注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
会社では仕事は一度にひとつの仕事をするのではなく、複数の業務を平行に進めていくのが普通だ。
例えば懸案の問題対策を進めながら、先月の報告を明日までにまとめなければならないし、課長からイントラネットをリニューアルしろと言われ、客先クレームの出張準備をしつつ、今日は新しく導入した勤怠システムの説明会だというのは普通だ。
もちろん有能な人は聖徳太子並だろうが、そういう人には10件
佐川も山口に頼んだ吉宗運輸のフォロー、遵法監査のまとめと是正策確認、今後の遵法監査の検討、ISO認証誌の押田編集長と次回企画の話、それに専任は外れたが未来プロジェクトのお仕事も並行して処理していかねばならない。
重大な課題に取り掛かり切りも重荷だが、マルチタスクも大変だ。コンピューターと違い気持ちの切り替えは簡単に行かない。夢を考えることからクレーム処理への切り替えは、重荷というより苦痛である。
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ともあれサラリーマンに暇な時期はなく、遵法監査が終わっても一段落するはずはなく、今日も佐川は雑念の湧く暇もなく課題を処理している。
2000年8月夏季連休も過ぎ、お盆も過ぎた。
今年の8月の気温は平年並みで、月間の最高気温は34.5℃、最低気温は23.2℃だった
たった7年前の1993年
地球温暖化は悪者とされているが、気温と農業生産は正の相関がある。もちろん干ばつがなければだが。
今日は未来プロジェクトの定例会だ。昨年、経団連の幹部は東日本大震災が起きると理解して、情報を小出しにしている。今から防潮堤や原発の緊急時代対応を強化すれば、2万人も死ぬこともなく、メルトダウンも起こさないようにできるはずだ。
経営企画室からは未来プロジェクトに、更なる手を打つための情報とシナリオを考えろという課題が出されている。
というのは2001年の911までは1年あるし、それに一民間企業ができるのは、自社駐在員の安全確保、従業員の海外旅行への注意喚起くらいしかない。
それまでと限定すると、大きな災害は芸予地震
「ミスター・マジックって知ってるかい?」
「よくテレビに出るマジシャンでしょう。それがどうかしたの?」
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| ミスター・マジック |
「今度、彼に地震発生の予言をさせるそうだ?」
「どういうこと?」
「彼は今まで手を使ったマジックばかりだったろう。これからはイメージチェンジして予言をメインにするらしい。
それを知った経団連・・・ではなく、その手足となっているところが、ミスター・マジックに地震予知をしてもらうらしい」
「そうらしいね。彼が言い出せば日本中に広まるよ」
「今村博士
の広報発表ではダメなの?」
「今村博士だけでは効果が弱いということじゃないかな。
今村博士は既に5・6回地震を予知して当てている。それで今村博士が言ってしまえばミスター・マジックは予言できない。だけど今村博士は認知度が低い。
ということでまずはミスター・マジックが予言をして、それより遅く今村博士が同じ地震を予知するという流れでいくようだ。
一挙に311まで行かず、年に一二度地震の予言をして、ミスター・マジックの予言が信頼されるようになって311に進むのだろう」
| 石川 広報 | ![]() |
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本宮 総務 | |
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![]() | 吉田 人事 | ||
| 野村 財務部 | ![]() |
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佐川 環境 |
「今村博士が地震の予知をするのは科学者だから問題ないだろうけど、マジシャンって芸能人でしょう、社会に大きな影響を与える予言は犯罪にならないのかしら?」
「確かに・・・東証株価だって大きな影響を受けるだろうな。最初の頃は相手にされないだろうけど、数回ヒットしたら、それからはミスター・マジックの予言が日本経済を左右してしまうわね」
「法律では、具体的な個人・法人が具体的被害を受けたりしなければ犯罪にならないようだ」
「東証株価を操作したということにはならないの?」
「見方によるけど、地震が起きますと予言したことによって、東証株価が影響されたことを確固たる連鎖によって立証できなければ、犯罪にならないんじゃないかな。
風が吹けば桶屋のような理屈では、有罪どころか門前払いでしょう」
「それはその道の人が検討しているだろうから、我々が心配することもないでしょう。
ということで広告代理店が今村博士に渡した地震リストの中かから、時期的に見合った地震をいくつかミスター・マジックに教えたそうだよ」
「おお、それがどのような影響を与えるか関心があるわ。放送されるときは皆でテレビを観ましょう」
半月ほど後、9月のある日の午後
未来プロジェクトのメンバーが集まってテレビを観ている。
未来プロジェクト室には普通のテレビが置いてある。普通と言っても65インチの大き目なものだ。
番組はSARテレビのワイドショーである。今日のコメンテーターには卓球のゴールドメダリストや落語家がいる。
「今日はコメンテーターに、落語でおなじみ横川気楽師匠と日本初卓球のゴールドメダリスト峰谷さんをお迎えしています。
今日のゲストは、日本一のマジシャン、ミスター・マジックがお見えです。
マジックさん、早速ですが、転業されたというお話ですが、どういうわけですか?」
「冗談言わないでくださいよ。転業じゃありませんよ、多角化です」
「仕事を広げるとは、どのようなことを?」
「予言です(キリッ」
「予言と言いますと、未来の出来事を語るあれですか?」
「そうです。まっ、芸能人のラブロマンスの予言をしても、あまり世の中にお役に立ちません。
私の場合は災害ですね。台風とか、地震とか、そういうものを予言します」
「地震と言いますと、昨年あたりからですか、大学の先生が地震予知をされていますね。
ああいったものでしょうか?」
「ズバリ、その通りです。
ただ大学の先生の場合は、長年研究をして、実際にきめ細かい測定をして、コンピューターで大量のエネルギーを消費し、その結果『いつ・どこで』と予知するわけです。
私の場合はそのようなことをするまでもなく、頭を空にしてジッとしているとパッと浮かぶわけです。それだけ私の方が優れているというわけです」
「では今日はここで、ひとつふたつ予言を頂けませんか。地震当日はここにご招待しますので、できれば番組内で発生する地震がよろしいかと思います」
「今年ですね。少し時間をください」
そういうとミスター・マジックは目をつぶり両手の指先を合せて数舜静止して、すぐに目を開いた。
「おお、きている、きている、見えました。
来月10月6日、午後1時半ジャストに鳥取県、岡山県に大きな地震が起きます。
ええと鳥取県の境港市では震度6強という揺れが観測されます。
怪我人は多数出ますが、幸い死者は出ません」
「えっ、本当ですか!」
「あっという間でしたね」
「予言者の前で本当ですかと言って欲しくないですね。
あとひと月足らずです。そのときはお邪魔しますね。この番組は当日30分くらい延長したら良いと思いますよ」
ミスター・マジックは立ち上がって、話しだす。
「あっ、きています、ヘッドパワーです!
来年にはものすごい地震が広島県で起きます。あー、愛媛県も山口県も危ないです。島根県も高知県も大分県も揺れますね」
ミスター・マジックはそのままスタジオから出ていく。
「あれって本当でしょうか?」
「自信満々でしたね」
「10月6日は、大会があるのでここに来れない、残念です」
「株価とか為替に影響しますかね?」
注:つまらない話ですが、家内が良く見ている「ひるおび」を参考にしました。
司会の恵⇒火消しのめ組⇒た組⇒匠(このくだらない連想)
コメンテーターの立川志らく⇒横川気楽
卓球の水谷⇒「ず」を「ね」にして峰谷
ミスター・マリック⇒ミスター・マジック(全然ひねってない)
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「ミスター・マジックはさすがにエンターティナーだね。今村先生と違い話が上手い」
「でもあまりにも華麗・流暢すぎて演技ぽいわね、ぎこちない今村先生の方が信用されそう」
「最終的にはどっとも予言が当たるわけで、それなら思わせぶりな演技が素敵」
「情報によると今村先生は、鳥取西部地震について今週末に大学で記者会見をするそうだ」
「ミスター・マジックが予言してしまって、興味半減じゃないかしら」
「いや、私も聞いただけだけど、間に入っている広告代理店が作った筋書きらしい。
ミスター・マジックがテレビで言えば、聞く人は多いだろうけど信用されない。そして少し遅れて科学者、それも地震予知の実績のある科学者が同じことを言うと信用もされるというのさ。
結果は多くの人が知り、信用される」
「なるほど、順序が逆ならミスター・マジックは出番がなくなっちゃうか」
「そういうことか」
「鳥取県庁とか境港市あたりから問い合わせ殺到するだろう。
どう収拾するんだろう」
「いや、そんなこと考えずに、むしろ噂を広めることによって被害を防ぐのが目的だろうね」
「ある意味、人騒がせだね」
「野村課長も地震の情報を持っているわけです。守秘義務がなければ、被害を少なくするために何かしようと思いませんか?」
「できることがあればしたいね」
「ミスター・マジックが、自分の立場でできることをしたとは思えませんか?」
「うーん、そういうことか・・・」
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数日後、今村先生の勤める大学で、地震予知の報告があった。
いつもならテレビ局、新聞社から数人来るだけだが、今回はなんとフリーのジャーナリスト含めて30名以上来た。ミスター・マジック効果だろう。
今村先生の発表は、10月6日の鳥取西部地震だけでなく10月8日の余震、また10月31日の三重県南部地震、そして翌年2001年1月4日の新潟県中越地方、3月24日午後の芸予地震まで説明した。今年度発生する地震ということだ。
質問の時間である。
「〇〇新聞の
ミスター・マジックの予言をご存じですか?」
「存じております。私はいつも発表するとき、もし外れたらと思うと心配でたまりません。
今回は、全く同じ予言をする人がいて少し安心しました」
「今村博士がミスター・マジックへ情報提供したということはありますか?」
「彼とは面識もありませんし、そのようなことは全くありません」
記者たちから「ミスター・マジックは本物の予言者だったのか」という声がする。
10月6日SARテレビのワイドショーである。
司会者の匠はもちろん代わらないが、今回もコメンテーターは落語家の横川気楽、峰谷の代わりにラホン・千夏、そしてミスター・マジックもコメンテーターとして参加している。
番組のその時刻だけ来てもらうなら、コメンテーターとして来てもらえば、一人分ギャラが節約できると考えたのかもしれない。
時刻は13時28分である。
「マジックさん、あと数分ですね。私は緊張で心臓がドキドキです。
マジックさんは大丈夫ですか?」
「落ち着いてください。間違いありません」
プロのマジシャンであるミスター・マジックは感情を露わさない。内心はどうだろう?
と考えるまでもなく、画面上にテロップが流れる。
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緊急地震速報(気象庁)13:30鳥取県西部を震央とする地震が起きました。 | |||||||||
「あっ、地震速報が流れています。鳥取県境港市・・・時間も場所もピタリですね」
「私の予言で避難していれば良いのですが」
「予言の効用はすばらしいです。今後の地震もぜひ予言してほしいです」
「正直言って予言しようとしてできるものではありません。私の頭にひらめけば良いのですが」
「期待しています」
「緊急速報を流す前に、私たちに発生を知らせてもらえばよかったのだが・・・」
陰からスタッフの声がする。
「『緊急地震速報』は人が操作するのでなく、推定震度が5弱以上の地震が起きたとき、震度4以上が推定される地域が自動的に報道されるのです」
「ああ、そうなんですか。私はワイドショーで地震をテーマに取り上げているから、地震が起きたとき第一報がここに入るのかなと思っていました」
「匠さん、ワイドショーより報道が第一でしょう」
「そりゃ、そうなんだけど・・・」
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未来プロジェクト室では、例のメンバーがテレビでワイドショーを観ていた。
「マジックさん、上手いねえ〜、これで着々と・・・」
「リーダー、着々と何が進むんだい?」
「311に対する意識付けとか準備だろう?」
「それは最終的な目標だろうけど、我々は既に311対応の責務は果たしたと思う。
今の仕事は911対応とか今年から来年に発生する問題対応ですよ」
「あっ、そうですね、そうです」
こんなお話を書いていた1月6日(火)10:18に、島根県東部を震源とする地震があり、鳥取県西部と島根県東部で震度5強を観測した。
地震のさなかに、こんなお話を書いて不謹慎と思われた方々、お許しください。
被災者の皆さんがんばってください。
この地域は数十年の単位で2000年のようなM7規模の大きな地震が起き、10年単位でM6の地震が起きている。
なぜかというと、この地域は東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが押してきて、中国地方が圧縮され、歪みが大きくなると地震が起きてエネルギーを解放するそうだ。
日本全国どこも地震からは逃げられそうない。
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| 注1 |
聖徳太子が10人の話を同時に聞いて理解したというのは、日本書紀にあるが、なぜか古事記にはない。 なお、別の伝記では10人説以外に、8人説、36人説もあるそうです。 | |
| 注2 |
2000年の東京都心の気温は、最高気温が28.6〜34.6℃、最低気温が23.2〜27.6℃であった。 平年は最高が31.3℃、最低が23.5℃でまさに平均並みである。 | |
| 注3 |
1993年の冷夏は1991年のピナツボ火山の噴煙の影響とエルニーニョ現象によるものであった。 コメの作況指数は、なんと74、平年の3/4であった。これは1945年の67に次ぐ大正以降悪い方から2番目である。 | |
| 注4 |
芸予地震と称するものは過去何度も起きており、2001年に起きたものを2001年芸予地震と呼ぶ。 2001年芸予地震は2001年3月24日に起きた。マグニチュードは6.7,最大震度6弱で、広島県、山口県、愛媛県などに大きな被害を出した。呉市は地形が急傾斜であるために、住宅地におけるがけ崩れによる被害が大きかった。 |
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