならば非常用発電設備を高所に設置させれば、震災にあってもメルトダウンは起きないということか?」

佐川 「事故調査の結果ではそうですね。しかし完璧を期すなら、堤防の強化・拡大化でしょうね。津波が原発まで届かないようにすれば問題がなかった。
でも地震が起きる前に、どうしたら東電や政府を動かせるかは見当も付きません。そもそも東日本大震災の規模の地震が起きるなんて、予想されていませんでしたから」

浅川さん 「君は未来を知っていても、どう動くべきかを知らないのだな。ワシも知っているわけではないが」

佐川 「昔からカサンドラの呪いと言われて、予言者の語ることは信用されないのです」

浅川さん 「放射能で亡くなった人は何人くらいいたのかね?」

佐川 「存じません。一般住民にはいないと思います」

浅川さん 「避難者はどこにいたのだろう?」

佐川 「私は郡山市出身です。親戚や知り合いは多々いますので、そういう情報は入ってきました。
初期的には郡山市とか須賀川市に仮設住宅を建ててそこに住んだようです。私が郡山市に住んでいたとき、近くにあった屋内競技場も避難者で大混雑だったそうです。
東京都でも都営住宅に避難者を住まわせるとかしましたね。

福島県外では避難者を放射能汚染されているから、来るな・出ていけという人も多かったです。
千葉では福島から避難してきた子供へのいじめが問題になりましたし。

家内の姪や甥の子どもたちだけでも千葉の我が家において欲しいと言われて、二月ほどいました。子どもたちを連れてくるにもナンバーが福島ですと車に傷つけられるので、栃木県でレンタカーに乗り換えて来ましたね。人情、紙より薄いですよ」

浅川さん 「君の親戚は郡山市なら避難することはなかったのだろう?」

佐川原発からの直線距離だけで放射能の強さが決まるのではないのです。風向きとか雨など天候の影響もありまして、郡山市の街中でも局所的に放射能が高いところも何カ所かありました。

家内の姪の家では、義母がガイガーカウンターを市役所から借りて来て庭を測って、放射能の低いところをロープで囲い、ひ孫たちをその中で遊ばせました。だから千葉にひ孫たちを移せば、そういう心配はないと思ったのでしょう。
ついでに言えば彼らも2022年には高校生になりましたが、放射能の影響はなかったようです」

浅川さん 「しかし避難が何年も続くのではどうしたのだろうか?」

佐川 「皆生活がありますから、避難したところで仕事を探して、働くようになったと思います。それにいつ帰られるか分かりませんから、郡山市周辺に家を建てる避難者は多かったですね」

浅川さん 「佐川君は直接の被害はなかったのか?」

佐川 「私は向こうの家は売ってしまいましたが、お墓がありまして、幸い洋式のお墓なので石碑が倒れたりはしませんでした。それでも上の石が大分ずれましたね。とても私の力では動かせません。
石屋に頼むと結構かかりますから、次の葬式、たぶん私でしょうけど、その戒名を刻むとき石碑のズレも直してもらいましょう、アハハハ。
あっ、まだ地震が起きてないから石碑はちゃんとしていますよ」


石碑
花
さらばISO
おばQ ここに眠る
R.I.P.
花
草草草

浅川さん 「君はそういう情報をいかほど持っているのか?」

佐川 「情報と言われても困るのですよ。私は情報を集めようとしていたわけじゃありません。普通に生きていただけです。
ですからどんなものが流行した、どんなものが発明されたということは見知っていても、その原理とか理由などよほどのことでなければ気にもしません」



*****


8時頃、早めに切り上げる。
佐川は総武線で千葉方面、浅川はつくばエクスプレスと言う。山手線で秋葉原まで行き、分かれた。


浅川は混雑している電車の中で考える。
佐川は少なくても嘘は語っていない。ただ嘘でなくても妄想かもしれない。
奴が例に挙げた野茂は最近上げ調子だ、ノーヒットノーランくらいやってもおかしくない。まあ野茂が打たれようが完全試合をしようが、大きな問題ではない。
吊り輪吊り輪

しかし奴がいう宮城県沖を震源とする大地震は、間違いなく起きる感じがする。

だが我々にできることもあるだろう。
奴の話では津波によって建物や設備が壊れたという。じゃあ、現在の防波堤では役に立たないから、もっと大きなしっかりしたものにしろと言うのはどうすれば良いのだろう。

自分の故郷を守るという意味では、これは十分価値ある行為だ。だが根拠を立証できなくて私企業に対して要求できるのか、住民運動すれば良いのか?
話を聞いたからには、何もしないわけにはいかないな……



うそ800 本日の思い

参考にしようと「大槌町東日本大震災津波犠牲職員状況調査報告書」を読んだ。読むだけで涙が溢れる。この中では、地震のとき、何をした、何をしなかった、何を間違えたと、くどいほど続きます。
読んだ人は「なぜミスしたのか」「なぜ考えなかったのか」と思うかもしれない。だけど本当の緊急時はそんな平静ではいられない。

少し前、外資社員様に勧められて『福島第一原発事故の「真実」』を読もうとしたのですが、とんでもないボリュームで冒頭の数十ページと終章だけ読みました。数字とか技術的なことになると目が滑り、興味あるものしか頭に入りません。
この本は専門用語も単位も出てきません。易しく読めますが、涙なしには読めません。

第二次大戦時に「飛行機乗りの五分頭」という言葉があったそうだ。飛行機に乗って戦闘になれば普通の状況ではなくなり、普段考えている半分も考えられないという意味だそうだ。
ヘルメット 私は東京丸の内で東日本大震災のとき、ビル管理会社が配布している非常用袋からヘルメットを出してかぶった。私を見た人が「はしゃいでいる」と言ったのを覚えています。その人はその後の大きな揺れで、ヘルメットを被る余裕もなかったでしょう。
常日頃、「緊急時には……」なんて言っても、緊急時は来ないと思っている人がほとんどだと思います。いつか来るなら、今かもしれない。そういう覚悟がないと訓練も防災用具も意味がないと思います。

東日本大震災のとき私の娘は横浜で働いていましたが、地震になってお客様が右往左往するのを、駐車場に誘導したと言います。立派だと思います。自分もそうできるよう心身を鍛えたいと思います。



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注1 マグニチュード7以上の地震は15年に15回は起きている。
下表はマグニチュードではなく震度が6強以上の地震である。

2010年以降の震度6強以上の地震

発生日震源地マグニチュード最大震度
2011/03/11三陸沖(東日本大震災)M7.97
2011/03/12新潟県中越地方M6.66+
2011/03/15静岡県東部M6.06+
2011/04/07宮城県沖M7.46+
2016/04/14熊本県熊本地方M6.57
2016/04/15熊本県熊本地方M6.46+
2016/04/16熊本県阿蘇地方M5.86+
2016/04/16熊本県熊本地方M7.37
2018/09/06胆振地方中東部M6.77
2019/06/18山形県沖M6.76+
2021/02/13福島県沖M7.36+
2022/03/16福島県沖M7.46+
2022/03/16--------6+
2023/05/05石川県能登地方M6.56+
2024/01/01石川県能登地方M7.67

出典:過去の地震情報

注2 2001.08.11午前9時に連邦航空局(FAA)がアメリカ国内の全航空機の離陸禁止命令を出す。
再開は9.13から徐々に行われ、完全再開されたのはほぼ10日後だった。

注3 新婚旅行ではないが、家内と私はテロの2か月後の11月に、ラスベガスに遊びに行った。WTCテロの直後だから、旅行会社から「本当に行くのですか?」と何度も確認の電話があった。
サンノゼで乗り換えたとき、空港にはヘルメットを着けライフルを持った兵士がいたるところにいた。

注4 ・9/11研究:航空交通は気候に影響を与える

注5 野茂英雄がアメリカでプレーしたのは1995年から2008年である。

注6 福島第一原発の非常用ディーゼルエンジンは何kWくらいだったのか。バックアップがあればメルトダウンは防げたのか?
まず福島第一原発の非常用ディーゼル発電機は、1台あたり約3,000〜5,000kW(4000〜6,600馬力)という巨大なものだった。
しかし津波によって、非常用ディーゼル発電機そのものと燃料タンク、配電系統が浸水・破壊された。
バックアップが生きていたら回避できたかとなると、原子炉の冷却が持続できていれば、炉心損傷(メルトダウン)は起こらなかったと多くの報告書が言及している。

問題は「非常用電源がなかった」ではなく「すべての非常用電源設備が破損した」ことである。電源車を後から送っても、接続設備(スイッチギアやケーブル)も破損していたため、間に合わなかった。
近隣から調達して即時に代替するのが困難だった。配電盤や配線が水没して破損していた。
対策として非常用発電機が高所に設置されていれば生き残った可能性がある。
もちろんもっと良いのは、津波より高い堤防を作っておくことだった。

注7 原発地域限定の電気料金割引制度があった。しかし福島第一原発の事故以降、その制度は廃止や縮小している。

注8 災害時の電源車は数十馬力である。
EVは災害時に電源として使えると言われるが、多くは100Vで1500W(2馬力)程度。

注9 現代の護衛艦を始め多くの船舶は、ガスタービンやディーゼルエンジンで直接スクリューを回すのではなく、IEP(統合電気推進)といい、エンジンで一旦発電し、モーターでスクリューを回す仕組みになっている。

だから船を停泊させて電気を供給することは可能だ。ただ福島第一原発では、接続端子の問題とか操作盤も破損していたとか、問題が多々あった。
それに地震発生後、数時間以内に、護衛艦を呼び寄せて原発の岸辺に停泊させ、送電するなんてできるはずがない。
なお護衛艦以外で大きなエンジンを持つとなると、大型タンカーくらいしかない。






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