ISO第3世代 92.ISOの季節6

23.07.31

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

前回のあらすじ
さんざんトラブルを起こしていた上西課長は課長辞任、そして詳細は未定だが異動することになった。これからどうなるかは不明だ。
辞めてやる〜
課長なんてもう、
たくさんだあ〜

上西

長野工場の廃棄物の不法投棄も出張して調査した結果、当社に違反はないことは確認した。

一安心ではあるが、来月のISO審査まで日もなく、とりあえずはこれを片付けなければならない。
課長がいてもいなくてもすることはしなければならない。会社の仕事は暇になることはない。


*****

土日の休日が明けて今日は月曜日である。
磯原が出勤すると既に田中がいて、一心不乱にキーボードを叩いている。

磯原 「田中さん、おはようございます。どうしたのですか、メールチェックは上西課長に譲ったのと違いますか?」

電子メール

田中 「休み前に課長からメールが来ていてね、月曜日からまたメールチェックを頼みたいとあった。急用でもあったのかな?」

磯原がパソコンを立ち上げていると、山内が来て話があるという。また何事か起きたのかといささか緊張する。
二人して小会議室に入る。

山内 「上西君が課長を辞任した。12月1日付けで課長解任になる。実際は休日だから月曜日の12月3日に公表される。
これからのことは決まってないが、たぶん出向だろう」

磯原 「ほう! 驚きです。辞職はよく聞きますが、役職を辞任というのもあるのですか?」

山内 「病気とか家庭の事情などの理由なら普通にある。彼の場合は力量がないから辞めますと言ったらしい。そしてそのまま受け入れられた。
人事は前から更迭する気だったからね。彼に失望したのは我々だけでなく、人事も問題視していた。
ともあれ環境管理課長は本日から空席だ。課長が決まるのは来年になるだろう。だがショーマストゴーオン、仕事は止められない。

ということで人事と本部長に話したが、当面 君に課長の代わりをしてもらう。なに今まで君がしていたことに大義名分が付いただけだ。課長にしないのは君がまだ若すぎるのと社内資格の等級が低いからだ。後任課長がいつ決まるかはっきりしないが、早くても来年1月以降だ。来月のISO審査、来年度の計画・予算案、第3四半期の実績まとめまでは君がすることになる」

磯原 「分かりました。その話は今日にでも山内さんから課内に説明してもらえるのですね?」

山内 「そうする。まずは君に話しておかねばと思ってね」

磯原 「お気遣いありがとうございます。課長という仕事をしたことはありませんが、基本的に計画の達成、日々発生する事項への対応ということでよろしいのですね?」

山内 「そうだ。課長になれば査定とかいろいろあるが、そう長期間 君が代行することはないだろう。
ところで、今は環境管理課に7名いるわけだ。各人の業務分担をもう一度見直して最適化を図る必要がありそうだ。特に田中さんと坂本さんの使い方をもっと彼らの力を発揮させるようにしないとならんな」

磯原 「同意です。山内さんのお話は9時からですか?」

山内 「そのつもりだ」

磯原 「ではそれに続いて私が所信というほどではありませんが、考えていることを課員に説明しますから、同席お願いできますか?」

山内 「お前はなんでも手際がいいな。それとも上西退任を予想していたのか?」

磯原 「上西課長については想像もしていませんでした。でも職場環境とか仕事の効率化は常日頃考えていますから」

山内 「なるほど、これから山内、磯原路線で頑張ろう」

磯原 「山内さん、前から問題になっていますが職制との乖離をどうするのですか。山内さんと部長の関係を調整してもらわないと」

山内 「分かっている。それは懸案ではある。問題はそれとお前の負荷対策だな」

磯原 「うーん、それは私にも責任があります。要するに余計なことをしている自覚はあります。ここに来たとき、環境管理課宛のメールを誰も見ておらず、放置していることを知りました。それに関わらないのもあったでしょうけど、貴重な情報源を無視するのはまずいと考えて対応したのが始まりです。余計なことだったかもしれません。

打合せ 先週の長野工場の件で、パレットが戻ってこない件でロジス部への検討依頼を私が考えるなんて言いましたが、考えてみれば増子さんの仕事ですね。ただ彼女がそれに説明するなら、自分がしたほうが早いと思いました。反省します。

先日、上西さんからISO審査の対応を旧態に戻せと言われたときも、無駄なことをと思って黙っていませんでしたが、あれも余計なことでしたね。
私が忙しい理由を一言でいえば、余計なことをしているからです」

山内画蛇添足がだてんそくか、まあ当たり前のことを当たり前と考えない人がいるからな。正しいと思ったことを愚直に貫くことも価値あることだ。
これからは君が課長のつもりでやりたいことをやり遂げろ。ただ管理者とは自分が動くのではなく、人を動かすことだ。自分が目指すことを皆に理解させ、人をうまく使って実現する、それが管理者の仕事だ。

君が言った増子さんにやらせることなど良い事例だ。あるいは石川に試行錯誤させるのも良いかもしれない。パレットの件は石川にやらせてみろ」

磯原 「残念ながら、先週週末の定時後に、経過と方向性をまとめてロジス部の課長に依頼してしまいました。脇で話を聞いていたロジス部長はあとは任せろと言ってました」

山内 「なんだ……そうか。お前は腰が軽く仕事が早いな。上西に爪の垢を煎じて飲ましたいところだ。手遅れだが。
ともかく君が無理して時間外で物事を成しても、管理者として立派なことではない。だからこれからは管理者として優秀な行動をしなければならない」

磯原 「分かりました」


*****

朝の挨拶のとき、磯原は全員会議室に集まれと連絡する。考えてみれば、課長でもない磯原が声をかけるのも筋違いではある。
皆、上西課長がいないことに疑問を持っていたから、その件だろうと見当をつける。

山内 「全員揃ったか?
そいじゃ人事異動の話をする。上西課長が一身上の都合により、今月末付で課長職を辞任して異動することになった。行先は未定だ。
彼は今日以降出社しない。
柳田さん、送別会はしないでくれというのが彼の要望だ」

柳田 「承りました」

山内参与山内 磯原磯原★★
田中田中 机 坂本坂本
増子増子 岡山岡山
石川石川 柳田柳田

山内 「急なことで後任課長は未定である。それで当面は磯原君に課長代行をしてもらう。彼がいつまで代行をするのかも未定だが、当面は磯原君に采配を振ってもらうことになる。皆も彼を盛り立ててほしい。
ということで磯原君としての施政方針もあるだろうから、これから挨拶してもらう。
では、磯原課長代行どうぞ」

磯原 「突然のことで驚かれたと思いますが、私自身も本日朝に聞いたところです。
朝メールボックスを開けると上西課長からメールがありまして、突然で申し訳ない、異動の挨拶は課内、課外とも省略させてもらう、送別会はしないでくださいとのことです。
落ち着かれたらご挨拶があるでしょう。
上西課長については以上です。

これから私が皆さんにいろいろお願いすることになりますが、皆さんが来られたひと月半前から多少状況が変わったこと、予想と実際の負荷が違ったことなどから、負荷を均等にするため職務分担を多少調整したいと考えています。

その前に、私の基本的な思いというか、日頃考えていることをお話ししたいと思います。それに反するのは許さないなんて言いませんが、職場の人間関係と生産性を上げるためご協力を願います」

田中 「おいおい、あまりハードルの高いことを要求しないでくれよ」

磯原 「まあ私の思いを聞くだけは聞いてください。
その一、他人を貶す、他人の意見を否定することを止めよう。良いことは褒める、自分の考えと一致する意見には賛同の意を表しましょう」

岡山 「おお、私が発表会をしたとき、某課長にだいぶ貶されたあれですな(第78話)」

磯原 「具体的に誰とは言いません。でもあのとき岡本さんは気分を悪くしたと思います。提案を批判するのは結構ですが、人格を否定るのは止めましょう」

岡山 「私は磯原課長代行に全力で協力しますよ」

磯原 「ありがとうございます」

田中 「磯原さんも上西課長からだいぶケチをつけられたね(第87話)、アハハ。彼はアイデアは不得手だがケチは得意だ」

磯原 「その二は、完璧を目指すな、まずは終わらせること。
計画表 パーフェクトな計画を立てようとして、プロジェクトが終わっても計画が完成しなかったというジョークもあります。それでは仕事として不合格です。

自分が迷って進まないなら周りの人に助言を求める。仕事の進め方で悩むのは時間の無駄です」

田中 「我々がここに異動したときに、磯原さんが仕事の手順を教えてくれたようなことだな。まさに山本五十六通りというか、それ以上に仕事の目的や異常があった時の影響に至るまで教えてくれた」

坂本 「田中さん、磯原君の話は教えられる方のスタンスですよ。教え方も大事ですが、教えられる方の心構えも大事ということです」

磯原 「その三は、成功体験を引きずるなです。
皆さんはそれなりの成果を出したから、一層の活躍を期待されて本社にいます。
でも課題であろうと事故であろうと、前と同じものはなく常にユニークです。過去の成功体験にとらわれては正解にたどりつけないかもしれない。常に先入観に囚われず虚心坦懐で立ち向かってほしい」

注:ユニークとは「唯一の」、「他と異なる」意味で、二つとないことである。
単に、珍しい、数少ないという意味ではない」

坂本 「同感です」

磯原 「今年はなぜか前例がなければ作ればいいという言葉がはやっているようです。(この物語の2018年に流行った)かっこいい表現です。
でも前例で間に合うなら、前例を活用したほうが便利なのは当然です。奇をてらって常に新規方式にチャレンジすることはありません。要するに仕事は楽に上手くやればよいのです。
先ほどの成功体験を引きずるなと相反するように思えますが、要するに臨機応変に考えて動いてほしい。

よく同じ失敗を二度と繰り返すなと言います。だけど人間はミスをしないどころか、同じミスを繰り返さないほど優秀にはできていません。だから間違いは繰り返すものと覚悟して、失敗にめげずに再発防止に努めてほしい」

磯原 「戦争が終わってから29年もフィリピンのジャングルに潜んでいた小野田寛郎さんの言葉に、学問なき経験は、経験なき学問に勝るとあります。体験から生まれた言葉でしょうが、経験と学問は対立するものでなく、相互補完です。
よってその四、常に勉強、常に実践です。これから世の中はメンバーシップからジョブ重視になります。自分磨きなんて言葉もありました。毎年自分の価値を上げるように頑張りましょう」

田中 「残念ながら私はあと半年で嘱託だ」

磯原 「田中さんが嘱託として残ってほしいと言われたのは、田中さんの知識、知恵、経験があればこそです。田中さんは既に体現しているじゃないですか。

最後は、頭が良いとは記憶力ではないことです。知識があっても使えなければ価値はありません。
いままで申し上げたようなことを意識して仕事に向かってほしいなと思います」

磯原 「それから仕事に際しての運用です。
仕事は基本、最少人数ですることとします。出張に二人で行くのは、二人で行く必要性があるときだけとします。
二人一緒に一つの工場に行くより、一人ずつ二つの工場に行ったほうが、調査でも指導でも成果が大きくなるはずです。
ケネディ大統領だったと思いますが、仕事は一人でして一人前、ふたりでしたら三分の一なんて言ってました。一人では自信がないなんて言っちゃいけません。皆さんはプロです。

自分の仕事はすべて成果物として残す。それは記録であり技術の蓄積であり、後輩のテキストとなり、同時に自分の名を残し存在意義そのものです。一年間にトラブル対策、プロジェクト、出張など50件あれば、年の暮れには50個の論文なり報告書が残るはずです。

まあ、基本的な姿勢としてそう考えております。
以上が私の基本的な考えです。ご賛同を頂けなくてもご協力をお願いします。
では、仕事の割り振りについてですが……」

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仕事の割り振りは自由にできるわけではない。坂本と田中はベテランとして後輩の育成と残すべき技術資料や標準類の整備である。だから事故対策などは割り振っても良いが、忙しいという理由で公害防止の仕事とかを割り振るのはまずい。
誰に何を任せるか
究極のジグソー
パズルだなあ〜

磯原
今まで磯原がしていたISO関係と監査員教育と監査部監査への派遣事務局を岡本にお願いして、磯原が公害防止を担当するしかなさそうだ。
磯原本来の仕事であった省エネ法の達成は……まあ、放っておいても進むようになったから定期的なフォローだけに手抜きする。
廃棄物の担当は、増子が石川を教育して、順次業務を石川に移管する、そして増子が環境計画全般企画を見るようにする。それは増子にとっても石川にとっても有益なはずだ。
そんなことを説明した。

特段、異議はなかったが、坂本と田中からは、建前を気にせずにもっと仕事を任せろという意見が出た。それはありがたい話ではあるが、田中と坂本がトラブルシュートに励んでは、逆に技術移管が遅れてしまうし、若手にトラブルシュートの体験も積ませなければと磯原が言う。
そこんところは石川や岡山を弟子に使って、上手い具合にするように考えてもらうことにした。


*****

翌日、また課員を集めて打ち合わせだ。
とはいえ、これは昨日の続きではなく、定例の家内会議である。

磯原 「ええと、皆さんが異動された時にお願いした計画の進捗の確認をします。
まず田中さんからいきます。
環境計画の進捗フォローはどうですか? 週報では未達が3工場あると書いていましたが」

田中 「まあいずれも本質的には問題じゃないんだ。ひとつは静岡工場で、磯原さんもご存じの通り…」

磯原 「ああ工場長が信念の人ですか、了解です。他の2工場は?」

田中 「ひとつは構造改革で投資を白紙にした。もう一つも新製品への切り替えで今年の投資を凍結している。
理由はあるから、コメントをつけておけばよいだろう」

磯原 「了解しました。
別件です。工場からの問い合わせの未決はありますか?」

田中 「よその部に検討依頼したものでペンディングが8件ある。フォロー中です」

磯原 「ペンディングになっているものを内容はともかく、件数だけでもウェブなどに表示できませんかね。あるいは月ごとに受けたメールと、その処置状況を示しておく、例えば対応済・検討した結果対応できない・検討中とか、最悪対応したもののパーセンテージだけとか、
私としては工場や関連会社の人が、環境管理課に依頼すればどのくらい対応してくれるのかわかってほしいなと思います」

田中 「分かりました。区分とか表示方法を考えて課長代行に相談しましょう」

磯原 「ええと、坂本さん、監査の不具合のまとめはどうなってますか?」

坂本 「監査部監査を新しい方式にしてからの監査で不具合となったもののリストを作って、その原因をまとめ中です。
ええと期限は12月上旬ということなので、それまでには終わります。
環境教育は……

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柳田 「へえ〜、磯原さんてかなり真面目に、そして徹底的にする人なのですね。上西課長も、その前任の鈴木課長も立派な計画を打ち上げるのはかっこいいですが、それをフォローするのって見たことがありません。大体が竜頭蛇尾でおしまい。上への報告は計画の方をごまかして達成なんて言ってましたよ、アハハハ」

磯原 「まあ、言ったことはしなくちゃなりません。そのうち息切れしてくるかもしれません。
そのときは影の環境部長ならぬ影の環境課長代行にお手伝いをお願いしますよ。

ハイ、それでは来月のISO審査のことですが……田中さんと坂本さんが、審査対象の支社と営業所を回って事前点検してきた結果を報告してください」

坂本 「私から報告します。今年の審査対象は、関西支社と姫路営業所、中国支社と宇部営業所と鳥取営業所、沖縄営業所、水戸営業所と神奈川支社、そして毎度ですが本社ですね。
田中さんと手分けして、全個所の法に関わることの点検をしました。

まず廃棄物ですが、契約書、マニフェスト、現地調査などを点検しました。営業所はまだ紙マニフェストが多いですね。なにせ廃棄物を出すのが年数回とか1回限りがほとんどですから。
訪問先ではしらみつぶしにチェックしましたが、おかしなものは2支社で各数件ありました。それについては行政と相談して対策するよう話しています。打合せや是正手順を細かく書いて説明しています。進捗を確認していますが、いずれも行政と相談してミスの対応をして行政はOKしたとのことです。

その他法に関わることとしては、寮の業務用エアコンの騒音苦情、それから最近はやりの太陽光発電パネルを場所がないからって鉄筋コンクリートの社宅の壁面に付けました。そのせいで近隣住宅から、反射光で暑いまぶしいという苦情を受けています。
いずれも簡単には決着がつかず、市役所や顧問弁護士も入れて話し合い中です」

磯原 「そういう話は今まで本社に上がってきたことはないですね」

田中 「寮や社宅の管理は当社の総務ではなく、下請けの関連会社ですからISO審査の対象外と考えているようです」

磯原 「ISO審査とは関係なく、そういったことを取り上げて長引かないようにする必要があると思います。現地で見つけたのは坂本さんですか、田中さんですか?」

坂本 「二人ともそういった事例に当たっています」

磯原 「ちょっと概要を1か所A4で1枚程度にまとめてください。打合せしてから……社宅は総務かな? 人事かな?」

柳田 「人事です。まずはそういうトラブルが、人事に入っているかどうか確認する必要がありますね。環境部門の仕事というより人事の仕事でしょう。もし人事が対応しているなら、環境部門の出る幕ではありません」

磯原 「分かりました。田中さん坂本さんと話した後に、人事部に問い合わせましょう。
ええと、岡山さん、社内の審査対象部門の事前点検はどうでしたか?」

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磯原 「ISO審査対応は順調というところでしょうか。まあ当社は何事も自然体、分からなければ分からない、してないならしていない、ご質問をどうぞというスタンスですから、なにもすることはないのですがね」

田中 「それなら我々が支社の遵法点検などする必要はないだろう」

磯原 「まっ、そうなんですが、やはり法令に反することはあってほしくないのですよ。ISO審査と無関係にやった甲斐があったと思いましょう」

石川 「以前、磯原さんに本社のISOは他の工場のISOと違う話を聞きましたね。本社の方式でもISO審査は問題ないということでした。
それならなぜ多くの工場では環境方針カードを携帯したり、自分の職場の環境側面を暗記したりしているのですか?」

坂本 「石川君、わしは分かったぞ。要するに環境方針カードを持てとか環境側面を覚えろとは、ISO規格に書いてないからだ」

石川 「でも組織の人は環境方針を理解しないとなりませんね。暗記できないなら書いたものを持っていなければならないわけでしょう?」

坂本 「組織の人は環境方針を理解せよと規格に書いてあるのかい?」

石川 「書いてないのですか? 規格の文章はどうなのでしょうか?」

磯原 「石川さん、まず本社の環境担当者なら、誰が言ってたとか、書いてあるはずなんて言わないでほしい。
自分がISO規格を読んで、どんなことが書いてあるのか調べること。そして環境方針カードが必要なのか不要なのかを自分で考えてもらいたい。
柳田さん、ISO規格などの図書のありかは説明してくれたよね?」

柳田 「皆さんが着任した時に、課のロッカーの内容、サーバーの内容などを説明しております。
対訳本 ISO14001は紙のJIS標準票と対訳本もありますし、pdfでも購入しています」

いずれもとんでもなく高い。
JIS規格票が4,400円、対訳本が4,100円、pdfのデータが4,400円、金箔に印刷されているようだ。

磯原 「規格を読みたかったら、わざわざ買うまでもないし探す手間もかからない。法律も契約しているからすぐに調べられる。
疑問に思ったなら、常に調べる習慣をつける。調べ方が分からないとか調べても分からないときに、人に聞くべきだ」

石川 「それが大いに学べ大いに実践せよですか?」

磯原 「そうだ。私も法律でもJISでもISO規格でも知らないことはたくさんあり、日々必要に応じて調べている。岡山さんは調査するにあたってたくさん本を買った。そういう仕事の仕方を身に着けてほしい。

ええと、本題に戻ろう、ISO審査の時の会議室や休憩室の場所取りは、柳田さんOKだよね」

柳田 「Sure、お茶も食事も手配済みです。支社の総務担当と話し合っていて、場所によって差が出ないようにしております」

磯原 「結構です。
アテンドだけど本社の審査員はひとりだから石川さんでよいね。基本的に引率するだけで、質疑応答は審査を受ける部門任せで良い。不適合が出たなら出たでかまいません。
もめそうなときは経過や要点をメモしておくように。知られないようにスマホでいつも録音しておくといいね。不要なら消せばよいから。

時間がオーバーするようなら、次の部署に遅れる旨通知すること。社内用スマホ忘れないでね。
休憩時に食い込んだ場合、その部署が終わってから審査員と相談して、必要なら審査員とふたりでロビーで休憩してもよい。その分遅れるときは次の部署に連絡する。何事も臨機応変にね、

岡山 「石川君、心配なら代わろうか?」

石川 「大丈夫です。何事も実践です」

磯原 「田中さんと坂本さんは事務所に待機して、各部門からの問い合わせの対応、また時間遅れなどが発生した時の対応を頼みます」

坂本 「お任せあれ」

磯原 「増子さんと岡山さんは手空きですから、通常通り仕事していて結構です。もし坂本さんと田中さんが呼ばれて行ったときは、電話受付と必要な伝達をお願いします。あっ、もちろん私もいますけど」

石川 「本当にここでは、ISO審査は大イベントではないのですね。私がいた工場では環境課だけでは人が足らず、他所の部門から電話番とか案内者などを応援してもらっていました」

坂本 「いやあ、どんなふうになるのだろう。
わしはワクワクするぞ」

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磯原は解散してからいろいろなことが頭に浮かぶ。
いつもISO審査対応はしっかりしようと頑張っているが、実際にはISO審査で問題が起きたなんてことは、磯原が担当してからない。

しかし毎年ISO審査の時期には、重なるようにさまざまな事故とか、違反とかが起きている。ISOの季節はトラブルの季節だ。厄払いしないと今年も何が起こるか心配だ。
稲毛に近い大社といえば西千葉の出雲大社か、来週でもお参りでもしないと……

神棚 どこの工場でも施設管理部門では、必ず天目一箇神(あめのまひとつのかみ:火の神様)を祭っている。
本社は近代的で神棚など似合わないのだろうか? それとも宗教を掲げるのは憲法違反と騒ぐ人がいるのか?
環境管理課にも神棚を設けて、環境の神様を祀りたいところだ。

注:日本に環境の神様がいるのかとお思いの方、ちゃんと存在しています。
もちろん環境の神とは名乗っていませんが、
・五十猛命(イソタケルノカミ) :樹木の神様
・饒速日命(ニギハヤヒノミコト):農業の神様
・泣沢女神(ナキサワメノカミ) :水の神様

記紀の時代には、大気の神とかエネルギーの神なんて思いもしなかったでしょう。 鍛冶屋 今じゃ温暖化の神様やSDGsの神様も必要かな?

ちなみに施設管理部門は機械修理や溶接をするので鍛冶屋と呼ばれていた。鍛冶屋は火の神様を祀るのがお約束。
その後業務が拡大しても、現場作業から事務所に代わっても、火の神様を祀るのは変わらない。



うそ800  本日のタイトルの意味

ISOの季節と言いながら、ISO審査と関係ないじゃないか、そういうご異議があろうかと……
タイトルの意味は、本文末尾に書いたように、ISO審査のある年末は突発的な問題が起きるなあ〜ということでありますよ。

泣きっ面に蜂という諺がありますが、忙しい時に問題が起きるというのでしょうか。それとも問題は一定頻度で起きているのだが、忙しいときとか、更に問題が起きて一層大変だと感じるからでしょうか。



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