注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
佐川との対談(第151話)はかなり過激だった。それをそのまま載せれば、ISO認証誌は認証制度側から敵視されるだろう。
ということで班目と佐川の対談(?)の翌日、班目助教授と押田編集長がeメールで、5月号の連載をどうするかを相談した。
その結果、5月号は書き溜めてあるものを載せることにした。そして班目助教授は対談から得たことから一文を書いてみると言い、それは翌6月号に掲載することにした。
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| 班目助教授 |
法律家が解説するISO14001規格
「その5 裁判の原則はISO審査でも原則である」
私はこの連載の依頼を受けたとき、ISO認証という仕組みは知っていたが、その実体は何も知らなかった。依頼を受けてから規格を読んだ。
初回に書いたが法律家とは法律や契約の文章を論理的に、文章の意図ではなく意味するところを正しく読み取る専門家である。
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注:意図と意味は全く違う。 「意図」とは、言葉や文章を発信した人が伝えることを目指した考えや目的 「意味」とは、言葉や文章が客観的に示すもの ISO14001の意図は「遵法と汚染の予防」であるが、ISO14001の様々な要求事項が、遵法や汚染の予防を目指しているわけではない。要求事項が意味するものはマネジメントシステムの具備すべき要件である |
| aware | 自覚 認識 理解 あるいは? |
| オンライン・ロングマン英英辞典による「aware」の意味 | ||
| 1. | if you are aware that a situation exists, you realize or know that it exists 状況あるいは存在を認識(知覚)している。 |
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| 2. | if you are aware of something, you notice it, especially because you can see, hear, feel, or smell it 見たり、聞いたり、感じたり、匂いを嗅いだりして、それに気づいている |
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| 3. | understanding a lot about what is happening around you and paying attention to it, especially because you realize possible dangers and problems 何が起こっているかを理解して、起こりうることに気付いて注意している |
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| 「〇〇職場では古いバージョンの規定が使われていた。これは4.4.5文書管理の要求事項に反する」 |
| ・ | 指摘事項には、証拠の記述が必要であり、それは具体的というよりも、読んだ人が現場・現物にたどり着けるように記述しなければならない。 〇〇職場には規定は1セットしかないのだろうか? 複数あるならば職場のどこか、作業場であれば工場の柱番号など、客観的に分かり、確認のためにそこに行けるよう記述しなければならない。 |
| ・ | また前述したように、不適合にする要求事項を明記しなければならない。 文書管理の要求事項は14個あるので、そのうちのどれに当たるのか明記しなければならない。 |
| 「〇〇職場の第〇工場の現場事務所において、ファイルNO.23の規定集に綴じられている〇〇規定のバージョンFであった。文書管理課に確認したところ現行はバージョンGであることを確認した。 これはISO14001 4.4.5文書管理の(c)『すべての場所で、関連文書の最新版が利用できること』を満たしていない」 |
お便りを寄こした会社の人が、1文字500円につくと愚痴を書いていた。| - 94 - |
その3 風説の流布
「環境側面に通勤を含めないとならないとUKAS(注1)が言っている。だから著しい環境側面に通勤がないから不適合である」
これは多くの審査員が審査の場で語っているそうだ。
ISO認証とは要求事項を満たしているかを調べることである。ISO14001の「第2章 引用」に「引用規格はない」と記述されている(注2)。だから審査される要求事項は、規格の4章(4.1~4.6)に限られていることになる。
実はISO規格4章以外に審査の要求事項にもある。それは認証機関との審査契約書である。
審査契約書を見れば分かるが、認証の表記やロゴマークの使い方が記述されているか、それを定めた認証機関の文書を、契約書の中で、参考文書として引用しているはずだ。そういう記載がなければ、認証機関の怠慢であるが、そんなことはないだろう。していないと認定を受けられないはずだ。
そして審査では、実際に規格要求事項以外に、審査登録証のコピー配布状況、ロゴマークの使用状況、審査登録証(認証書)のコピー配布状況を調べているはずだ。
もちろん初回審査においては、実績があるはずはないが、そういう行為に関する規定があるかを調べられる。
「UKAS云々」のお便りをされた方に連絡を取ると、審査契約には審査基準としてISO14001/JISQ14001とロゴマークの使い方があるだけで、それ以外の要求の記述はないという。
UKASが通勤を著しい環境側面にすることを要求していたとして、契約書に書いてないものを審査で要求事項に加えるのは、民民の契約として委託契約違反である。少なくても日本の法律ではそうである。
UKASが言っているから仕方がないなど言い訳にならない。もしそれなら認定機関が要求しているからという理由で、審査契約書を改定しなければならない。
そうしなければ契約不履行で民事訴訟を起こされる。被告(注3)はもちろん認証機関である。
そしてUKASがそういう要求を認証機関に通知しているのか、そして認証機関が審査を受ける企業にその旨を通知しているかが重要な観点である。
ここで法律の話をすると、基本原則の一つに罪刑法定主義というものがある。簡単に言えば「法律で犯罪と決めていなければ罪ならない」ということだ。
ISO審査は刑事裁判ではないが、「通勤を環境側面に加えないと不適合」と定めていないと裁判の原則に反するということだ。
ISOは裁判と違う。だがこういう決めは、スポーツでもゲームでも当然のルールである。試合が始まってから後出しとか追加するのは、アンフェアというだけでなく契約違反だ。
ISO規格ではどうなのか?
企業側は知らないだろうが、認証機関や審査員は、ISO審査の方法を定めたルールを知っているだろう。知らないなら審査員を辞めてもらうしかない。
それはIAF Guidance Document(IAF GD 6)というものだ。ガイダンスだから強制力はないなんて寝ぼけたことは言わないよね。しっかりとJAB MS100という文書に展開されている(この物語のとき)。
ではそこで罪刑法定主義に従っているか?
しっかりと決めている。
G.5.5.2(a)で「不適合の明確な記述」とある。証拠・根拠を書かないとダメですよということだ(注4)。
ここで、更なるどんでん返しを語らねばならない。
このお便りを頂いて、私はUKASにeメールを出した。
法律家は裏付けを取るのが習慣なのだ。
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「私は日本の弁護士である(嘘ではない)。私の顧客企業からISO審査の相談を受けた。 審査において、審査員から『UKASの通知により、通勤を著しい環境側面に含めなければならない』と言われた。 その会社は通勤を、著しい環境に取り上げていないので不適合とされたということだ。 私はその事情を確認いたしたく、UKAS発信のその通知を頂きたい」 |
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「UKASは認定機関であり、規格解釈をするところではない。だからそのような通知を出すはずがない。 個人的な見解であるが、通勤は環境側面であることは間違いない。しかし管理も影響するにも実際は難しいだろう。そしてその環境影響の大きさからも、著しい環境側面にはならないだろう(注5)」 |
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注:信用毀損罪(刑法233条前段): 嘘の噂で、人や企業の経済的信用(商品、サービスへの信頼)を低下させる行為。 偽計業務妨害罪(刑法233条後段): 嘘の噂で、人や企業の業務を妨害する行為。 上記の成立要件は①事実と異なる情報②不特定多数に広める③虚偽であると認識していることである。 虚偽であることを知らなかったときは刑法犯にならないだろう。その場合でも、被害を受けた人は損害賠償請求の民事訴訟はできる。 |
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その5 不適合とは何か?
審査とは証拠を調べることだ。だが単なる羅列ではない。
文書のチェックをしたとする。
| ・ | A部門で文書をチェックしたら、バージョンが古いものがありました。 |
| ・ | B部門で文書をチェックしたら、文書に書き込みがありました。 |
| ・ | C部門で文書をチェックしたら、規定3898と規定3839の綴じる順序がテレコになっていました。 |
| 文書管理で不適合が3件あります。 |
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本日のダメ押し
ここに書いたことはすべて私が体験したことであり、私はその問題解決に頑張った。
頑張っても審査員に是正させられなかったから、ここで管を巻いてるんだけどね。
あのアホ審査員どもは、今は草葉の陰か?
それとも、強かに老後を楽しんでいるのか?
どちらにしても、許せん
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| 注1 |
UKASとはイギリスの認定機関である。 日本の認定機関は日本適合性認定協会(JAB)である。 | |
| 注2 |
ISO14001:1996 2章のタイトルは「引用」であるが、英語原文はnormative referenceだ。字義通り訳せば、単なる「引用」ではなく「引用される規制基準」とでも訳すべきだろう。 | |
| 注3 |
「被告」とは民事訴訟で訴えられた法人/自然人のことで、「被告人」は刑事事件で起訴された法人/自然人である。 | |
| 注4 |
Guide66の後継規格であるISO17021は2006年制定であるが、そこではしっかりと「不適合の所見は、審査基準の特定の要求事項に対して記録し、不適合の明確な記述を含め、不適合の根拠となった客観的証拠を詳細に明示しなければならない」と記載されるようになった。 | |
| 注5 |
この文言は私が2005年頃UKASに問い合わせたとき頂いた返事そのものである。実際には、この前に「返事が遅くなって済まない。受け取った部門が、どの部門に回すか分からなかったようで遅くなった」とあった。気さくなところだと思った。 私でも、この程度の英文なら辞書なしで読めた。 | |
| 注6 |
立法、行政、司法共に解釈は行うが役割が違う。 ・行政(行政解釈・実務解釈): 法律に基づいて行政事務を遂行する過程で行われる解釈。行政事務の指針となる行政規則や通達などが含まれる。 ・司法(司法解釈・有権解釈): 裁判所が具体的な事件を審査する過程で法律を適用し、解釈する。特に最高裁判所は、違憲審査権(憲法第81条)を有する。 ・立法(立法解釈):国会が法律を作る際に、その趣旨を解説する。法律が成立すれば、制定の意図とか説明から離れて、文章そのものが法源となる。成文法主義である。 | |
| 注7 |
不動産取引の「重要事項説明(重説)」とは、売買や賃貸契約の前に、宅地建物取引士が物件や取引条件の重要ポイントを顧客(買主・借主)へ書面で説明する義務 怠ると、宅建業法違反として、宅建業者への行政処分(業務停止、免許取り消し)や罰則(2年以下の懲役または300万円以下の罰金)、契約相手からの損害賠償請求や契約解除、消費者契約法に基づく契約取り消し などの処分や制裁を受ける。
そう言えばアメリカで逮捕したとき、警察は被疑者に「黙秘権のあること、発言は証拠に使われること、弁護士に相談する権利があること」などミランダ警告を告知する義務があり、それをしなかった場合、供述は証拠能力を失う。 ISO審査で異議申し立ての説明をしない場合はどうなるのでしょうか? 不動産取引やミランダ警告を参考にすると、不適合とされたものは再審、費用は認証機関負担になるのでしょうか。もちろん認証機関・審査員の両罰規定ですよね。 両罰規定とは、従業員などが業務に関して違反行為を行った際、実行行為者(個人)と所属する法人(会社)の「両方」を処罰する制度。 |
毎週楽しみに読んでいます。 今週はいろいろあって木曜日に目を通せなかったので金曜日の朝読ませていただきました。 本当に、本当に小さなことなのですが、 ”例えば規格原文「4.4.2training, aware andcompetence」を「4.4.2 訓練、自覚及び能力」と訳している。”のandとcompetenceの間のスペースがこぼれ落ちているようです。ちょっとawareしてしまいました。 どうぞ今後とも体調に気を付けられて楽しく執筆されますよう祈念しております。 |
わずー様、毎度ありがとうございます。 わー本当だ(棒) いったいどうしたのでしょう? スペースが抜けたのは私の頭のネジが抜けたのか、いやいや指のせいです、年を取って指が曲がって来たので、打つべきキーを外れてしまったのでしょう。 という言い訳は見苦しいので、頭を坊主にしようかと思ったのですが、既に30年前から坊主でした。 不具合あればいつでもご指摘ください。 ISO審査でありませんので指摘事項は大歓迎です。 |
4.1.1.4 The certification/registration body shall confine its requirements, assessment and decision on certification/registration to those matters specifically related to the scope of the certification/registration being considered. 認証の判定は、対象範囲に限定しなければいけない 4.1.1.5 The maintenance and evaluation of legal compliance is the responsibility of the organization. The certification/registration body shall restrict itself to checks and samples required in order to establish confidence that the EMS functions in this regard. The certification/registration body shall verify that the organization has evaluated legal and regulatory compliance and can show that action has been taken in cases of non-compliance with relevant legislation and regulations. 法的要求と順守は組織の責任である。認証機関は組織が関連法規を順守出来ることを確認する為にサンプルや審査範囲に限定して審査で評価する。 認証機関は法規を守っていない場合の是正措置が行われたことの証明を確認する。 つまり順法判断は組織であって、認証機関は 順法の仕組みや是正を確認するだけ。 |
外資社員様、おっしゃる通りです。 それは法規制ばかりではなく、要求事項についても同じなのです。 どういうことかというと、要求事項を満たすのは審査を受ける側の責任です。そして要求事項を満たしていると説明する義務はないのです。 ところが不思議なことに、審査員の大多数(全部とは言いませんが)は「適合していることを説明してください」と言います。 それは審査員がすることです。そのためにお金を払っているのですから。審査員のすることまで企業がしてしまったら営業妨害になってしまいます。 なんか最近はお金をもらう方の態度が大きくなっているようです。 それと外資社員様は、わざわざGuide66を調べになったそうですが、それは既に過去のものです。このお話は2001年時点だから、その時有効な文書としてGuide66を引用しました。 現在はISO17021-1:2015が最新版で、下記のように直接的な文章です。 9.2.12(b)注記 マネジメントシステムの審査は、法令順守の審査ではない。 ISO審査で法令を引き合いに出すのは非常に危険です。私は内部監査でしたから(能力的でなく立場的に)遵法監査をできましたが、第二者監査とか第二者審査で法律に関わる判断をすると弁護士法に抵触すると思います。 |
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