ISO昔話5 認証準備3

26.09.14

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。

注2:ISO昔話とは



1992年10月下旬
ここは前回登場した、埼玉県の従業員32名、機械加工の小さな町工場です。
客先からISO9000の認証をしろと言われた。とはいえインターネットもない時代、そういう情報にアクセスできない小さな会社だ。果たしてどうしようかと悩んでいる。

数日前(第3話)、客先の購買課長と購買の担当者が説明に来てくれた。だが話すことはISO認証が必要になったことの経緯であり、ISO規格も審査とは何かも認証機関がどこにあるのかも、全く分からない。
ただ品質保証の人に説明に来てもらうという言葉尻だけは取った。
とりあえず先方からの連絡を待つしかない。


と思ったら翌日、客先の品質保証の担当という方から電話があった。
電話 認証の説明にお邪魔したい。ついては管理者と担当する方に、対応してもらいたいということだった。その方は群馬県の太田市の工場勤務で、日帰りで一日の予定だという。
それは良かったと了解して、日時を決めた。




1992年10月下旬
やって来たのは50前後の品質保証課の高原という。こちら側は、社長と工場長、そして担当として吉永と山田が出て、一般論を聞く。


お写真お名前ご紹介
高原高原さん客先の品質保証担当者
佐藤社長佐藤社長先代の跡を継いだ元商社マン
工場長工場長名ばかり工場長、筆頭工員くらいの意味しかない
吉永吉永さん高専卒の技術者、メンテとかNCプログラムをしている
山田山田さん事務員、工場近くに住む奥様。元企業のOLしていた

高原は「ISO900の説明」という自作らしい10ページほどの資料を配って話を始める。
ISOマネジメントシステムの第三者認証とは、どんな仕組みなのかという話から始まりまった。

高原 「認証するには、会社が規格に合わせて社内の手順などを決めて、認証機関という審査会社に審査依頼をします。
審査にかかる日数は会社の規模や業種によって違いますが、この工場なら8時間・一日で済むでしょう。

審査契約するときに、会社の仕組みが完成してから何カ月以上の運用期間が必要と言われます。
だから、今、1992年10月だから今から会社の仕組みの検討をして来年の2月に完了したとして、仮に運用期間を5カ月とすると審査を受けるのは7月以降になる」

佐藤社長 「お宅さんでは、いつまでに認証しろと言っているのでしょう? もし来年の3月とか言われたら時間的に無理ですね?」

高原 「おっしゃる通りです。まだ期限ははっきりしていないようです。噂では認証の期限が来年末とか聞いております。ですから慌てなくても大丈夫でしょう。

それから認証機関を選ぶ際には、弊社と同じにした方がよろしいでしょう。別に私が客を取るとリベートがもらえるわけではありません。
弊社の方が御社より早く審査を受けることは間違いありません。審査を受けると、いろいろ問題が見つかると思います。もし私の考えに間違いがあればその時見つかりますから、御社はそれに対応できます。

会議

というのは認証機関によって厳しいとかではなく、考え方が違うところも多々あるように聞いています。どこまで文書を作らないといけないかというようなことは、認証機関によって違うらしいです」

佐藤社長 「なるほど、それは重要ですね。
それと来年一杯と聞いて安心しました」

高原 「認証の納期はまだ確定していません。そういう噂もあるという程度で聞いてください。ただ来年の3月ということはありません。早くても夏頃でしょう」

佐藤社長 「ISO規格は、難しそうですね。
まず品質方針ですが、当社にはそんな立派なものはありません。どうしたら良いですかね?」

高原 「規格はこれから各項目について説明しますが、規格では品質方針が備える要素が書かれています」

佐藤社長 「方針も好き勝手に作れないわけですか?」

高原 「いえいえ、社長の思いを文にすれば良いのです。ただこういうことを盛り込めという要求はあります。それは品質に対する方針、目標、責務ですか。

方針とは自分たちは品質をどう考えているかでしょう。
それから目標ですが、目標を数値にするのもありでしょうけど、何かを目指すとかでも良いでしょう。技術・技能の研鑽に努め品質向上を目指すとかね。
責務は訳語が不適切かと思います。本来の意味は、約束とか献身とか心がけとかですね。我々は規則や手順を守り品質維持に努めるとかですか・・・

おっと、方針は箇条書きにすることはないですよ。社長が書く文章の中に、そういうことが込められていれば良いのです」

佐藤社長 「分かったような気がします。品質第一のような短い熟語ではなく、品質についてどう考えているか何をするかを表現すれば良いのですね。
高原さんの指導は今回限りではないでしょうから、次回、半月後かひと月後にいらしたときに案を見てもらうことにしましょう」

高原 「まあ、認証するまでは何度かお伺いすることになりましょうね。
ただ購買課からは一回限りの要請でしたので、改めて御社から弊社、購買課宛に継続した支援依頼を出してもらえますか。認証するまで月一で来社を要請するという文で良いと思います。具体的日時は別途打ち合わせることとして」




ISO9000とは要するに、物を買う時から出荷するまでの仕事の方法や基準を、文書・・・文書とは会社の規則のことらしい・・・にして、それによって仕事をすることだそうだ。
そしてその通りしたことを証明できる記録を残すという。

仕事そのものは会社によって違うから、その会社の業務を5W1Hで書き表すのだという。ということは、他社のものを持ってきてもそのまま使えない、自分たちが考えないとならないということだ。

話せば簡単だが、実際にどうするとなると結構大変だ。ここでは精密機械のアクチュエーターの細かな機構部品を作っている。工作機械としては、タレパン、自動プレスライン、自動旋盤がメインだが、試作や少量生産には普通旋盤もフライスもある。そういう作業要領書も作るのだろうか?

それとISO規格で要求することは文書にしなければならないとして、今、文書で決めてない出張とか組織などは放っておいて良いのだろうか?


「組織を決めていない」というと驚くかもしれないが、中小企業では普通にある。
そもそも部長とか課長というのは部や課を統括する人の意味だが、中小企業にいけば(大企業でも)、入社何年なら主任、課長、部長と肩書がつくこともあり、そこには組織図と関連ない部を持たない部長がいたり、権限もなく賃金と関連もないなんてことはザラにある。

このお話にも工場長が出てくるが、30名の会社で、工場がひとつしかないとき、社長の下に工場長が必要とは思えない。部下が一名という組織は組織ではない。そもそも役割分担があるから組織なのだ。
社長がいて工場長がいるなら、工場長と同じ階層に営業とか別の工場長がいなければおかしい。


高原氏は認証するには、社長がリーダーシップを取らないとダメとは言わなかった。ただ社長はISO認証の事務局をバックアップしなければならないとは言った。要するにしなければならないことはちゃんと説明したわけだ。
この時代、ISO9000認証は経営者が対応することではなく、品質保証部門が対応するレベルであった。だって品質保証だよ。

ISO14001が登場したとき、審査員は「俺はエライ」と勘違いしたのではなかろうか?
工場長がいないのはなぜだ!、オープニングに出て来る人数が少ない!と叫んだISO14001の審査員は多々存じているが、ISO9001の審査員でボケをかましたのは見たことがない。

午後から高原は吉永と山田を相手に、規格の各条項を説明し、しなければならないことを具体的に説明した。
まず高原はコピーした25ページを綴じたものを渡した。ページの左半分は英語、右半分は日本語である。


注:ISO9000sの対訳本のISO9001部分は25ページだった。当時は著作権など誰も気にせず、この部分だけコピーして使っていた。
対訳本をコピーしたものを使う審査員も多かった。
コンプライアンスなんて言葉は、20世紀では機械工学で「ばね」のときしか聞いたことがない。



要求事項は20項目あるそうだ。それを1から順に読んで、その内容を説明していく。
高原の話し方は論理的で分かりやすく、内容はよく理解できた。要するに規格に書いてあることはしなければならないが、書いてないことはしなくて良い。行間を読めとか、言わなくても分かるだろうという、非論理的なことはない。しかし要求が細かいのも確かだ。

二人はたびたび質問し、それに高原は丁寧に説明する。3時過ぎには終わった。
二人とも真面目にノートを取り、要点や質疑をメモしていた。




休憩後、現場を一通り眺める。


高原 「加工前・後とか良品・不良品の識別が不十分ですね。単に箱を分けておくだけでは、知らない人は分かりません。看板なり部品の箱に紙を貼っておくとか、一目見て区分けが分るようにしてください。

フォークリフト

それから保管中とか仕掛かりで置かれているとき、雨水がかかったり埃がかかったりしないようにすること。
運搬も同じですね。特にフォークリフトはトラックの積み下ろしや棟間の運搬をすると思います。そういう問題が起きないように」

山田 「屋外を運搬することは当然発生します。雨のときは運ぶなということですか?」

高原 「私は作業内容が分かりませんから良い悪いは言えません。ただ皆さんが過去からの経験で、雨の日はフォークで運ぶとき荷物の上にビニールシートをかけるなら、それをルールに、つまり文書に決めておくことが必要です。
ここでは雪は積もらないでしょうけど、路面が凍るとか積雪があれば運搬禁止かもしれない」

山田 「分かりました。その場その場で考えたり、方法が違うのはいけないのですね」

高原 「そうです。規格に書いてありますから読んでください」

吉永 「規格に雪とか雨とかありませんでしたよね?」

高原 「確かに雨とか雪とは書いてありません。でも『4.15.2取扱い』では『供給者は、損傷又は劣化を防ぐ取扱いの方法及び手段を設ける』とあります。
これは保管中や運搬中、そして仕掛かりでコンベア上にある時も、製品・・・完成品も加工中も含めてですよ・・・損傷や劣化や汚れが起きないようにしろとあります」

山田 「なるほど、一字一句読まないとなりませんね」

吉永 「そうするときりも限りもなくなりますね。分かり切ったこともルールにしないとならないのですか?」

高原 「そうではありません。文書化するのは文書化が必要なものだけです。それは業務の複雑さ、方法、関係する人々に必要とされる技能や訓練によって違います(注1)

吉永 「ええと、どういうことですか?」

高原 「この会社の中で共通的な認識であれば、文書化する必要はないということです。
例えば先ほど雨が降ったらビニールシートをかぶせるということを、誰でも知っているなら文書化しなくても良いです。
そのときは、もしフォークリフトの運転手に聞いたとき、皆、同じ回答でないとまずいですね。人によって回答が違えば、人によって考えが違うわけですから」

吉永 「なるほど、言い換えるとISOって特別なことじゃなくて常識かもしれないですね」

高原 「常識と言えば常識ですが、常にルールなり常識を実行しないとダメなのです。
雨が降ったらビニールシートをかけると決まっているけど、小雨だから自分は良いと判断するのはダメです」

吉永 「これを機会にそういうことのないように徹底させましょう」

高原 「そうそう、ISO認証はそういう教育とか躾けの目的で使えますね」


この高原氏の話を聞いてどう思ったでしょうか?
何も感じないでしょうけど、それが普通です。
1990年前半にISOの説明をする人たち、会社に説明に来た人、講演会で語った人たちは、皆とんでもなくテンションが高く、ISOの伝道者のようなイメージで甲高い声で喋り捲ったものです。
イキがっていたんでしょうなあ~
この高原氏のように、静かに普通の言葉で語りかけたらまた違ったと思いますよ。




翌日の朝
社長、工場長、吉永、山田が座っている。

佐藤社長 「吉永君、山田さん、昨日の午後は規格の説明を聞いたわけだが、高原さんの話はどうだった?」

吉永 「話はよく分かりました。ISO規格の通りすれば、客先との連絡ミス、不良混入、運送中の破損、指導の問題などトラブルは減ると思います。
認証した会社は、そういうが少ないのでしょうね」

佐藤社長 「山田さんはどう?」

山田 「規格をしっかり守ればそうだと思いますが、その『すること』の意味である『しなければならない』ものが何十とあります。この会社は社内の規則が揃っていないですから、それを作らないとなりません」

佐藤社長 「規則を作るのですか?」

山田 「昨日、高原さんが文書化した手順と言ってましたでしょう、規格で『すること』と書いてあることは必ず規則にしなければならないそうです(注2)

佐藤社長 「すると規則はいくつくらい作ることになるの?」

山田『すること』ひとつにひとつというわけでなく、『取扱いと保管』の項目をまとめて一つの規則で済むと思います。そうすると20件くらいでしょうか?

でも事務所の伝票記入やルート、保管、出金の手順などもルールはありません。私は前の事務をしていた方から教えてもらっただけです。そういう帳票類のルールも文書にしておけば、引継ぎ資料になりますから、人が変わっても問題がなくなると思います。
それに工場の窓の開け閉めもドアの開け閉めもありますし、ゴミ捨てとか事務所でも掃除とか施錠もあります。
そういうISOに関係ないことまで規則を作るなら・・・」

佐藤社長 「いや、そこまですることはないでしょう」

吉永 「ISO認証では要らないかもしれませんが、材料や製品に埃がつくとかありますね。それによる汚れとか傷の対策にはなりますね。
仕事の手順を決めておけば、そういうこともなくなり、また皆が基準を理解すれば、迷うこともなく働きやすくなります」

山田 「吉本さんが辞めるとき、退職願いをどう書くのかと心配してたでしょう」

工場長 「そうだったね~。吉田さんは手紙の書き方とかいう本を見て書いてきたそうだ」

山田 「吉田さんか苦労して書いた退職願を受け取った工場長は、それを忘れてしまって、吉田さんは離職票(注3)をもらえないで、引っ越してしまいましたよ。向うですぐに仕事が見つかったので、離職票がなくても済んだと言ってましたけど」

工場長 「アハハ、それはすまなかった」


注:会社が正当な理由なく離職票の手配(雇用保険の資格喪失届や離職証明書の提出)を怠ったり、拒否したりした場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金ですわよ💓

佐藤社長 「工場長!、離職票を出さずにいたなんて懲役刑だよ。私はこれからハローワークに相談に行ってくる」

工場長 「えっ、そうなんですか。参ったなあ」


一瞬、3人が工場長から離れようとしたが、工場長は気づかなかった。


佐藤社長 「その話はこれを終えてから工場長としよう。
山田さんは、そういうこともないようにしたいわけだ」

山田 「そうですよ、プンプン」

佐藤社長 「確かにそうだな。しかし会社規則を何十と作るとなると、その手間は大変だろう。
そもそも吉永君も吉田さんも会社規則なんて作ったことはないよね?」

山田 「会社規則というと大事に聞こえますが、単純に伝票の書き方と流れを決めるだけなら、記載例を書き込んだ伝票を紙に貼り付けて、タイトルと文書番号を付ければ済むと思います。現場にはそれをコピーして貼り付けておけば良いでしょう」

工場長 「そういうのがあると良いですね。ウチで使っている伝票は、6種類か7種類ですか。
現在、書くときは、以前発行された物を引っ張り出してそれを見て書いてます」

佐藤社長 「まあ、それも良い方法ではあるな。少しずつ作っていってよ」

吉永 「いや、社長、高原さんのお話では、まずは会社の文書体系を作り、その体系の中で作成することと言ってました。文書体系がなくては決裁者のハンコがあっても文書でないそうです。

単に手順を描いただけでなく、それをオーソライズする必要があります。つまり会社の文書を決めるルールが必要です。
その話を聞いたとき、ISO認証は良いことだと思いました」

佐藤社長 「そうか~」

山田 「高原さんは、会社規則だけでなく、認証機関に出すマニュアルを、作る必要があると言いました。
そして手順を決めるとあるものは、会社規則にしなければならないそうです。
会社規則とは固有名詞でなく、会社の規則のことです」

吉永 「高原さんはマニュアルにすべてを書き込んでも良いとは言ったね。そうするとマニュアルは厚くなるけど会社規則はいらない」

佐藤社長 「なるほど、それも手だな」

工場長 「でも、吉永君、そのときは規則に書くべきことを全部マニュアルに書きこむのだろう。
会社規則が20件位と言ったね。それぞれが10ページあるとして、マニュアルは200ページもあるものになってしまう」

吉永 「ああ、そういうことか。マニュアルに書き込めば簡単かと思ったけど、A4サイズで200ページではNC機械の取説(注4)みたいだな。扱いに困る」

工場長 「言われてみると厚さ2センチもあるマニュアルを見て伝票を書くのはちょっと困るぞ、ワハハ
2・3ページなら壁に吊るしておけて扱いが楽で日常使えるが」

山田 「ともかくそういうものにしておけば、人が変わっても引継ぎが楽ですね」

工場長 「確かにそうだが・・・一旦作っても伝票の記載事項が変わったりしたとき、ちゃんと修正しておかないとまた問題になる。
作ればそれが大変な仕事になる」

山田 「でもISO規格では、仕組みが変わったら文書を改定して、発行したものは差し替えることになっていますよ」

工場長 「もしそうしないと?」

山田 「ISOの審査は一回限りでなく、半年毎だそうです。だから変更してないとか、差し替えしてないと、次回の審査で不適合になってしまうんです」

佐藤社長 「なるほど・・・ISO認証とはそういうものか。一回よければ免状もらえるのでなく、常に良い状態でないとダメということか」

工場長 「性悪説そのものですな」

山田 「いやいや、そうでないとルールは守られませんよ。社長もご存じでしょうけど、工場の壁に貼ってある非常時の避難場所の地図ですが、あの空き地、今はなくなってますよ。
もし知らない新人があの地図を見て避難して被災したら社長の責任です」

佐藤社長 「それはまずい、工場長、2週間ほど前、市の広報に避難所の変更が乗ってましたよね。あれを現場の図と貼り替えてくれと言ったはずです」

工場長 「あっ、忘れていたな」

佐藤社長 「それはまずい。
山田さん、市の広報に市の避難場所が載ってたしょう。それに貼り替えておいて」



佐藤社長 「ヤレヤレ・・・
そういえば、この工業団地に凸凹機械という会社あったよね?」

工場長 「ああ、この通りの一本北にありましたね。
従業員300人くらいいる結構大きな会社です」

佐藤社長 「あそこもISO9000認証を目指していると聞いた。
来週だと思ったが工業団地組合で、あそこでISO認証の活動説明会をするという
吉永君、山田さんと二人で聞きに行ってこい」

吉永 「スパイですか?」

佐藤社長 「バカ、向うが工業団地の人を集めて親切に説明してくれるとよ」




うそ800 本日の状況説明

この物語は1992年末です。この時点ではまだ認証した所は希少で、認証中の会社は外に見せるのは恥ずかしいと思ったのか、対外的に公開したところはなかったようです。
ISO認証した企業がその活動を他社に見せるようになったのは、1993年以降だと思います。
そのころになると工業団地で1社、2社と認証したところが現れ、その次に認証しようという企業が先達を見習おうと集まりました。

中には無料でなく、見学と説明会でお金をとるところも登場した。
私の知っている所では、社内規定一式のハードコピーとFDを付けて参加料1万5千円なんてとこがありました。一瞬、銭儲けと思いましたが、ワンセット100ページ以上コピーしてファイルに綴じるとか考えると、それくらい貰わないとペイしませんね。

なお、当時は工業団地で、いくつかの会社のISO担当者が集まって勉強会などしていたところもある。そんな中で気が利いた人は、後に審査員とかコンサルになった。私の知り合いはいずれにもなれず、エコアクション21の審査員になった。



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文末脚注
  1. この記述はISO9001:1987版にはない。1994年改定で「4.2.2品質システムの手順」が追加され、その中で記述されている。
    ただしISO9004:1987の「5.3.1品質及び手順」で、「文書化は、運用上差し支えない範囲に限定するよう配慮するとよい」とある。9004を読んでいる人なら趣旨を理解していたはずだ。


  2. ISO14001が登場するまでは、「明確にする」は文書を作ることで、「確実にする」は記録を残すことと理解されていた。
    ISO14001では“文書化最小化運動”が行われ、必要なものさえ要求されないような状況に陥った。その後、揺り戻しが起きて妥当なところで落ち着いた。


  3. パートでも週20時間以上働いていた場合、ひと月以上雇用される見込みのあった場合は雇用保険の対象となり、辞めるまで自己都合なら2年間、会社都合なら6か月以上であれば失業保険がもらえる。そのため退職した証明として離職票が必要になる。
    従業員から退職を伝えられたら、会社はハローワークに発行を申請し、ハローワークは離職票を作成し会社に送付し会社は退職者に渡す。


  4. 今はどうか知らないが、20世紀ではNC機械の取説は、NC機械の操作とメンテナンス、NCプログラミング、自動プログラムソフトの操作方法と、電話帳のようなものが3冊あった。
    真面目に全部読んだ人はいたのだろうか? 普通の人は必要なところしか読まなかっただろう。





外資社員様からお便りを頂きました(26.09.17)
いつも有難うございます。

>この会社の中で共通的な認識であれば、文書化する必要はないということです。
>例えば先ほど雨が降ったらビニールシートをかぶせるということを、誰でも知っているなら文書化しなくても良いです。

有難うございます、これって、どこまで文書化するかの判断で重要ですね。
とは言え文書化で悩む場合が大きく二つ
1.非常識な行動の発生
このWEBのお話でも、灰皿を投げるとか、饗応を要求する審査員とか。
とは言え「非常識」という事は常識を逸脱している事が明白なので、線引きは可能。

2.労働者の多様化
昨今は外国籍社員も増えたので、日本人の常識は通じない事もあります。
また身障者の雇用もあるから、健常者と異なった手順も必要。

どちらの場合も、環境の変化により、業務の中で不具合や事故が発生したら規定や手順を見直すというサイクルがあれば問題ないのでしょうね。
「日の丸」や国旗棄損罪やなんて、法律で決まっていないからと非常識が多数に変わったから法律化が必要になった。

外資社員様、毎度ありがとうございます。
確かに常識とは何ぞやと考えると、親の世代の常識は私の時代では通用せず、私の世代の常識は子どもたちの世代では通用しませんね。
昔、私は親の世話をして子供から世話してもらえない世代だと嘆きました。
今、息子が40代ですが、息子の老後を心配しております。

ほんの30年で常識が非常識になる時代、「じっと目を見ろ何にも言うな」なんて言っても呆れられるだけですね。
1995年頃、ビジネスでのISO9001認証が一巡してから、認証機関、コンサルは仕事がなくなり、これからは客から要求されて認証する時代ではない。ISO認証して会社を良くする時代だと語って仕事を取ろうとしました。彼らはそれを「受動的認証から能動的認証」と呼びました。
それで世代間のスキルの伝承ができにくくなったのをISOでするのだとか、仕事を文書化することで外国人労働者への伝達を・・・という発想がありました。
特に90年代から加速した、タイやフィリピンでの製造においての作業指示を日本的ではダメだから文書化してという考えでした。
それでISO認証は役に立ったのかと考えれば、あまり意味はなかったのではないかと思います。
そんなことISO認証しなくてもできるはずです。がんじがらめの文書とか記録に頼る前に、もっと簡単な方法があるはずです。
マネジメントシステムというのは結局、文書化でしょうけど、その程度は実用性、負荷と効用を考えた妥当なレベルで運用すべきではないかと思います。
文書化イコールISOではない、ISOレベルが理想でもない、そんな風に思います。





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