注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
斑目一派のISO三部作は、今までの経緯からISO認証誌を発行しているマネジメントシステム出版社の発行である。
ISO認証誌を発行している出版社は、物語の上では5年前(第89話)、この連載では1年前から登場しているが、社名を決めてなかったことに、今、気づいた。
一応社名を書こうかと思い、考えることもないのでマネジメントシステム出版社にした。一応検索エンジンで、同名の法人はヒットしないことは確認した。
三部作で今まで語っていたことを全否定された西東さんは、マネジメントシステム出版社に出版の経緯などについてお聞きしたいと申し入れた。
西東さんは訪問して押田編集長と話をしたが、出版社のビジネス上の経緯は分かっても、規格の考え方については納得できない。
そこで押田編集長が、三部作の編著者の斑目と黒幕の佐川とそのメンバーを集めて、対談しませんかと西東に提案した。西東は対談を雑誌に載せないことを条件にそれに応じた。
その場で、斑目先生に電話すると、自分だけでなく共著者から1~2名の参加を条件にOKした。
吉宗機械には広報部の石川と話すと、会場は提供する、対応するメンバーは西東側も斑目側も複数ならそれに合わせて4名以下とすることでOKする。詳細は佐川に一任する。
そして内容は記載しないが、打ち合わせの写真を環境貢献活動の一環として広報に使うことを条件にした。
ということで、半月ほど後の4月某日、吉宗機械のロビー階の中会議室である。
大きな四角いテーブルを置き、各辺に、西東さん側、著者(弁護士)側、会社側、そして出版社と広報部の石川が座った。
![]() 野沢審査員 |
![]() 西東社長 |
![]() 安達審査員 |
||||
| 斑目助教授 |
|
| 吉宗機械 佐川 | |||
| 服部弁護士 |
|
| H社 田中 | |||
| 平沢弁護士 | ![]() |
| N社 金子 | |||
| 吉宗機械 山口 | |||||
押田編集長 |
![]() 増子記者 |
![]() 広報 石川 |
||||
席の配置が裁判と違うようだ。刑事裁判に合わせるなら、出版社が裁判官、西東一派が検事、斑目たちが被告人、佐川たちが弁護側になるのだろうか?
「この話合いは特段記録するとか、雑誌その他で発表するということはありません。お互いに思うことを発言し、議論していただければよいと思います。もちろん結論を出すこともありません。
ただ私怨を残さないことだけはお願いします。
ではまず、各お立場を説明させていただきます。
正面の上座、西東先生を初めとする有益な環境側面があるとされる方々、西東先生から見て右側が今回の三部作を書かれた有益な環境側面ないとする方々、西東先生から見て左側がやはりないと考えている企業の方々、下座が私どもこの話合いを企画したマネジメントシステム出版社、そしてこの場を準備された幹事役の吉宗機械さんです。
では開催を提起された西東先生からお願いします」
「お互いにテーマや用語は認識されていると思うので、細かいことを語らずとも議論に支障はないと考えます。では早速始めさせてもらいます。
三部作のまえがきで、ISO審査では『ISO規格は契約文書である』という記述があります。そう言い切れるのかという疑問があります」
「司会者に伺います。私は著者側ではありませんが、こういう質疑に対して発言してよろしいのでしょうか?」
「発言することに問題はないと思います。ただ、今の西東先生の質問は斑目先生側に対することで、斑目先生が第一に返答するものと思いますが?」
「私たちへの質問というよりも命題と考えれば、それへの発言はどなたでもできるでしょう。
ただ今回の質問に対しては、第一義に我々が回答権を持つと思います。
弊方の服部が発言します」
「契約文書とは契約書と同義ではありません。契約書とは契約内容を書面にしたもので、双方の署名押印があるものです。
契約文書とは契約に関係する文書を含めたもので、契約書だけでなく契約書で引用しているものや必然的に参照されるものが入ります。
ISO審査委託契約で審査規格として記載されているISOMS規格は当然含まれます。あと通常、認証したことを示すロゴマークの使い方なども記していますから、そのロゴマークの清刷りあるいは電子データも含まれます。
以上です」
注:作業手順や仕様を決めた、画像、電子データ、チュートリアル、見本なども、ISO的には文書である。
「第三者認証のときや二者間の契約なら、ISOMS規格は審査契約の一部と考えられます。しかしISOMS規格の用途は、自己宣言もあり、参考にするだけのこともあるでしょう。
となると第二者監査と第三者認証においては契約文書かもしれないが、ISO規格が契約文書とは言い切れないでしょう」
「佐川さん、発言をどうぞ」
「西東さんがおっしゃるように、ISO審査委託契約以外にも、二者間の取引でも、自己点検でもISO14001規格を使うことはあるでしょう。
しかし契約文書と言ったとき、服部さんが説明した法的な意味合いだけでなく、文書が持つ本質的な性格というものがあります。日本国憲法をタイトルや条項を取り除いても、憲法には思えても、小説には思えないでしょう。
ISO9001はそもそも品質保証要求でした。その後、品質マネジメントシステム規格と名を変えましたが(注1)、今(この物語は2002年)も品質保証の規格であることは変わりません。
品質保証とは調達、製造、輸送などの工程での管理を要求するものです。ですから品質を確実にするために、「~をせよ」「~の記録を残せ」というのは品質保証そのものです。
同時に品質保証とは顧客が供給者に対する要求であり供給者が同意して行うわけで、品質保証そのものが契約であり、それを決めた文書は契約文書となるのは必然です。
契約とは法人あるいは自然人同士の約束ばかりでなく、法人の一部と一部の関係が、法的な位置づけは異なっても、同様の文書を取り交わすことは普通です。
よって第三者認証以外でもISO9001そのものが契約文書となりえます。
同じことがISO14001でも成り立ちます。ISO14001とは別に認証を受けなくても、当社は環境管理をどうするかという契約であり、経営者は特定の者と契約することなく、コミットメントすることで同じ契約関係は成り立つでしょう」
「オイオイ、佐川さんはいつから弁護士になったの」
「社会に約束したなら契約で、規格は契約文書なのですか?」
「お互いの語義が異なるのかもしれません。私は環境改善に努めますと表明したら、それは社会に対する契約ではないのですか? あるいは自分自身に対する約束でしょう。
そして、そもそも法律上、契約締結に契約書は不要です。
それと西東さんの契約とは銭金が絡まないと契約ではないのかな?」
「西東さん、ここはもういいじゃないですか」
「分かりました。納得はしませんが、有益な環境側面に関して重大ではないとして質問を取りさげます」
田中か山口が、プっと噴出したが、皆それを無視した。
「質問を変えます。規格では有益な環境側面は、要求事項にはないということについて・・・
ISO審査で規格適合か否かを調べるのは、20世紀のレベルだと考えております。21世紀の今、ISO審査とは審査を受ける企業を指導し向上させることが望まれています。
よって規格要求事項でないものを持ち出すのは当然だと考えます」
田中、金子が「エッー」と声を出す。
「斑目先生、いかがでしょうか?」
「ISO審査で企業を指導するというのは、Guide66などに明記されているのでしょうか?」
「明記されているというより、顧客要求でしょう。世の認証機関やコンサルは会社を良くするとか、認証すると儲かると語っており、企業はそれがなされる審査を求めています」
「審査の定義はISO9000を使うことになっていますね。
ええと審査の定義は『監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』とあります。
審査は要求事項を満たしているか否かを診るものですから、アドバイスをするのは審査ではありません」
「審査でなくても、顧客が求めるものを提供するのは悪いことでしょうか?」
「ええと・・・」
「異議なければ問題ないということでよろしいでしょうか」
「発言を求めます」
「許可します」
「西東さんへ伺います。
審査はGuide66に従うことになっていますね?」
「もちろんです。私どもが行っている審査ももちろんGuide66に則っております」
「その中の4.1.2体制の項で
『認証・登録機関の組織構造は、その認証・登録に対する信頼を醸成するものでなければならない』とあり、
その”o項”で
『関連機関の活動が、その認証/登録の機密性、客観性、公平性に影響を与えないことを保証し、以下のサービスを提供または提供してはならない』とあり、その『2) 認証/登録の取得または維持に関するコンサルティングサービス』とあることをご存じですよね?」
「はあ~?」
「認証機関とその関連する機関は、審査に限らず審査を受ける企業、認証を受けている企業に対してコンサルをしてはならないと決まっています。
ご存じなかったですか?」
「野沢君、安達君、それについて知識があるか?」
「Guide66に定められているコンサルティングとは、認証するための方法だと思います」
「そう、そう、これは関係ない」
「Guide66のガイダンスというのがあるのをご存じと思います。ええと、その4.1.23では『”o項”のために、次の任務を実施しても、コンサルティングサービスであるとは考えられないし、また、必ずしも利害抵触を招くとは考えない』とありますね」
「そう、そう、(良かった、そういうのがあったのか)」
「おっしゃる通りです。『審査及びサーベーランス訪問のときに価値を付与すること、例えば明らかになった改善の余地を、それに関する具体的解決方法を勧告することなしに審査中に明確にすること』とありますね」
注:ISO17021ではオリジナル版からコンサルティングは一切ご法度である。
しかしGuide66:1999を眺めると、「場合によってはコンサルティングして良い」としか読めない。
「そう、そう、」
「お互いに同じ文章を同じく理解していてよかったです」
「では問題ないね?」
「いえいえ、だからこそ問題なのです。
ここではコンサルティングも場合によっては許されるとあります。
しかし規格要求にないことで不適合を出すことは、コンサルであろうとなかろうと許可している文章はないのです。
それとISO14001でなくISO9001の審査規格ISO10011-1は今年まだ有効で、そこには明確に『要請があれば、監査員は、被監査者の品質システムを改善するための助言を行っても良い。助言は、被監査者を拘束しない
アドバイスが許されている場合でも、アドバイスは要求事項にはできないのです」
「なるほどなあ~、斑目先生、あの佐川氏はすごい人だねえ~」
斑目はニヤリとし、服部は首を縦に振り続けている。
「会社から良くするために、顧客から規格以上の要求で審査して欲しいと求められていると考えられませんか」
「それは審査契約で書かれているのでしょうか?」
「あなたは、契約は文書にしなくても成立するとおっしゃった」
「それは商取引で問題ないことは間違いありません。審査契約も商取引です。
しかし審査で規格以上の要求で審査してほしい、という契約であったと証明できますか?」
「会社側が、規格要求を超える指摘を受け入れていることがその証明だと思う」
「同じ理屈で、会社側が納得していないという事実は反証になりませんか?」
西東先生、沈黙
「発言してよろしいですか?」
「どうぞ」
「西東さん、私はH社で社内事業所やグループ企業に、ISO認証の指導を行っております。
グル-プ企業は400社くらいありまして、その約半数でISO認証をしています。御社から認証を受けている関連会社もあります。
御社だけではありませんが、複数の認証機関から有益な環境側面を把握していないとか、有益な環境側面と有害な環境側面を識別していないという不適合を、毎年出されています。
そういったところでは、審査で規格以上の要求で審査してほしいと要望したこともなく、規格以上の審査をすると言われたこともなく、当然同意した事実もありません。
そこはどうなのでしょうか?」
「その~、不適合となったものの処置は、どうのようにされているわけですか?」
「ここに不適合を出されたものと、その後をまとめたものを持って参りました。
西東さんの所属する認証機関はJ●●でしたね。えーと、昨年暮れの審査で不適合を出されたのは関連会社のHプラスチック社で、『著しい環境側面のリストに有益な環境側面か有害な環境側面かが明記されていない』というものでした。
クロージングでは紛糾し同意まで至りませんでした。しかし審査員が帰りの電車の時刻だと終了を宣言して帰ってしまいました。関連会社の管理責任者は同意のサインをしておりません。
その後、何の音沙汰もなく、新年度の今月になって昨年の是正処置が出ていないという通知が来ました。しかし関連会社は是正処置を出す以前に、不適合であることに同意しておりません。
本日社長の西東さんがお見えになると聞きまして、決着をつけたいと参りました」
「それは、それは・・・」
「私はN社の金子と申します。私も本社で工場や関連会社の、ISO認証の指導などを行っております。
弊社でも多数の関連会社がありまして、毎年のように有益な環境側面にまつわる不適合が出されています。
しかし有益な環境側面がないという不適合は、2年前から皆無になりました。
理由は単純です。会社側がいくら説明しても審査員が理解しないこと。そして認証機関に異議を申し立てても、当認証機関の内部規定によるという回答しかありませんでした。
内部規定なるものを定めることはGuide66に違反ではない、但しその場合は公開する義務がGuide66にあったと思いますが・・・ともかくそれ以降は相手にしてくれません。
ですから余計なことでもめてもしょうがないと、エクセルの表にカラムを1列追加して有益、有害と記入しただけです」
「有益と有害を区別すれば、管理上効果があるのではないですか」
「西東さん、冗談はやめてください。会社は無駄を嫌います。電気使用は有害な環境側面だと書いてあれば、いかなる効果がありますか? 教えてください」
「有益と有害を分けて管理に役立ちませんか。有益は伸ばす、有害は減らすと」
「電気使用は有害な環境側面ですか? どこが有害ですか、教えて欲しいです。
私より50年前の先達は石炭で蒸気を作っていたそうです。それが重油になり、今は蒸気が必要なものを電気に変えています。
なぜ変えたのか?
単純ですよ。安全、衛生、漏洩、火事防止など、たくさんのメリットがあるからです。
お聞きしたいですが、電気使用はどこが有害なのですか?」
「それは資源枯渇もありますし、発電所から発生する公害や放射性物質などがあります」
注:火力発電の、45%はLNG、43%は石炭、2%が石油他(2024年統計)である。石炭を燃やすと含まれているウランやトリウムなどの放射性物質が大気に放散する問題が言われている。
原発は事故時以外に放射性物質の大気放散はないが、火力発電所からは常時放散している。
「それじゃ電気を止めて重油に戻したほうが有益なのでしょうか?」
「場合によっては・・・」
「言葉の遊びは止めましょう。重油のばい煙、危険物の保管、流出の危険、法的規制、有資格者、自主点検、たくさんの面倒くさいことがあり、起動も時間がかかるしコストもかかる、つまり電化はものすごくメリットがあるのです。
有益な環境側面とはいかなるものか理解しておりませんが、電気の方が重油より間違いなく有益ですね」
「それは重油より電化したほうが有益な環境側面ということです」
「またまた新しいアイデアが登場しましたね。
電気は重油より取扱いが楽だということが、なんで電気は重油より有益な環境側面になるのですか?
動詞と名詞の違い、論理的に考えてくださいよ。嗤われますよ。
重油より電気は有益な環境側面ならば、じゃあ、なぜ電気が有害な環境側面なのですか?」
「資源枯渇とかCO2による温暖化の原因になっているからです」
「よく分かりませんね。我々は製造業で食っているのです。製造業はエネルギーなしでは成り立ちません。エネルギー使用を悪とするならビジネスは終了です。
現実はエネルギーを消費して価値を上げているわけです。そこはどう解釈するのでしょう?」
「金子さんは電気の使用をどうお考えですか?」
「明確です。迷うことはありません。自分の会社の仕事におけるエネルギー消費の低減、より安全で環境負荷の少ないものの採用、それに尽きますね」
「そのとき有益な環境側面という考えが、役に立つのではないですか?」
「有益な環境側面だと思うと省エネが進むのですか?
どうしてそうなりますか?
神棚や仏壇の前で『有益な環境側面』と祝詞とか念仏を唱えると、省エネになるなら信者になりますよ。信じる者は儲かると言いますからね」
「エネルギーでも資源でも、実際の選択や使用において、我々はフリーハンドというのはあまりないのです。政府がエネルギー基本計画が策定し、経団連、業界団体でブレークダウンされ、一般企業にも方向付けがされます。
言い換えると有益な環境側面など考えることもなく、進路は決まっているのです」
「だが政府が立てたエネルギー基本計画が、絶対正しいとは限らないだろう」
「そりゃ政府の立てた計画に、従わなければならないという縛りはありません。しかし基本計画を関係省庁が具体的政策に展開します。それは省エネ義務の強化、つまり削減目標とか報告義務、排出量規制、省エネ、再エネの補助金や規制、その結果、企業はそれに対応する義務が発生します。
守らないと行政指導とか補助金がもらえないとかですね。
言い換えると、怪しげな有益な環境側面論と違い、詳細なバックデータを基に国家の方向を決めるわけで、特段自社が支障なければそれに合わせることはおかしくありません」
「怪しげな有益な環境側面論とはひどい」
「怪しげな有益な環境側面についてお話をしたい。
三部作の本にありました有益な環境側面の例ですが、エアコンを止めて扇風機にすると省エネになるから有益な環境側面という話がありました。
扇風機を止めて団扇にすると団扇は有益な環境側面になるのでしょうか?」
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改善か、改悪か
? 負のスパイラルじゃね~か | ||
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| 暑くても我慢するのが最高に有益な環境側面なのか? | ||
「エアコンより扇風機は省エネだから、有益な環境側面と言ってもおかしくないね」
「なるほど、そこに快適さは考慮しないのでしょうか?
労働安全衛生などは評価しないのですか? 働いている人が休憩時間にホッとすることは不要なのですか?」
「そういうことは計算には入っていないね。厳密には考慮すべきでしょうけど」
「なるほど、それでは別の話をします。三部作に載っていた別の小話です。
白熱電球を蛍光灯電球に替えることは有益な環境側面だそうです。実はこれ私どもの関連会社で審査員が語った有益な環境側面の事例です。
今、EUでは鉛とか水銀を使用禁止にしようと検討がされています。
それが通れば蛍光灯電球は有益な環境側面から一挙に有害な環境側面に落ちますね」
「蛍光灯電球を禁止すれば、どうなるのかな? また白熱電球に戻るのか
「LEDの電球・・・正確には電球に物理的に互換性のあるLED照明機器が登場するでしょう」
「LEDか~、コスト的にはどうなのかな」
「論点を戻します。
ええと、野沢さんが蛍光灯電球は有益な環境側面とおっしゃいました。
どの時点で蛍光灯電球は有害な環境側面になるのでしょう?
一瞬で変わるのですか? それは環境側面評価の、どの点数が変わるのでしょう。
もしかして今現在、有益な環境側面と評価しているのは、そもそもおかしいのではないですか?
野沢さんの見解をお聞きしたいです」
「有益な環境側面とは概念なのですよ。蛍光灯電球を有益な環境側面と挙げたのは一例としての意味であって、蛍光灯電球が理想であることとは違います」
「野沢君、ちょっと違うのではないかな。環境側面評価のとき法規制があるかという項目がある。そこで規制があれば点数が付けられる。
水銀は今現在、使用可だ。だから点数が低い。EUが規制すれば全世界に波及するだろう。そうすると日本でも法規制が厳しくなり使用禁止になる。となると評価点は最大になるはずだ」
「なるほど、そうですね。法規制が変われば評価点が変わる」
「それはお考えがおかしくないですか。『著しい環境影響を持つかまたはもちうる環境側面を著しい環境側面(ISO規格4.3.1)』とするのではないですか。
法規制は4.3.2で評価しますよね。それに環境影響は法規制があろうがなかろうが変わりません。
鉛は江戸時代では白粉に、古代ローマ時代ではワインを甘くするのに使われました。その頃は法規制がありませんから、有害な環境影響はなく無害だったのですか?。
有益な環境側面とかいうものはそんないい加減なものなのですか?」
「環境影響は法規制と無関係です。野沢さんの説明は矛盾していますよ」
「西東さん、どういうことになりますかね?」
「・・・・・・」
「本題に戻りましょう。
どうでしょう、西東さんは有益な環境側面は規格要求にはないが、顧客から要求されて、審査の際に改善を希望するために不適合にしているという論理だと考えます。
しかし顧客から要求されたという事実もはっきりしませんし、要求され追加されたものはアドバイスとして不適合は出せないということでよろしいでしょうか?」
「そもそも有益な環境側面とは、概念だ。概念を説明したときに挙げた事例をとやかくいってもしょうがない。
審査では審査員は企業の方々を指導する責任がある。だから規格要求を逸脱しても、改善をしてもらいたい。そういう理由で有益な環境側面という考えをしているのだ」
「論点が変わりましたね。ではお伺いしますが、重大なことです。
審査員は企業を指導するとおっしゃいました。どのようなことを指導されているのでしょう?」
「そりゃ、あれだ。省エネとか化学物質を減らすとか多方面にわたる」
「それをどのように指導してくれるのでしょう?」
「省エネ方法なら他社の事例を伝えるとか、廃棄物削減もそうだな、新しい技術とか、廃棄物処理業界の情報とか・・・そういうことだ」
「審査員がその分野で最新の研究をしているのでもなければ、はっきり言って全く役に立たたず、情報とも言えないものです。
我々、企業は死に物狂いで省エネをしよう、使用する物質を減らそう、リサイクルしようと頭を絞っています。また同業他社の情報はスパイまではしませんが、廃棄物処理業者とか部品メーカーなどと交渉しています。
審査員の方が話すことなどカビが生えた情報です」
「本当だよね。審査員のアドバイスって本当に価値があると思っているのですか。会社の人は義理で感心した顔をしているだけですよ」
「一番困るのは法規制ですね。法律も知らずに違法だとか言わないで欲しいですね。
廃棄物処理でも危険物の扱いでも公害防止でも、審査員が合法・非合法を語るのは非常に危ないことです」
「正確には民間人が合法・非合法の判断をしちゃ違法ですよ。
斑目先生そうでしたよね」
「お金を取って相談に乗るのは弁護士法違反です
もちろん審査のルールで問題なく、語っていることに間違いなければですが」
「具体的な問題を言いますと、審査の場で会社の現情が違反していると断定され、不適合を出された。
その後、関係官庁に相談に行くと全くの合法だと言われた。そして行政でもない者が合法・違法を判断することが違法であり、それを信じたことを叱られました」
「それならはっきり言って審査員を訴えるべきでしょうね。行政から厳重注意を受けるでしょう。告発まではされないとは思いますが・・・刑事罰はなくても、会社は審査員と認証機関に委託契約違反で損害賠償請求でしょうね。
もし受入れて違反すれば会社の責任です。示唆した人に罪を問うのは難しいですね。たぶん言い逃れると思います。
正しい対応としては、審査員に限らず、行政以外の語ったことは参考にするだけを徹底する。動く前に行政に確認することですね」
「話は分かりますが、不適合を出されて異議を申し立てもできなければ、どうすりゃいいのですか?」
「本当にあった話ですが、消防法違反だと言われました。すぐさま消防署に相談に行くと、それは法改正があったとき、過去のものはそのままで良いという通知が出ていて合法だと言われました。
審査の場に戻ってその旨伝えると、審査員は『それは消防署が間違っている。私は消防署より詳しい』と言って不適合のママお終いでした。
ありゃ、どうすれば良いのですかね?」
「ちょっと待ってください。審査は法廷とは違いますよ。審査は現状を把握して改善を考える場だと考えています。
合法か否かと議論になると困ります」
「困っているのは会社側ですよ。
審査で法違反だという審査員は多いです。審査員が語ったことについては、責任を負って欲しいです。法違反であるなら重大問題です。適当に発言して後は知らないでは困ります。
まして不適合という置き土産を残していくのですから。
西東さんの認証機関でもありましたよ。廃棄物の処理方法が違法だと不適合にされ、その後、県の廃棄物課と相談したら全く問題ないと言われた。
しかし認証機関は不適合扱いを変えず、是正しないと認証を継続しないと強硬だ。言われるとおりに是正したら、今まで合法だったのが違法になってしまう。
この責任を、どう取るのですか!」
「・・・・・・」
「それは有益な環境側面とは違いますね」
「違います。しかし規格を間違えるか、法律を間違えるかの違いで、問題の本質は同じです。そして被害を受けるのが会社なのも同じです。
まあ規格を間違えるくらいなら、違反よりはましか、アハハ」
西東、野沢、安達の三人は面白くない顔をしている。田中、金子、山口の三人も面白くない顔をしている。だが面白くない中身が全く異なっている。
斑目はとりとめのない議論を聞いていて、ISO認証というものの、いい加減さを強く感じた。こんなビジネスに弁護士が関わるのは、自らを貶めるものだ。関わってはいけないと思う。
押田は内心思う。業界の重鎮とみなされている西東さんはISO規格の権威と思っていたが、こりゃ、全然じゃないか。ISOに縁のない弁護士の方が規格を読むのは正しくて、会社の連中も環境管理の経験はあるし規格の理解もはんぱじゃない。
マネジメントシステムなんて、要するに、仕事の仕組みをしっかりすることじゃないか。
審査員は企業を指導するなんて、思いあがっているのが最大の問題だ。
ともかくこの場は丸く収めて、今後、この問題をどう扱うかが自分の課題だな。
本日の誤記
タイトルが「西東さんの逆襲」でしたが、これはネーミングを誤ったようです。
正しくは「西東さん逆襲にあう」それとも「西東さん、討ち死にす」が良さげです。
タイトルをミスすると、映画でも小説でも流行りませんから熟考が必要です。
2015年以降は、ISO認証は枯れた仕事になったようで、認証するのも審査を受けるのも真剣さがなくなり、ルーチンワークとなったようです。ISO審査で大騒ぎすることもなくなった。ISO認証に期待を持たなくなったのかもしれない。
フランシス・フクヤマに「ISO認証 歴史の終わり」という本でも書いてもらおうか。
余談ですが、規格要求とか規格の変遷も適当に書けませんので、過去の認証の規格などの変遷を調べるのが一苦労(2~3時間かかった)でした。
下に作成した変遷図を上げておきます。もちろん流れは知っていましたが、Guide62やISO14010が何年廃止だったのかなんて、頭になかったです。
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おばQさま いつも有難うございます。 何度か書いておりますが、幸いにも「有益な環境側面」や「勝手な法解釈」に苦しめられた事の無い私にも、返り討ちにあう西東さんに快哉を叫んでしまいました。 >余計なお世話? ISO審査における「会社を良くする審査」 始めから、これが正義だと信じて審査が行われるならば、無謬性が前提なのでしょうか。 ISOの要求にもなく、受託契約にも無い。 もしかして、委任契約で結果責任を負わない事という理屈か? さて、いつもの本旨と関係ないツッコミでご教示ください。 契約文書と契約の違い、なるほどと勉強になりましたが、「契約文書」に相当する英語ってあるのでしょうか? 契約書ならばAgreementとかContaractとなりますが、それより広い意味だと、Contract Documents、MOUとか色々な言葉があって、一つでまとまらないような気がしました。 法律用語って、近代法が入る時に英語等から日本語が一対一で作られたように思っていましたが、そうでない言葉もあるのでしょうか? ご教示頂けると嬉しいです。 |
外資社員様 毎度お便りありがとうございます。 「有益な環境側面」を読んで笑っていられる方は「本当か?」とお思いでしょうし、カッカしている方は凶状持ちかもしれませんが、悔し涙で枕を濡らした身としては死ぬまで許せません。 余計なお世話のことですが、まったく理解不能です。無責任なことを語ってメリットがあるのか、楽しいのか理解できません。 高い金をとっているから、何か言わないと申し訳ないと思っているのか、学のあるところを見せつけたいのか、真に指導しているつもりなのか、分かりません。 それこそ「オウムのことはオウムに聞け」と同じく、「審査員を理解できるのは審査員だけ」なのかもしれません。 と、それは置いといて、ご質問の件、日本の場合、契約文書と契約の違いはいろいろな文でそういう意味で使われているのを確認しました。 では英語でどうかですが、Google伯父さん(U.S)に聞いてみました。契約書はcontractかagreementが使われるが、いずれも契約の意味と契約書の意味があり、はっきり契約書とするときはcontract documentと記すこともある。 contract documentには契約書の意味と日本でいう契約文書の意味があり、明確な使い分けの基準はなく曖昧である。広い意味のcontract documentsというと、契約書本体、附属書、別紙、注文書、correspondence等を含むとありました。 日本ほど明確な基準はないようです。 |
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