タイムスリップ171 M研反省会

26.05.28

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。



2002年も12月になり街にはクリスマスソングが流れる。
M研が作られて半年が過ぎた。いかなる成果が出たのだろうか?
メンバーには代議士もいて、ほとんどの場合、登録した代理者が出席している。しかし、今日は年末で初年のまとめという意味でフルメンバーが顔を出している。


今回の登場人物(M研メンバー)
御尊顔 佐藤議員 鳥海議員 遊佐議員 山田危機管理監 伊藤事務官 佐川
御芳名 佐藤議員 鳥海議員 遊佐議員 山田危機管理監 伊藤事務官 佐川秘書
所属 安部派
M研幹事
森派 奥山派 内閣官房 森官房長官
職務 国会議員 公務員 政治家秘書

山田危機管理監が司会をしている。


山田危機管理監 「今年は佐川君の知識を活用するためにM研が創設された。ここ半年で、M研で驚いたこと、成功したこと、失敗したこと、何でも良いから発言してほしい。つまらないと思ったことがブレークスルーを(もたら)すかもしれない」

遊佐議員 「それでは私から、ドクター・マジックとか今村博士が事故や災害を予知・予言していますが、それぞれ無関係で相乗効果が見られません。
そういった方々ともっと協調というかコラボした方が、一般人への浸透が進むのではないでしょうか?」

鳥海議員 「おっしゃることは分かるけど、具体的にはどういう方法がありますか?
まさかこのメンバーが、ワイドショーに登場するわけにはいかないでしょう。秘密保持もあるし多忙だし」

山田危機管理監 「まあまあ、あまりネガティブなことは置いといて、いろいろ思いついたアイデアを出してもらおう」

佐藤議員 「災害予定地を、事前に訪問したのは私だけだったと思います(第169話)。
初めてだったので、どういうアプローチ法が良いか、何を言ったら良いか分からず戸惑いました。単に顔を出してきただけの感じです。
そういうときの実施事項を決めたマニュアルを作りたいですね」

遊佐議員 「あのう~、M研に所属している代議士の先生だけが、地元に行けるというのも不公平な気がします。
選挙区で災害が予想されている先生方に、内々で予知を知らせるというのはいかがでしょう?」

鳥海議員 「それはなあ~、自由党でも特定アジアの影響下にある人もいる。ましてや民衆党は中国や北朝鮮と密接だ。未来予測を知らせれば国会で問題になるだろうし、その情報は特定アジア諸国に流れるのはミエミエだよ」


皆がため息をつく


鳥海議員 「しかしいずれは災害を予知して予め対応していることは漏れるよね。警察、消防、自治体、自衛隊と人数が多いから、どこかから必ず漏れる。
そうなったらガス抜きは必要かもしれない」

伊藤事務官 「そこは今村先生などが、ニュースソースということで逃げられないですか?」

佐藤議員 「地震なら今村先生の予知ということで良いでしょうけど、台風とか大事件はどうします?
ミスター・マジックでは科学的な信ぴょう性に欠け、一般人を納得できないでしょう」

鳥海議員 「台風であれば気象庁の出番でしょう。気象庁の予報をもう一歩踏み込んでもらいたい。過去のデータの蓄積と因果関係の理解が進み、台風の進路や被害の予測がつくようになったとか(注1)

山田危機管理監 「確かにそうだ。というか天気予報に予知情報を少しずつ盛り込んでいったらどうかな。もちろんM研が決めることではないが、奥山総務相に提言しましょう」

佐川真一 「2003年のことになりますが、災害と言えるのは、三陸南地震、九州集中豪雨、宮城県北部地震(注2)・・・こんなものですか?
その対応ですが・・・」


山田管理監が以前、佐川が配った資料を引っ張り出して眺める。


山田危機管理監 「大泉首相が靖国参拝で揉めるとあるぞ」

鳥海議員 「首相の思いもあるでしょう。我々にどうこう言える問題ではありません」

遊佐議員 「佐川さんの記憶をまとめて、どんな問題になったのか首相に情報提供するということでよろしいでしょう」

佐川真一 「まあ、内閣が倒れるというほどの問題じゃなかったです。例によって共産党とか社民党、外国と言っても中国と韓国ですが、そこからの抗議です。
そうそう社会党は公用車で行ったことを問題としていました」

鳥海議員 「大泉先生は信念が強いから、気にもしないでしょう。今は拉致問題で人気爆発中ですしね。
私用車で行けば行ったで、警備上云々とケチをつけるでしょうしね」

山田危機管理監 「中国でSARS(サーズ)が流行するとあるが?」

佐川真一 「SARSとは新型コロナウイルス(注3)で中国で最初に感染者が発見され世界中に広まります。
全世界で感染者1万人弱、死者770人と言われます。日本では防疫が良いせいか、一人も発生しませんでした。海外旅行で感染した人がいた程度です。

同じようなものにCOVID-19(注4)がありました。これは日本も含めて、世界中で猛威を振るいます。とはいえだいぶ先ですね」

山田危機管理監 「じゃあ、特にM研で対応することはないか。
2002年でだいぶ経験を積んだと思うが、その延長で2003年は大丈夫か?
要するに発生災害の5Wを知らせれば、消防・警察・自衛隊で対応策が策定でき対応できるか?」

佐川真一 「はい、2003年はそれで乗り越えられると思います。
提案ですが、中越地震の対応を進めたいのです」


山田管理監がまた、佐川が配った資料を引っ張り出して眺める。


山田危機管理監 「ええと・・・中越地震・・・2004年の秋ですね(注5)
1年以上前から手を打たないと不味いか?

遊佐議員 「ものすごい地震ですね。震度7というのはめったにないでしょう」

佐川真一 「それもありますが、いろいろ訳ありなのです」

鳥海議員 「ほうほう、訳アリとは、是非お聞きしたいですね」

佐川真一 「そんなに微妙なものではありません。一番被害の大きな地区はY村というのですが、既に合併の計画が進んでおり相手はN市で2005年の予定です」

鳥海議員 「ああ、そういうことか」

佐川真一 「もうひとつは新潟県の知事選は、現在の知事が3期務めたので引退し、来年、新人同士の戦いになります。
その後任知事の就任日が10月25日なのです」

山田危機管理監 「それは何か特別な日なのかな?」

遊佐議員 「あっ、地震が起きた10月23日は土曜日で、新知事の登庁は週明けの月曜日の25日なのです」

山田危機管理監 「えっ、偶然というかなんというか、そうなるとすぐには県知事が災害派遣要請を出せないか?」

佐藤議員 「知事が部下を掌握する時間もないでしょうね」

佐川真一 「状況として、Y村への外部からの道路と内部の集落間の道路がすべて通行不可となりました。また電気もつながらず、電話も不通です。携帯電話は村内の基地局がダウンしてますから、市街地を見通せる山頂に行かないと通じません。

そしてまた地震が収まったら終わりではなく、Y村周辺では山崩れなどが継続していました。避難者が集まりヘリポートにもなった校庭も時間と共に周辺から崩れている状況でした。

そんな状況でしたから県も状況を把握できなかったのです。救助要請がなければだれも動きません」

山田危機管理監 「おっと、佐川君の要望は、今から中越地震の対応をしておくべきということだったね。
それで今からどのような準備活動をするのかね?」

佐川真一 「いくつか考えていることがあります。まず規模が大きい。面積的には阪神淡路より広く、地震としても大きい。避難者の人数にしてもその移動にしても大変です。原状復帰も完全にはできない。

もちろん東日本大震災より規模は小さいですが、その予行演習という意味では十分価値があると考えます」

山田危機管理監 「具体的には?」

佐川真一 「ひとつ、避難者の人数と困難さから、地震発生前に地震が起きることを公表し避難をさせること。避難者の住宅なども事前に用意しておく。

ひとつ、地震が起きたら原状復帰というのが一般的ですが、それができないこともあるとはっきり断言することです」

鳥海議員 「原状復帰できないとは?」

佐川真一 「地震で山が崩れたりせき止湖ができたりは自然の摂理、それがそれ以降の当たり前の風景かもしれません。今までの産業とか生活を、取り戻すことができないこともあるということです。
もうひとつは過疎地ですから、復旧に数百億かかるなら手を打たないのが正しい選択でしょうね」

山田危機管理監 「分かった、で、具体的な方法も考えているのだろう?」

佐川真一 「はい、対策検討のアプローチ方法ですが、情報を公開するという前提で、自治体で関わる人たちによって、対策を考えてもらうのです」

山田危機管理監 「うーん、イメージがわかないのだが」

佐川真一 「災害の起きるY村の村長、合併を控えているN市長、そして県知事を集めて、情報を提供し、地元としての最善策を考えてもらうのです」

鳥海議員 「あれ、県知事は再来年の選挙で新人になるんだよね?」

佐川真一 「ええ、後任は今岐阜県庁に出向している官僚です。当選するのは分かっていますから、今から参画してほしいのです」

山田危機管理監 「かなり突っ込んだアイデアだが、そうしなければならない事情があるということだね?」

佐川真一 「そうですね。まず被害が甚大で、村の外部との交通が途絶えます。また村の集落間の交通も不可になります。
私の時代では自衛隊、警察、消防などのヘリをかき集めて3,000名を15キロ離れたN市へ運びます。大して距離がなかったから良かったですが、まともなヘリポートもなく、任にあたった人たちは大変だったでしょう」

鳥海議員 「地震が起きる前ならバスで移動できるか。
仮設住宅も予め建てておくのですか?」

佐川真一 「被災者住宅があるなら、わざわざ体育館に入る必要はないでしょう。余裕をもって事前に村人が自家用車で大事な荷物を運べばよいのでは」

遊佐議員 「阪神淡路大震災のときは、被災者住宅は場所がないために何十キロも離れたところだったり、くじ引きで元のコミュニティがバラバラになって孤独死が問題になったわね」

佐川真一 「そういう悲劇もありましたね。
それとY村は文化として闘牛があり特産として錦鯉があります。私の過去では地震でその多くが失われましたが、予め移動しておけば伝承できます」

山田危機管理監 「そのためには事前に公表したほうが良いということか」

佐川真一 「そう考えます」

山田危機管理監 「しかし予め手を打つなら、今の知事に参加してもらうことで良いのではないか?
緊急事態をなくせば緊急事態対応は不要だ」

佐川真一 「分かりました。
早速ですが、年明けにでもメンバーを集めてもらえないでしょうか。
こちらとしては今村先生も呼んで話をしたいです。科学的根拠のあるはなしでないと信用されないと思います。
県知事、市長、村長が理解してくれたら、今後は自衛隊や消防を集めるときにも参加してもらって良いと思います」

山田危機管理監 「これは自治大臣の仕事だが、今自治省の仕事は総務省だっけ?(注6)

佐藤議員 「私が段取りをつけましょう。自治体の首長を呼ぶには選挙区の議員が一番なので、あの地方選出の議員を引き込みましょう。
いよいよM研らしい活動ですね」

佐川真一 「佐藤先生、それは助かります」

佐藤議員 「向こうで会議をしますか、東京にしますか?」

鳥海議員 「こちらに来てもらう一択だ。東京に来てもらった方が彼らは緊張するだろう。向うで開催なら向こうの側近が周りにいるから面倒だし」

山田危機管理監 「なるほど、そういうこともあるのか。官僚経験がないから分からない
2004年の話になるが、中国人の尖閣上陸には、M研として、なにか対応するのか」

鳥海議員 「中国が領有を主張したのはもう10年前です(注7)それから今まで10年間、日本政府は何も対策していない。幸いにも中国も手を出してこなかった。

今からでも遅くないので、2004年の中国人上陸までに、例えば海上保安庁の巡回を増やすとか、灯台を設置すれば日本領土という意味合いは違うでしょうね。もちろん上陸したら不法入国ですぐに逮捕拘束です」

遊佐議員 「そうですよ、積極的な意思表示で海上保安庁の巡回と灯台が良いでしょう。
まさか野党も灯台設置にケチは付けないでしょう」

山田危機管理監 「それは官房長官に挙げておく」

佐川真一 「2年後といわず、今から実施してほしいです。上陸が2004年春ですから、今からなら1年半の積み重ねができます」

山田危機管理監 「任せろ。
スマトラ沖地震・・・これは一体どうしたものか?」

遊佐議員 「津波の影響は日本まで来なかったのね?」

佐川真一 「影響はありません。モルジブなどにいた観光客が被害を受けました」

佐藤議員 「地震発生時が分かれば、インド洋の周辺の諸国に注意報を出したらどうでしょう?」

山田危機管理監 「それで死者30万(注8)が半分になるかな?」

佐川真一 「津波を経験ていない人は津波の存在もその恐ろしさも知らないのです。マレー半島で海の水が引いて魚が跳ねているのを見て魚を取る人が多くいたという話が伝わっています。 象
海岸に繋がれていた象が鎖をつないでいた杭を抜いて山に逃げたのを見て、追いかけて命が助かったという話もありました」

伊藤事務官 「本当を言えば、津波警報ネットワークがなかったからだろうね。太平洋周辺で地震が起きると、太平洋側の国々に津波警報が出るけど、インド洋側ではそういう仕組みがない(注9)

遊佐議員 「まあ、それはそれとして、中越地震で地震予知をばらせば、スマトラ沖地震で予知を公にしても良いわけでしょう」

山田危機管理監 「それを決めるのは高度な政治的判断だから、まだ内緒にしておいてくれよ」

遊佐議員 「ハイ」


佐川は考える。代議士になるような人は(例外もあるだろうが)常識的で真っ当な人だからおかしな方向に進む危険は少ないな。
そして最大の願いだった、東日本大震災が起きても、原発の水素爆発を止めるのも何とかなりそうだ。



うそ800 本日の疑問


未来が分かるなら、事前に対策が打て被害を減らせるか、それはなんとも分からない。
東日本大震災のとき、今日のお昼に大地震が起きると知っていて、会社を休んで家の中を地震が来ても大丈夫なように手を打つ人がいるだろうか?

食器が全滅した 我が家では、食器棚の扉が中から押されて開き、中の食器が流れるようにあふれ出し、瀬戸物は皆割れた。そのとき家内は手の出しようがなく見ていたという。
もちろん私はいなかったから、翌日帰宅したとき家内から聞いたことだ。

地震が来ると知っていれば、それを防ぐため食器棚の扉や引き出しをテープで固定したりしただろうか? そうすると棚ごと倒れたかもしれないし、正しい方法は分からない。
結果として怪我がなかったのだから良かったというべきだろう。



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文末脚注
  1. 人工知能の研究が始まった1950年頃を第1次AIブームという。1980年代にエキスパートシステムと呼ばれる特定分野での知識とルールから医療の診断などをしたのが第2次ブームと言われる。今流行りのディープラーニングの第3次AIブームは2010年代になってからである。
    この物語の2002年頃はまだ現代のAIは存在しない。


  2. ・三陸南地震(2003/05/26) M7.1、最大震度6弱、死者なし、負傷者200名弱
    ・九州集中豪雨(2003/7月下旬) 死者23名
    ・宮城県北部地震(2003/07/26) M6.4、最大震度6強、死者なし、負傷者700名


  3. コロナウイルスとは顕微鏡で見たとき、表面にある突起が王冠(コロナ)に見えることから名付けられたウイルスの総称。有害無害も多数あり、2020~2023年ころに流行したcovid-19ばかりではない。


  4. COVID-19は、COはコロナ、VIはウイルス、Dは疾患、19は2019年発見の意味だそうです。


  5. 中越地震(2004/10/23) M6.8、最大震度7、死者68人(関連死含む)、負傷者5000人弱


  6. 自治省は2001年の中央省庁再編のとき、郵政省と総務庁と統合され総務省となった。


  7. 中国の尖閣諸島に対するスタンスの変化
    • 1970年以前、中国(中共)は日本領土と認めていた。
    • 1971年国連の調査で「東シナ海の大陸棚に、イラクに匹敵するほどの大量の石油資源が埋蔵されている可能性がある」と報告された。
    • 1971年 台湾が領有権を主張し、すぐに中共が続いた。
    • 1972年の日中国交正常化のときも毛沢東も何も言わず、声明にも記されていない。
    • 1992年中国が領海法を制定し、尖閣諸島を領土として明文化した。
    • 2008年中国の公船が初めて領海内に侵入した。
    • 2012年日本政府による尖閣諸島の国有化表明を受け、中国が反発し、これ以降、公船の航行や領海侵入が常態化する。


  8. スマトラ沖地震の死者数はときとともに変わり、現在は死者・不明者合わせて23万とされている。


  9. 2004年のスマトラ沖地震後にインド洋津波警告・緩和システム(IOTWMS)が作られた。







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