タイムスリップISO81 未来プロジェクト5

25.05.25

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。



8月末に出した未来プロジェクト第1回の報告書は、9月の取締役会のテーマに上がったそうだ。そして「報告書をどう使うのか、役員の皆さんは良く考えほしい」と、社長が言ったという。

取締役会

佐川の予言は玉石混交で、企業にとっての重要性とリンクしていない。そんなこともあり、初め役員たちは未来プロジェクトの報告書を半信半疑、社長がおかしくなったと思った役員も多かったようだ。
だが彼の予言は順々に成就していく。


それを見て複数の取締役からは、未来プロジェクトを称える声と、そして更なる情報の要求であった。
まだ半信半疑というか、当たるも八卦と思っていた役員たちも、時が経つにつれて報告書に記載されたことがどんどんと成就していくのを見て、年末には疑う者はいなくなった。

誰もが気にするのは総会屋問題とアジア通貨危機だ。当社も総会屋と関りがあるのは幹部なら知っているのが当たり前、リストには社名がなかったが当社でも逮捕者が出るのかどうか、その後ビジネスはどうなるのか、どこまで罪が及ぶのかが重大な問題だ。
またアジア通貨危機については、避けることができるのか、せめて影響を小さくしたい。最低でもヘッジをどうするのか、心配事はきりも限りも無い。

まだ1年先のことであるが、エジプト・ルクソールでのテロ事件も問題である。その前後、社員を中東へ出張をさせないことになった。
個人旅行も職制で把握して、内々に旅行を思いとどまるよう指導することとなった。


そして未来プロジェクトへの新たな指令は、

  1. 総会屋への利益供与問題について知りうる限り詳しく起承転結を報告せよ
  2. アジア通貨危機について知りうる限り詳しく起承転結を報告せよ
  3. 東日本大震災について全容についてまとめよ
  4. 1997年の主たる出来事についてビッグイベントを知りたい
    経済動向
    政治動向
    事故・事件
    発明・発見
    流行・芸能・スポーツ

それからイベントの予想(予言?)だけでなく、その影響の検討、当社として危機管理、開発や営業政策への積極的活用、ブランドイメージ向上や社会的に明るい雰囲気を醸成するための活用などが挙げられていた。



*****


それを受けて佐山マネジャーからは、佐川へは頭を絞って未来の出来事の思い出せということと、プロジェクトメンバーにはその活用方法が課された。

次の報告は1997年2月末、1997年中の事件事故、経済状況、国際問題がテーマである。それを1997年度度の計画に織り込むという。そこまでいくのと佐川は驚いた。



*****


1997年お正月明け、未来プロジェクト室での新年第1回のミーティングである。
メンバー全員が集まって昨年の反省と今年の目標の雑談会だ。


伊達伊達隼人
佐山マネジャー佐山
石川石川さやか
相馬次郎 相馬
本宮洋子  本宮
吉田  吉田
佐川真一佐川

佐山 「未来プロジェクトの第1回報告書は、佐川君の予言がことごとく当たって反響を呼んでいる。
それは誉であるが、プロジェクトの本務は未来を予測することではない。未来の予測をいかに活用するか、予想される問題を以下に対応するか、その方法を提言することだ。

第1回報告書では、その検討が浅いとコメントされている。
ペルーの大使公邸のテロ事件については、経営企画室内に危機管理プロジェクトが作られて、そこで対応を考えて皆さんご存じのように、既に当社の駐在員の警備強化を図っている。
プロジェクト室としては、もっと具体的な対応までを提案できるようにしたい」

石川さやか 「佐山さんのおっしゃることも分かりますが、そうなると未来プロジェクトと危機管理プロジェクトと違いがありません。
役割分担を明確にするか、一体化したほうが良いのではないですか?」

本宮洋子 「そうねえ〜、とはいえ予想されるイベントから、どのような波及が予想されるかというステップがあってもいいように思うわ。
大使館に潜入した事件から、大使館だけでなく在外工場への侵入とか、リスクを洗い出していろいろなケースを示し注意喚起することに意味があると思う」


注:イベント(event)とは、催しものとかスポーツ大会だけでなく、計画された、あるいは予期せずに発生した「出来事」や「節目」を意味する。
節目とはキックオフ、会議、テスト、出荷・報告であり、予期せぬ出来事とは仕様変更、開発トラブル、納期遅れ、災害などによる遅延などがある。


吉田 「確かにそのへんは連続的で分離は難しそうだ。
それとは別に、ここで取り上げる事柄は事件や事故ばかりじゃないよね。為替の急激な変動とか、流行の予測などは危機管理室とはまたカテゴリーが違うと思う」

相馬次郎 「それならここではとにかく佐川さんの書き出す諸々を、カテゴリーごとに分けて担当部署に伝達する役割と定義したらどうですかね」

本宮洋子 「担当部署って?」

相馬次郎 「為替とか株価なら財務部、テロ事件なら危機管理室、世の中の流行廃りなら営業とか広報とか」

伊達隼人 「うーん、なんか違うように思う。
そもそも未来プロジェクトの報告書に、どんなものを期待しているのだろうか?
我々じゃなく、客が何を期待しているかでしょう」

吉田 「まさしく伊達さんの言う通りだな。顧客満足って最近流行りだね」

相馬次郎 「客といってもいろいろあるよね。最近は客とは金を払う人ではなく、サービスや製品の効用を受け取る人のことだそうだ。
未来予測の情報を使う人が、誰であるかによって報告も提言も変わる」

吉田 「会社に貢献するのが役目なら、会社全体が客でしょう」

伊達隼人 「そう言っちゃそうだけど、それじゃ対象があいまいでフォーカスできないよ」

佐川 「私の語ることはバラバラです。まずはこのメンバーでカテゴリー分けして考えるステップを設けませんか。
次にそれが関連する部門と打ち合わせを持ち、役に立つ情報なのかどうかも吟味してもらいたいですね。

例えばWindowsのバージョンアップなら情報システム部と協議する、ベストセラーになる本とか流行るドラマなら営業とか宣伝で活用できるかもしれないから情報提供する。
そういう関係部門と協議の結果、対象とするか否かを決めるとか」


結論を出す場でもなく結論が重大な討議でもないが、皆積極的に発言し真面目に考える。やはり前回の報告が受け入れられたり上げられたことの反映だ。それはもちろん予言が当たったからだ。



*****


1月某日
佐山マネジャーは財務部と経理部に声をかけて、定例ミーティングに参加してもらった。実は下山人事部次長の指示なのだ。
財務部から野村企画課長、経理部からは大木業務課長が来た。下山次長も顔を出す。下山次長は未来プロジェクトの上司であるから顔を出してもおかしくはない。


野村財務部企画課長 大木経理部業務課長 下山
財務部
野村企画課長
経理部
大木業務課長
人事部
下山次長

下山 「未来プロジェクトを立ち上げたとき、財務や経理にもプロジェクトの業務内容を説明し予算も相談しておりますが、改めてこのプロジェクトの説明と本日のテーマについてご説明します。

今後20年間の未来が分かる社員がおりまして、その情報を有効に活用しようと立ち上げたのが未来プロジェクトです。
予言の真偽について疑問視されるでしょうが、過去1年以上に渡り予言が外れたことはありません。ただ全方位に渡って予測できるわけではなく、一般的な事件や事故、景気動向などに限定されます。政治の裏話とか戦争が起きた真相など、専門的なことまでは分かりません。

プロジェクトの報告は不定期ですが……今まで2か月か3か月に1回、取締役会議に報告しております。そして取締役会からは、一層の深堀と対応策を考えよという指示を頂いております。

本日は特に指示がありました『総会屋問題』と『アジア通貨危機』という課題について、まずはその出来事について説明をすることと、財務部、経理部にお願いすることの説明です。それは今回の報告書に反映します

初めての方は前提から疑問だらけと思います。 ご質問あれば、どうぞ」

野村財務部企画課長 「未来の予測って……大分前だけど、○○スポーツが報じた未来予測を研究している会社って、ウチだったの!
スポーツ紙に載っていたことは全部当たったようだけど、それ以外も全問正解か。ならばウチの資産運用についてぜひアドバイスが欲しいよ」

佐山 「残念なことが二つあります。
ひとつは先ほど申しましたように、いつ頃、東証株価が上がるとか暴落する程度のことは分かりますが、何月何日どの株が上がるとか、いつ何時に暴落が始まるという詳細まで分からないのです。
もうひとつは予測したことは間違いなく起きます。しかし注意してほしいことは、予測していないことも起きるかもしれないということです」

野村財務部企画課長 「暴落を予測すれば必ず暴落するが、予測していない暴落も起きるかもしれない……か、当然ともいえるけど片手落ちとも言えるな、
おっと片手落ちは、今じゃ言っちゃいけない言葉だな。予言はすべて成就するというのは分かった。予言にマッチした行為なら問題ないということか」

下山 「本日は次の報告書を作る前に、財務部、経理部に関わることについて事前に説明しておくことが狙いです。
あとは佐山さんからお願いします」

大木経理部業務課長 「経理は過去、財務は未来と言いますから、経理の私は関りないようですね。お暇してよろしいですか? (注1)

佐山 「大木課長、すみません、もうひとつの取締役会議からの課題である『総会屋問題』はお宅に関わるものです」

大木経理部業務課長 「総会屋問題? どんなことですか?」

佐山 「今年、多くの会社で総会屋への利益供与したことが発覚して大問題になります。
そして先ほど申しました予言の一方性という欠点のため、当社も総会屋への利益供与が問題になるかどうか分からないのです」

大木経理部業務課長 「違法な利益供与で逮捕者を出すと予言された会社は間違い捜査を受けるが、予言されていない会社が、捜査を受けるか・受けないかは分からないのか、
はー・・・」


注:良い悪いではなく、1980年代まで総会屋というものは堂々と存在していた。大手企業の経営者が歓談したり、付き合いがあっても大騒ぎにはならなかった。
だが時代は変わる。昨日まで当たり前だったことが犯罪になる。
株主総会をシャンシャンと終えようと、総会屋に利益供与するのは商法で禁じられた(注2)


大木経理部業務課長 「でも総会屋なら株式課、株式課は総務部と決まっています。経理の出番じゃないですよ」

下山 「現時点、総務部の誰と誰が関わっているか分からない。部長なのか課長なのか……もちろん担当者が大金を動かせるわけはない。
それに総務が金を持っているわけはない。誰が使おうと経理部を通らないと現ナマは動かない」

大木経理部業務課長 「はっきり言って、総会屋対応は会社の業務としてですから、部長に顛末を報告させればよろしいじゃないですか」

下山 「それも一案だが、それじゃ皆が打ち合わせて、すばらしいストーリーの脚本が提出されるのがオチだ。真実を解明しないと真の対策はとれない。膿は全部出し切らないと、後々捜査が入ったときまずい。
いずれ検察が入るなら、それに関わっていない者が究明すべきだ」

大木経理部業務課長 「それで私に調べるとか説得をやれということですか?」

下山 「ご理解いただきありがとうございます」


野村課長と大木課長は仲良く大きなため息をつく。見た目は同じだが二人の思いは全く別であった。野村課長はアジア通貨危機しか頭になかったし、大木課長は総会屋問題しか頭にない。


野村財務部企画課長 「総会屋も大問題ですが、東アジア通貨危機ってとんでもない問題ですよ。
私一人、いや当社だけでどうにもなることでもありません」

下山 「我々は、東アジア危機を起こさないことが目的じゃありません。
当社が受けるダメージをいかに軽くするか、いや危機の際にいかにうまく立ち回るかを考えるのが財務部じゃないですか」

野村財務部企画課長 「そりゃ元気のいい発言ですな。気持ちは分かりますが」

下山 「世界の三分の一が巻き込まれるクライシスですよ。大儲けするチャンスじゃないですか。そもそも、それが財務部の本質でしょう」

野村財務部企画課長 「投資ファンドならともかく、一般企業の財務部は儲けることでなく、損しないことが本務です。為替、株価などのヘッジとかね。
そう言や、バブル時代に本業より投資や融資での利益が大きかった会社がたくさんありましたね。ああいうのは松下幸之助に言わせれば、邪道も邪道ですよ」


注:本業より投資や融資での利益が大きかった企業は、不動産業、証券会社、金融機関に多く見られたが、製造業でもモノづくりよりも投資による利益が大きい会社もあった。

私の知っている当時、東証一部の某製造業が、21世紀になって左前になった。一方、やはり東証一部の大手製造業で投資に乗り出すかどうかで議論になったが、結局それは邪道だと決めたと聞く。そちらの会社は21世紀の今もその業種では頑張っていて、人間地道に生きるのが一番と思ったのは事実だ。


下山 「それじゃとにかく、アジア金融危機では損しないように頑張ってくださいよ」

野村財務部企画課長 「情報が足りないよ」

下山 「アジア通貨危機が起きるというだけで十分でしょう。発生月まで分かるだから。
シミュレーションソフトとかないのですか。○○総研とか使ったらどうですか」



*****


未来プロジェクトのメンバーは、総会屋の対策のその後は全く知らないが、水面下でいろいろしているのだろう。
2週間ほど後、経理部長と総務部長が辞表を出し、弁護士と一緒に丸の内警察署に自首したというニュース報道を見て、皆一様に驚いた。
ニュースでは両名の他に総務部員一人も一緒に自首したとあった。その後、担当者は現金の引き出しと運搬をしたのみで、取り調べを受けた後、解放されたと聞く。


注:取締役とか執行役など役員でない「部長」は、「管理職についている従業員(労働契約をしている人)」なので、提出するものは辞表ではない。正しくは「退職願」だろう。


広報部も事件を発表したが、内容はニュース報道と同じレベルであった。
警察が取り調べ中で詳細は言えないという。

社内に対しても、社外から問い合わせがあれば、自分は報道以上のことは知らないと断り、広報部に回すようにという周知があった。



*****


吉宗機械が呼び水になったわけではないだろうが、その一月後に企業による違法な利益供与は1997年に一挙に噴き出した。
3月になって、味の○、○芝、日○、〇△自動車から始まり、野〇證券、第一〇業銀行、大〇証券、日〇証券、山〇証券、三○電機、三○地所などでも逮捕者が出た。その後も業種を問わず問題が見つかり10月の松○屋まで続いた。
いずこでも、気が遠くなるような金額が動いていた。

札束
実際はこんにゃく(百万)じゃなく、座布団(億)単位だった。
ちなみに千万はレンガだ
札束で頬を叩かれるのでなく、座布団で叩かれたい


*****


数日後、未来プロジェクト室に、下山次長が佐川を訪ねてきた。
下山はパソコンを叩いている佐川の肩を突ついて気づかせると、親指で会議室を指す。
佐川は、しょうがねえなあ〜と思いつつ後を追う。一応、佐川の上司佐山の上司なのだ。


佐川 「人事部次長様の御用なら、わざわざここに来るまでもなく、人事部に呼べばよいじゃないですか。ここより機密が守られますよ」

下山 「君の前世では、当社の総会屋事件はどういう対応を取って、どういう決着になったか覚えているかい?」

佐川 「まず私はこの事件が起きる2年前に退職して、別の会社で働いていました。
それでも古巣のことは気にして、新聞やテレビ報道は観てはいました。ですがそれ以上の情報はありません。それを前提に聞いてください。

総務部の課長ひとりが責任を取って懲戒解雇になり、執行猶予付きの懲役2年くらいの判決だったと思います。その後、関連会社に就職したようなことを聞きました。定かではありません。それなりにいろいろ考慮したのでしょう。

部長級以上も大勢が取り調べを受けましたが、有罪になりませんでした。当社の場合、他社に比べて金額が一桁以上少なかったこともありますね。金額が億となれば課長がどうこうできるわけありません。
会社に対しては罰金刑だったと思います」

下山 「その後、会社の評価はどうだったの?」

佐川 「事件のときはワイドショーでは批判されましたが、それきりでしたね。顧客は利益供与なんてニュースを聞いても、悪い奴だと思いますが、製品を買わないという選択はありませんから、何も変わりませんよ。

それに今回の問題は、あまりにも多くの企業が同じようなことをしていて、他に比べてマイナスにならなかったこともありますね。

ただこれから10年や20年経てば、コンプライアンスで問題を起こせば、購買活動に影響するかもしれません。
2020年頃になると、社会の認識が高まってきます。性差別、ハラスメント、差別語、そういうことを悪とみなす風潮にはなりますね。私はそれを悪いとは言いませんが、行き過ぎはだめでしょう」

下山 「君なら今回の事件の落とし前をどうするかね?」

佐川 「客観的評価なら、厳しい社内処分を行えば、大学の先生あたりはすばらしい企業経営だと論文を書いてくれるかもしれません。まあ、それくらいでしょう。一般人が評価するなんてありません。
それに不正があれば売れ行きが落ちるかとなると、そんなことありません。某医療機器メーカーでは内紛があったり、内部で特許紛争をしている会社もありますが、代替製品がないから売れに売れています。

もちろん製品安全とかに関わるものは別です。それは顧客の生命・安全に関わりますから。

別の見方は個人的見解ですね、ご存じと思いますが、私はルールを遵守する人間です。とはいえ高邁な精神からではありません。ルールを守ることが身を守る(注3)と言いますように、気が小さいだけです。
尾関副工場長のとき(第36話)、彼に言われた通り法に反して行動して問題発生すればトカゲの尻尾きりで自分が悪者になるでしょう。それよりも副工場長に憎まれても、法律を尊重するのがなんぼかましです。

経理にいればお金の法律、民法、商法、税法とかに詳しくなるはずです。商法改正に利益供与罪が追加されたのは1982年、15年も前のことです。経理や総務にいる者なら当然知っているはずです。知っていて非合法のことをするのは故意犯です。上司に言われたとか、仕事だから、会社のためだから、そういうことは言い訳になりません。

部長なら役員に止めましょうと言えるはずです。拒否されたら録音を持って、検察でもどこでも駆け込めばよい。課長級でも担当者でも同じです。法に優先する会社規則も業務命令も存在しません。
あちら立てればこちらが立たずという板挟み状態ではないのです。

もちろん昔はそういう商慣習だったかもしれません。でもそれはいけないと法律も変わりました。自分の仕事に関わる法律を知ることは義務、法律を守ることも義務です。なら取るべき行動は決まります。
おっと、というわけで関わった人たちには厳罰を与えるべきですね。それが今後そういうことをする人がでないためです

下山 「大変参考になったよ。
今回は大問題だったけど、他社と違うのは、騒ぎになる前に社内で見つけ自主的に対応したということだな。その違いは大きい。佐川君の予言のおかげだ」

佐川 「それは良かったです」



うそ800 本日から見た90年代とは

90年代は私の40代であった。バブル崩壊の結果かどうか知らないけど、世の中がうわついた混乱状態だった。
まず政権政党を見ればわかる。90年代は私の生きている時代では一番政権政党が変わったようだ。21世紀は民主党が一度政権を取ったが、その他は全部自民党だ。

西暦19901991199219931994199519961997199819992000
元号 平成2 平成3 平成4 平成5 平成6 平成7 平成8 平成9 平成10 平成11 平成12
政権党 自民 自民 自民 自民
日本新党
日本新党
新生党
新生党
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/ /
自民
自民 自民 自民
首相 海部 海部⇒
宮沢
宮沢 宮沢⇒
細川
細川⇒
羽田
羽田⇒
村山
村山 村山⇒
橋下
橋下⇒
小渕
小渕 小渕⇒

ハラスメントとかポリティカルコレクトなんて発想が広まり、言葉狩りも流行した。言葉狩りで使えなくなったものは多い。別に差別語が良いとは言わないが、その変化に戸惑った。
21世紀には男女のトイレを分けをしない方向らしい。じゃあ、女性専用車両も止めようよ。
何事も行き過ぎは良くない。

総会屋と株式会社のつながりが一挙に暴露され大きな事件となったが、一般庶民にとっては縁のない話で、儲けるのが気に入らないという程度だった。

アジア通貨危機はバブル崩壊から少しずつ良くなってきたかと思えた時期に、足を踏み外したような感じだった。
経済成長率のグラフ(注4)を見ればバブル崩壊はがけ崩れのようだが、それが上向いたとき、アジア通貨危機はまた崖に突き落とした感がある。これがなければ2000年代はだいぶ回復しただろうに。



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注1 財務と経理は、どちらもお金に関する業務だが、役割は全く異なる。
財務部は、会社の資金の調達・運用を通じて、経営の意思決定をサポートする。
経理部は、日々の取引の出勤、出納を行い、財務情報をとりまとめる。

注2 総会屋に関する法規制は段階的に強化されてきた。
1981年 総会屋との癒着問題が表面化し始める
1982年 商法改正により「第294条の3」(利益供与罪)新設
1997年 三菱重工・住友銀行など大企業が同罪で摘発される
2006年 商法の会社関係部分が「会社法」として独立
   商法294条の3 → 会社法第968条に移行

注3 「ルールを守ることが身を守る」とは、今は交通事故について言われているようだ。私はもう30年くらい前だが、某講習会で大学の先生から聞かされた。

元銀行員だったというその先生は、銀行員はとにかく違反をしないことが大事だという。寝過ごしたなら具合が悪いと銀行に電話するとともに、医者に掛かって通院の記録を残すのだ、それによってあいつは行いが正しい正直者という認識が持たれる。とにかくルールを守ることが何か事あるとき、疑われない秘訣だと語った。

確かに人間生活していると赤信号でも車が来なくちゃ渡る、図書館から借りた本を返さない、門限に遅れる、そういう積み重ねの先にあるのは信用を落として借金もできず、頼れる人もいなくなってしまう。
細かいことだがそういうことだ。

注4 ・社会実情データ図録 経済成長率の推移






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