注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
中山取締役と佐川は2001年暮れに内閣官房に呼び出されてから、ほぼ月一のペースで呼ばれている。事情聴取というわけではなく、未来予知したことの解説とか解釈を求められている感じだ。
2002年は大きな国際問題も経済問題もなく、このところ山田危機管理監も額に縦しわを作ることなく、佐川の見解を聞くのを楽しみにしているようにも思える。
佐川は未来予知とか内閣官房の対応がメインであるわけがなく、本務の環境部の課長職が忙しい。ISO14001審査が始まって5年経った今でもトラブルは起きている。有益な環境側面論は燎原の火の如くはびこっていて、多くの企業はあきらめムードである
正義を貫かんと有益な環境側面はないと審査員と議論するよりも、エクセルにカラムを一列追加して、有益か有害かの印をつけて済むならそうしようという人は多い。
佐川はそんな姑息な手段を取る工場や関連会社に特に苦情は言わない。目くじらを立てるようなことでない、大人の事情というわけだ。
それに納得できず認証機関に文句を言いに行くから同行してくれと頼まれれば、協力するというスタンスである。
注:私は有益な環境側面があると語っても、それが犯罪だとか道徳に反するなんて考えていない。
我が愛しきダメ憲法は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と語っています。
でもね、公共の福祉に反してはダメなんですよ。
だからISO審査において、有益な環境側面と有害な環境側面の区別を要求し、そうでなければ不適合とすることを、犯罪とは言わないが、重大な審査契約違反であると断言する。
まっ、考えればわざわざ余計なことを言わなければ良いのにね。
審査員なら、規格に則った審査をひたすらしなければならない。だが新しい要求事項を考案するのが趣味なのか、無能な働き者の審査員は困ったものである。佐川はISO認証制度が取り締まるべきと思っている。
もっとも最近では吉宗機械の佐川も有名になったようで、認証機関も佐川が訪問しても「素人が知ったかぶりをして」などとは言わなくなった。
今では佐川が来たと聞くと、有益な側面とかごちゃごちゃ言わず、議論する前に不適合を取り消すことが多くなってきた。先方がおとなしく不適当を取り消すなら、文句を言うこともない。
そのうち佐川が電話一本すれば、認証機関は黙って不適合を取り消すようになって欲しいものである。
いや本来は審査の場で適合判定するのが当たり前なのだ。
そんなある日、久しぶりに班目先生からeメールが来た。
メールの要旨は次のようなことであった。
班目です。お世話になっております。
押田編集長から、ISO認証誌に連載(第148話~)している規格解説を拡充して対訳本を出せと言われた。3,000部売れたらベストセラーと言われるISO本だが、私が対訳本を書けば、1万部は間違いなく売れると甘い言葉で勧められた。
自分の立場では、専門外の本を書いても実績にならないので、そんなことを考えもしなかった。
世の中ではJIS訳があるのに、無関係な者が翻訳したものに需要があるものだろうか?
アドバイスください。
この程度のことなら後で返事するより、即返事したほうが手間はかからない。
佐川は、さってばさと処理する。
班目先生
吉宗機械の佐川です。
お問い合わせの件
まず、審査員の規格の誤解釈によるトラブルは今も減っていません。
審査の場で規格解釈の議論しても埒が明かないです。
本来ならISOTC委員なり、JACB
しかしその気配がない現状、審査の力関係から、審査員の主張が通ってしまうのが実態です。
権威ある人が正しい解釈を提示しないと、認証しようとする企業は頼るものがない。
班目先生がISO14001の正しい日本語訳を作ってくれたら、その混乱は収まるだろう。
ISO認証誌に連載されているのは私も毎月読んでいる。しかし雑誌は消耗品だ。書籍にまとめてくれれば、それは規格ある限り残る。裁判で言う判例のように、これからの審査で参照され尊重されるものとなるでしょう。
ぜひ現在のISO業界に法律の学者がISO規格を解説した本を書いて一石を投じて欲しい。
弊方はトラブル事例や審査でのエピソードは豊富だから、そういう情報提供で協力できる。ぜひとも押田編集長の要請を受けて著作されることを期待する。
今も私は審査を受けた企業から頼まれて、某認証機関に行っておかしな解釈を正してきたところだ。吉宗グループでも月1件くらいは発生している。
先生が真っ当な対訳本を書かれることを期待する。出来れば事例集も欲しい。
メールの返信を送ると、佐川はそれを忘れて、また関連企業のISO認証トラブル対策に没頭する。
その数日後、佐川のアポイントを取って班目先生と押田編集長が吉宗機械に来た。
佐川は面倒なのは人に任せることにして、これも広報の石川をかませた。
ということで今日は都合5名である。
| ![]() 環境部 山口 |
||||
![]() 佐川課長 |
|||||
![]() 広報 石川 |
「まず2002年現在、ISO14001審査の場では、トラブルがたくさん発生しています。
多くは審査員が規格を誤って解釈していることが原因です」
「私が審査員やコンサルから聞いていることでは、そんなにトラブルがあるとは思えません。
それに審査員が誤った解釈をしていると言い切れますか? 会社側が誤っていることはないのでしょうか?」
「そりゃトラブルメーカーは、自分がトラブルメーカーとは認識してませんよ。
最も簡単な例を上げましょう。認証しようとする企業の過半は従業員に『方針カード』なるものを配っています。あれは一体何でしょうか?」
「ISO規格で『従業員に周知しなければならない』とあるからです」
「へえ~、初耳です。
山口さん、従業員に周知するって方針カードを配れば良いのかい?」
「佐川さんも人が悪い。方針カードと周知には関係がなさそうですね」
「方針カードを配るのと周知するのは同じことでしょう」
「全然違います。規格が要求しているのは『communicated to all employees』です。Communicatedは『覚えろ』でもなく、『読め』でもなく、『アクセスできる』ことでもありません。
英語のcommunicateは『言葉やボディランゲージなどで、考えや感情などを伝えまたは共有すること』です。
つまり経営層が作った方針を伝え理解させることになります」
「ええと、違いが分かりません」
「私は分かりました。単に方針を配るとか、読ませることではなく、方針を理解させ行動させることですね」
「その通りです。ですから方針が何項目もあるとき、従業員は自分の関わることを理解すれば良く、無関係なテーマを理解する必要はありません」
「へぇ~、そうなのですか。
ともかくじゃあ、方針カードはどういうことなのでしょう」
「オウム真理教のねじろがあった上九一色村の人が、『オウムのことはオウムにしか分からない』と言いました。方針カードは何のためかは、作った人にしか分かりませんね。
私の想像ですけど、審査員は方針が周知されたことを確認することが難しい、あるいはできないのかもしれません。それで代用特性として方針を暗唱させることを考えた。
でも会社側としては、従業員に方針を暗唱させるなんて無理だと考えた。それで、それに備えて皆に印刷したものを携帯させて、審査員に聞かれたらそれを読めと言った。
審査員はそれを見て、わざわざ読まなくてもカードを持っていれば良いと考えた。
そういう流れじゃないですかね
注:この時代、まだオウム真理教の大事件があってから、たいして時が経っていない。だから話をしていてオウムに関する言い回しがっしょっちゅう使われた。
言い逃れをする人を「ああ言えば上祐」とか、殺すを「ポアする」とか、違和感のない言い回しだった。
「アハハハ、いや~、佐川さんはISO認証の裏も表も知っているようだ。そういう話を聞くと、認証とか審査とか全く無意味だと思える」
「いえいえ、ISO認証は無意味じゃありません。細かいことまで完璧に徹底することは困難でも、大勢としては方針を理解し、規格要求事項を満たしているわけです」
「佐川さん、御社では、この要求事項に対して、どのように対応するよう指導しているのですか?」
「山口さん、ご説明お願いします」
「私たちがしているのはISO9001のとき考えた方法です。
別に新しいことではありません。方針展開
| 職階 | ISO認証の場合 | |
| ISO9001を認証せよ | 部長 | 製造部門は時間外をすれば準備が できるだろう。 品管と品証には認証準備の間は応 援をかけよう |
| 課長 | 信頼性Gは対応不要、計測器は校 正関係見直し、工数は間に合う。 品質保証は1名応援をかける。要 点は他部門の支援だな |
|
| 品証 計測器 担当 | 計測器管理は手順を打ち合わせて 規定に反映。 品質保証は各部門の指針の提供と 疑問点対応だ |
|
| 担当 | 規定の最新化は私の仕事 あと会議室の確保ね |
もちろんトップの性格によっては、具体的で細かい会社もあるでしょう。
しかしそれでも従業員レベルにとっては、漠然として自分が何をすべきか分かりません。
だから部長は、自分の職掌についてそれを具体化します。それは順次、課長、係長、職長と展開され具体的に細かくなって行きます。
それによって末端の作業者や営業マンは、自分担当のすることを理解し実行し目標を達成するよう努めます。
審査員のあるべき姿は、作業者など末端の人に『あなたの仕事は何ですか? その仕事の課題は何ですか? あなたの今年の目標は何ですか?』と質問し、返ってきたものを総合的に考えて、上位の方針と整合しているかを判断します。
それが、周知されているか否かを判断する方法です」
「山口さん、それは素面で言ってるの?」
「『しらふ』という言葉が分かりませんが、弊社では規格の周知とは、そういう意味だと指導しています。そういう対応が真の審査ではないですか。
もちろん認証機関を選ぶとき『御社は方針が周知されているかをどのようにして審査するのか?』とアンケートをして、今言った方法で行うというところを選んでいます。
審査員が『方針は周知されていますか?』と聞くのはナンセンスですよね。
審査とは周知されているかどうかを聞くことではなく、周知されているかどうかを調べることです。
そのとき方針をオウム返しにしても、方針を理解しているか分かりません。あなたは今年の改善テーマは何かを聞いて、トップの方針と照らし合わせて展開されているかを調べるのです」
「アハハハ、押田さん、完敗ですね。規格を読めば山口さんの言う通りです」
「私の理解が全く間違えていたようです。そういう解説してほしいですね」
「と言われても、私自身、恥ずかしながらどうしたら良いのか見当もつきません。
JIS訳以上のものを作らねばなりませんね・・・」
「ISO14001規格は文章が80個しかありません」
注:ISO対訳本は句点「。」でなくピリオド「・」を使っているので、規格第4章にあるピリオドの数を数えた。
「たった80文しかないの? 法律と比べると非常に短いな」
「そうです、センテンスが80個です。更に施行令もなく施行規則もなく単純で、文字数も少なく簡単明瞭です。
班目先生がお書きになるなら、その一つ一つの文に、丁寧に原語の意味を書き加えて、解説が必要なところは解説すれば必要十分です。
班目先生のユーモアたっぷりの言い回しで書いてくれたら売れますよ。
売れるか心配なら、吉宗機械グループで500部予約を入れますよ」
「佐川さん、あまり強引なセールス活動は止めてよね、関連会社に騒がれて問題になるわよ」
「本に書いてあることは審査で通用する保証は欲しいですね」
「審査がトラブルなく進むかどうかは何とも言えないが、法廷で通用することは保証できると思う」
「裁判ですって!」
「裁判なんて大げさな、裁判に行く前にISO審査に会社側が納得できなければ、異議申し立ての仕組みがありますよ」
「だって異議申し立てを説明しないなら異議申し立てもできないでしょう」
「認証機関のウェブサイトに異議や苦情の窓口の記載がないところも多いね」
注:正確に言うと、異議や苦情の受付窓口の設置が規定されたのはISO17021:2006が最初である。
ISO10011(1991)やGuide62(1996)やGuide66(1999)では異議・苦情を受け付けることは明記されていたが、窓口設置の要求は記述されていない。
もっとも窓口がなければ、どこに異議や苦情を言うのだろう。認証機関の前で叫ぶのだろうか?
「佐川さん、異議申し立てを説明しない認証機関がありますか?」
「ありますよ。私の知る限り審査のたびに漏れなく説明しているところは、むしろ少ないです。知る限り説明を怠ったことがないのはJQAです。そして一度も説明しないのはJ●●●です」
「なんですってえ~」
「不届き千万だ、不動産取引で重要事項説明をしないようなものじゃないか。それこそ民事訴訟をしたいね」
「ISO雑誌の記者である押田編集長さえ実態を知らないのですか!」
「ISO認証で問題が起き、両者の話合いで決着がつかないなら、決着をつけるのは裁判しかありません。通常の商取引でお互いが納得しなければ民事訴訟です。
自力救済が許されない法治国家で、自分の権利を守るには訴訟しかありません。訴訟は原告でも被告でも、恥でもなく批判されるいわれはありません。
納期が遅れた、予算オーバーした、仕様通りでない、品質が悪いなど、どの会社でも民事訴訟の10件や20件係争中ですよ」
注:自力救済とは、司法手続きによらず、被害者が実力行使によって権利や財産を回復すること。仇討ちのようなもの。近代法では禁止されている。
「でもお金のことならともかく、規格の解釈が裁判になりますか?」
「審査で不適合を出されたら当然審査費用のロスもありますし、認証できなかった機会損失もあります。全てはお金の問題です」
「いえいえ、そういう視点ではなく、裁判官がISO規格を理解しているかということです」
「技術的なことは裁判官が分からないなんてことありません。特許でもなんでも、裁判で決着します。
というかISO認証はサービス契約そのものです。つまり、この規格で審査して、適合か不適合か判断してくださいという契約です。
それに関わる問題あるいは両者の見解の不一致は、ズバリ民事訴訟の対象です」
「でも、裁判とは大げさだ、やりすぎじゃないですか?
こりゃ、班目先生に声をかけたのは間違いだったか」
「佐川さん、どんな本を書くべきか、私の頭の中で段々とクリアになってきました。
80個の文章について、個々の単語の意味を明確にして、英語原文をどう読むかという読み方や真の意味を示す感じですね」
「私のイメージは、漢文の訓読文のように、英単語の脇に定義や参考を書いて、助詞でつないだ感じです。
あるいは書き下ろし文でもよいでしょう」
注:訓読文とは、中国語の漢文(白文)に返り点や送り仮名を付け、日本語の順序に合わせて読み下せるように注記を追加した文章。
書き下おろし文とは、訓読文を、日本語の語順(返り点)に合わせて文字を並べ替えて返り点をなくし、助詞や送り仮名を書き加えた文章。
・サンプルを示す。
「ISO14001が正式にJIS訳される前に、業界団体の有志が翻訳したものもあります。JIS訳と違い口語調ですし、意味的にはJISより原文に近いと思います。
参考にされるなら提供しますよ」
「段々と乗ってきましたよ。もちろん私一人ではできませんから、私の教え子でアメリカの弁護士資格持ちとかイギリスの弁護士資格持ちに声を掛けますよ。
弁理士をしている者もいるな。連中は英文の法律や契約書は、お手のものですから頼りになります。
数人が協力してくれれば、半月もあれば出来上がるでしょう」
「それに過去に書かれた「俺にも言わせろ(第100話)」や「法律家が解説するISO14001規格(第148話)」のようなネタはたくさんありますから、そういったものを載せて欲しいですね」
「それなら対訳本とは別に、ケーススタディ集を書いたらどうだろう」
「そればかりでなく他のMS規格もありますから、規格用語辞典を作ったらどうでしょう。
Objectiveとpurposeの違い
「押田さん、本を書くのはどんどんいけますが、売れますかね? 売れない本は本じゃない」
「規格を平明に説明した翻訳なら間違いなく売れます。ひょっとすると日本規格協会の規格対訳本よりも売れるでしょう。
それと確かに、ISOMS規格用語辞典があれば便利ですね」
「もっとも単語の意味合いは時代とともに変わりました。ISO9001が登場したときensureは記録を作ること、defineは文書を作ることでしたが、1997年以降は意味合いが変わりました」
「そういうのって紙に書かれてないのです。審査員の御心のままにってやつで」
注:「御心のまま」とは神仏にすべてをゆだねて「言われるまま、お考えの通りにいたします」という祈りの言葉である。
ここでは「審査員の言う通りするしかない」あるいは「審査員の気分次第」という皮肉である。
「審査の苦労がしのばれます」
「佐川さんや山口さんは、そういう苦労をしてきたのね」
「苦労してないように見えますか、ハハハ」
「タイトルに提案があるのですが」
「お勧めを伺いましょう」
「『真訳聖書』とかどうでしょう」
「それは・・・また、強烈な皮肉ですね。20世紀、審査員は聖職者を気取っていましたからね。
乱れた翻訳を正す欽定訳ですか。佐川さんはISO教のプロテスタントですな。この宗教戦争も長引きますね」
「おいおい、私が旗頭ですか、殺されたくありませんね。
マイルドに『法廷で通用するISO解釈』じゃ語呂が悪いか」
「そうそう、本文だけでなく、定義も重要なので解説を載せて欲しいですね。序文は無用でしょうけど。」
班目先生が一声かけると、教え子の弁護士が集まったのには驚いた。日本の弁護士だけでなく、アメリカの弁護士あるいはイギリスの弁護士資格を持つ人ばかりだ。弁理士をしている人もいる。
班目先生は口だけ男ではなかったようだ。
押田と佐川もその班目翻訳プロジェクトのキックオフに参加したが、班目先生は実行計画を大きな紙にWBSに表して、分担を決め必要な資料を渡す。そして、さあ、やれと命令だ。
皆、忙しく仕事しているだろうにと、佐川は同情する。
しかし弁護士たちの話を聞いていると、今はやりのISO認証が資格不要のコンサルの仕事になっているのを、もっと高いレベルのサービスを提供することで、弁護士の仕事に取り込めないかと考えているようだ。
取り込むと言っても弁護士自らするわけでなく、最終的に内容を確認する程度だろう。要するに今コンサルがしていることを、弁護士が確認するということになるのだろう。
弁護士は高額所得者と言っても、コンサルだって稼ぐ人は稼ぐ。
しかしISOコンサルは法律相談を受けることは法的にできないが、弁護士が法的にできない仕事はない。
コンサルの一環として環境遵法の点検と指導を行えば、企業側としてはウェルカムである。
審査員が「これは違法です」という表現は、厳密に言えば違法ではないか?
行政でも弁護士でもない人が、そんなことを断定してはいけない。せいぜいが「これは違法かもしれない。大至急、行政に確認を取ってください」と言うべきだろう。
ましてや審査で「違法だ」と言われて消防署に相談に駆け付けたら「全く問題ない。違法だと言ったのは誰だ!」と言われたと審査員に報告したら「それは消防署が間違っている」と審査員に言われたのは事実です。
それに審査でトラブルが起きたとき、バックに弁護士がいれば安心だ。
そうなると談合したから認証停止なんて処分をしたら、法廷一直線だろうなあ~(棒)
認証機関は予防的に審査契約書をきめ細かく決めるようになり、面倒くさくなった会社は受審しなくなり・・・認証ビジネスのマーケットはシュリンクするのか?
班目先生が言ったように、ひと月もかからず原稿が揃った。
押田編集長は付き合いのある認証機関の幹部、審査員をしている大学の先生などに監修までではないが確認を頼み、問題ないことを確認すると印刷、宣伝、発行と突き進む。
著作者については班目、押田、そして山口が研究会の田中
を呼んで相談した結果、名目は弁護士たちの共著として調査協力として業界団体の環境部を記載し、印税の5%を業界団体に回すことになった。
印刷部数だが、押田編集長もさすがに1万部とはいかず第一刷は3,000部だった。
2002年の前半はISO14001認証が始まって5年経ち、大手、製造業は一巡していた。しかしそれでISO14001認証の流行が、終わりになったわけではない。大手の非製造業つまり流通、保険、金融、学校などの認証が大きく伸びている時代だ。
そういう人たちが本を手に取り、法曹が書いたと帯に書いてあるのを読んで、これは本物だろうと買い求めた。もちろん既に認証した企業の人たちも、審査での攻防を抜け出ようと本当の規格の理解とはなんだと立ち読みし、すぐ買うことになる。
他方、有益な環境側面の講釈を語っていた認証機関、審査員、コンサルたちは怖いもの見たさで立ち読みし、ショックを受けて、購入して隠れて読むという流れだったようだ。
発売してすぐに第2刷となり、今度は5,000部を刷った。仲間内ではもっと行くかなと話し合っている。
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お願い
この文をお読みになられて怒り狂った方もいるでしょう。 異議申し立てあるいは提訴する前に下記をお読みください。 私は伊達や酔狂でやっているのではありません。 そこはご理解願いますよ、 |
本日の白日夢
まあ、そんなことがあったら良かったね、という白日夢でございます。
私にとって良かっただけでなく、トンチンカンなことを語っていた認証機関も審査員も恥をかかなくて済んだだろう。
結果として審査トラブルも減り会社も審査員も神経を尖らせることがなくなる。そして認証の信頼性も上がったのではないだろうか。「自社良し、顧客良し、世間良し」と、まさに三方良しである。
まあ、そんなことはなかったから、認証件数が減る一方の今があるのさ
ところで実際にISOMS用語辞典を作れば便利だと思い、規格にいかほど単語が使われているのかと、ISO14001:1996に出てくる重複しない単語数を数えた
なぜ2015年版でないのかというと、標準テキストにより規格の標準化が進み、EMSもQMSもその他も皆、同工異曲でつまらないからだ。
さて、異なる単語を何個使っていると思いますか?
規格の総単語数は1,549個、そこで使われている単語はたったの360種類です。オグデンのBASIC
しかも前置詞、接続詞、BE動詞や冠詞が48個あり、それが全文字数の42%を占める。
| ★順位★ | 単語 | ★出現回数★ | 規格に占める割合 |
| 1位 | and | 131 | 8.5% |
| 2位 | the | 113 | 7.3% |
| 3位 | to | 58 | 3.7% |
| 4位 | shall | 52 | 3.4% |
| 5位 | ★environmental★ | 50 | 3.2% |
| 6位 | of | 47 | 3.0% |
| 7位 | organization | 37 | 2.4% |
| 8位 | management | 32 | 2.1% |
| 9位 | maintain | 25 | 1.6% |
| 10位 | procedure | 24 | 1.5% |
注:出現回数とは、規格に何回登場したかである。
規格に占める割合とは、出現回数を総単語数で割ったものである。
「And」が単語全体の8.5%とは単語12個に1個、あまりの多さに驚きである。複文・重文ばかりだから、つなぐのに必要なのだろう。
「the」が多いのは英語だから当然なのかな? 不定冠詞の「a」も11回登場している。
接続詞が多いかと見るとそうでもない。
| ★通常の順位★ | 接続詞 | ★規格内出現回数★ |
| 1位 | and | 131 |
| 2位 | but | 0 |
| 3位 | or | 17 |
| 4位 | because | 0 |
| 5位 | if | 1 |
| 6位 | when | 1 |
| 7位 | that | 15 |
| 8位 | so | 0 |
| 9位 | although | 0 |
| 10位 | while | 0 |
| <<前の話 | 次の話>> | 目次 |
| 注1 |
寺田博さんが有益な環境側面はないと語ってから、20年以上経つ2026年現在でも、有益な環境側面を教えている審査員研修機関が存在している。まさに予後不良、不治の病としか言いようがない。 参考:有益な環境側面(2025) | |
| 注2 |
JACBとは「日本マネジメントシステム認証機関協議会(Japan Association of Management System Certification Bodies)のことで、日本国内で事業活動を行い、IAF(国際認定機関フォーラム)加盟の認定機関により認定されたマネジメントシステムのことで認証機関の業界団体である。 | |
| 注3 |
JATAとは「審査員研修機関連絡協議会(Japan Auditors Training Association)」のことで、JAB認定の要員認証機関(JRCA)から承認された、審査員研修機関の業界団体である。 | |
| 注4 |
方針管理という言葉は、1960年頃から使われていたが、確固たる定義はなく使う人により意味がいろいろだったという。 ブリジストンが1968年にデミング賞の審査を受けたとき目玉にしたそうで、それは各種方針と各種管理を縦横組み合わせた管理の意味の造語らしい。 しかし「方針管理」とは、方針を管理するのか、方針で管理するのか、意味不明な言葉だ。このネーミングはアメリカでピーター・ドラッカーの「現代の経営(The Practice of Management)(1954)」の中で唱えた目標管理(Management by Objectives(MBO))を参考にしたものらしい。 cf.「日本的経営の興亡」徳丸壮也、ダイヤモンド社、1999、pp.321-327 | |
| 注5 |
垂直立ち上げとは、2000年頃にパナソニックが強調した言葉。新製品の発売と同時にフル生産をし、発売時に販売体制を整備すること。 | |
| 注6 |
Objectiveもpurposeも目的と訳されるが、明確に異なる。 Purpose(目的・存在意義):「なぜやるのか」という理由。 Goal(最終到達点):最終的に達成したい大まかな到達点。 Objective(中期的具体的目標):Goalを達成するための数値化・具体化された目標 Target(標的):「経過点の具体的な数字や対象」 | |
| 注7 |
力仕事で数えたのではない。ChatGPTにISO14001の英文テキストをペーストして、重複しない単語の数を数えて欲しいと頼んだ。3分くらいかかったようだ。 | |
| 注8 |
20世紀初め、オグデンが英語ネイティブでない人向けに、コミュニケーションするための850語しか使わない簡略英語を考えた。欧州からアメリカ移住した人が、とりあえずの英語として学んだそうだ。 |
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