注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
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十字架に似た鉄骨の残骸 |
日経平均は2000年1月のピークから下降傾向のときで、今グラフをみると直接的な影響を受けたようには思えない。その前後だけ見れば、事件前の13,000円くらいから1万円を切るまでに急降下した。
しかし少し視界を広げれば2000年から2003年まで大きな凸凹はなく長期低下中で、911のときはその途中の経過点としか見えない
なお、アメリカのITバブルは2000年3月に始まり2001年5月には終息していた。アメリカのITバブル崩壊は、911と無関係のようだ。
なお日本ではITバブルと呼ばれるほど盛り上がらなかった。
為替レートはどうだろう。
有事のドル買いではなく円買いが起き、数円の円高となる
一般生活への影響
物不足ということは起きなかったと記憶している。
当時一番記憶に残ったのは、公共の場からゴミ箱が消えたことだ。当時、駅でも広場でもビルのロビーでも、ゴミ箱があるのは空気のようなものだったから、ないと困った。
鼻をかんだ紙を、家まで持って帰るのがたまらなく嫌だった。
| Brfore | 911 | After |
![]() | 撤去 |
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そしてさらに嫌なことは、ゴミ箱撤去が流行になり、流行が定着して当たり前になってしまったことだ。
個人的なこと
実は家内と私は、前々から11月にラスベガスに遊びに行く計画を立てていた。夏過ぎれば会社の仕事も一段落する予定で、ずっと楽しみにしていた。
911事件が起きて、旅行は中止あるいは禁止されるだろうねと家内と話していた。事件直後、旅行会社から「大丈夫、遂行する」という連絡が来た。ただ、そのとき「本当に行きますか?」と何度も聞かれた。
出発が11月1日だったので、それまで数回「本当に行きますか?」と確認電話が来た。
成田空港に行くと、ゴミ箱がないだけでなく、警戒がスゴイ。お茶などのペットボトルは開封していなければOKという。開封したものは持ち込み禁止だ。それまではそんな規制はなかった。
手荷物検査では靴を脱いでX線検査装置を通し、自分は靴下で金属検知器のゲートをくぐる。
ロサンゼルス空港で乗り換えたのだが、空港のいたるところにm16を持ちヘルメットをかぶった兵士がゴロゴロいる。
いや~、これは大変な時に来てしまったと思いました。
無事たどり着いたラスベガスは、いつもより人が少ないかなという程度だった。
グランドキャニオン観光に行ったときは、既にアメリカ国内の民間機飛行は解禁されていたが、それでも便数がものすごく少ない。
証拠なんて空を見ればすぐ分かる。
グランドキャニオンは全方位、山もビルもないので空が広い。アメリカの飛行機便数は日本の比ではなく、とてつもない数が飛ぶ。それで過去に行ったときは、空全面が飛行機雲で埋め尽くされていた。
ところがこのときは飛行機雲が日本並みに数本見られる程度だった。
ちなみに9月11日から3日間は、完全に民間機の飛行が禁止された。その結果、日中は飛行機雲がないせいで地表の温度が上昇し、夜間は放射冷却により最高気温と最低気温の差が、過去30年の平均に比べて1.1℃〜1.8℃大きくなったという。
平均気温が下がるわけではないので、地球温暖化防止には貢献しないようだ。
まあ、ともかく閑散としたラスベガスを楽しんできたのです。
そして、ああ幸せだなと浮かれていたのです。
翌年早々に、リス🐿と虎🐯に出会いました。
怖いですね~
一夜明けて大泉首相の動きは早く、また多くの人の賛同を得るものであった。
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| 大泉首相 |
毎日、夕刻になると首相官邸で関係閣僚が出席して状況報告を受ける。
報告と質疑応答が終わると、少し気が抜けて雑談になる。
「最近は事件や事故が起きると、皆さん集まるのが早くなったねえ~
えひめ丸の事故のときは、森官房長官はゴルフと聞いていたけどすぐに来てくれた」
「ハハハ、いくらなんでも地元のゴルフ場から官邸までは来れませんよ。
実はあのとき、奥山大臣の秘書からウチの秘書に話があったのですよ」
「はて、どんな話でしょう?」
「ゴルフを止めて、東京事務所で待機している方が良いと言われました。
ウチの秘書は、昨年末のドクター・マジックの予言を覚えていてピンときたようで、私が地元に帰るのを止めて欲しいと言ってきました。
それを聞いてゴルフの方は、県会議員の義弟に代理を頼みました」
「それはナイスショットでしたね」
「ホールインワンですわ、ハハハ
ところで奥山大臣は?」
「私もドクター・マジックの予言を気にして、朝から官邸で待機しておりました。
首相、これほど的中率が高いということは、今後もミスターマジックの情報を、お伝えして良いのでしょうか?」
「実は私が首相になる前から、経団連から未来予知の情報は入っていたのです」
「経団連から? それはドクター・マジックの予言と一致しているのでしょうか?」
「よく分からない。最近は予言者とか科学的予知が大流行りだ。
そもそもは地震予知の今村博士が嚆矢だな。彼は研究者だから占いとかお告げでなく科学的研究成果と聞くが、的中率100%だ。とはいえ、彼の予知は地震限定だ。
それから少し遅れて経団連から予知情報というのをもらうようになった。首相になる前で、当時は前任首相の大渕さんと次期首相と目されていた私に伝えられた。
それから1年ほどしてドクター・マジックが手品から予言もすると自称したようだ。
予言は彼オリジナルなのか、誰かから、例えば経団連から情報をもらっているのか私は知らない」
「お話しですと、経団連が予言者を囲っているのですか?」
「それはわからん。そういうことは教えてもらっていない。
私は迷信とか予言を信じているわけではない。だが地震とか事件が起きると言われれば、それへの対応をした方が良いとは考えている。
少なくても経団連情報と今村博士もドクター・マジックも、予知や予言はほぼパーフェクトだからね。
今年になってからでも、芸予地震、えひめ丸、行田小、明石市の歩道橋、911と当たりまくっている」
「私も信じてはいませんが、予言への対応はすべきと考えております。
ただ行田小と歩道橋は、予言が当たったと言えるのか、手を打たなくても事件や事故が起きなかったのか、私は判断つきません」
「行田小は大事件ではありませんでしたね。それに歩道橋は問題が起きませんでした」
「信実か否かなんて難しく考えることはない。
いろいろな組み合わせを考えれば良い。それぞれの発生頻度は分からなくても、発生した場合のメリット・デメリットは分るだろう」
| 明石の歩道橋の場合 | ||
| 規定の未来 | 対策した場合 | 放置した場合 |
| 群衆雪崩が起き死傷者が出る | 問題は起きない | 死傷者が出る |
| なにごともない | 問題は起きない | 問題は起きない |
| 結果 | 100%問題が起きない | 50%問題が起きる |
「もちろん対策はタダではない。費用対効果を考えなければならない。
しかし歩道橋の警備位なら、近隣警察とか県機動隊の応援で、対処できるだろう。
決まっていた未来がどうであれ、手を打てば問題が起きないなら手を打つべきだ。
結果として何事もなかったが、そもそも群衆雪崩が起きなかったのか、防止できたのかは分からない。
もちろん手を打っても問題が起きたかもしれないが、手を打たなかったより悪くはないだろう。
為政者の仕事は真理を究めることじゃない。問題が起きないように、問題を小さく抑えるようにするべきだろう。
奥山大臣から情報をもらって、警察庁に花火大会の警備計画を検証させたところ、観客数を5万人と見積もっていたことが判明した
観客数の予想が4倍も違っているなら警備計画の不備といえるだろう。
私は警備体制を見直したことは効果があったと思うよ」
「行田小についてはいかがですか? あれも事件と言うほどではなかったようです」
「同じことだ。後悔はしていない」
「私は勇み足というか、心配し過ぎと言われるかと気にしておりました」
「そんなことを考えることはない。思いつくことには手を打つ。思いつかないことに手を打つことはできない。
結果として問題が起きなかったなら、対策したことは間違えではないのだ」
「数学的に考えるとちと違いますよね」
「言っただろう、数学的に正しいかどうかは関係ない。我々は政治家だ。完璧ではなく考えられる最善を尽くし、最後は祈るしかない。結果、やりすぎることもあるだろう、足りないこともあるだろう。それは己の責任としてとるしかない。
政治家は一つの問題を時間かけて解くのが仕事じゃない。終わりのないハードル競技を延々としているのだ。それも決まった問題しか起きないわけじゃない。ハードルを蹴飛ばしても乗り越えれば良いのだ。
パーフェクトはありえない。概ねで良いんだ、概ねで」
| どこまで続くハードルぞ・・・ | |||
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「肝に銘じます」
「未来は変えられるのか・決まっているのかなんて考えてもしょうがない。
いかなる状況下でも、より良くしようとあがくのが人間だ。
我々の使命も評価も結果だ。結果をだそう」
9月下旬、吉宗機械の社長室で社長と中山取締役が話している。
「2年前か、911の予言を聞いたときは大変なことが起きると思っていたが、実際にはとんでもない大事件だったのだな」
「社長、まだ終わっておりませんぞ」
「布石の序盤も戦いの中盤も終わった。今は終戦処理のヨセだ。手順さえ間違えなければ、勝ち負けはもちろん目数も変わらない。
次はアメリカのアフガニスタン侵攻だったね」
「先日の打ち合わせ(第154話)で、アフガニスタン侵攻対策も計画を立てて進めております」
「中山さんもだいぶ先を読むようになりましたな。
予言では10月7日、あと2週間ほどでアメリカがアフガニスタンに侵攻しますか。
この対策となると、ウチが進出を考えていた事業の取りやめかな?」
「はい、アメリカの進駐は10年
「しかたがないね。
となると次は年末のアルゼンチンのデフォルト対策か?」
「その前にやはり年末に、北朝鮮の工作船侵入事件があります」
「ウチは何か関係あるのか?」
「当社は、巡視船の火器管制システム(FCS)の駆動部を納入しています」
「ああ、そうか。そいじゃ出動する可能性のある巡視船のFCS臨時点検だな」
「既に手を打っておりまして、事件勃発までにはすべて完了予定です」
「事件までって、予言がパーフェクトと信じてはダメだ。予言が当たっても、予言されていない事件が起きるかもしれない」
「了解しました。遺漏なく手を打ちます」
「そいでアルゼンチンのデフォルト
「当社が一国の経済をどうこうできません。当社の事業で損が出ないよう動いております」
「今から動いたら向うの人たちに危ないって伝わるでしょう。それはまずくないかい?」
「既に国民の知るところですよ。売掛の回収だけはしっかりやるつもりです。
デフォルトしても現地販売会社を清算することもなく事業継続でしょう。
あの国はデフォルトしても不死鳥のごとく復活しますから」
「確かにアルゼンチンはデフォルトのベテランだ。そのたびに 復活(注6)しているからな」
2001年も11月となった。
佐川は環境監査のフォローと結果確認、工場や関連会社の事故や違反の対策、そんなことをしているとしっかりと時間がつぶれていく。自分が積極的に新しいことを企画して成し遂げるぞという意気がないと管理業務だけで勤務時間は塗りつぶされていく。
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それから伊達プロジェクトリーダーから依頼されている2002年度のイベントのまとめ、そして自分としての方向付けをまとめる。
2002年は2001年ほど大事件はなく、雑多なものばかりだ。
だが激動の時代であるのは変わらない。いや、激動でなかった時代などあるのだろうか?
日々の現実
会社で仕事をしていたとき、夕方になると今日は何をしたのだろうと思うこともある。
さぼったり、居眠りしていたのではない。
成果と言える仕事をせずに時間ばかり経っているのだ。
環境の仕事と言っても、している仕事は多岐にわたる。
出張から帰れば、報告を書いたり旅費清算したり、数日不在していればeメールが100件くらい、紙の書類も数センチ溜まっているから、まずは一瞥して納期の迫っているものから片付けないとならない。
工場や関連会社が、出張から戻ったのを見計らってしてくる相談電話もあるだろう。
そんなことをしていると、あっという間に夕方だ。今日中に納期の迫っている件だけでも片付けようとしていると9時を過ぎる。
このお話は未来の記憶を持って30年前に戻って来たなら、その知識を持って大活躍できるのではないかという発想で始まった。
だが現実の日々の仕事の処理を考えると、そういう情報があっても大活躍どころかあまり変わらないという結論になりそうだ。
未来の知識があれば旅費精算も出張報告も無縁、工場のトラブルなど「黙れ、下賤のもの(走れメロス)」と言えるなら良いが、そうはいかない。
まあ、何が起きるか知っていれば心の準備ができるというくらいしか、メリットはないのかもしれない。
この物語がワクワクもせず、どんでん返しもないことが、現実世界を書いているという証拠かもしれない。
面白くないって?
面白くないのが現実世界ですよ
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| 注1 |
社会実情データ図録 株価の長期低迷 | |
| 注2 |
日本銀行 時系列統計データサイト | |
| 注3 |
・明石花火大会歩道橋事故 | |
| 注4 |
実際には、2021年9月11日のアメリカ同時多発テロの結果始まったアフガニスタンでのタリバン掃討戦は、2001年10月に始まり撤退した2021年8月までの20年に及んだ。 | |
| 注5 | ・
アルゼンチン危機(2001~02 年)の経験 | |
| 注6 |
アルゼンチンは1916年に独立してから9回デフォルトしている。最近でも1982年、1989年、2001年、2014年、2020年と10年に一度デフォルトしている。 原因として慢性的な財政赤字、インフレ、ポピュリズム政策による放漫財政と言われる。 ・アルゼンチンGDPとその成長率推移 |
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