注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
えひめ丸、芸予地震から始まり、秋にはアメリカ同時多発テロ、年末は北朝鮮の工作船が侵入して銃撃戦が起きるなど、大事件が続いた2001年も過ぎた。
でもそのおかげで日本国民も、隣国の危険性に気付いただろうし、日本も世界も安全ではないと目が覚めたのではないだろうか。一過性でなく継続すれば良いのだが。
2002年の正月明けの吉宗機械の未来プロジェクトである。
今日は年明けの例会である。佐川も含めたフルメンバーと、中山取締役と下山次長が顔を出している。
単に新年だからというのではなく、不審船と銃撃戦となったことについてのご下問だろう。
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本宮 総務 | |||
![]() | ![]() | 吉田 人事 | ||
| 野村財務課長 | ![]() | ![]() | 佐川 環境 |
「新年あけましておめでとうございます。今年最初のミーティングということで、まずは昨年の反省から行きたいと思います。特に昨年の年末にアルゼンチンのデフォルトもあり、北朝鮮の工作船問題もあり、それについて意見もいただきたいと思います」
「まず私から、北朝鮮との銃撃戦で海上保安官に死者が出てしまった。これを、なぜ予知できなかったのか、そこを説明してもらいたい」
伊達は予想もしていなかったようで、固まってしまい声が出ない。
佐川が救いの手を出した。
「発言します。私はなぜ外れたのかをずっと考えていました。そして納得いく回答にたどり着きました。それをお話しします。
私たちは今まで予知したことを防ごうとしたことはありませんでした。最初に実行したことはダイオキシン規制が厳しくなるからと、当社の焼却炉を早期に撤去することでした。これはダイオキシン規制による費用負担を少なくしましたが、予知された未来を変えようとしたわけではありません。
東アジア通貨危機では自社の損失を防ごうとしましたが、通貨危機を止めようとはしませんでした。止められないというのも理由ですが。
未来プロジェクトができてから円ドルの為替レートの変動は何度かありましたが、それらの対応も損害を減らそうとしただけで、レートを変えないように動いたわけではありません。
昨年は行田小の事件と明石市の歩道橋事故を防ごうとして、経団連経由で内閣に情報を流しました。結果として予知されたことを防ぎました。
昨年、中山取締役と内閣官房に呼ばれたとき、警察が予知が実現しないように手を打ったことを聞かされました。それは成功したように思います。
今申しましたように、予知されたことに対応することは度々してきましたが、予知を覆そうとしたのは昨年が初めてだと思います。
そして予知されたことを止めることができました。それはすなわち、本来事件がないところに事件を起こそうとすれば、それはできることと同値です。私はそれだと考えます」
「つまりなんだ、誰かが死者が出るように動いたということか?」
「いや死者を出そうとしたわけではないでしょう。ある行為によって因果関係が変わり死者が出たということです。
具体的には既に官房長官の発表にもありました、国交相が危険を顧みずに侵入者たちを救えと命じたことによると思います。
国交相が海上保安官に死者を出そうとしたのか、侵入者の命を救おうとしたのか分かりません。
想像ですが、大きな歴史にしろ小さな出来事にしろ、心で思うことは無意味で、行動のみが結果をもたらすと思います。思ったことを発言しなければ他に影響しません」
「君の前世ではどうだったのか?」
「前世では、今回と同じく工作船が爆発したのも銃撃によるのではなく自爆したことから、近づくと抱き着いて心中する恐れがあるので近づいて救助するなと命令したと公表されました。
もちろん何もしないわけではなく、遠くから救命具を流したと聞きます。総じて今回の首相命令と変わりません」
「つまり総理の命令通りを実行していれば、犠牲者は出なかったということか?」
「そう考えます。というか予知された未来はそうです。
前世と違うのは、内閣も国交相も予知情報を知っていたこと、それを踏まえて動いたことです」
「確かに予知を止めるのと、予知以外をするのは同値だな」
「また内閣官房に呼ばれるだろうが、そういう見解で向うは納得するかな?」
「行田小事件で、予知されたことを人間の意思で変えられることは分かったはずです。なぜなら行田小事件は重大問題になる前に止めることができた。
なら予知では死傷者ゼロのものであっても、指揮が本来と異なれば死傷者が出る可能性はあります。
こちらが説明しても納得しないというなら、こちらは善意なのですから、未来の情報を提供しないとするしかありません」
「向こうはより良い施策を示せというだろう」
「こちらに決定権も指揮権もないのですから、それは無理な話です。
そもそも首相の命令に従わないなら、私どものアドバイスが徹底するはずがありません」
「なるほど、じゃあ次回行ったとき君がそう説明してくれ」
「かしこまりました」
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「それから内閣官房の・・・内閣官房の危機管理監だが、情報提供を今後ともしてほしいという。
それはいいのだが、事件や事故だけでなく、為替レートや株価の推移、更には流行などの情報提供も求めている。
私個人としては、内閣に情報提供すれば、国会議員経由で最終的には多くの企業、そして日本を仮想敵国としている国々にも広まるだろうと考えている。ということでそれは拒否したい。
皆さんのお考えを聞きたい」
「当社はアドバンテージを失いますよね」
「当社どころか日本の国益が損なわれます。
今期の事件のように、日本の国益より韓国や中国を優先する議員がいますから、それは問題です。いやダメです」
「でも内閣からの要請を断れるのでしょうか?」
「首相の命令に従わないような組織に、機密を渡すわけにはいきませんよ」
「そうよねえ~、北朝鮮の不審船の海上保安官の犠牲は、首相命令を聞かない国交大臣の独断専行と報道されたわね」
「国交大臣は、売国奴だな。ハニートラップなのか、元々思想がそっち系なのか。
総理大臣の命令を聞かなかった罰が、大臣解任ってのも納得いかないな。ああいう奴を議員にしている選挙民がいることが問題だ」
1月中旬、内閣官房に呼ばれた中山取締役と佐川はまた中央合同庁舎8号館に来ている。
そして前に来た会議室で、また山田危機管理監と伊藤事務官と向かい合っている。
「北朝鮮の工作船については情報をありがとう。頂いた情報は役にたった」
「それは良かったですねと言いたいところですが、実際は余計な問題を引き起こしたのではないですか?」
「それはまたどうして?」
「私どもが余計な情報を入れたために、首相が本来はするはずがなかった命令を出し、それが不都合の始まりかと推察しました」
「なるほど、それは読みなのか予知なのか?」
「我々にも、お宅から頂いた情報が、かえって悪影響になったという考えもありました」
「ほう、それはどういう結論になりましたか?」
「結論と言えるものはないのですが・・・我々が予知情報を信じ切れなかったために、余計な考えや行動をしたという思いもあります」
「伊藤君、吉宗機械さんからの情報がなければ、アメリカ軍から情報をもらうまで、なにもしなかったということだ。
そのときは事前情報がなく、不審船を見つけるのに3日かかって21日のはずだ。その翌日には銃撃戦だ。
事前に体制を整える時間はなかった」
「ざっくばらんな話をしましょう。私の方でもなぜ予想外に悪いことが起きてしまったかの分析をしました。
正直言って、今までの数年間、弊社の未来プロジェクトでは毎年いくつものイベントの対応策を検討してきました。しかしそこでしてきたことはすべて対応策であり、イベントをなくそうとしたことはありませんでした。
行田小学校事件そして明石歩道橋で、初めてイベントの発生を阻止しようとしました。
もちろん私たちが止めることはできません。当初は誰か社員が現場に張り込んで、異常が起きたとき警察に知らせるなどのアイデアも検討しました。でもそれでは不確実です。
それでミスター・マジックを経由して、奥山総務相に伝えたのです(第153話)」
「なるほど、いろいろお考えになられたと」
「申しましたように、予知されたことを変えようとしたのは初めてでした。だからそれが因果を変えて予知が崩れるという懸念もありました」
「御社では予知を変えたことはないとおっしゃいましたが、個人レベルでも変えたことはないのですか?」
佐川は考える。灰皿事件で未来を変えたのは事実だ。規模はとても小さいが
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予知された通りテロ事件は起き、日本人観光客も10名殺害されました。それは事故の予知は成就したけど、旅行に行こうとした人の人生を変えた、つまり予知を変えたと理解するのでしょうか?
それともルクソールに行っても無事帰ってきたのでしょうか?
そういったレベルのことはあります。ただイベントそのものを、なくそうとしたことがありません」
「その場合、イベントをどう定義するかもありますね。
テロ事件もイベント、お宅の社員の海外旅行もイベントとみなすこともできる」
「となると大きなイベントを止めたときと、小さなイベントを止めたときの影響は違うのだろうか?
大小によって影響が違うのか、あるいは本質的には同じなのか」
「似たような別のようなことを思いつきました。
予知を知ってそれを変えようとすることと、予知を知らずに、予知された未来にならないよう努めることの差はあるでしょうか?」
「うーむ、試験問題を知って勉強するのと、知らなくて勉強するのの結果に違いはないか?
ところでそれを考えることに、どんな意味がありますか?」
「北朝鮮の工作船を、こちら側に被害を出さずに確保しようとしたことを、私たち・・・正確に言えば動いたのは皆さんたちですが、私たちもそれを望んだことは間違いありません。
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救命用の浮き輪は風船ではなく、 外側はプラスチックで中は発泡ス チロールだそうです。 これなら膨らませる必要がなくエ ア漏れもない。 |
皆さんあるいは私たちが未来を知っていいなければ何が違ったか? 知らなかったら予知が成就したなら、その因果を知りたいとは思いませんか。
国交相が首相から救助をするなと命じられた場合と、救助せよと命じられた場合の違い・・・これはどちらでも救助したかもしれませんね。ならば首相から何も言われずに、国交相も保安庁に特段命令を出さない場合となるのでしょうか?
そういったことを考えることは価値あると思います。なぜなら、予知されたことを止めようとする局面は、これからも度々あるはずです」
「おっしゃる通りだ。今回のような犠牲を二度と出さないことを考えなければならない」
「簡単なのは首相の命令を聞かないような人を大臣にしないことでしょう」
「フィードバックではそれをオープンループと言います。システムが正常なら良いでしょうけど、異常が起きたときは役に立ちません。出力をモニターしていてフィードバックをかけるクローズドループでなければなりません」
「どのように?」
「今回の問題発生を調べて、そうならない方法を考えるのです。
それができないなら、未来予知などを頼らず、今まで通りにすれば良いのです。
元々、大事故や大事件を止めたいと思ったのはこちらの勝手です。
政府が完全に究明されていない予知情報を使わない決定をするなら、それまでです」
「いやいや、そう早急に決めるつもりはない。行田小事件も明石歩道橋も大成功だったわけだ。
今回の北朝鮮の工作船対応を、どうすればより良い結果を出せたのかを考える価値はある」
「これからのことを考えると、イベントの種類に合わせたいくつかのパターンを用意しておくべきでしょうね。
たとえば、えひめ丸であればどうしたら良かったのか?」
「えひめ丸のときは事前情報があっても、事故を止めることはできなかったのではないですかね?」
「伊藤君、そういう言い方はないよ。我々の仕事はそういう事態に対応することだ。最悪でも被害を最小にすることを考えねばならん」
「話は変わります。前回、貴方からお話がありました事故・事件以外の情報提供についてです。
弊方で検討しましたが、秘密が守られるのかということが疑問です。例えば今回の事件で・・・言ってしまいますが、首相から話を聞いた国交相が、それを北朝鮮に情報漏洩していたらどうでしょう?
為替レートの変動とか日本での地震発生あるいは台風による混乱などが起きたとき、情報かく乱とかテロ攻撃などは十分あり得ます。
よって、内閣からが情報漏洩がないと保証されなければ提供はできません」
「今回の国交相のような事件を起こさないよう手を打ちます」
「言いにくいことですが、あなた方は官僚です。議員の方が官僚より上位です。政権がリベラル政党に移れば、いや移らなくて現状であろうと、議員バッジを付けた人に情報公開を迫られたらどうしますか。
私どもはお金儲けではなく、国家安全保障の立場で懸念しています。
リベラル政党に代われば国会で売国奴と批判された国会議員が国家公安委員長になるかもしれません
私どもは政府を信じられないので情報提供はできません。
もちろん事件や事故については従来通り情報提供いたします」
「うーん、おっしゃる意味は理解できます。民主主義とは悪意を持った攻撃には弱いのは事実です。特に情報戦では平和教育の国は勝てそうありませんね。
せめてスイスの『民間防衛』並のレベルにならないと
この件に関しましては内部で再検討します。お話は承りました」
そのあとすぐに解散した。
会議室には山田危機管理監と伊藤が残り、話をする。
「公機関が民間に情報漏洩の恐れがあるというのは普通だろうが、民間から内閣官房に情報漏洩の恐れがあると言われては世話がない。失笑ものだ」
「普通なら怒るところですよ」
「国交相問題が起きた今、見得を切ったところで空回りで、嗤われるだけだ。
無力を認識したのは悲しいが、連中が銭儲けが目的でないこと、そして愛国心旺盛なのはうれしいことだ」
「管理監、ちょっと元気出してくださいよ」
本日の悲しさ
私はいかなる主義主張でも、言論の自由を保証すべきだと思う。
しかしその活動は日本を良くするためのものであって、外国の利益を優先するとか、外国の属国になる運動ではないはずだ。
私は日本を良くする主義主張なら許せるが、中国ワンスイ、北朝鮮マンセーは許さない。
それからどこの国でも、どんな主張であろうと国旗を持ってデモするぞ。
日本には日の丸を上げるなという団体はあるが、外国で自国の国旗を貶めるところはない。むしろ国旗を掲げることで、自分たちが正統であることを示す。
アメリカなら共和党の集まりでもデモでも、民主党の集まりでも、星条旗を掲げる。
| デモの風景 | ||||||
| アメリカの場合 | 日本の場合 | |||||
| 民主党支持 | 共和党支持 | 右派支持 | 左派支持 | |||
| どんな主張でも、星条旗を持つ | 赤旗を持つ人は日本が嫌いなの? | |||||
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| 注1 |
民主党政権の菅直人第2次改造内閣では岡崎トミ子が国家公安委員長を勤めた。 岡崎トミ子は韓国への海外視察の際、元慰安婦と称する日本への補償を求めるデモに参加した。このような者を国家公安委員長に任命すること自体異常である。 | |
| 注2 |
「民間防衛」、スイス政府、原書房、2005 |
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