タイムスリップ144 新聞記者1

26.02.12

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。




2001年のお正月も明けた。
ここはS新聞社の社会部である。
長谷川記者が腕組みをして頭をひねっている。


昨年(2000年)10月末、Y新聞が審査員に対する饗応があり問題だと報道した(第142話)。長谷川も読者や企業から、審査でひどい目にあったというタレコミが複数あり、以前から記事にしようと思っていたところだ。
ハテナ
長谷川記者
長谷川記者

Y新聞に先を越されたことは悔しいが、没にするには惜しいテーマだ。それにY新聞は裏で何かあったのか、それっきりで続報がないのが気になる。
まさかY新聞に「続報はないのですか?」と問い合わせるわけにはいかない。


それで長谷川に情報を流した人に、そういったことに詳しい人を知らないかと聞くと、企業側の・・・つまり認証制度側でないISO認証に詳しい人として佐川を紹介された。

昨年12月、吉宗機械を訪ねて佐川という課長に会って話を聞いた(第142話)。
会って話を聞くとちょっとイキっている(偉ぶっている)感じだが、ISO認証に詳しいことは間違いない。彼はISO認証の審査には饗応だけでなくいろいろ問題があるという。

まずY新聞が問題にした饗応は多々あるし現実に問題だと語った。それも会社から言い出すのではなく、審査員が要求するという。驚くことに審査が複数日になると、毎晩の接待を要求する審査員もいるとのこと。
事実なら呆れる。いや事実のようである。


その他に審査員のマナーがなっていないという。例に挙げた審査を受ける人を「坊や」とか「小僧」と呼ぶと聞いたときは冗談かと思った。これは裏を取らねばならない。

そのような言葉だけでなく、審査していて返事がないとか書類を出すのが遅いと、机を叩く、机の脚を蹴る。怒鳴るのはよくあるという。本当なら審査受ける方が腹に据えかねたら警察に暴行で通報するところがあってもおかしくない(注1)
実際に灰皿を投げて大怪我をして刑事事件になった事例があったと聞いた。

会社に戻ってから過去記事を調べると、確かに数年前、そんな事件が起きている。最終的に略式命令(注2)だったが(注3)その審査員は前科者である。
ホワイトカラーの仕事である審査というお仕事で、そんなことをする人がいるのかと驚いた。
饗応どころでない問題だ。Y新聞はその事件を知らなかったのか、知らないことにしたのか?


そして佐川が一番問題にしたことは審査である。規格にないことを要求したり、ひどいのは認証機関が決めた方法でないと不適合にするとか・・・ 佐川の話を聞くと、信じられないことばかりだ。妄想なのか、憎さのあまり大げさに言っているのか、そこは良く分からない。


いろいろ頭に浮かんだこと紙に書いてまとめる。
まずは佐川に紹介してもらった業界団体にヒアリングをしよう。そこで佐川の語ったことの真偽を確認しないと・・・

文章を書く

次にISO関係者に当たって、立場の違う人がみて、問題が本当にあるのかどうか、あるならば問題と認識しているかの確認が必要だ。
ISO関係者と言っても多様だ。審査員、認証機関、研修機関、認定機関などがあるのは長谷川も知っている。
認証機関と言っても日系もあり、イギリスが主だがアメリカとかドイツの認証機関も日本で活動している。そういった人たちがどう考えているかのヒアリングも必要だ。

認証制度側ではないが、ISO認証を手伝うISOコンサルという職種もあるそうだ。聞くところではISOコンサルを頼まないと認証は非常に困難らしい。本当はダメらしいが、コンサルに会社の作業服を着せて審査の対応をさせたところもあると聞いた(注4)
コンサルがISO認証をどう感じているのか、考えているのかも調査したい。

そうそう、ISO雑誌というのもあるらしい。そこもインタビューというか話を聞こう。同業者ではないから話を聞くことはできるだろう。

そういった情報収集をしてから次の段階に進むことになる。
長谷川は半日かけて実行計画を作る。




真っ先に訪問したのは、佐川から紹介された業界団体だ。そこの吉本という担当に電話すると、佐川から話を聞いているのでいつでも会ってくれるという。
大手町だからアクセスは楽だ。その日のうちに訪問する。
すぐに吉本氏が出てきて対応してくれた。

吉本さん
吉本

その業界団体の環境部では、研究会と称して加盟企業の有志が集まって、ISO14001が制定される前から、認証の検討をしていたという。そのときの研究結果を書籍にして市販していた。

その書籍を業界団体の傘下企業がISO14001認証のバイブルとしていたが、認証機関のおかしな審査で不適合が多々出されるようになった。被害にあった会社から研究会が対策を要求され、審査で問題になったことを調査しその対策をまとめたて製本したものを、業界加盟企業に配布しているという。

それはA4で150ページもの大作だった。パラパラと見たが、審査で不適合とされたものは実は不適合でなく、それを撤回させる方法の羅列である。まさにトラブル対策の虎の巻だ。
奥付には監修したという認証機関が二つ記載されていた。そのふたつは長谷川も知っている有名どころだ。

見せてもらった書籍を欲しいというと、対応してくれた吉本氏は無償ではできないので業界内に販売するときの定価の2割引きで購入願いたいという。1冊1,700円で二つとも買った。
これからヒアリングするにしても、第三者認証の制度とか規格要求、認証の手順などを知らなければインタビューもできない。




初日の収穫が大きかったので、まずはISO認証の虎の巻を斜め読みする。以前からISO認証に関心があって、ISO認証のパンフレットなどを集めて見ていたが、この本1冊で完璧だ。

本を読む 次に業界加盟企業の審査で問題になった実例集に入る。実際に発生した問題の状況、原因、対策方法などが書かれた本に移る。

そこには審査で審査員と企業で見解が異なる実例が多々収録されていた。記載された問題すべてにその問題が起きた会社と5W1Hが記載されているから嘘ではあるまい。
読めばISO素人の長谷川が読んでも、審査員がひどいと分かる。

もちろん企業が未熟で出された不適合は載っていない。まあ、それは当然だろう。


その日の午後一杯で二冊を読み終えた。
長谷川は、ISO審査とは会社の仕組みを見て規格要求を満たしているかを調査して、満たしている企業に適合のお墨付きを出すものと思っていた。だが現実は認証機関の考えによって規格要求の解釈がおかしいとか、有り体(ありてい)に言えば余計な要求を追加しているのが多々あるようだ。

それどころかとんでもないことに、同じ状況であっても、ある認証機関は規格適合とし、別の認証機関は規格不適合としているものがある。
これではISO認証は認証機関によって、正解が異なるとしか言いようがない。
ISOとは国際標準の略というが、合否が真逆では意味がない。合否が逆というのではなく、認証機関の規格解釈が逆なのだ。呆れて物が言えない。
知れば知るほどISO認証制度というのは問題がありそうだ。いや制度は良くても運用がまずいのか?


不適合対策本を読むと、佐川が語ったことは事実であった。
Y新聞では饗応しか問題としていなかったが、ちょっと調べるとこれほどいろいろ問題があるということは・・・Y新聞も当然気付いていただろう。

ハテナ
長谷川記者

なぜ取り上げなかったかと言えば・・・・・・規格解釈を問題にすると問題が大きくなりすぎ手に負えないと逃げたのではないだろうか?

審査に行ってお土産をもらったとか饗応を受けたなら、職業倫理に反することは議論の余地はない。他方、規格解釈となると、問題提起するには新聞記者では力不足だろう。だから議論の余地のないことだけを記事にしたのか。

いや、それだけでもジャーナリストとして十分な仕事ではある。泥沼の議論に陥るのを避けたのは賢明だったとも言える。
だが長谷川は審査の闇を見たからには、それを明らかにしたい。それがジャーナリストじゃないのか。

その日のうちに、吉本から紹介してもらって産業環境認証機構にアポイントをとった。ここは業界系の認証機関だ。はて、どんなお話が聞けるのか。




訪問すると対応に出てきたのは二人で、ひとりは総務部長、ひとりは役職名のない主任審査員と書いてある名刺だった。
昨日読んだ本には、主任審査員の主任とは職位ではなく資格だとあった。審査員として一人前というランクらしい。単なる審査員では一人では審査できないと書いてあった。


長谷川記者
長谷川記者
本間主任審査員
本間主任審査員
三田部長
三田総務部長

三田部長 「総務部長をしております三田と申します。ご質問にはこちらの本間がお答えしますが、私は社外広報の責任者ですので陪席させていただきます」

本間主任審査員 「すみません、弊社では役職に就いている者も皆、審査員でして、本日は出歩いております。

私は昨年夏までは取締役審査部長をしておりました。今は引退しましたが弊認証機関の規格解釈などは熟知しておりますので、長谷川さんのご質問には答えられると思います」

長谷川記者 「昨年10月のY新聞の報道はご存じと思います。ISO審査員が饗応を受けているという記事です」

三田部長 「もちろん読んでおります。まさに爆弾ですね。小さな記事でしたが影響は極めて大きい」

長谷川記者 「単刀直入ですが、御社でもそう言うことはあったのでしょうか?」

三田部長 「ありました」

長谷川記者 「えっ! ないとおっしゃとばかり・・・」

三田部長 「嘘はつけませんよ。どの認証機関でも認めると思います。
言い訳ではありませんが、審査員の責任ばかりではないと思います。企業が審査員を甘やかすのがエスカレートした結果と思います」

長谷川記者 「そうですか。何社かヒアリングしたのですが、審査が三日のとき三晩宴席を求められたという話もありました」

本間主任審査員 「ないとは言えませんね。
審査先での接待はどうしても皆無というわけにはいきません。田舎に行けば飲み屋もないようなところもあり、そこに泊るわけです。ですから一切ダメにもできません。
そんなところで連泊の場合は、一度だけでないこともありえるでしょうね」

三田部長 「お断りしておきますが、これは職業倫理上の問題であって、刑法上の犯罪ではありません。
それで創立時よりあまり高額でなければOKとしていました。まあ常識的な線はあると思います。

Y新聞の記事を見てから、社内のルールを見直して一切の接待を受けないと決めて社内に周知しました。同時に弊社に依頼する客先にも通知しておりますので、まあ遵守を期待します」

長谷川記者 「名刺を拝見しますと三田部長さんも審査員ですね。実際はどんな具合だったのでしょう?」

三田部長 「まあ訪問先の会社構内にある健保会館で、酒食の接待を受けた程度のことは何度もあります。料亭なんてありません。
これからは接待を受けるつもりはありません」

本間主任審査員 「私も似たようなものでしたな。向うは接待をすれば問題を出さないだろうという気持ちでしょう」

長谷川記者 「接待を受けたから、審査で見逃すということはありますか?」

本間主任審査員 「正直言いますが、私はなかったですな。
ただ不具合を見つけたとき、これは問題であると教えたことはある。厳密にはそれも審査のルール違反だね。まあ、人情というのもある。
そのアドバイスを受けて、連中は徹夜で対策したのだろう。ご苦労なことだ」

長谷川記者 「ヒアリングによると、饗応とは別に、とかマナー違反とか言われました。
そういうのもあったのでしょうか?」

本間主任審査員 「態度が大きいとは、具体的にどういうことでしょうか?」

長谷川記者 「会社の人を小僧とか坊やと呼んだとか、先生と呼ばれないと返事をしなかったとか」

本間主任審査員 「そういうのは()きにしも(あら)ずですな。まあ、会社がコントロールできない部分はありますね。
審査員は若手と言っても50歳で、60代、中には70歳も珍しくありません。昔流の方も多いですから、そういう人もいます。

ただ、なんというか、我々も人を雇って審査をさせるわけですよ。言葉使いとかマナーに、あまり難しい注文をすると、煩いことを言わない方が良いと移ってしまいます。審査員は流動性が高いですから。今後はどうなるかは定かではありませんけど」

長谷川記者 「御社では倫理とかマナーについて、教育とかされていますか?」

三田部長 「採用時に相手はお客様と考えろということは周知しています」

長谷川記者 「そりゃ当たり前でしょう」

本間主任審査員 「この仕事は誰が顧客かが、あいまいなのです。審査を受ける会社が顧客とも言えないのです」

長谷川記者 「お金を払う人が顧客ではないとは?」

本間主任審査員 「ISO9001では『顧客とは製品を受け取る人(注5)と定義しています。
その伝で言えば、ISO認証の顧客は9001なら製品を購入する人とか使う人になるでしょう。お金を払う人とイコールではありません。

ISO14001となると更に漠然となります。地球が顧客だと言う人もいますが、いくらなんでもそれはナンセンスでしょう。
世の中というか社会が顧客なのか、工場なら近隣住民なのか、はっきりしません。
ともかく1995年頃まで認証機関は『顧客の代理人』を自称しました。審査員は審査を受ける企業の顧客の代理人なのです」

長谷川記者 「顧客の代理人? 不特定多数の代理って何ですか?」

本間主任審査員 「製品を買う人、使う人が顧客という発想が多いです。代理店、小売店も顧客も入るかもしれません。いずれにしてもそういった中間顧客、最終顧客に代わって品質保証を点検するから顧客の代理人を自称したのです。

と言っても代理を依頼されたわけではありません。委任した事実がありませんからね。ただ第三者認証という制度なら、必然的に顧客の代理でなければ意味をなさないわけです。
おっと、言いたいことは、審査員は審査する企業からお金をもらっても、企業を顧客とは思っていない人が多いのです」

長谷川記者 「なるほどなあ~。審査する企業が顧客でなければ、いや自分が顧客ならそれなりの態度をとるということですか。
饗応というものは金をもらう方がするというのが定番ですが、審査ならお金の流れが逆になるのか?」

三田部長 「それはないでしょう。どんな商取引で賄賂や饗応は許されません。それにビジネスは対等の関係であるはずです」

長谷川記者 「それから会社側のヒアリングで規格解釈が間違っている認証機関があるということを言われました。聞くところによると同じ状況を、ある認証機関は適合判定し、別の認証機関は不適合とすることもあるそうです。
そういうことがあるものでしょうか?」

三田部長 「本間さん、どうでしょう?」

本間主任審査員 「ありますね。正直言いますが、ISO14001が始まったとき、弊社でもそういう問題はありました(第65話)。
それは重大な問題でしたから企業からの苦情を頂くとか、内部の検討などを経て、我々の解釈が洗練され収斂してきたと考えています」

長谷川記者 「今もありますか?」

本間主任審査員 「弊社においては、ないと言い切れます。
ISO9001は単純に白黒つけられますが、それと比べてISO14001は規格を読んだだけでは、意味することが理解できないものもあるのです。ですから読んだ人によって規格要求の理解が異なることもあるのです。
だけど正解は一つしかない。我々は英語ネイティブではないので、なかなか理解できないこともあります」

長谷川記者 「理解できないこと・・・どんなものでしょう?」

本間主任審査員 「えーと、そうそう、ISO規格で、いや翻訳ではと言った方が正しいかな、規格に目的と目標という言葉があります。
目的というと日本語では二つの意味があります。ひとつは目指す到達点、もうひとつは何のためにするのかでしょうか。
日本語訳のJIS規格をいくら読んでも、どちらの意味か分かるはずありません。英語を読むしかない。英語原文は『purpose』でなく『objective』ですから、到達点と分かります。

似たようなものはたくさんあります。何かに『配慮する』とあるのを『反映する』と解釈するのか、『熟慮する』と解釈するのか、これもいくら考えても答えは分かりません。これも原文を読めば『consider』ですから『慎重に考える』でしょうね。

ここで何かを検討した結果、不採用にすると、『反映する』と解釈した認証機関では不適合とするし、『慎重に考える』と解釈した認証機関は適合と判断するでしょう。
そういうバラツキは確かにあります」

長谷川記者 「『配慮する』は定義にありませんが、『目的』は定義にありましたね。
確か環境方針から・・・なんとかの到達点とあったと思います」

本間主任審査員 「さすが長谷川さんは勉強されていますね。『環境方針から生じる全般的な環境の到達点』です。
でもこれを読んで分かりますか? 確かに目指す理由とか目的でないとはわかります。審査する側では、目的は中期目標だと言う審査員もあり、理想を言うのだと言う人もあり、混とんとしています」

長谷川記者 「そういうバラツキを抑えないと、ISO認証の価値が揺らいでしまうのではないですか?」

本間主任審査員 「認証制度の仕組みではそういうことを管理する機能はありません」

長谷川記者 「認証機関が自由に解釈して良いということですか?
認証機関は認定機関から認定を受けているはずで、おかしな審査をすると認定機関から指導なり認定取消を受けないのですか?」

本間主任審査員 「認定とは審査方法とか運用の基準で、規格の解釈までは立ち入りません(注6)

長谷川記者 「仮に、というか現実ですが、同じ状況であっても、認証機関が異なると適合だったり不適合だったりするのを、どうお考えでしょうか?」

本間主任審査員 「まあ・・・それが周りに知られるとか、客が逃げるかで、ゆくゆく是正されるか淘汰されるでしょうね」

長谷川記者 「それまで何年かかるか知りません。現状では、理不尽な不適合を出された企業は泣き寝入りしろということですか?」

本間主任審査員 「もちろん異議申し立てはできますよ。異議申し立てできることを、ISO審査では毎回説明しなければならないことになっています」

長谷川記者 「実はそれもお聞きしたかったのです。
私がヒアリングした会社では、異議申し立てできるという説明を聞いたことがないのが半数ありました」


注:私は1993年から1995年まで受けた審査で、その説明を聞いたことがなかった。1995年にJQAに依頼したとき初めて聞いて驚いた。
JQAの審査員は「異議あるときは私が書面を書いてあげます」と冗談を言ったのを覚えている。自分の審査に自信があったのだろう。


本間主任審査員 「説明しなければルール違反ですね。それは認定機関が取り締まります。まずは認証機関に話してみて、らちが明かなければ認定機関に苦情を入れるべきです。
しかし聞き逃したのではないかな」

三田部長 「本間さん、そういう認証機関があると私も聞いています。
その認証機関に知り合いがいるので、聞いてみました。『OHPに異議申し立てできると書いてあるので言葉では説明しないで良い』と言います。そのOHPのコピーは企業に提出するのかと聞くと、それはしないということでした」

本間主任審査員 「それはルール違反のように思えるね」

長谷川記者 「そういうのを見ても御社は無視ですか?」

本間主任審査員 「私どもは一認証機関で、他の認証機関と同格ですし監督機関じゃありません。同業他社が誤ったり危ないことをしても関与しません。
長谷川さん、あなたが他の新聞に誤報があったとき、知らせますか? ニヤニヤしながら眺めているんじゃないですか?」

長谷川記者 「そう言われると確かに、ニヤニヤはしませんが、眺めているだけですね」



うそ800 本日の主張

審査の問題を語るには、証拠として実際の問題をあげることになる。私はいろいろな問題を知っているし、認証機関と議論になったことは数知れない。
書いて良いならここに書ける。しかしそれを書いたら認証制度側から名誉棄損とか訴えられるのでないか。
だから過去の体験を書いて問題を問うのは難しい。

いっそのことISO認証ではなく、USO認証というフィクションにしては、なんて考えたりする。
当面、核心に迫らないようにマイルドに進みます。
勇気がないと言われても被告人になりたくない。


私が問題だと考えているのは、いちゃもんとかお門違いとは思わない。
例えば2009年のアイソス誌アンケート「有益な(環境)側面がなければ不適合か?」という設問に、認証機関44社中20社が不適合、14社の回答があいまい、10社が適合と答えている(注7)

適合という認証機関に依頼していれば認証を得て、不適合という認証機関に依頼していればダメとは根本的で重大な問題だ。
どちらが正しいかはともかく、この事実をおかしいと思わないとおかしいだろう。
大学入試で採点者によって正誤が真逆なら重大問題だ。そういうことが現実にあったのだ。

2026年現在では審査の現場がどうなっているか知らない。しかし認証機関のウェブサイトに有益な環境側面があるとか、有益な環境側面についても審査すると明記している認証機関は減少している。 以前、有益な環境側面がなければNGだった認証機関が、現在はOKに切り替えたわけだ(注8)

となると、それ以前の不適合の判定はどう考えるのか? 間違えた判定を出した企業にはいかなる補償をしたのか?


不適合を出されても実害がないなんて言っちゃいけない。
意味のない環境側面調査をして評価をして、紙を大量に無駄にした。もちろん人件費もタダじゃない。諸経費仕込みで1時間1万として毎年数十万の損害を与え日本経済に大きなダメージを与えたのだ。それが何千件あったのか、何万件あったのか?
1回そういう形にすれば、それ以降毎年同じことをしなければならないのだ。

最大の問題は企業の担当者のファイトをなくし腐らせたことだろう。
そういうことに、何の補償も謝罪もしていないなら、私は納得できない。



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注1 机を叩く、大声を出すは暴行罪に当たる。

注2 略式命令とは、軽微な事件(100万円以下の罰金)で、被疑者が罪を認めている場合に、公開の法廷を開かず書面審理のみで下される裁判所の決定であり命令。法廷を開かないと言うだけで正式な判決であり、前科がつく。

注3 犯罪や裁判には不案内だが、佐川は骨折で全治1カ月は間違いないから、略式命令であれば、有罪で50万以下の罰金はおかしくない。もちろん前科が付く(第36話)。
加害者が示談していれば軽くなるだろうが、示談せずに厳罰を望む被害者もいる。

注4 1995年頃はISOコンサルが登場した時代である。認証機関は会社の人以外審査会場にいてはいけないと言うので、その頃は審査のときコンサルに会社の作業服を着せて対応してもらったなって話はよく聞いた。

段々と立ち会ってはいけないと厳しくなったので会社の名刺を作って持たせたりしたところも知っている。私も名刺と作業服を用意すると言われたが、社員でない人が詐称すると詐欺罪になるはずだ。

どうでも良い話だが、下請けの人が仕事先に名刺を使うには嘱託扱いしないとならないはずだ。

注5 この時点では「ISO9000:2000品質マネジメントシステム-基本及び用語」が有効である。
顧客(customer)の定義は「製品を受け取る組織又は人」である。
なお製品とは「プロセスの結果(定義3.4.2)」であり、サービス、ソフトウェア、ハードウェア、素材製品の4つがあるとしている。

注6 私は認定審査を見たことがあるだけで、実際に何をチェックしているのか知らない。ただguide66などでは規格解釈を確認するという項目はなかった。

知り合いが認証審査を受けたとき認定審査員が立ち会っていて「有益な側面がないのに不適合を出さないのが問題だ」と認証審査員に言っていたという。ということは、規格解釈についても審査するのだろうか?
ちなみに「有益な側面がないのに不適合を出さない」のはOKである。認定審査員も誤るようだ。







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