タイムスリップ190 身の振り方4

26.08.24

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。



2005年11月のM研の例会で、佐川は11月で出向解除になって、吉宗機械の戻ることを報告して簡単に挨拶した。
メンバーは既に知っていたことであり、何かあったら内閣官房に呼ぶからと軽い。
その後で2006年のイベントについて議論した。

佐川にとってはこれが最後、他のメンバーにとっても今年最後、盛り上がらないこと、この上ない。2006年の活動は2006年になってからだと、皆、内心思っている。
どちらにしても2006年は世界を揺るがすようなイベントはない。メンバーの頭はリーマンショック、民衆党政権、東日本大震災の2008年からの対策で占められている。


11月16日終業前に佐川は山田管理監に挨拶する。
山田危機管理監伊藤事務官
山田危機管理監伊藤事務官
佐川は森官房長官の私設秘書ということになっているが、それは形の上だけ、お金の流れだけ・・・いやお金も流れていない・・・佐川が3年間仕事していたのは内閣官房の一室だが、行政組織とは無縁だった。内閣官房の職員から見れば、情報システムなどを入れたときメーカーの技術者が数か月常駐することもあり、そんなものと認識していたようだ。

山田管理監から森官房長官に挨拶しろと言われたが、恐れ多いので管理監から報告しておいてくださいとお願いする。

山田管理監の手足をしている伊藤さんにも挨拶する。
彼はまだ50前なので、あと5年はここにいるだろうという。出身が商社なので関連会社も取引先も多く、派遣元に戻っても、すぐに出向転籍で佐川と同じだと笑う。




12月17日、佐川は始業前に吉宗機械本社の経営企画室に顔を出した。 星山室長と中山顧問には先月末に辞令を受けたとき挨拶しているが、今日は具体的に何をするのか聞く。明日から何をするのか知らないと不安だ。


星山 「佐川君には未来知識を基にしていくつかの業務をお願いする。
ひとつ、経営企画室の下部組織となった未来プロジェクトのメンバーとして活動してほしい。することは情報提供と議論に参加することだ。
また既に未来情報を出し尽くしたとは思うが、更に漏れがないかどうか、未来プロジェクトの伊達君と共同で未来予測の一層の精度向上をお願いする。

星山中山顧問
星山室長中山顧問

もうひとつは、実はこれがメインの仕事なのだが、君を出向から戻すとき、内閣官房の山田管理監から従来通りの業務をお願いされている。それで君が所属していたM研の支援も頼む」

佐川真一 「内閣官房には呼ばれた時に参加するわけですか?」

星山 「露骨に言えばまったく従来通りに仕事をしてもらいたい。まあ、形上は経営企画室所属で会社の将来設計の情報収集をしてもらうということだ。

事情を話すと、君から出向を終えて戻りたいという意向も出していたし、先方は出向継続を希望しており、我々も君が政府機関でもないが私設秘書の立場でいるメリットはある。
それらを満たすようにと考えたということだ。
君が出向解除で経営企画室に移っても、従来同様の仕事をしてくれれば三方良しだ」

佐川真一 「じゃ、異動は名目だけで何も変わらないのですか?」

中山顧問 「費用も変わらず仕事も変わらないが、君の定年後の出向も見据えれば、この方が形としては良いだろう」

佐川真一 「出向できるなら良いですが、出向の口がないと、まさか定年以降も私を嘱託にして、内閣官房の仕事をさせるわけにはいかないでしょう。たぶん定年解雇になりますね。私としてはそれは困ります」

注:社員の場合、賃金を100%負担でも行政機関とか財団法人には出向させることがある。
しかし定年後わざわざ嘱託に採用して、100%出向元負担で出向させるのはまずない。私が知っているのは、ある特定の仕事を完了するまで某財団法人に出向していたケースくらいだ。


星山 「人事部も最悪の場合はそれも考えると言っている。何ならそれを保証する証文を書こう」

佐川真一 「そうですか、それならその証文を頂きたいですね。人事部長名のがほしいです」

星山 「じゃあ可及的速やかに用意しよう」

佐川真一 「それが保証されるなら、不安はありません。
ええと、霞が関で仕事するときは外出ですか?」

星山 「先方に常駐でも直行直帰でも構わんが」

佐川真一 「えー、ますます今までと変わらないですね。なんだか私がごねて皆さんに手間をかけさせたみたいですね」

中山顧問 「君は、今更、仕事しなくても給料をもらうくらいの貢献はしてきたからね」




佐川が思っていた異動とは全く違い、いや異動とは名ばかり形式だけだった。
伊達隼人
伊達
となると伊達と話して本音を聞こう。それと山口とも話す必要があるな。

異動の詳細を聞いてびっくりしたが、とりあえずひとつずつ片付けようと伊達を訪ねる。


佐川真一 「本日付けで、未来プロジェクトのメンバーになったのでご挨拶に来ました」

伊達隼人 「実を言って、それは先日来たときに知っていましたよ。
先日も話したように、佐川さんがいた頃と違って、年度ごとに起きるイベントと対策案を関係部門に伝えてということはもうしていない。
みなプロだから何が起きるかを聞けばどうすべきかを考える。それで各部門が策定した対応案の妥当性や企業全体を考えて適切性の評価をして、経営企画室に回すというルーチンだね。

だから佐川さんがそこに加わってくれれば、検証の精度がアップすると期待している。
だけどプロジェクトのメンバーが鳩首疑義をする必要性はない。各自が吟味して検討結果を提出してくれれば十分だ。もちろんフェイスツウフェイスの月例会は開催している」

佐川真一 「そのとりまとめは必要じゃないか?」

伊達隼人 「顔を合わせて議論する必要は少ない。一人の意見をメンバー全員に送ればそれについて全員からコメントがもらえる。
リモートワークの社内版だな」

佐川真一 「なるほど、それじゃ私もここに顔出すことなく、受けたことについてコメントを返信すれば良いということか。
実は内閣官房の方と切れるわけじゃなくて、今後も関わって行かないとならないそうだ。重点が向こうからこちらに移った程度と考えて欲しい」

伊達隼人 「そうなのか、それは知らなかった。
まあ月に一回の例会には来て欲しい」

佐川真一 「それは了解しました。
未来プロジェクトの成果は出ているのですか?」

伊達隼人 「今年(2005年)はテロが多かった。佐川さんが書いてくれたのは、発生した一部で日時もなしが多かったけど、テロの手口とかの例示が参考になって、当社社員が危険を避けた事例はいくつもあったと評価された。

それから原油価格アップ、アメリカのハリケーン・カトリーナ(注1)の情報は価値があった。ニューオーリンズの近くにウチの工場があるからね。
工場や商流に被害は出たけど、当社従業員への事前通知や防災品の支給などして、ウチ関係では死者は出なかった。

京都議定書の発効はうれしくないが、しかたない。まあ、具体的な規制はまだ先だし、細かいことは分からない。
そもそもアメリカが抜けたのだから意味はないね」

佐川真一 「じゃ、いよいよリーマンショックか!」

伊達隼人 「そうそう、それ、さまざまな対応のシミュレーションをしているところですよ」

佐川真一 「2020年以降はどう考えているの?」

注:未来プロジェクトは佐川が、2023年になぜか1993年に戻ったことで成り立っている。
ですから2023年以降の未来は分かりません。


伊達隼人 「正確に言えば佐川さんの予言は2022年までですよね。まだ17年あります。
その前に今未来プロジェクトのメンバーも経営層も、皆、代替わりしています。いや、あと東日本大震災を過ぎたら、未来プロジェクトの扱いが検討されますよ」

佐川真一 「まあ、そういうことだね」




伊達と1時間ほど話した後で山口を訪ねる。
出向先として柳田企画も候補になるだろう。そのためにはISO第三者認証について今後の方針を把握しておく必要がある。
なにしろ、今、当社のISO第三者認証を仕切っているのは山口だ。

山口 「佐川さんもいよいよ経営企画室入りですか。幹部へまっしぐらですね」

佐川真一 「冗談言わないでよ。私のような経歴の者が部長級になること自体異常なことだ。これ以上望むのは罰が当たりますよ。
ところで先日来たとき、山口さんは既に私の異動を知っていたの?」

山口
山口

山口 「もちろんですよ。移動の前に人事部の課長が佐川さんの在籍した部門を訪ね歩き、一緒に仕事した人たちにヒアリングをしていました。偉くなると徹底的な身体検査をするのですね。
もちろんそんなことをするのは部長級以上でしょうけど」


注:ここでいう身体検査とは健康診断ではない。政治家などで使う意味と同じだ。上級管理者への登用などの前に、本人や家族の不祥事、金銭トラブル、過去の素行などを調べて問題がないかを身辺調査すること。


佐川真一 「下山人事部長は私のことをよく知っているから、その必要もないだろうけど」

山口 「人事ですから個人の知識でなく、公式な記録が必要なのでしょう。
ところで今日は、これからの仕事の相談ですか?」

佐川 「そうそう、経営企画室への異動と言っても、そこの仕事をするわけじゃないのよ。
内閣官房へ出向していたけど、私の定年後の仕事を保証してほしいと言ったら、とりあえず本体(出向元の意味)へ戻すから、自分で行先を探せということらしい。
実際の仕事は内閣官房に出向していた時と同じことを、経営企画室在籍ですることになる。

それでさ、私が出向するなら、今までしていた仕事の延長で、柳田企画かなとおもっているんだ」

山口 「なるほど、それにしても柳田企画ということもないでしょう。
佐川さんの経歴からすれば、もっと規模の大きな関連会社に行けるんじゃないですか?」

佐川真一 「でも私にできるのは、ISO認証支援くらいだよ」

山口 「佐川さんが出向すれば管理職でしょう。ゆくゆくは経営層かもしれません。そう考えると社員が20名そこそこの柳田企画では、手合い違いかなと」


注:手合い違い(てあいちがい)とは、囲碁や将棋で力量が違い過ぎる対局のこと。そこから力量に不適切な仕事を与えることなどに使う。


佐川真一 「そういう発想は大企業病だよ。ところで先日の話(第189話)では、ISO認証よりもISO返上と言っていたけど、実際はどうなのよ?」

山口 「まだ活動は(しょ)に就いたばかりですが、基本的には無駄排除ですね。
本体だけでも9001・14001・27001など合わせると、今現在、認証費用だけでも年に2億6千万かかっています。その分の効果としては300億以上売り上げ増が必要です。考えるまでなくそんな効果はありません。

それに今どき認証を必要とする取引はありません。当社も関連会社でも建設業の許可を持つ事業所はたくさんありますが、正直言って認証なくてもビジネスに支障ありません(注2)
とはいえ慣性の法則で、返上は簡単に行きません。今までしたのは、工場をいくつか関連会社を数社、認証返上してデメリットがないかの確認をしているところですね」

佐川真一 「となるともう柳田企画の仕事はなくなるということか?」

山口 「そうでもないのです。ISO規格の第三者認証の価値は、ゴムの切れたパンツのように下がっていますが、会社のルールや仕事の手順を文書化するというのは本来必須です。
暗黙知から形式知は時代の流れです。

その他、製造条件記録、検査記録とか校正などはPL法からみで必須です(注3)
そういうことを考えると文書化された会社の仕組みを構築する必要は高まっています。現状を出発点としてまっとうなTQM体制を作ることは需要は大きいです」

佐川真一 「ということは」

山口 「認証は必要ないけど、仕組みは必要ということですね。
そこに柳田企画の道はあります。とはいえすべての関連会社のレベルアップが達せられれば、いつまでもということはないですが」




吉井部長、いや、今は吉井社長か? 彼は出向時の直属上長だったから、形だけとはいえ古巣に戻ってきたからには挨拶しておかねばなるまい。

吉井
吉井社長

彼は今、埼玉県に所在する関連会社の社長と聞く。片道1時間なら出張でなく外出で良いかな。
一応心配なので中山顧問に相談すると、気にせずに行ってこいと言われてお終いだ。
吉井社長にメールで挨拶に伺いたいとアポイントを取る。

工場は繁華街から遠くない街中にある。従業員は500人ほど、立派な中堅企業だ。ここを売って工業団地にでも行けば土地代が儲かると思うが、JRの駅近くで通勤が便利なので動きたくないのだろう。
公害とは無縁な業種だし昔からあるので、近隣からの苦情はないようだ。環境部門で働いていると、そういうことが頭に浮かぶ。

受付で社長にアポイントがあるというと、すぐに社長室に通された。


吉井 「やあ、元気そうだな。内閣官房で活躍していると聞いている」

佐川 「活躍といっても単に未来情報を提供しているだけですよ。もちろん未来のイベントに、どう対応するかの議論には参加していましたけど」

吉井 「経営企画室というと何をするの?」

佐川 「実を言って何も変わらず、内閣官房の支援が仕事だそうです」

吉井 「あー、それはあれか、定年前に出向先を見つけるためか?」

佐川 「ズバリ、そうなのですが、そう上手くいくかどうか」

吉井 saikoro.gif 「会社なんて進むたびにサイコロを振って、進むかふり出しに戻るかという世界だから、あまり先のことを気にしてもしょうがない」

佐川 「おっしゃる通りですね。
ともかく当面は出向していた時と同じことをするにしても、経営企画室に二三年いる内に出向先を探しておかねばなりません」

吉井 「俺んところを希望しても無理だぜ。まもなくNTTの電話回線がマイクロ波から光ファイバー網への切り替えが終わるところだ。
リストラせにゃならんかもしれん」

佐川 「ええと、全然知らない分野なのですが、どういうことですか?」

吉井 「遠距離の電話回線は、昔々は市内も都市間も銅線で繋いでいたが、1960年頃から都市間はマイクロ波通信に切り替わってきた。
そして1980年代半ばから光ファイバーに切り替わってきたのだが、来年くらいに光への切り替えが完了する」

佐川 「おっしゃることが全然分かりません?」

吉井 「ウチはNTT向けに導波管を作っていた。その仕事が10年くらい前に終わってしまい、とうとう補修部品の需要もなくなったということだ(注4)

佐川 「ええと私は専門的なことは知りませんが、2020年頃、御社の名前はよく聞きましたね。けっこう調子が良かったようです」

吉井 「そういう話を聞きたかったんだ。この会社は10年前まで、通信回線の中継器のアンテナ用マイクロ波導波管でウハウハだったので、先を考えてなかったのが問題だった。
これからどうなるのかな?」

佐川 「ええと、技術的なことは知りませんが、これから伸びるのは携帯電話とかスマホなどの移動通信機器です。当然使う無線は今はセンチですがミリ波まで使うようになります。そういった用途に導波管が使われるのではないでしょうか」

吉井 「スマホ? なんだそれ」

佐川 「iモードってありますよね、あのような中途半端でなく完全にインターネットに対応した小型の通信機です。電話、メールはもちろん、インターネットは全機能つかえて、音楽プレーヤー、カメラ、録音機、そういう機能満載の小型機器です」

吉井 「となっても携帯電話の数など知れているぞ」

佐川 「今は携帯電話とPHSだけですね。いずれ固定電話は企業や商店を除いてどんどん携帯電話に移ります。
今はNTT、1992年にNTTドコモ分社化しましたが、ともかくNTT一強です。ですが既に電話事業はNTT独占じゃなく自由ですから、これからはいくつもの携帯電話会社が登場し群雄割拠となるわけです。

当然それぞれが自前の回線網を構築しますので、小さなエリアを受け持つ基地局が多数必要となります。
ですからマイクロ波のアンテナとか、それにまつわる機器、部品メーカーにとって最良の時代になりますよ(注5)

吉井 「お前の話を聞くと楽観的に聞こえる。携帯電話の需要がそれほどあるのか?
キャリアが増えても、NTTの回線を借りるだけなんじゃないか?」

佐川 「2000年にDDI(第二電電)、KDD、IDOの3社が合併してauブランドになりましたでしょう。
そればかりでなく来年にはボーダーフォンがソフトバンクに買収されます。そして孫正義が携帯事業に力を入れ携帯電話の大勢力になります。
もちろんマイクロウェーブの周波数じゃあ、ありません。小型化、高い周波数用の技術開発は必要です」

吉井 「もちろんお前が見てきた未来なのだろう。そういう困難を打破して事業を継続発展させているのか。
よし、佐川、今の話を簡単にまとめてパワーポイント10枚くらい作ってくれや」

佐川 「分かりました」

吉井 「佐川の予言は外れなしだから、株も買っておくか。その情報も欲しいな」

佐川 「吉井さんならインサイダーにならないし、お金があるから強いですね」

吉井 「そういえばお前の話を聞いて、ドルを買ったのは10年前になるかな?(第53話)
あのときは300万くらい儲けた。今から間に合う儲け話はないか?」

佐川 「リーマンショックですよ。もう、あと3年後に迫ってきました。
直前に株の空売りでもしたらいかがですか? 日経平均が17,500位から14,000まで3日で下がりました。
実際は株価よりもひどく不景気になりましたね」

吉井 「そのうち本社に訪ねて行くわ、金儲け話をまとめておいてくれ、アハハハ

ところでISO認証はどうなんだ? ウチは工場がISO9001と14001の認証を受けていて、認証費用はQMSとEMSで、350万くらいかな。
しかし全く何の役にも立たないな。製品すべてがBtoBだが、客先はISO認証でなく、具体的な品質保証を要求している。つまり計測器の管理とか変更管理とかを具体的に要求する。
山口に聞いたら本体は返上方向で動いているそうだ」

佐川 「私も認証は無価値と考えています。客先から要求がなければ返上して良いのではないですか。
そして客先から認証要求があれば、該当事業だけ認証を受ければ金がかかりません」

注:1993年頃、ISO9001認証は、工場全体とか製品全体でするということはまずなかった。
客先が要求した製品とか一つの製品でも特定の客先向けだけ対応するのが普通だった。なぜなら余計な手間とお金を賭けることはないからだ。
ISO認証は会社を良くするためのものではなく、商取引の条件に過ぎない。


吉井 「大局的に見て、今後ISO第三者認証はどうなっていくんだ?」

佐川 「日本のISO9001の認証件数のピークは今年か来年ですね。ISO14001のピークは2009年。でも認証ビジネスの売上金額のピークは来年2006年くらいですかね」

吉井 「なんだって! 認証件数より売上が早く減るのか?」

佐川 「だって売上は認証件数かける単価ですから、単価が下がれば売上は減りますよ。
今、ISO認証機関にノンジャブといってJABの認定を受けない小規模な認証機関が増えてきています。また外国の認証機関の出先もありますね。ISO認証はどこでも同じですから、全体に審査単価が下がっていきます。
需要と供給の市場メカニズムはすべてに適用されます」

吉井 「本当かよ?」

佐川 「今まで審査一日の単価は15万程度だったでしょうけど、ノンジャブは10万そこそこでしょう」

注:2005年頃は、ISO審査1人1日で15万とか、高いところでは17万なんてところもあった。今はその6掛けだろう。
あげくに審査の夜は宴席を設けて去るときはお土産付き。お土産がないとお叱りをもらった。
認証ビジネスとはバカ騒ぎだった。


吉井 「ウチは吉宗機械の要請もあって産業環境認証機関に頼んでいる」

佐川 「あそこも良い認証機関とは言えませんね。初期的にいろいろ問題がありました」

吉井 「オイオイ、そういう認証機関を使えと言っているのは吉宗機械だぞ」

佐川 「まあ、そういうときもありましたが、今はそうは語っていません。今は山口さんが課長で仕切っていますので彼に確認ください」

吉井 「情報セキュリティとか事業継続マネジメントなども登場するらしいな。そういうものにはどう対応するんだ?」

佐川 「情報セキュリティISO27001は今年登場しましたね。これは時代が時代ですので認証必須になっていきます。とはいえ、何事も実質ですから、顧客データを扱うとかでなければ認証は不要でしょう。
事業継続マネジメントが制定されるのが2012年だったはず。そのとき我々はとうに引退していますよ。後進に任せりゃいいんです」

吉井 「後は任せたとは言いたくないな。後輩から問題ばかり残してくれたと恨まれそうだ。
無用なら早めに処理しておかないと」

佐川 「そんな形而上の意味のないものより、リーマンショック、民衆党ショック、東日本大震災対応を考えた方が会社に貢献しますよ」



うそ800 本日の思い出

2005年8月というと、アメリカのハリケーン・カトリーナ(注6)だろう。とんでもなく大きいハリケーンというニュースを見て、日本の台風の方がスゴイだろうと思っていた。だがその後の報道を聞くにつれ、確かにとんでもないと実感した。
あまりにも大きく避難する場所もないから、みんな車に乗って隣の州に避難する延々と続く車列が映されていたのを思い出す。

とは言えアメリカは広い。その翌月9月の頭に、オバQファミリー、つまり我が夫婦と娘・息子でアメリカ・ラスベガスに行った。
最初はデスバレー観光を予定していたのだが、大雨が降って観光できないと聞いて、ザイオン国立公園に行った。

ザイオン(Zion)はヘブライ語のSionの英語読みで、ガンダムのジオン(Zeon)と原語は同じである。
実はザイオン国立公園と命名されたのは深い意味があったのではなく、1909年国立公園に指定されたとき、客を呼ぶには呼びやすく神聖な意味があるから命名したという。


グランドキャニオンもいいけど、ザイオンもすごい。日本の国立公園とか名所旧跡と規模が全然違う。ところでグランドキャニオンは車で観光できるが、ザイオンは歩かないと雄大な景色を見られない。疲れた。

というのはどうでもよくて、ラスベガスではあれだけの被害を出したカトリーナの名は、口の端にも上らないのだ。
ところでデスバレーの雨も同時期なのでカトリーナと関係があるのかと思ったら、カトリーナと数千キロ離れているので無関係ないそうだ。



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文末脚注
  1. 2005年8月23日~31日に発生したハリケーン。バハマからフロリダ州、最後はカナダのオンタリオ州まで時計回りに5時から12時の進路で最低気圧902hPa、風速78mを記録した。中でもルイジアナ州やミシシッピ州の被害が大きかった。
    死者1,392人、被害額11兆円(当時のレート)で、アメリカの観測史上、最大級の経済損失と社会的混乱を引き起こしたとされる。


  2. 自治体が、入札時にiSO9001や14001を認証していると加点するという制度は、2000年過ぎからあった。
    国交相は2010年から、経審申請書にも「ISO9001の登録の有無」「ISO14001の登録の有無」という欄が設け、片方5点、両方10点とした。この制度は今も生きている。
    その加点欲しさに建設業ではISO認証が加速され、当時減少に移った製造業の返上数を十分補った。それは認証機関、コンサルの仕事を拡大した。
    だが数年経って今度は建設業の認証返上が始まった。もうわけの分からない時代である。


  3. 製造物責任法(PL法)が制定されたのは1995年であるが、その影響が下々に波及していったのは2000年以降だ。


  4. NTTが銅線からマイクロ波の無線通信に切り替わったのは1960年頃からで、1980年頃には完成した。1985年頃から光ファイバー網の施設を始め、2006年に完了した。
    1980~1990年代に田舎を走ると、パラボラアンテナ小さな鉄塔が至る所に見られた。2000年頃には見られなくなった。


  5. スマートフォンの通信が5Gになり、さらに次の6Gの時代には、電波の周波数はミリ波と呼ばれる超高周波へと移行します。ミリ波は通常の配線から電波となって逃げだしてしまうため、基地局や通信機器の中で、超小型の導波管が多数使われるようになってきている。
    スマホは容積が小さいこと、省電力のため導波管までは不要なことから2026年時点では導波管は使われていないようです。


  6. 実は私はカトリーヌと覚えていて、この文章を書くとき初めてカトリーナであることに気付いた。
    カトリーナの語源は古代ギリシア語の清純や清らかなを意味する「アイカテリーネ(Aikaterine)」で、女性の名前に使われた。
    それが欧州に広まり変化していったそうであります。
     ドイツ語圏  Katarina/Katharina カタリーナ
     フランス語圏 Catherine カトリーネ
     スペイン語圏 Catalina カタリナ
     イタリア語圏 Caterina カテリーナ
     スラブ語圏  Ekaterina エカテリーナ
     英語圏    Catherine/Katherineキャサリン

    アメリカを襲ったのがハリケーンのスペルはKatrinaであり、オランダ系ゲルマン系の人が多く使うとある。このスペルはtの後ろのaがなくカタリーヌとは読めない。
    なお、ハリケーンの名称はアメリカ単独で決めるのではなく、WMO(世界気象機関)が決めるので、英米系の名前だけでなく仏独その他の男女の名前を使うことになっている。台風の名前が日本、中国やタイなど14か国の名前から選ぶのと同じだ。
    なおGoogle USで見ると、ハリケーンの印象が強く、娘の名づけにはあまりKatrinaは好かれないらしい。







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