タイムスリップ147 新聞記者4

26.02.23

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。




人
長谷川は佐川と話して、ISO認証誌を訪ねることにした。思い立ったが吉日と、その場で電話をしてアポイントを取る。
ISO認証誌は新橋駅から歩いて数分の雑居ビルにある。S新聞のある大手町からドアツウドアで15分。東京はあらゆるものの日本の中心で便利なところだ。

数日後、雑誌社のパーテーションで囲っただけの打合場で、長谷川は編集長の押田(おしだ) に会っている。


長谷川記者 「吉宗機械の佐川課長に紹介いただきましたS新聞の長谷川です。
昨年Y新聞の報道(第142話)がありましたね、覚えておられると思います」

押田 「ああ、ISO審査員が飲食の饗応やお土産をもらっている話でしたね」

長谷川記者 「弊新聞社も同じ切り口で取材していたのですが、先を越されてしまいました。とはいえ二番手ではダメというわけもありません。
吉宗機械の佐川さんを取材に行って、ISO雑誌社にも取材したらというアドバイスと、押田さんを紹介してもらいました」

押田 「佐川さんか、懐かしいな。彼に会ったのはISO14001の審査が始まったときだから、4年になりますか(第89話)」

長谷川記者 「弊新聞がISO認証を取り上げようとしたのは、読者からのISO審査での問題提起があったからです。ただ提起された問題は饗応と違い、審査員の横暴とか、規格の誤解に基づく不適合を出されたとか。そういうことを公にしてほしいといことでした」

押田 「確かにそういう話を聞くことはありますね」

長谷川記者 「新聞社は1件の投書で記事にすることはありません・・・実を言って弊社には、似たようなメールが結構な数来ています。
それで関係する企業や人の取材を積み重ねてきました。その結果、大きく三つの問題があるようです。
ひとつはY新聞にあった饗応です。取材に伺った認証機関のいくつかは、既に饗応禁止措置とか、お昼の弁当持参まで極端に走ったところもあるようです」

押田 「それは聞いています。近くに食堂・レストランのない会社で社内給食を出したら、給食代を払ったという話も聞いてます、アハハハ」

長谷川記者 「二つ目の問題は、ニュアンスとしては饗応とは違うのです。企業にいろいろな物を要求することですね。内容は多種多様です。会社の資料を欲しがる。それもISO認証のために必要とか言って提出させて副業のコンサルで使っているとか。

まったくISOと無縁な、人気のあるノベルティ(販促品)とかポスターなどを要求する審査員もいます。人気のあるポスターは駅や店頭に掲示してあると、盗むというか持っていってしまう人がいますからね。

製品をかたどったキーホルダーとかピンバッチでは、数万とかそれ以上値が付いている物もあります(注1)そういうのをお土産に欲しいと強請るそうです」
ゆする


注:「強請る」の読みはいろいろある。「ねだる」は可愛いが、「たかる」になると鬱陶しい、「ゆする」になると犯罪だ。
上記の場合は「ねだる」ではなく、「たかる」あたりか?


押田 「認証が始まった頃は、企業のマニュアルや規定類が貴重で、副業のコンサルでお金になったらしいですね。ISO9001はもちろんISO14001でも認証が始まってから4年、もうそういう需要はないんじゃないですか」

長谷川記者 「そうですか。
三つ目の問題は重大です。規格解釈が間違っているということです」

押田 「たしかに・・・規格のすべての項番ではないですが、解釈にバラツキのあるところはありますね。ただ問題になっているかと言えば、そうでもないと思いますよ」

長谷川記者 「それはISO認証誌の読者は一般紙の読者よりISOについてレベルが高く、問題視していないということでしょうか?」

押田 「さあ、少なくても雑誌の読者からは、困ったという声は聞こえてきませんね」

長谷川記者 「先ほど私が規格の誤解釈による不適合を出されたと話したとき、押田さんはそういう話を聞いているとおっしゃいましたよね」

押田 「それは長谷川さんの聞き違いでは・・・」

長谷川記者 「ええと、4年ほど前に某業界団体のISO研究会と押田さんで、懇談会というかISO認証トラブルを語って飲み会をしたのを記事にしています(第90話)。
興味を持ったので過去のISO認証誌を探して古本を買いました」

押田 「それがどうしたのですか?」

長谷川記者 「その記事には会社側の人たちの発言が載っています。
おお、ちょうど持ってきていました。
これです、これ、お忘れですか?」


長谷川はポストイットを貼ったところで雑誌を広げる。
押田はチラッと眺める。


押田 「いえいえ、忘れてはいません。ええと、〇〇業界団体の環境部の人たちでしたね」

長谷川記者 「そこで会社側の人たちがISO審査の問題として、規格要求にないことを要求する審査員が多くて困っていると語っています。
それと余分な資料を作らされているというのがありましたね。
押田さんはそれを実況中継のように書いています。問題を知らなかったわけはないですね?」

押田 「うーん、言われると、そういう事は聞いていたのですね。正直忘れていました。
それがどうしましたか?」

長谷川記者 「お断りしておきますが、私はあなたを責めているわけではありません。理由を知りたいのです」

押田 「理由?」

長谷川記者 「新聞社にはISO審査で要求事項にない要求をされたとか、審査員が物を欲しがるとか、そういうことを取り上げてくれという投稿がけっこうあります。
それで昨年中頃から調査をしてきました。なかなか伝手がありませんので情報集めも大変でした。

ぐずぐずしていたら、昨年8月にY新聞がISO審査で饗応がひどいという記事がありましたね(第142話)。先を越されてしまいました。
ただY新聞は饗応だけ取り上げています。

私のところに来たお手紙をみると、饗応もありますが、そればかりではありません。お土産や会社の資料の提供を求めるものも多い。
そして一番困っているのは、審査員が規格を理解していないという問題です。

新聞社にそういう問題を取り上げて欲しいというお手紙が来るのに、ISO雑誌社がそういう状況を知らないはずはないと思います。
実際に、お宅は4年も前に記事にしているわけです。ただ、そういう意見を載せてはいますが、それについてコメントはありません」

押田 「なるほど、ISO雑誌社はそういう実態を知っていながら、なぜ問題として取り上げないのかということですか」

長谷川記者 「想像はできますよ。ISO雑誌社が、認証機関や認定機関から憎まれたら、やっていけないでしょうね。別に大多数でなくても、大手認証機関、数社から出入禁止になれば広告もとれず、その認証機関のことが書いてないなら、そこから認証を受けている企業の人は参考にならないと購読しないでしょう」

押田 「うーん、困ったなあ~」
中岡社長
中岡社長


パーテーションの隙間から年配の男性が打合場に入ってきた。


中岡社長 「あー、私はここの社長の中岡だ。S新聞の長谷川さんとおっしゃいましたね、よろしく」

長谷川記者 「よろしくお願いいたします。何かありましたか」

中岡社長 「いやさ、二人のお話が耳に入って、面白そうなので顔を出したのです。
お話を聞いていて、長谷川さんの目的は何かと思いました。
長谷川さんの望みは何ですかな、スクープ狙いとか?」

長谷川記者 「青臭いかもしれませんが、社会正義の実現ですね。理不尽なことがまかり通っているなら、それを明らかにして糾弾したい」

中岡社長 「具体的には?」

長谷川記者 「先ほど申しましたように、ISO審査にはいろいろ問題があります。しかし饗応とかお土産を要求することは、良いことじゃないけどISO認証に特有じゃありません。ならば自浄作用を期待して放置でも良いと思います。

しかしISO規格解釈によって、困っている、被害を受けている企業があるなら、その解決はできるのではないかと思います。それこそがジャーナリストの役目でしょう」

中岡社長 「おっしゃることは分かります。確かにISO14001認証は急成長しているが、怪しげなところも多々あるからね。
法規制を誤った判定が一番大きい問題だろう。それは企業に重大な損害を与える恐れがある。それには早急に対策しないとならんと思っている」

長谷川記者 「法規制を誤ったと言いますと?」

中岡社長 「知らんかね。審査の現場で審査員のジャッジが、法に則っていないことは多々あるわけだ。勘違いとか知らないためとか、
審査員を信じてその通りしたことで、違法状態になる恐れがある。顕在化しないものは多々起きているだろう」

押田 「そんなことがありますか?」

中岡社長 「ワシはいくつか聞いておる。例えば消防法は改定が度重なっている。しかし設備などを設置したとき法に則っていれば、改正に合わせる義務を免除していることも多い(注2)
過去のいきさつを知らない審査員が、現場を見て法違反だと不適合を出したという話は、多いとは言わんがいくつか聞いている」

危険物屋内貯蔵所

押田 「それは消防署に聞けば判明するわけで、もし間違いであれば認証機関は不適合を抹消してくれるでしょう」

長谷川記者 「そういう話なら、弊紙に来た投稿にもありました。消防施設や危険物貯蔵施設は設置でも改造でも消防署に工事許可を申請しなければなりません。
審査員に指摘されたことを改造しようと申請に行くと、現状、法規制に合致しているものを、改造することはまかりならぬと言われたといいます」

押田 「現行法に合わせるなら問題ないでしょう?」

長谷川記者 「現行法に合わせるのは、改造内容によりますが一か所だけでは済まないのですよ。多くの場合、審査員が指摘した部分だけでは済まず、関連した複数個所を改造することになります。

工場としては現行法のすべてに対応するように、費用をかけて大改造をするつもりはないのです。そもそも違法でないものを、ISO審査で誤った不適合を出されたための措置なのです(注3)
早い話が審査員の顔を立てて、本来不要な工事をするわけです」

押田 「それほどの大事になるなら、法改正前の状態で合法なのだから改造しないということですか」

長谷川記者 「そりゃそうでしょう。合法なら不適合じゃありませんよね。
どうしても不適合を出したかったなら、『消防法改正に対応しなくてもよいことが説明できなかったことは、法規制の最新化を図っていないことにあたり、4.3.2の要求に反する』とでも書かねばならないでしょう。

それなら消防署も絡まないし、お金もかからない。
誤った不適合を出した事実が公になれば、不適合を出した審査員も認証機関も恥でしょう。いや責任問題になるでしょう」

押田 「それならば認証機関に所見報告書を修正してほしいと言うべきです」

長谷川記者 「その会社は、消防署に相談に行って現行で全く合法だと確認した後、審査員に不適合を取り消してほしいと、証拠を添えて要求しています。
それに対して、審査員が報告書は修正できないと断っています」

押田 「なぜですか?」

長谷川記者 「その審査報告書は既に処理が済んでいるから、報告書を修正できないそうです」

中岡社長 「なんか、その審査員が自分のミスを隠したいからのように思えるね。
それなら異議申し立てすれば良い」

長谷川記者 「そうそう、ISO審査では企業が審査結果に異議があれば異議申し立てできると、審査の際に説明しなければならないというルールがあるそうですね。
しかしその会社は、以前から審査でその説明を受けていないそうです(注4)
あちこち取材しましたが、その説明を受けていない会社は多数ありました。認証機関はいろいろです」

中岡社長 「それが事実なら、その認証機関も審査員も問題だ。問題山積だね。
どういう風に持っていくかだな」

押田 「社長、認証機関のミスをとりあげたりすると、下手すると命とりですよ」

中岡社長 「下手を打たないようにしろよ」

押田 「えー、そんな他のISO雑誌社がしない、火中の栗を拾うようなことを・・・」

長谷川記者 「何も御社が規格解釈に白黒つけることはないでしょう。
例えば審査でいろいろな解釈があることについて、権威者に聞くということもできるでしょう」

押田 「そうなると聞く相手はISOTC委員ですかね」

長谷川記者 「依頼先としてISOTC委員は不適当ですね。
吉宗機械の佐川さんは、法律の解釈は裁判所だと言いました。ISO規格の解釈も裁判所が最適でしょう」

押田 「裁判所だって! それはまたどうしてですか?」

長谷川記者 「法律の解釈は、法律を作った国会議員ではなく、裁判所だと憲法で決めているからです(憲法第81条)。
論点は法律を作った意図がどうあれ、法文をどう解釈するかが重要なのです。法源(注5)とは法の意図ではなく、法文そのものです。

法文は本来の意図は違うかもしれない。法文が法律を作った意図を反映していなくても、文字にした通り運用されます。

ISO規格を作ったISOTC委員は要求事項の意図は十分理解しているでしょう。しかし規格文言をどう解釈するかは、第三者でなければなりません」

押田 「裁判官なり弁護士がISO規格を読んで、もし今まで考えられている意味と違ったとしたら・・・」

長谷川記者 「今まで皆の解釈が間違っていたということです」

中岡社長 「なるほど、だがもう一つ問題がある。それは和訳が適切かどうかということだ」

長谷川記者 「おっしゃる通りです。実際に誤訳に近い箇所もあると、佐川さんは語っています」

押田 「長谷川さんが考えているのは、問題になっている項番について、大学の法学部の教授あたりに正しい解釈を求めることですか」

長谷川記者 「そうです。それができれば良いなと考えています」

中岡社長 「そういう方法ならウチは記事の企画をしただけで、解釈の責任は大学の先生か。ならば認証制度側から恨まれないか。
ハハハ、やってやろうじゃないか、どう考えても一つの要求事項について、審査で真逆な判断が行われているのは異常だ。

そんな状態を是として認証制度と心中するなら、好き勝手に解釈している認証機関に恨まれた方が出版者冥利に尽きるじゃないか、押田君」

押田 「社長が腹をくくるならやりましょう。
当然のことながら見解の違う認証機関が存在するわけですが、第三者に解釈を頼むなら、双方の了解を取らないと不味いですよね?」

中岡社長 「審査を受けた企業が、審査報告書を公開することは禁じられていない。現実にネットに公開している企業や自治体はある。
ISO認証していると審査報告書の提出を求める顧客もある。認証していても不適合があるか・ないかでは大違いだからな。また、認証機関を移転するときは移転先に今までの所見報告書を見せないとならない。
そういうことを考えると、審査した認証機関に了解を取らないと問題があるのか?」

押田 「反発はあるでしょう。その後、ウチが取材禁止とか食らう恐れはあります」

中岡社長 「ウチの雑誌の顧客は誰かということだ。
認証機関や認定機関などの認証制度なのか、認証を受ける会社か、世の中か?

仮に認証制度側から総スカンを食らっても、世の中に貢献し、読者が買ってくれるなら存続できるよ。
心配するな。ウチがつぶれても、従業員の仕事は世話してやる」

押田 「今、ISO14001で問題になっているところは・・・十数カ所か?
毎月1件、連載物ですか」


なぜか長谷川と押田が話していたときと、風向きは大きく変わってしまった。いや、悪いことではない。長谷川にとっては好ましい方向だ。
長谷川は、ISO認証誌と関わりなく取材したことを基にISO審査の問題を記事にすると念を押し、了解を取った。




数日後、長谷川は佐川から電話を受けた。内容はISO業界では有名で信頼されているハワードが仕事で東京に来ている。明日の午後なら会えるがどうするかという内容だった。
長谷川は二つ返事を返す。

そして今、吉宗機械のロビー階でハワードと佐川と会っている。

長谷川記者 「ハワードさんのことは、以前からアイソス誌などでお名前とお顔を拝見しております。お会いできて光栄です」

デイブ・ハワード 「何をおっしゃいますか。私は一審査員にすぎません(本当は認証機関の社長だよ)。
佐川さんから聞いているのは、長谷川さんは日本のISO審査の問題をあらわにして是正したいとのこと」

長谷川記者 「そうです、そうです。どう考えても一つの要求事項に、背反する解釈がされているのはおかしいです。
私の新聞社は、多く企業から審査で困っているというお便りを頂いています。それが出発点でした」

デイブ・ハワード 「そういうことは、一刻も早く解消しないといけませんね。企業が余計な手間暇をかけるなんて経済に大きな悪影響があります。
それにそんな実態が海外に知られると、笑われるだけでなく日本のISO認証の価値が下がってしまいます。外資系認証機関の私に取ってはありがたいですが」

佐川真一 「ハワードさんも他人事のようなこと言わないでください。認証制度内部での改善活動をお願いしたいですよ」

デイブ・ハワード 「アハハハ、これはしたり。でも正直言って今の認証業界では、私の意見など通りませんよ。
去年だったかな、ISO認証企業で不祥事が多発しましたね。あのとき経産省(注6)から、しっかりせいと認証制度が叱られたわけです。
でも、それっておかしくないですか? 私は大いに不満です」

佐川真一 「そもそも認証制度を理解していない人が多いのです。日本ではISO認証を御大層な裏書と受け止めているということでしょう」

長谷川記者 「あのう~、認証制度を理解していないとは?」

佐川真一 「あまり私が発言しては、せっかくの長谷川さんがハワードさんとお話しする機会を奪ってしまうようですが・・・」

デイブ・ハワード 「どうせ結論を出そうって話合いじゃないのでしょう。お互いに言いたいことを言えば良いじゃないですか?
今日は、長谷川さんと私が面識を持てただけで十分でしょう。今後、何かあれば直接メールを頂ければよろしいかと」


デイブ・
ハワード
デイブ・ハワード

紅茶
紅茶
紅茶
佐川真一


長谷川記者
佐川





長谷川記者

佐川真一 「それじゃ、話を戻して・・・そもそもISO認証とは規格要求事項を満たしているという証明です。それも抜取検査であって、完璧であることを保証しないとguide66(注7)にあったと思います。
だからISO9001認証している企業で、品質問題が起きてもおかしくないし、ISO14001認証している企業で法違反があってもおかしくない。

また認証は範囲を定めている。認証範囲外で規格要求を満たしていなくてもおかしくない。ISO9001で問題があっても、ISO14001で規格に適合していないと言われる筋もない。

当然、品質問題とか環境事故が起きても、他の認証規格について認証辞退とか認証停止となることはありません」

長谷川記者 「えっ、そうなのですか?」

佐川真一 「某認証機関の幹部が、談合やセクハラがあればISO9001やISO14001の認証を辞退してもらわねば・・・なんて語っていましたが、筋違いも甚だしい。
談合は犯罪です。でも環境管理とは無縁でしょう」

デイブ・ハワード 「そうなのです。日本ではISO認証とはデミング賞のように、優良企業の(あかし)とか(プライズ)と思っている人が多い。一般人だけでなく認証制度の幹部にも多いのですよ。
それでは困ります」

長谷川記者 「というと例えば認証した企業で事故が起きたとき、認証範囲でなければ関係ないというのですか?」

デイブ・ハワード 「まず審査登録証・・・額に入っている免状ですね、そこに書かれている範囲と無関係なら当然です。
2年前かな、T社の分工場で地下水汚染が見つかったとき、その本工場が認証を辞退したと報道されました。でも認証範囲から分工場を除いているなら無関係でしょう。
殺人事件

まさかあなた、親が殺人を犯したからと、家族全員が罪人になるわけありません。
江戸時代だって初期は連帯責任でしたが、末期には罪は個人に帰属すると認識されるようになったのですよ。

それに認証辞退ってどういう論理ですかね?
もし認証に値しないというなら、認証機関が認証取り消しにすれば良い。それを企業が認証辞退するって、認証を辞退しろと要請したのでしょうか?」

佐川真一 「ハワードさんも熱くなりすぎですよ」




長谷川記者 「佐川さんに紹介を頂き、ISO雑誌のISO認証誌を訪問しました。
いろいろ議論しましたが、最終的に規格要求の解釈がいろいろある項番について、大学の法学部の先生に解釈してもらう連載をすることになりました」

デイブ・ハワード 「それはすごい。もろ手を挙げて賛成しますよ。
法律の先生というのが良いですね。イギリスではISO規格を一番理解できるのは弁護士と言われています」

長谷川記者 「ということはイギリスでもISO規格を読むのは難しいのですか?」

デイブ・ハワード 「やはり契約とか法律は、厳密に記述しようとするため、一般の人には分かりにくいと思います。特に部分否定とか対象範囲の理解、andやorの理解を間違えることがありますね。契約書と日常語では一致しませんから。

まあ、弁護士が一番理解できるとは、例え話と思ってください」

長谷川記者 「そうだったのですか。ISO認証誌の編集長の押田さんは法学者よりもISOTC委員の方がという言い方でしたが」

デイブ・ハワード 「ISOTC委員に限らず、自分が書いたものをチェックするのは意味がありません。別の人であることが必須です。図面だって数字だって、同じ人が何度チェックしてもダメです。

同じく法律を作った議員が狙うところを正しく文章にできたかは、議員本人がチェックしても意味ありません」

長谷川記者 「そういうことで法学部の先生となりました」

デイブ・ハワード 「良いお考えと思います」

佐川真一 「それじゃ、長谷川さんはもうISO認証制度の問題は報道しないのですか?」

長谷川記者 「いえいえ、問題を報道するのは私の使命です。
ただ、審査の問題をISO雑誌社が等閑視するのはまずいのではないかと嫌みを言ったのです。すると、なぜか社長が登場して、それこそがISO雑誌の使命だと言い出しまして、予想外の展開になりました」

佐川真一 「良かったじゃないですか。私も大いにありがたい」

長谷川記者 「佐川さんというか、お宅の業界の人たちは、認証界の大掃除の手柄を取られてしまって残念じゃないですか?」

佐川真一 「何をおっしゃる、問題を解決して喜ぶよりも、問題がなくなった方が100倍もありがたいですよ」

長谷川記者 「ま、そうですね。
ハワードさんにお願いですが、ISO認証誌が謀反を起こせば、ISOビジネス業界から締め付けがあるでしょう。そのときはバックアップして欲しいのです」

デイブ・ハワード 「それもあるが、その大学の先生の件だが、もめるのを防ぎたいなら認証機関の代表とか企業側の人とかも参画したほうが良いのではないだろうか?」

長谷川記者 「この件の主体はISO認証誌です。最初の記事を載せて様子を見ようという話でした」

デイブ・ハワード 「分かりました。
佐川さんと私の二人は長谷川さんからお話を聞いた形です。もしISO認証誌で支援が必要なら、私か佐川さんに声をかけるよう伝えておいてください。

eメール

なにかあれば私は外資系認証機関に話を通しますし、佐川さんは一声かければ、認定機関、認証機関あるいは経産省でも、すぐに数百通の抗議メールが届くでしょう」

佐川真一 「そりゃ、ハワードさんの買い被りですよ、アハハ」



うそ800 本日のIF(もしも)

20年前に、こんなことができたら良かったと思う。
私のためにでなく、日本のためだ。
できていたなら、日本のISO認証は今ほど寂れていないと思う。



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注1 カエル コンタックのカプセル錠の人形やコーワのカエルなどアマゾンや楽天に大量に出品されている。多くは数百円だが、レア物は何万円もする。

ちょっとした店頭展示品とかお土産に高値が付くとは罪な話だ。それを考えた人はほくそ笑んでいるだろう。
だが仕事でちょっと寄っただけで、そういったノベルティ(販促品とかおまけの意味)をもらおうってのは心が汚い。

注2 消防法のような歴史ある法律は、数多くの改定が重なっており、現行の法律を読んでも過去の改定とその特例措置などは分からない。消防署に行って聞くしかない。

注3 ISO9000:2015/JISQ9000:2015の是正処置の定義
3.12.2「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」
処置は定義されていない。辞書の語釈として「何かを達成するための活動」としている。

注4 私は1993年からISO審査に関わってきたが、異議申し立てという方法があることの説明を聞いたのは1995年が初めてであった。
それ以降も説明をしない認証機関も多々あった。

注5 法源とは裁判所が判決を下す際や法を適用する際に準拠する「法の存在形式」のこと。
具体的には憲法:、条約、法律、命令・規則・条例など成文法と、不文法として慣習、判例などがある。

注6 通産省が経産省になったのは2001年、この物語の年である。

注7 正直言ってguide66にあったかどうか定かではない。
現行のISO17021では全バージョンで下記の文言がある。
「いかなる審査も、組織のマネジメントシステムからのサンプリングに基づいているため、要求事項に100%適合していることを保証するものではない」

一見しただけではもっともだと思うけど、よく考えれば消費者危険、生産者危険も書いてない。こういう品質保証協定には、絶対にサインをしてはいけない。ISO規格もザルだ。







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