注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
2004年3月初旬
首相官邸には、官房長官、総務相、国交相、防衛庁長官、外務相が集まっている。
なお、防衛庁が防衛省になるのは、2007年である。
「さて、あと二十日か、奴らがやって来るのは
香港から出港すると言いますから、いつ頃ですかね?」
「距離はおよそ約1,100キロですか。佐川さんの話では、見た目かなりのぼろ船だったそうですから・・・速力は、まあ13ノットくらいですかね。通常の貨物船や漁船でなく、エンジンをパワーアップしてるなら20ノットくらいかな。
いくらなんでも、北朝鮮の工作船のように、40ノットはでませんよ。北朝鮮の工作船は小さいですから。大きな船になると大きなエンジン積んで馬力をあげても、そんなにスピードは出ません」
「1,100キロを13ノットというと何日くらいかな?」
「千百を1.8で割って13で割って、47時間、2日ジャストですね。
まあ、連中も余裕を持たせるでしょうから、出港は20日頃でしょう
「となると20日昼くらいから警戒を厳としたいですね。
防衛庁は哨戒機を飛ばすんでしょ?」
「もちろんです。日本のADIZ(防空識別圏)
「佐川さんの時代では、領海侵犯時点で見つけることができず、発見したときは既に上陸されていたそうです
だから絶対、上陸させたくない。領海侵犯時点で船籍と行先を確認して対処したいですね」
「了解です。最悪ボートで海岸に向かっているところで逮捕しましょう。
相手が苦し紛れに船の故障とか病気とか言い出してくれると、救助したことにできるから一番良い結末ですね」
「遭難した中国人を救助したことになりますか」
「まあ、そうは上手くいかないだろう。上陸前に密入国で逮捕するのを期待します。おとなしければよいですが」
「ともかく、上陸させたらまずい。最低でも上陸時点で逮捕でしょう。
関連省庁共に最善を尽くしましょう」
3月24日 首相官邸
首相、官房長官、国交相、外務相、防衛庁長官が揃った。
「経緯をまとめますと、防衛庁の哨戒機が23日午後ADIZの境界で当該の中国船を発見しました。尖閣諸島からほんの60キロほどのところでしたので幸運でした。
直ちに保安庁の巡視船が当該船の監視をし、領海に近づいた時点で領海侵犯をするなと呼び掛けました。
そのとき前もって尖閣諸島近くで待機していた巡視船が停船を命じた時点で、西に向けて転進し領海侵犯はありませんでした。海自の哨戒機は、ADIZから出るまで上空から監視して、去っていくのを確認しました。
なお、巡視船は尖閣諸島の周辺の警戒を継続しております」
「要するに、揉めることなく帰らせたということだね」
「今回は追い返したわけですが、これで終わりではないでしょう。今後、継続して監視と追い返すことをしなければなりませんね」
「ともかく中国のウェブサイトに『7人の中国民間保釣活動家が釣魚島の上陸に成功した』などと書かれずに済んだ」
「おい、防衛庁長官と国交相、北朝鮮にも十分注意を払って欲しいぞ。能登半島不審船事件は1999年、九州の工作船撃沈はたった3年前だ。これからもあるはずだ」
「首相が北朝鮮訪問されて雪解けが始まったかと思いましたが」
「冗談言うな。外交とは武力を使わない戦争だ。北朝鮮など全く信用できない。それが現実だ。
日本は海に囲まれているから常に侵入者、密輸などを監視してくれよ。
過失で侵入を許せば、担当部門や担当者を処分しなければならん」
「厳にします」
注:政府や行政の公文や発言で「厳にする」という言い回しがあります。言葉だけ捕らえると「気を付ける」とか「厳重に行う」という意味で、それに実効があるのかないのか分かりません。
それに関する解説か何かないかとネットでググると、公文書などに「厳にする」とあると、「今後は大目に見ない」とか「次回から罰を課す」という意味だそうです。
「ところでもう一つ重大問題があったな。政治家の年金未納問題の処置は、どこまで進んだのか?」
「厚労相担当ですが、報告を受けております。一言で言えば、野党が騒いでもすべて処置済と回答できるとのことです」
「本当か? 問題がいろいろあっただろう」
「そもそも問題が複雑怪奇・・・というほどでもないですね、年金未納が起きたのは制度的な問題が大きいのです」
「制度が悪いと言っても、その責任は与党だった我々にあることになるのだろう?」
「ところが社会保険庁のミスが発生した時の厚生大臣は、今民衆党の代表となっている鉋でした。
これから彼が国会で問題を追及すればするほど鉋の身に降りかかるという自縄自縛になるのです。自縛でなくて自爆ですか、アハハハ」
「ええと、橋下内閣のときか・・・、連立だったから鉋が厚生大臣だったのね」
「ですから、それが明らかになると、奴はこちらを追及できなくなります」
「そういうこちゃないだろう。悪は裁く、間違いは正す、それだけだ」
「まず未納議員に対しては、該当する与野党議員全てに、その旨の通知と対応手順を記した書面を昨年年末に送付しております。
それに沿って対応していただければ問題になることはありません」
「対応状況は?」
「我が党の議員は数名を除いて対応済です」
「数名とは・・・どうしてその方たちをフォローしないの?」
「入院中の高齢者など3名です。今更という気がしますが」
「いかんな、それについても早急に手続きをするように。問題は4月頭だろう、まだ1週間ある。
野党の方はどうしているのかな?」
「発覚したのは多数います。書面を送ったものの、手続したのかどうかは確認しておりません」
「いかんな、未手続が何名いるのか確認しておいて」
3月26日
社会保険庁の年金納入のコマーシャルに出ていた女優が、年金未納していたことが発覚した。それだけでなく確定申告で年金を納めたことにしていたことも発覚した
結果として本人の悪意はなかったとなったものの、年金未納者が多いことから年金納付の注意喚起コマーシャルは悪い冗談と言われ、評判を落とした。
4月、国会では年金制度改革の議論が始まった。
ここで民衆党代表の鉋が自由党議員に年金未納者が多くいて、自ら納付していない人が年金問題を語るなど笑止と追及した。
「我が党の調べによりますと、現内閣にも官房長官はじめ多数の未納者がいらっしゃるようです。まさに団子三兄弟ではなく未納三兄弟ではありませんか」
注:NHK「おかあさんといっしょ」で放送され大ヒットとなったのは1999年。この年金未納問題より5年も前のことだ。
鉋いや菅直人党代表が例に出したのは流行遅れもいいとこだ。
ワーッと民衆党の席から雄たけびが上がる。
「私も今、名前を挙げられた者ですが(笑い声が上がる)そういう事実はありました。しかしながら過去形であります。既に適切な処置を取りました。
その未納問題につきましては昨年より全議員について調査を行いまして、様々な事情により発生していることが判明しております。
団子三兄弟でなく未納三兄弟には、鉋代表、あなたもお仲間に入っておられます」
「なに 💢
私は当事務局から民衆党の〇〇議員が未納であったと聞いておりますが、それ以外は問題ないはずです」
「この問題は党派に関わりなく多数の議員に発生しております。昨年末でしたか、該当する議員に対しては注意喚起と是正方法をまとめた書面を送付しております。
〇〇議員はその通知をご覧になって対応されたと承知しております。
残念ながら質問者の鉋代表に置かれましては、私どもの通知を無視されたようで、是正されていません」
「なんだってえ!
「原因としまして国の制度に隙間があって、更に社会保険庁に不適切な処理があったなどの問題がありました」
「社会保険庁? 監督責任は誰だ?」
「その問題は橋下内閣のときに起きまして、当時社会保険庁は厚生省管轄でありました。
そのときの厚生大臣は鉋代表、あなたであります」
「なんだってえ!
「このように問題の内容、起きた経緯などは既に把握しております。
問題のひとつとしては、国会議員の年金制度が変わったことがあります。会社員や役員をしていた方は厚生年金に入っていましたが、議員の場合は国会議員互助年金にはいることになっていました。
これは20年ほど前の1986年に改正になりましたが、阿蘇先生のようなベテラン議員は切り替えのとき手続きが漏れてしまったと思われます」
官房長官は、その他、年金未納は2年以内に納付しないと、それ以降納付できない問題があること、保険庁側も強制執行などの方法を取らずに放置していたことなどを延々と語る。
鉋代表は、立ち往生してしまった。
要するに、問題提起した国会議員の年金未納は現内閣においては既に見つけて対策を行っていること、鉋代表をはじめ未処理の議員は、その通知を見ていないか無視して年金未納が是正されていないということである。
質問した翌日、鉋代表は未納の責任と過去に厚生大臣としての責任を取り代表を辞任した。議員辞職をしないのは謎である。
大山鳴動して鼠一匹ならぬ、大山鳴動して鉋一個であった。
10日も経たずに、年金未納問題は国会からもマスコミからも消え去った。
ただ内閣官房から未納議員に対して、その事実と対策方法の通知があったにも関わらず、是正しなかった未納議員に白い目が向けられた。
コマーシャルに出た女優が未納だったことに謝罪会見をしているのに、内閣官房から通知と教示があったにも関わらず、何もしなかったことが問題であること、かつ鉋元代表はそれを全く知らずに内閣の一部に未納議員がいると責めた。 そういう経緯から、鉋元代表は笑いものになっただけであった。
ひと月もかからず、年金制度改正は審議を終え立法された。
年金制度改革が終わって、首相官邸である。
首相、官房長官、国交相が雑談している。
「尖閣諸島の中国人上陸問題、それに続いて年金未納問題と片付いたが、予言者 佐川の霊験あらたかだな。
次なるご宣託はなんでしたか?」
「総理、気を抜かれては困ります。
7月には新潟県・福島県に集中豪雨があります
注:このお話は2004年である。その後2006年に栃尾市は長岡市に合併したので、今の地図には栃尾市はない。
「なるほど、それは激甚災害になるのだろうな」
災害が増えているのか、死者は増えているのか、被害額はどうかというのは重要な情報だ。
災害が増えているという人は多いと思う。
実際の災害死はどうだろう?

上のグラフを見ると、阪神淡路大震災と東日本大震災を除けば、災害は減っているとしか思えない。
日本は強靭になっていると私は信じたい。
それはコンクリートと公共投資が人を守ってきたからだ。「コンクリートから人へ」は間違いなのだ。
それは武田信玄を見れば分かる。人は石垣ではなく、城でもなく、只逃げ惑うだけ、情けは勝っているときしか味方ではなかった。
「総理、最近は激甚災害も大売り出しですね。激甚災害にならないのが珍しいほどですわ。
でも現実には災害による死者は減っています。被害金額はインフレとか建屋も家電も高額になっていることを考慮すると、変わらないようですよ」
「でも今年の台風はすごいです。9月末に台風21号が来まして死者26名・・・」
「それはまた犠牲者がすごいね」
「お待ちください。その次に台風23号が来まして、こちらの死者は何と98名です。
死者は九州、四国、中国地方、関西、中部、関東と20府県で出ています」
「それには例のM研が対応しているのですか?」
「もちろん消防や自衛隊は対応の協議をしております。
しかしM研は特にアクションは取っていません」
「M研はもっぱら中越地震対応か?」
「そうです。こちらの死者は68名・・・こんなことを言っては何ですが、中越地震対策にかけたパワーは台風対策にかけたパワーの数倍です。重み付けを誤りましたかね?
この決定はM研というか、山田危機管理監の決定です」
「理由はあるのだろう?」
「あります。
山田危機管理監を初め、研究会のメンバーは中越地震を東日本大震災の予行演習というか、さまざまな施策のトライアルととらえているのです」
「まあ、それはそうだろうな」
「台風は従来からの手法でも死者は減らせると見ているのです」
「それが正しい、いや最適な判断かもしれない」
「あるいは収穫逓減の法則で、台風には努力しても効果が少なく、地震特に津波は努力すれば効果が期待できると考えたか
露骨に言えば台風の死者98名をゼロにしても救えるのは98名。中越地震で東日本大震災の2万人の死者を大幅に減らせるかもしれない方法のテストをしているということですか?」
「なるほど、そういうことも考えていたのかもしれませんな。
となると一概にM研の判断がおかしいとも言えないわけか、政治家ならそういう発想、決断が求められますね」
「いずれにしても佐川氏の予言は有用だな。
ところで彼はそろそろ出向を解除して古巣に戻りたいらしい。官房長官は聞いているかね?」
「彼は内閣官房に出向しているわけではないので、聞いておりません」
「何を言ってるんだ、雇用主は森議員、あなただよ。彼は君の私設秘書なのを忘れたか。
もっとも人件費が100%出向元負担なら気にもしないか」
「すっかり忘れておりました。彼の仕事柄、官庁に出向とばかり・・・
ところで、その、彼は出向から戻りたいと?」
「まあ、こちらで強制はできないが話を聞いておいてもらえないか」
「総理のご意向は、彼に継続してM研にいて欲しいということでよろしいですか?」
「私はそう思っているが、君の評価はどうなんだ?
もう彼が過去に戻った2020年までの出来事は、すべて抜き取ったからもういらないならそれでも良い」
「彼は人間性も問題ありませんし、未来の記憶の価値だけでなく、企画、実行共に有能です。
内閣改造があって、私が内閣から離れても別に彼をM研に出すのに問題はないか・・・」
「まあ、今すぐではないでしょう。中越地震を片付けるまでには考えておいて欲しい」
本日の言葉
今読んでいる小説で「引き伸ばすのは良くない」とあった。
この物語は引き伸ばさず、切り上げようかと思っています。
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