タイムスリップISO33 あれやこれや

24.11.14

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは




金曜日の深夜、佐川は自宅にたどり着いた。娘たちは既に寝ていた。まあ、それは当たり前だ。
夕飯は東京駅で新幹線を乗り継ぐ間に、立ち食いそばを食べたので、佐川は妻と1週間の出来事の情報交換をしあって、風呂に入って寝た。疲れた。



*****


翌、土曜日、佐川は体が重かったが、始業1時間前には福島工場に出社した。休日ではあるが、少しでも仕事をしようと早出である。 現場の管理職を首になったとき、これからは楽になると思ったが……現実は真逆である。

電子メール

机に座るとまずは兵庫工場のまとめを書いて、福島工場の猪越課長と本社の野上課長宛てに報告書をメールで送る。

ついでにメールのINBOXを見る。
千葉工場、長野工場、昨日までいた兵庫工場、それに福島工場内部からの問い合わせが50件ほど溜まっている。
一通り斜め読みして、緊急のものを20件ほど回答する。
どこでも聞かれるFAQもあるし、まったく新しい質問もある。ともかく緊急以外は月曜日まで待ってもらおう。
過去の質問も合わせて、Q&Aを本社の生産技術部のイントラネットに上げよう。

福島工場内部からの質問は意外に少ない。
内部監査は順調に行ったのだろうか? 猪越課長が処理してくれたのか?
まず電子メールを片付けてから、リアルな机上のINBOXを見ると書類が厚さ5センチくらい溜まっている。

インボックス

まずは一番上に、内部監査の報告書が数部門載っている。猪越課長が決裁して処理済である。
内容を斜め読みする根拠と証拠はしっかり書かれているようだ。証拠、根拠がまっとうならば、結論がおかしいことはあるまい。
内容に問題はなさそうだが、褒めるのが少ないのが気になる。どの部門でも良いところを一つくらい上げてほしい。
誰だって貶されるばかりでなく、一つくらいほめてもらいたいものだ。




猪越課長が9時すぎに出社してきた。遅寝遅起きで有名な人だから、休出にしては早いことに驚く。佐川がいない分、頑張っているのだろう。

猪越課長 「やあ、佐川君、おはよう! 指導している工場の状況はどうですかね?」

佐川真一 「兵庫の予備審査は問題なしでした。兵庫の人たちの努力の成果です。
とはいえいろいろあって、審査の前夜は遅くまで手なおしとかしていました」

猪越課長 「外部監査、あるあるだねえ〜。具体的にはどんなこと?」


注:ふたりはISO審査は初めてだが、会社で仕事をしていれば外部監査や立入検査を受けることは珍しくない。税務署、消防署、顧客、ULなどは何度も受けた。
ISO審査だけでなく、いまだ公正取引委員会の立入検査(談合)の経験はない。


佐川真一 「いろいろですね。法で定める表示板が汚れているとか退色して読めないとか、感熱紙の記録が薄れているとか。
そうそう規定のファイルをチェックしたら抜けがある、書き込みがある、バージョンの古いものがあったなど、結局すべてのファイルの中身を総入れ替えしました」

猪越課長 「まさしく、あるあるだね〜。でもそういったことは、ゼロにはできないだろうな」

佐川真一 「日々の仕事をしっかりするしかありません」

猪越課長 「ウチも同じだろうか?」

佐川真一 「たぶん同じですね。1週間くらい前に、他の工場で問題になったことをまとめて各部門に配り、注意喚起するのが良いですね。あまり早くやっても、それ以降にミスするかもしれません。
ともかく日々、日常業務を、しっかりすることが大事です。

夜鍋してやったつもりでしたが、それでも審査の時にまずいのがいくつも見つかりました。
アース線が切れていた、不良品のラベルが貼ってないとか、細かいことはいろいろありました。
不適合とはなりませんでしたが」




それから福島工場の進捗を聞いたが、以前、猪越課長と佐川が作ったスケジュール通り進んでおり、特段問題は起きてない。うれしくないわけではないが、佐川がいなくても順調なのはいささかしゃくだ。
予備審査までまだ25日あるが、間に5月の連休が入る。何か問題が起きたときリカバリーできるかどうか?

猪越課長 「しかしISO9001というものはルールの徹底的な遵守を求めているが、要求するレベルは高いとは言い難いな。当たり前のことばかりだ」

佐川真一 「おっしゃる通りです。ただ私たちの会社は一応大会社です。ですから会社のルールはしっかりと決めてある。
決めてあるだけでなく文書体系がしっかりしているから、基礎ができています。更に手順も展開されています。作業標準も文書化されている。つまり基礎だけでなく、柱を立て屋根があり壁もあるわけです。

だから私たちが実際にしていることは、屋根に雨漏りがないか、壁は傷んでいないか、柱が腐っていないか点検し修繕するだけです。
内部監査なんて、それを定期的にしろという程度でしょう。
例え話ですがそんなものですよ。

しかし屋根どころか基礎もない会社もあるわけです。あるいは大まかなルールはあっても、細かい手順を決めてなくて、そのときそのとき対応しているかもしれない。臨機応変というと聞こえが良いですが、行き当たり場当たりとも言います。

要するに物を作り込む体制、品質システムって言いましたね、ISO9001はしっかりした品質システムを求めているのです」

猪越課長 「なるほど、会社によって認証のための仕事が違うと……規定の見直し以前に、規定を作らないとならない会社もあるわけだ」




ラーメン

猪越課長も自分の仕事が溜まっていたわけで、それからは各々自分の仕事をする。
昼は二人一緒に、工場から歩いて数分のラーメン屋に行って食べる。ここ以外に食べるところがない。




猪越課長がお先失礼と退社したのは、夕方7時過ぎだった。4月下旬の日没は6時半、日が伸びたとはいえ既に外は真っ暗だ。
佐川は、千葉工場の出張報告、兵庫工場の出張報告、それから返事を出していなかった問い合わせメールを片付ける。

それから今までのQ&Aをまとめて、それをhtmlにする。それをフロッピーディスクにセーブする。明日本社で暇を見て生産技術部のイントラネットにアップしてどこかにリンクを付けて、それを社内の工場に周知のメールを発信しよう。


注:今ならデータを持ち歩くならUSBメモリーだろうが、その登場は2000年、それ以前はフロッピーディスクだ。


そんなことをして、帰ろうと立ち上がったときは、9時近かった。




家に帰ると里美と直美が抱きついてきた。起きている娘たちを見るのは1週間ぶりだ。
長野の土産のリンゴのバームクーヘンを渡す。すると直美すかさずいう。

長女 「チーチ、たまには違うのを買ってきてよ」

妻の洋子はあらあらと笑う。
いやあ〜、この家族のために俺は生きているんだなあ〜と佐川は実感する。



*****


日曜日である。だいぶ寝過ごした感じではあるが、もっと寝ていたいと、まどろんでいると布団が急に重くなった。

次女 「チーチ、起きて、起きて」

里美の声だ。
また足音が聞こえて更に布団に重みが加わった。

長女 「父、朝だよ、起きようよ。今日はみんなでショッピングセンターに行こう。お昼も食べるんだよ」

佐川は、よいしょと起き上がる。
妻の洋子が言うには、日曜日には外でお昼を食べる予定だそうだ。一家そろってお昼を外で食べたいと娘二人の要望だという。

金がかかるわけでもないが、自由になる時間がなく家庭サービスもなかなかできない。昨年11月に管理職が首になって、それは悔しいことだったが、休日は休めるだろうと思ったのも事実だ。
だが職場が変わっても、そんなことになるわけがなく、本社応援になったらもう出張の連続で、個人の努力ではどうにもならない。

佐川真一 「よーし、行くぞー」


二人の娘がワーワーと抱きついてくる。煩わしい気もするが、これから30年間の暮らしを覚えている佐川は、娘がオヤジに抱きつくのはあと1年少々、高校生になるともう近づかなくなる。
娘が大学生になってからは年に数回しか会わず、就職してからは年1回、結婚してからは何回会っただろう。


妻 36歳の洋子 「お父さん、何考えごとしているの? しっかりしてよ。ご飯を食べたらお出かけよ。もう11時なのよ」

佐川真一 「えっ、もう11時!、俺は何時まで寝ていたんだ?」

次女 「母が10時半になったから、チーチを起こしなさいって言ったのよ」

佐川真一 「えー、そんなに寝てたの!」


ショッピングセンターに行くと直美と里美は、欲しいものが決まっているようで、親をその方向に引っ張っていく。
考えてみれば、今忙しいと言っても現場の管理職をしていた時は、日曜日も会社に出ていたなと思い出す(つまり休みなし)。あの時を思えば、今はまだ余裕があるのだ。

買い物をして、ファミレスでお昼を食べ、市立美術館に行き、郊外の大型書店を二つ巡り、夕飯に回転寿司を食べて帰宅は7時半だった。
叫び

……

市立美術館に行ったのは、直美の4月からのクラス担任が、学校の勉強ばかりでなく、図書館、美術館、郷土資料館などを歩いて視野を広くしなさいと言ったとのこと。それで手始めに市立美術館に行って見たのである。

こんな暮らしが、平均的サラリーマンの休日なのだろうか?
子どもたちが久しぶりに家族で過ごしたことで、子供たちが喜んでいたから良しとしよう。
佐川は洋子と顔を見合わせて笑った。

次に子どもたちの顔を見られるのは、来週の日曜日だろう。
洋子の顔は、遅く帰ってきても見られるか……



*****


月曜日の朝、5時40分家を出て、洋子が運転する車に乗せてもらい6時10分発の新幹線に乗る。この時間にバスなど走っていない。
新幹線の中で新聞を読む。まだインターネットは一般的でないし、ネットにアクセスできる端末がない。この時代、携帯電話は電話をする道具に過ぎなかった。皆電車の中では新聞や文庫本を読むのが一般的だった。

東京駅着7時40分、本社に入るのが8時少し前、入場できる時間前なので、守衛に身分証明を見せて脇から入れてもらう。
以前来たとき空いているから使って良いと言われた机に座り、パソコンを立ち上げる。
自分宛に送信したメールを開けて、添付ファイルを処理していく。作成した報告書類をプリントアウトする。朝一、野上課長とか山口君と打ち合わせだろう。その準備だ。

それからhtmlにしたQ&Aを生産技術部のサーバーにペーストして、トップページからリンクを貼る。ブラウザでリンクと表示を確認して一件落着だ。
次にメールチェックをする。日曜日なのに10件くらいメールが来ていた。朝から野上課長と打ち合わせがあるだろう。その後で十分だろう。




山口は始業10分前くらいに出社してきた。
佐川の顔を見ると、カバンを自席において佐川のところに来る。

佐川真一 「おはよう、元気そうだね」

山口 「ハイ、兵庫工場が無事に済みましたのでホッとしています」

佐川真一 「今週はどうするの? 兵庫工場は今回の問題、指摘事項はなかったけど反省するところは多々あった。その是正とか工場内での対策などあるだろうけど?」

湯気
紙コップ

山口 「まずは本日は兵庫の報告のあとに、兵庫から審査のQ&Aが来ていると思うのでそれを他の工場へ周知します」

佐川真一 「生産技術部のウェブサイトにISO認証のQ&Aを載せちゃったよ。まずかったか?」

山口 「佐川さんhtml書けるのですか? 私はできないので情報システムに依頼しているのです。
ああ、問題ないです。そのうち暇ができたら方法を教えてください。
兵庫のQ&Aは今言ったようにまとめて周知しますが、あとで佐川さんのQ&Aに追加してください。

ところで今週の予定ですが……」

と山口が言いかけたところに野上課長がやって来た。

野上課長 「やあやあ、お二人さん、ご苦労だったね。兵庫工場の話は聞いたよ」

山口 「まだ予備審査ですから、認証したわけではありません」

野上課長 「分かっている。でも予備審査を通って本審査に進んだら、不合格になったところはないと聞いているよ」

佐川真一 「今からでも、この三人で打ち合わせしたいのですが?」

野上課長 「実は千葉の凸凹機械のこともあり、アクチュエータ事本の松本さんも一緒に話をしたいという。彼の都合で午後一というのだ」

佐川真一 「それじゃこの三人で兵庫工場の報告と、今週の予定だけでも打ち合わせしたいのですが、」

野上課長 「松本さんは兵庫工場と千葉工場の両方の担当だから、午後に合わせてやりたい。
実を言って凸凹機械の関係もあり、人事異動もあるのだよ」

佐川真一 「承知しました。山口さんも出張に出るのを合わせてください」


野上課長が行くと山口と佐川は顔を見合わせた。


佐川真一 「凸凹のせいで人事異動?」

本社の山口 「どういうことですかね?」

佐川真一 「ま、いいか。じゃあ兵庫工場の報告の確認と、今週の実施予定を確認しよう」


兵庫工場についての報告は、お互い認識の齟齬はなくい。佐川は、千葉工場と福島工場の状況を山口に伝える。

今後の予定として、兵庫工場はもう工場内で審査対応を進められるだろう。実際先週、兵庫の大木課長からもう毎週指導に来てもらう必要はない。本審査が6月初めなので、5月末に最終点検を兼ねて来てくれればよいという話があった。

今週は、長野工場は今週水曜日が予備審だから、ふたりで明日火曜日の朝に工場に入り、最終点検をして予備審に立ち合う。木曜日に反省会をする。
金曜日朝に山口は本社に出社、佐川は千葉工場で指導する。

翌週以降だが、長野工場も落ち着いてきたし、千葉工場も福島工場も順調だから、佐川と山口が交代でそのみっつの工場に、週1回くらい顔を出すことで良いだろう。
二人で行くのを一人にすれば、余裕が生まれる。
佐川と山口はそんな話をして、これからは余裕ですねと笑いあう。
午後からそんなに甘くはないことを、認識することになるのだが……



*****


昼食後、小会議室にアクチュエータ事業本部の松本さん、生産技術部の野上課長、佐川、山口がいる。
始まりは兵庫工場おめでとうと明るく始まったが、それから面白くない話になった。

本社の山口山口
アクチュエータ事業本部
松本さん 松本さん
 野上課長生産技術課長
佐川真一佐川

松本さん 「結論から言えば、佐川さんには千葉工場のISO認証の面倒を見てもらうことだけになった。凸凹機械の件はなしだ。
いやあ、調査すればするほど、奇々怪々というか腐りきったというか、口にするのもいやな話だ。
既に済んだことだし、楽しい話ではないから、かいつまんで話します。

千葉工場が當山さんの指導ではダメだと判断した。まずこれがスタートです。
それで千葉工場の藤本藤本さんが、當山さんに代わる人がいないかと近隣を探したわけです。人づてにISOのコンサルができるという人を見つけた。知らなかったがその人は凸凹機械の従業員だった。

藤本さんはその人から指導を受けることを林課長に進言して、林課長はコンサル契約をすることにした。なにしろ本社に依頼するより安く、當山さんより役に立ちそうだから」

野上課長 「耳が痛い」

松本さん 「コンサルと言っても、佐川さんのようにしっかりと教えるものではなく、資料の提供くらいしかしなかったのだがね。
その人物の名前は知らないのでA氏としておこう。

A氏がISO9001認証の資料を持ち出すのが職場で知られてしまった。社内で懲戒にするとか犯罪として被害届けでも出すのかと思ったら、職場ではその資料を大して価値のあるものではないと認識していたようで、資料の提供を大目に見て、その代わり千葉工場から得るお金の値上げと、それを皆で分配しようということになった」

野上課長 「おやおや、」

松本さん 「しばらくしてA氏は蒸発したらしい。蒸発と言っても、家族は所在を知っていて、会社に黙っていただけだ。
藤本氏は凸凹機械の内部事情を知らず、A氏を探していただけで、そのお金の流れには関係なかった。

林課長品質保証課 林課長は凸凹機械と話を付けようとしたところ、経緯は良く分からないのだが凸凹機械の仲間に取り込まれたようだ」

野上課長 「取り込まれたというと?」

松本さん 「従来通り、凸凹の指導を受けることでお金を払い、そのお金の一部を林課長が受け取るということだ」

佐川真一 「早い話がISO認証を利用した横領ですか?」

松本さん 「簡単に言えばそうだ。双方グルなのがミソだな」

野上課長 「しかし千葉工場が佐川君から指導を受けることになり、お金の流れが停まりましたよ」

松本さん 「ところが、そうなると指導と金の流れを逆にしてやろうと考えたわけだ」

野上課長 「おやおや、頭が良いというか……呆れたねえ。
でも大の大人が何人も関わっていて小銭ではしょうがないでしょう」

松本さん 「佐川さんの指導に価値があるとみて、凸凹のメンバーがコンサル商売を始めようとしていたようです。客の質問を佐川さんに問い、回答を客に伝えるという……」

本社の山口 「でも売上はたかだか数万でしょう」

松本さん 「當山さんが1回1日15万と言っていただろう。あれは結構良い線いっていたようで、高からず安からずだ。
お客を5社も捕まえれば月1社15万としても、認証までに半年として450万だ」

本社の山口 「ほ〜」

松本さん 「もちろん時と共に値はこなれるだろうし、ノウハウも広まるだろう。だがISO認証の立ち上がり時期の小銭稼ぎと考えたら、関係者5名としてひとり90万、悪くはない。

凸凹機械を訪問(第25話)したとき会った、宮川総務部長宮川総務部長と名乗った者は、総務でもなければ部長でもなかったよ。あの工場には総務部というのはなく、代わりに業務部があるそうだ。実はそいつは品質保証課の担当者だった。
品質保証課長本間品質保証課長といった男は本当の品質保証課長だったが、そいつが黒幕だ。
関係者は先方が4名、当社は1名だ」

野上課長 「処分はどうなったのですか?」

松本さん 「当社の林課長は諭旨退職だ。私は処分には関わっていない。事本の人事が決めた。まあ當山氏と比較して似たようなものと判断されたようだ。
それ以外のメンバーは関わっていなかった。

凸凹機械の方はワカラン。今も彼らが工場で働いているのは確認した。向こうの会社のモラルが低いのか、人手不足なのか、関わり合いにならないほうが良さそうだ。
ウチも問題にしたくない、先方も問題にしたくないということで、両社とも被害届けは出していない」

野上課長 「なるほどなあ〜
ちょっと待てよ、ウチは佐川君の指導や資料は、しっかり価値があったわけだから、情報漏洩として損害が出ていますよね」

松本さん 「当社だけの問題ではないから、凸凹機械と協議したらしい。両社とも社名が出ると、マイナスが大きいと考えたんだろう」

野上課長 「しかし良くそこまで調べることができましたね」

松本さん 「清水さん清水さんのおかげですよ。会社同士の正式な契約とか覚書の締結が進まず、向うの本社に話をしたら一発でバレたようです。

で、話は続きがあります。
千葉工場の品質保証課長が空席となり、ISO認証も間近なことから、アクチュエータ事業本部では、兵庫工場の大木品質保証課長大木品証課長を千葉工場に転勤させることにしました。辞令は来月、5月16日付けです」

佐川真一 「ほう〜」

本社の山口 「それでは兵庫工場の本審査はどうなりますか?」

松本さん 「兵庫工場に適当な人がいないので、本社で品質担当をしていた者を転勤させて品質保証課長とします。
兵庫工場の本審査はこれからですが、課長ばかりでなく、周りもISOの勉強をしてきたから大丈夫でしょう。
もちろん、大木課長の了解は取っています」

佐川真一 「大木課長さんが来るなら、千葉工場はもう私の指導がなくても大丈夫ということですね」

松本さん 「そう言わずによろしくお願いしますよ、アハハハ」



うそ800 本日の内心

まず基本の確認です。
多くの企業では、就業規則でダブルワークを禁止しています。家で商売をしているのを手伝うのもグレーです。農家なら自分が営農者なら問題ないですし、無償で農作業を手伝うのは問題ありません。
ところでご本人が事業をするのはOKのことが多い。その違いはなぜか分かりません。ならば本人がISOコンサルを兼業するのはOKなのかとなると、就業規則やその会社の見解などで可否が決まると思います。

いずれにしても会社の情報を持ち出す・利用するのは、窃盗や情報漏洩の罪になる。
では本人の知識でコンサルするのはどうなのかとなれば、まあ一応会社の了解を取っておくべきでしょう。会社の金で審査員研修に行って、会社を辞めて審査員になったとなると、その間の期間にもよるでしょうけど、留学と同じく研修費用を返せとかになるようです。

ISO認証の情報を持ち出して、お金を稼ぐ事件などあったのかとお聞きになりますか
これと全く同じ流れではありませんが、黎明期にはISO認証の事務局にいる人が情報を提供して対価を得るというのは多々ありましたね。会社が訴えたとか事件になったという話は聞きません。
そういうことをして、脱サラしてISOコンサル起業した人を知っています。全国ではそうとうな人数いたと思います。

1990年代前半、ISO認証を指導していた私は、若干羨ましかったですね。でもまあ悪事千里を走ると言いますし、正直が一番でございますよ。
おっと、黎明期を過ぎたらそういう需要はなくなったのかと言いますと、確かにISO9001では聞きませんね。

内緒だよ
内緒だよ
でもISO14001は認証機□独自●●●●●●の、あるいは審査□特有●●●●●の規格に書いてない要求事項が多くて、認証機関対応の傾向と対策に価値が付きましたね。
更には審□員が審査先で得た情報を、コンサルしている企業に□るなんてことは(ー放送禁止)

私自身は金儲けとか過失で、情報漏洩をしたことはありませんが、□査員に要求されて、認証のために必要と思って行ったことは数多あまたあります。審査が終わると、注文が多い審□員ではA4で10ページくらいの資料を、数件頼まれて作ったこともあります。修士論文でも100ページもあれば良いので、こりゃ大変だ(笑)。
注文が少ない人でも企業のデータをグラフに作ってほしいとか、参考にしたい規定が欲しいと言われ、コピーを渡しましたこともあります。なにしろ判定委員会に見せるからと、審査後数日中に欲しいと言われましたから超特急でした。
今考えると大きな問題にしたほうが良かったと反省します。

もしあれを問題とされたら、情報漏洩あるいは「正当な理由なく就業時間内に業務以外のことを行った」などの理由で、懲戒解雇になったかもしれません。
業務とみなされるには、認証機関との契約書に提出物が記載されていないとまずいでしょうね。それから提出時に上長の決裁が必要と思います。
認証機関の審査契約書には記載がありませんから、審査□と私が情報漏洩を行ったとされるリスクは多分にある……もう時効だけど



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