注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
2002年7月12日である。台風6号は11日夜半、北海道紋別市付近でオホーツク海に抜け12日未明温帯性低気圧になった。
台風の被害はどうかといえば、どうなのだろうか?
元の歴史では死傷者は死者6人、行方不明1人、負傷者39人であった。それに対して予め上陸の日時も場所も、豪雨も洪水も分かっていて対策した結果は、死者3人、負傷者20人と、少し減ったものの画期的に改善されたとは思えなかった。
作戦が悪かったのか、実践が悪かったのか、今回程度なら良い結果なのか?
台風一過から10日、関係部門が集まって反省会だ。
大臣が来ている省もあれば、実務の最高責任者のところもあり、いろいろだ。M研は全員が顔を出している。
「皆、各部門とも頑張ってくれたが、思ったほど成果がなかったというのが私の感じだ。批判、非難はおいといて、反省とか原因について自由に発言してほしい」
「内閣官房から情報提供を受けたが、もう少し詳しい情報が欲しい。どこどこ地区で洪水が起きるというのでも、右岸なのか左岸なのか不明だった。また場所の特定もされていない。
現場で対応する身としてはもっと具体的に知りたい」
「洪水が起きると分かっていても、避難命令ができないのが困る。我々に言えるのは避難してくださいと・・・口調はともかくお願いするしかない。あげくに数時間後には助けてくれと電話が来た」
「それはあるね。自衛隊は出動したくてたまらないのだが、県知事から要請がなく地団駄踏んだところもある。
現場指揮官の判断で要請なくても出動できないものか?」
「クーデターだなんて言われますよ」
「確かにな、風雨の中で反論する人はいないだろうが、国会とか新聞で叩かれるだろう」
「私は事前に地元の市町村を歩きましたが、どこでも注意喚起を本気で受けてくれません。私が浮いてしまいました。
基本的には政府が災害予報をしてほしいと思います」
「災害予報とは気象庁がするものだ」
「それは分かりますが、高いレベルの注意という意味で、発令するレベルを上げる必要があるのではないかな」
「災害予報というのは命令じゃないのです。住民に法的な避難の強制力はなく、対応しなくても罰則もない。避難活動とか防災活動に参加する、努力義務があるだけです。
それよりも一段高い避難指示であっても強制力も罰則もない
「避難場所は予め決めていて用意をしていたはずだが、避難者は移動とか問題なかったのか?」
「避難所の設定を洪水の恐れのない場所に限定していましたから、安全の問題はなかったですね。ただなかなか避難してくれないのが問題でした」
「小中学校の教育で災害時の避難を指導して徹底できないかな」
「細かく見るとペットの同行避難を求める人が多かったですね。少子化の影響かな?
農業関係だと乳牛がいるから避難できないという人もいた」
「現状の避難場所では、そこまで面倒見られないというのも実態だ。
人の命も盤石でないときにペットと言われても・・・」
「まあ、時代ですから、これからはペットの対応も重要でしょう」
「ペットと言っても、犬猫ばかりでなくウサギから熱帯魚からいろいろですよ」
「うーん」
議論のはては
その後のM研である。台風一過後では初めてだ。
先だっての会議では、M研はもっときめ細かい具体的な情報を発信すべき、という宿題があった。
要するに今回、M研が提供したの情報では足りないということだ。
「佐川さんにとっては、30年も前のことですから、うろ覚えでしょうね」
注:佐川は2023年から1993年に戻り、今は2002年である。だからすべてタイムスリップする以前の記憶は30年前のことになってしまう。
「確かに・・・、正直言ってお役御免を頂きたい」
「佐川さんから内閣官房に、出向を売り込んできたって言うじゃないですか、今更逃げられませんよ」
「そりゃ人聞きが悪い。売り込んだのは吉宗機械ですよ。私の情報を絞り取ったから、もういらないとこちらに押し付けたんでしょう、アハハハ。
しかしながら給与は今も吉宗機械が払っていますし、勤務評定も吉宗機械です。政府としては損はしていません。
山田危機管理監より、吉宗の人事に尻尾を振る方が評価が上がるのですよ」
「それは私も一緒ですよ」
「おいおい、私は毎期、伊藤君も佐川さんも最高の評価を付けて出向元に出しているよ」
「冗談抜きに、記憶を取り戻すためにも皆さんからいろいろ質問してくださいよ。
例えば2002年に何があったと私が言ったなら、それの前後に何が起きたのか、他の出来事との関連とか当時の流行とか問われると、思い出すかもしれません」
「確かCCRって方法がありましたね
「問い詰めるというと犯罪者みたいじゃないか、思い出させると言って欲しい」
「本題に戻りますが、やはり予知と言うからには5W1Hが必要ですね」
「しかし台風が来るというとき、堤防が決壊するのが右岸か左岸が分からないと、対策できないということではないだろう。少ない情報をいかに活用するかという技術というか方法も考える必要がある」
「そうそう、私は北上川が決壊すると聞いて、岩手県とばかり思っていた。自分の選挙区では被害は出ないと思い込んでいた。だけど宮城県側でも小規模ながら洪水が起きている。
佐川さんも報道とかを見聞きしているのだろうけど、被害が小さいところは報道さえされないというフィルターがかかっていると自覚しないとならない」
「佐藤さんのところの被害はどうだったの?」
「数十戸の集落が床下浸水した」
「それじゃ報道しないわね」
「まあ、今回は選挙区を歩いて、今年はもう台風シーズンになったから注意しろと歩いたことは、地元では噂になったそうです」
「それは良かったじゃないか。仮に行かなかったなら・・・待てよ、台風が過ぎてから地元に行ったのかい?」
「いや、行っていない。行かないと不味いよね。
ちょっと待て、秘書に直近でいつ行けるかと、向こうへの連絡を取ってもらうわ」
佐藤はその場で携帯電話を取り出してかける。
「伊藤君、少しの情報から、より多くの情報を拾うという手法があるのかい?」
「先ほどCCRということを言いましたが、そういう考え方もありますね」
「CCRってどんなものですか?」
「心理学や記憶取り戻すのに使われる手法です。京都旅行に行った人に『京都はどうだった?』と聞くと、『良かった』とか『お寺ばかりだった』とかでおしまいです。
でも京都のお寺はどうだった、何が良かったのか悪かったのかと、セグメントを区切って聞けば、相手の答えは豊富になる」
「それは警察の事情聴取のテクニックだね。風貌はどうだった? と聞いても曖昧模糊だ。
髪の毛の色は、長さは、くせ毛かストレートかパーマか、と聞くと相手の記憶を呼び起こせる」
「それは記憶を思い出させるには有効かもしれませんが、元々書いてないことは分かりませんよ」
「二つの観点がある。
ひとつは佐川さんが『何月何日地震が起きる』と書いても、実はもっと深層には記憶が隠れているだろう。そういうものをすくいだせるはずだ。
これはまさにCCRそのものだ。
もうひとつはひとつの文章を我々が突っついて、他の出来事と日時が近いなら関連とかその間の社会の風潮とかを得られるかもしれない。そこから一読しただけではつかめない情報が得られることもあるだろう」
「なるほど、今までは私が何か言うと、そこからスタートしましたが、その記述を検証というか吟味するというステップがあるべきですね。
それによって私の勘違い、記憶違いも見つかるかもしれない」
「なるほど、これが三人寄れば文殊の知恵という奴ね」
「ちょっと思いついたんだけど、今回は佐藤さんも総務省主催の動きも自分が考えて動いたわけだ。
そうではなくて、当事者に考えさせるという方法もあるよね」
「当事者に考えさせるとは・・・・・・今回だって消防庁とか防衛庁も呼んで検討を進めていますが?」
「例えば佐藤さんが地元に行って、市町村長に会ったとき、今年は台風が早くからくるから注意しろというのではなく、過去に大雨が降って洪水が起きたことがあるか、それはどこか、今は大丈夫か、決壊したらどうなるか、避難が必要な集落はどこか、避難ルートは、避難場所の布団や食料はどうなのか、そういうことを聞けば、相手に考えさせることができるんじゃないかな」
「さすが鳥海さんね、素晴らしいアイデアだわ。
そういう問いなら、決壊するのが右岸ならどうか、左岸ならどうかを当事者が考えるでしょう」
「その場合は市町村長に予知されている情報を知らせないとダメなんじゃないか?」
「仮定の話でも良いでしょう。例え話でも、受け止め方が真剣になりますよ」
「ところで、今、問題になったのは、行政が避難を命令できないことだ。被害が生じるところに住んでいる人たちに避難してくださいとしか言えない」
「自衛隊も被害を見ていて助けたいのに、出動するとクーデターとみなされるからできないという」
「バカみたい」
「それが法律なのですよ」
「それは法改正をしてもらうしかありません」
「そういうとリベラルの議員はクーデターが起きると言い出します」
「ピースボートがソマリア沖で海賊に襲われないように海上自衛隊に護衛してもらったという話があったわね
好き勝手なことを言うなら、自衛隊に頼らないで話し合いで解決すればいいのに」
「災害の場合は強制的に人を動かす権限が欲しいよね。佐川さんが言うように法改正が正攻法だね」
「日本は人柱が立たないと改善が進まないからね」
「愚痴のこぼしあいになってしまったけど、まとめるとどうなるんだろう?」
「まず佐川さんの予知を皆で熟慮すれば、もっと情報が読み取れるのではないかということ、
災害予定地での行政の首長への話の持って生き方を考えること
法改正の要点をまとめること」
本日の嘆き
映画ではゴジラが出てくるとすぐに自衛隊が出動する。
ちょっと待ってほしい。現在の法律ではまず不可能だ。
「ゲート
モンスターが登場しても、自衛隊の武器が使えない。
そこで麻生太郎
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