注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
6月初め、M研の例会だ。久しぶりに全員集まって話し合う。
衆院議員の3名はもちろん多忙極まりない。しかも今年はM研で地元に災害や事件が予知されていると、その前倒しの対応のために何度か地元入りしているから、輪をかけて忙しい。
| 今回の登場人物(M研メンバー) | ||||||
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| 御芳名 | 佐藤議員 | 鳥海議員 | 遊佐議員 | 伊藤事務官 | 佐川秘書 | |
| 所属 | 安部派 M研幹事 |
森派 | 奥山派 | 内閣官房 | 森官房長官 | |
| 職務 | 国会議員 | 公務員 | 政治家秘書 | |||
「佐川さんはだいぶ出張してましたね。新潟にいたと聞いてます」
「一番被害が出ると予想されるY村から支援を要請されました。理屈も実践もとなると佐川さん一択です」
「村長が困っているというので、向うで対策の相談に乗ってきました。
いろいろありましたが、自治体首長の決断力に問題がありますね」
「まあ、このご時世ですから、なにがあっても責任問題になりますからね」
「地震発生日は予知されているから、発生前に避難してほしいと総務省での打ち合わせ(第172話)でもあったと思うけど、その決断ができないのですよ」
「ということは、黙っていて地震が起きてから避難するということ?」
「そういうこと。その理由は事前避難することを説得できないというのです。地震が起きれば否が応でも避難しなくちゃならない、そう仕向けたいのです。
でも皆さんも現地に行かれたでしょうけどヘリが降りられるところが何カ所もない。だから半分以上の集落の人は、近くのヘリが降りられる集落まで移動しなければならない」
「あの山道で、実際には地震で通行できなくなるでしょう。最悪、徒歩で山越えになりますね」
「村長は、それを村人に説明するのを嫌っていたのです」
「じゃあ、どうするの?」
「地震が起きてしまえば、ヘリで避難するためには移動しなければならない。それは誰も否定できないことだから、そのほうが村長は責任を負わないで済むという考えなんだ」
「なんというか・・・ずるいというか無責任というか」
「あの場で私が事前に避難するしかないと説明して、それを村民に説明するように頼んでいたはずだが」
「山田管理監から頼まれたこともせず、自分が説明すると責任を追及されるから内閣官房に説明者の派遣を依頼したのです」
「へえ~、そうだったの。電話では、避難についての計画策定について指導してほしいという話だったけど」
「総務相の打ち合わせからまったく進展がありませんでした。大分時間をロスしていますから、臨時村議会を開いてもらいました。
村会議員12名全員が集まってくれて、予知の説明と安全な避難を説明したところ、議員全員が事前避難に賛成され、村長が半月も情報を流さなかったのは怠慢だと、議員たちに吊し上げされていました」
「あの村長は今後、要注意だな。こちらからの情報や指示が握りつぶされて、死傷者が出てからでは取り返しがつかない」
「普段、長閑な田舎の首長は、切羽詰まった事件とか災害がないのでしょう。
議員たちが心配していたのは、避難が恒久的なのかというです」
「佐川さんの世界では復旧したんだよね?」
「そうです。一応なんとかなったのは3年後で、村に戻った人は2200人、掛けた費用は中越全体で3,000億といいます。
その他、住宅の支援金として一戸あたり400万の助成があったそうです」
「村1つ復興するのに数百億・・・人口割すると一人200万プラスその他の援助か
日本が豊かだからこそできる話だな。そう言えばいろいろ言われるだろうが、それを忘れてはいけない。
これは一つのモデルケースだが、これからも十年に一度くらいの確率でこういった災害は起きる。日本の地理的な宿命だ。
被災者もその他の国民も、しっかりとそれを理解しないとならないな」
「管理監、それを言うのはアブナイですよ」
「この場にいる誰もが、思っていることでしょう。
日本が豊かだからこそできるということを、納税者も被災者も理解しなければなりません。ましてや政治家、自治体首長は肝に銘じなければなりません」
「まあ、マスコミや野党のいるところでは口を滑らさないように。
ともかく佐川君、お疲れ様でした」
「いや、そういうことは多くの人に知ってもらうべきです。支援しないという意味じゃありません。政治とはお金を動かすことです。
何をするにもお金がかかる。そういうことを知ってもらえば脱税する人は減るのではないですか」
「脱税する人を見る目が厳しくなるのは間違いないね」
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「さて、本日は2003年のこれからの確認と、発生がそれ以降でも今から手を打つ必要のある問題だな。
リーダー、進めてください」
「来月7月には、九州地方に集中豪雨があります。今年は梅雨明けが遅く、
日本海に梅雨前線が停滞して九州地方に記録的な豪雨が降ります。
洪水で浸水した家は数千棟で、死者は熊本県水俣市で土石流が発生し死者23名を出す。
さて、これにどう対応する」
「もう内々でできることではありません。関係自治体の首長、選出議員への情報提供などをすべきでしょう。
自衛隊の災害派遣も予め予定に入れる必要があります」
「だいぶ予知に基づく行動も積み重ねてきました。警察、消防、自衛隊で予知に基づく派遣のマニュアルを整備しておくべきです」
「これから事前対応を正規な手順とするなら、何らかの形で公表しておかないと不味い。ものによるが法改正が必要かもしれないな」
「今までは内閣官房、具体的に言えばM研から警察や自衛隊に情報提供も活動の指示もしていた。
これから予知対応で動く形にするなら、内閣官房(M研)は予知された発生事項を伝えるだけで、それ以降の活動は計画も含めてそれぞれの機関がすべきだろうな」
「でも危機管理監、警察や消防などの調整機能は必要ではないですか?」
「その調整機能は内閣官房なのかとなるとどうでしょう。内閣官房なら首相の仕事ということです。
そうじゃなくて、国交相なのか総務相なのかという気がしますね」
「M研でそこまで考えるべきなのか? M研は、予知が信頼できるのか、それが防災に活用できるかの検討だったはずです。
それについては総務省と官房長官で今後の方向を考えてもらいましょう」
「話は承った」
「話を戻しますが、九州豪雨により水俣市で崖崩れが起きて死者19名を出します
九州豪雨の死者23名のほとんどはここです。
何とか手を打ちたいですね」
「原因はなんだったのですか?」
「豪雨は引き金です。基本的に崩壊した斜面は浸水性が高い岩石と水を通しにくい岩石が層をなしていた。大雨で地下浸透した水によって層間が滑り多量の土砂が一気に流下したとされています」
「それじゃ手がないってこと? 予防処置は何なの?」
「危険なところに住まないことが第一です。まあ、それは簡単ではないから砂防ダム(谷止工)を作るとか」
「じゃあ、初めからそういうのを作っておけば」
「でも、そこが危険かどうかはなかなかわからないよ。現に崖崩れなんてめったに起きない」
「最近は土地開発などで適地がなくて、昔なら危ないと住まなかったところに家が建っているからね。そういうこともある」
「津波の場合もそういう事例がありますね。昔から家を建てるなと言われている場所に、家を建てて津波の被害にあう」
「じゃあ、水俣はどうするの?」
「事前に避難させましょう」
「それが良さそうだな。気象庁に警報を出してもらうのが一番簡単だ」
「気象庁が納得すればでしょう」
「気象庁は国交省か、国交相の出番だな」
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「7/26には宮城県北部に地震がある
予知によると幸い死者はない。これは理由があって、真夜中にマグニチュード5.6の前震があり、多くの人が目を覚ましたそうです。
そして翌朝、行政も一般人も地震に備えて種々点検したからと言われる。
本震は翌日夕方16:56だが、その時には点検や備えがされていて、効果があったとされている」
「一番は緊急時に何をするかを再認識したからじゃないですか」
「確かに事前に弱くても地震があれば、誰だって逃げ道とか持ち出すものを考えるわね」
「それが大きいでしょうね。でも、常に非常事態を考えるというか、身構えているわけにはいかないね。
月に一回避難訓練をするとかしないとダメかな」
「山田危機管理監、先ほどの水俣の崖崩れもそうですが、地震で死亡者がでるような規模のものは、事前に天気予報で取り上げてもらったらどうでしょう?」
「前から気になっているのですが・・・佐川さんの語ることは必ず起きる、これはもう信頼性は十分あります。
しかし佐川さんが忘れた、あるいは一般人として気にもしなかった、事件・事故・災害もあると思います。
公報されたことは全て起きるとしても、予知されなかった災害もあるとなると・・・佐川さんの予知を、天気予報などで広報することは問題にならないですか?」
「災害や事故での犠牲者がひとりでも減ったほうが良いと思いますが?」
「天気予報が外れたとき、責任を追及されないですか?」
「天気予報なら予報がはずれても免責ですよ、気象庁だけでなく気象予報サービスも利用規約で決めています
「晴と言って雨なのと、雨と言って晴なのと、どっちが悪いですかね?」
「ケースバイケースでしょう。地震が来ると言ってこないのと、地震が来ないと言ってくるのと・・・いや待てよ、地震が来ないとは言ってないのだから、外れたわけではないですよね」
「論理的にはそうかもしれないが、その予報のない災害で被害を受けたら、文句の一つも言いたくなるよね」
「でも天気予報のエラー率といったらけっこう高いよ
翌日の降水の有無で的中率は80~90%、それも大雨でも雨、小雨でも雨という判断基準でこんなものだ。雨が降るか否かだけでも1割から2割外れている。
週間予報になると降水の的中率は70~80%程度。2割から3割は外れだ。
桜の開花日は±3日なら80%くらいと高い。しかし梅雨明けの的中率となると、1週間くらい前にならないと見通しが立たないらしい梅雨明けの1週間前なら70%くらいで言えるらしいけど、半月先のことは見えないようだ
「でも天気予報が外れても文句を言う人はいないよ。いや、個人的に文句を言っても裁判とか起こさないでしょう」
「地震被害なら裁判を起こすかもしれないか・・・でも地震が起きると予報していなかったから損害賠償だ、というのが通用するとは思えないな」
「天気予報で語ったことは、天気の予報だけでなく地震にも適用されるのでしょう。なら良いじゃないか」
「これも政治的な判断が必要だな。佐藤議員は議員3人の見解をまとめてほしい。官房長官と国交相、総務相と協議が必要だ」
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「ええと、2003年はこんなものでしたか?」
「尖閣諸島に灯台を作るとか話がありましたね(第171話)。中国人が上陸するのが2004年3月だったと思います
何か手を打ったのでしょうか?」
「あー、すまない。報告するのが漏れていた。これは既に魚釣島には1978年から灯台が置かれている
ただ尖閣諸島には5島3岩礁があり、今まで灯台は最大の魚釣島だけだった。それで昨年は残りの4島3岩礁に灯台を設置している」
「ニュースなどで見た記憶がありませんが」
「中国を刺激しないように広報発表はしていないんだ」
「なるほど、やつらが来てみれば灯台が光っていると・・・」
「いやいや、上陸はしてないけど、領海侵入は今月から発生するよ。
灯台だけでなく、巡視船の巡回に入っているし、海上自衛隊も近くを通るときは必ず尖閣を周回することになっている。
P3Cも毎日哨戒飛行している
「佐川さんの時代より大幅前進ね」
「中国のすることだから油断はできないよ。いずれ来年の3月どうくるか?」
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「長期的な話になりますが、東日本大震災対応はどうでしょう?」
「私の方で実施しているものをまとめました。経産省が東日本にある原発すべての地震対策と津波対策を再検討することになっていて、それぞれ実施を進めております。
佐川情報で地震によって非常用電源停止や津波の影響があったところに対しては補強を予定しています。
福島の防潮堤は、完全に作り直すことで、設計を進めております。新しいものは津波高さ16mとしていると聞きます」
「東日本大震災の津波高さが14~15mという話だったよね(第167話)。16mで大丈夫なの?」
「16mより17m、17mより・・・という論理ですと、きりも限りもありません。未来の情報より1m余裕があれば良いという判断でしょう」
「とはいえ、メルトダウンしてしまったのに、改めて作り直すのに1mの余裕で良いのですか?」
「防潮堤を1m高くすると、全長1キロ半もの長さで上積みになり、その費用は何十億とかになるわけよ」
「詳細を知りたいですね」
「経産省で防潮堤の作直すことを検討した報告書があります。後で送ります」
「原発も重大ですが、人的被害も重大です。死者行方不明2万を一桁下げるプランはできたの?」
「これも総務省でいろいろ検討しています。死者の92%が津波による溺死、建物の崩壊による圧死が4%、火災による焼死が1%、そして年齢を見ると年齢と死者数は比例してます
「ということは、こちらも事前避難をしなければならないということですね」
「短期間、避難すれば済むわけじゃない。初めから避難所をしっかり準備して事前に避難させるしか無かろう」
「危機管理監のおっしゃることは分かりますが、その避難所の確保は大変ですね」
「でもさ、福島県の浜通り
原発の防潮堤そして非常用電源を強化すれば、あの避難はしなくて良かったわけだ。避難者への差別なども起きなかったはず
それを考えると海岸近くの住民を事前に避難させる方がおおごとじゃない。いずれにしても津波がくるわけで避難しなくちゃならない。
だからしっかりした避難所を作っておいて、事前に避難してもらう必要がある。
中越地震と同じだよ」
「危機管理監のおっしゃる通りです」
「これは今から公表すると問題が大きすぎる。福島原発の防潮堤建設を始めるとき大要を公表することになるだろう」
「今からの数年の間に家を建てる人も多いでしょう。そういう人から苦情が来ませんかね?」
「津波の話を聞いていれば家を建てるのを止めていたか・・・そういうことはどうしても起きてしまう。
政治家なら割り切るしかないよ。いずれにしても誰も不満がないようにというのは無理なのだ」
本日の悶々
私の人生でいろいろ事件も災害もあったが、一番大きな出来事であり個人的にもいろいろあったのはやはり東日本大震災だ。
丸の内の高層ビルから遠く千葉の石油コンビナートの火災を見たときは、日本はこの先、大丈夫かと思った。
姪がその子供たちを千葉に避難させたいと言ってきたときは、3LDKのマンションに義母、義弟夫婦、姪夫婦と子二人の計7人をどう入れようかと考えた。その後、来るのは子どもたちと姪だけになったがそれでも大変だった。
田舎では50数坪の家に7人住んでいたのに、78平米のマンションに9人住むというのは曲芸だ。
その子供たちもこの春、兄は大学生1年、妹は高校生2年だ。無事でよかったという思いしかない。
彼らは大震災の苦しみなぞ忘れて、のびのびと生きて欲しいと思う。
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