注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。
注2:タイムスリップISOとは
注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。
第182話から続く
2004年7月になった。
この歴史では新潟県知事は、昨年1月に総務相に呼ばれて(第172話)、中越地震予知を知らされた平田知事である。
知事を3期務めて引退を表明していたが、大地震がまさに退任の日に地震が起きると聞いて、去るわけにはいかないと心に決めた。
そして平田知事が支援者や支持党と話をして4期目に立候補し、地震対策そして復旧をすることにしたのだ。名誉とか金でなく、最後のご奉公を務めようと真剣である。
選挙はこれからだが、県民が状況を知ればきっと支持してくれるだろう。
中越地震まであと3か月だ。まもなく大災害が起きると思えば、毎日々々、焦るとか、気がもめるというところだろう。
しかしM研を始め、消防、警察、自衛隊、自治体は、もう2年も前から、いろいろ手を打ってきた。
昨年には震央となるN市中心部からほぼ真南に18キロ地点を中心に、大地のひずみなどを測定する機器を何十個と設置した。
今村先生を始め多くの研究者が、データを取って調べている。今村先生も佐川の伝言ばかりではつまらないだろう。
ぜひとも地震予知を開発した名誉を背に教授になってほしい。
その他、地震の被害の試算、対応案、役割分担、詳細手順を詰めてきたし、必要な工事や器具備品の用意、そして訓練をしてきたわけだ。自信満々ではないが、やることははっきりしているし、力量も付けたと感じている。
少なくても佐川が説明した前回?の対応よりは、うまくやる自信はある。
7月、月初の官房長官の定例記者会見で、森官房長官が中越地震発生を予知したことを公表した。
語り出しを聞いただけで記者一同、ギョッとした様子だ。
「この秋、発生する地震について予知いたしましたので、公表いたします。
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この地震により中越地方、特に越後山脈の山間部において大きな地滑り・崩壊が発生すると予測されました。
この対応として、新潟県、関係市町村と協力し震度が大きい地区、山地の農村については今後、被災者住宅を建設し、地震発生前に事前避難をするよう計画しております。
また地震発生に備えて、事前の消防、警察と、自衛隊の災害派遣を計画しており、被害の最小化に努めます。
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以上の通り報告いたします。
ご質問御座いますか?」
地震の事前公報とは前代未聞であったし、その内容も驚くべきことだった。
記者たちもザワザワしている。
そのとき女性記者が手を挙げた。
「どうぞ、T新聞の方」
「T新聞の餅搗です。
まず地震予知など、現在、実用化されているはずがありません。
この官房長官発表は自衛隊のイラク派遣問題からマスコミや国民の目をそらし、参院選
もちろん参院選を過ぎれば、地震のことなど、お忘れになるのでしょう」
「ご質問というか、ご意見に驚きました。
お言葉ですが、この発表はお話した以外の意図はありません」
「そもそも今の発表は全くのフェイクでしょ。地震がいつ起きるなんて信じらんないわ。
青旗紙の方もそう思うでしょう?」
「官房長官の発表ですから、初めからから嘘と決めつけるのはどうかと・・・」
「分かったわ、それじゃ、森さん、官房長官のイスを賭けてくださいよ。
地震が起きなければ森さん辞任してください」
「そのようなこと、おっしゃられても困ります」
「あなただって、自分が読んでいる公報を信じてないのでしょう」
「困りましたね。餅搗記者さんが私の辞任を望むなら、一つ条件を付けたいです」
「お聞きしましょう」
「地震が発生しなかったなら私に辞任しろというなら、地震が発生したら餅搗記者さんもジャーナリストを辞めることでいかがでしょう」
記者団から「 わ
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」と声が上がる。皆、楽しんでいるようだ。
「官房長官は酷い人ですよね、言論の自由を認めない気だわ、憲法違反よ。
そうでしょ、Y新聞さん」
「言論の自由って、餅搗記者さん、憲法第21条を読んだことありますか? ちょっとというか、全然、違うでしょう。むしろあなたが官房長官の発言を否定することが、憲法違反に問われますよ。
それに長官がおっしゃるように、人に注文を付けて自分は高みの見物は許されませんよ。同じ土俵でなければ。
そもそも官房長官を辞めろなんて、名誉棄損になるかもしれません。いや、その前に支離滅裂なことを語るからとして出入り禁止かもしれません」
「餅搗さん、ご自身が語っていることが、理屈に合わない駄々こねと理解されていますか。
私はあなたが官房長官を辞めろというなら、当然それに見合ったことを言わなければ、子供のたわごとです。
『告発するときは、自分の首に縄をかけてしろ』と言います。相手が有罪なら向こうが絞首刑、無罪なら潔く自分が吊るされる覚悟を示しなさい。
あなたは、いつも自分は責任を負わず人を批判しています。それは無責任、大人のすることじゃありません。他人に責任を問うなら、当然自分も責任を負わねばなりません。
ここは正々堂々と勝負しなさい」
「そうだ、官房長官が言うのが最もだ。餅搗、おまえは卑怯者だ。
ここはかっこよく決めろよ」
「分かったわよ。地震が10月23日に起きればジャーナリストを辞めましょう」
「餅搗さん、そういうことをずるいというのです。
私は23日に起きるとは言っていませんよ。23日付近と言いました。私の話をしっかり聞いていますか?」
「エーイ、うるさいわ、それでいい、決闘よ!
それじゃ10月21日から25日の間に、新潟中越地方に地震が起きなかったら森官房長官は辞任する、地震がきたら私はジャーナリストを辞める、これで良いでんしょ。
記者の皆さん、記事や放送には、必ず約束したことを入れてくださいよ」
記者団が「おー」と声を上げる。
森官房長官は盛大にため息
をしてから、次の質問者を指名した。
ご注意!
似た御芳名の女性記者が実在しますが、この小説とは関係ありません。
その夜のニュースでは各局とも、餅搗記者が森官房長官に広報発表が嘘だと食って掛かり、事実か否かで官房長官辞任とジャーナリスト引退を賭けたと報道された。いくつかのテレビは、その場面をカットなしで放送した。
そのニュースを見た多くの国民は、また餅搗記者のスタンドプレーだと笑ったが、笑わない人が二人いた。
ドクター・マジックは翌日、餅搗記者の勤める新聞社だけでなく、系列の新聞社とテレビ局には自今以後、出演しないと声明を出した。
その理由として、自分も10月23日の地震を予言しており、それを根拠なく否定されたためという。
ドクター・マジックはここ数年、手品師より予言者として名を馳せており、あのテレビ局が自分の予言を否定したから出ないと言われるとダメージは大きい。
年末・お正月の特番もあるが、なによりもドクター・マジックの地震の予言は当たると定評があるし・・・
もうひとりは、地震予知の大家、今村博士である。
今村博士は翌日、記者会見を開いた。
地震予知は科学である。地震予知が当たろうと外れようと、科学者の努力の成果であり、根拠もなくフェイクとか嘘と断じたことに抗議すると、T新聞の親会社であるC新聞社に内容証明を送付したこと。
そして今後、C新聞社の系列の報道機関からの地震解説などの依頼を受けないと発表した。
残念ながら餅搗記者は科学に興味がないようで、この記者会見には出てこなかった。
C新聞社は、「餅搗記者が官房長官の発表を嘘だ、フェイクだと語ったのは社の見解ではなく、餅搗記者の個人的意見であり、親会社はもちろん、グループ企業に罪もなければ道義的責任もない」と公式見解を出す。
これがSNSなどで拡散され、餅搗記者を野放しにしていたのはC新聞社とT新聞社の責任であり、雇用主がそういう認識だから、彼女が増長してきたのだとますます炎上する。
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次の日の官房長官の定例記者会見では、森官房長官は前々日の件とその後の騒ぎについては何も語らなかった。
報道発表が一段落して記者から「官房長官と餅搗記者のやりとりで世間が盛り上がっていることをどう思うか?」と質問を受けた。
「日本政府はあの問題と世間の反応には拘泥しない。よって、この場でとり上げることとは考えていない。
しかしながら私個人は、餅搗記者に名誉を棄損されたと考えている。よって私、森衆議院議員と餅搗記者の約束は、しかと履行されると認識している」
森官房長官は決して許していないのだ。
そしてネットでの餅搗記者を揶揄する声は高まるばかりだ。
さらに翌日、餅搗記者が記者会見を行う。
「あのような疑惑を問い詰めたことで決闘するとは、森官房長官は政治家以前に人間性がおかしい。あの約束は強制的で、私への名誉棄損だし記者会見での質問権を侵すものです。
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以下延々と語ったが、終わるとすぐに、多くの記者から質問が続いた。
「しかし、質問と言いながら質問をしないで、官房長官の発表をフェイクだと非難したのは餅搗さんでしたよね。その切り出し方も批判でなく罵詈雑言に聞こえました。
地震予知が疑わしいとしても、その根拠を問うとか信じられないという方向で、発言すべきではないのですか?
あなたは評論家ではなくジャーナリストなのですから」
「そう言われるとそうかもしれません。でもあの発表は、あまりにもおかしいと思いませんか?
その証拠にテレビを観ても分かるように、あのとき記者たちは皆、ギョとしています」
「重大ニュース発表のときは、皆ギョッとしますよ。記者たちがギョッとしたからといって、嘘を騙ったと思ったと決めつけるのは間違いです。
少なくても私は、研究が進んで地震予知ができたのかと思いました。それは十分驚くべきニュースです」
「予知が外れたら官房長官を辞めろと言い出したのはあなただ。画像も音声も残っている。
あげくに決闘だと言ったのもあなたの声です。
そういう過激な言葉は脅迫になります。
そういうふざけたことを質問時間で語るなど、記者とは思えない。T新聞から派遣する記者を変えてもらいたい」
「私が脅迫したですって! だって相手がおかしな発表をして、それを取り消さないからでしょう」
「あなたは気に入らない発表は取消しさせるわけですか?
そして取り消さない場合は脅迫するの?」
「じゃあ、地震予知をしたと言わせておくの! そんなこと許せない」
「地震予知しちゃまずいのですか? 天気予報も禁止ですか?」
記者会見は流れ解散というか、どんどん人が減って自然に終了した。
やってきた餅搗の同業者たちも、彼女に賛意を示すとネットで袋叩きにされるのを知っていて、スタンスが及び腰で批判的であった。
いずれにしても、ふた月後、どちらかは姿を消すことになるが決定的になった。これは参院選より面白い。人の不幸は蜜の味とはマスコミが言い出したのだろうか?
地震によって損壊する地区は、佐川の記憶と地形や地盤から見当をつけ、対象地区は事前に避難させることになっている。被災者住宅も建設中である。
佐川の経験した歴史では、Y村の住民をヘリコプターで救出したが、この歴史では事前に被災者住宅へ引っ越しすることにしている。
子供たちの学校のこともあり、多くの人は夏休み中に引っ越しする予定だ。
村人たちは長い目で見れば良い経験になるだろうと考えている。
それまでに、農業や酪農、そして錦鯉養殖などの移動をする予定だ。
Y村の長田村長は来年のN市への吸収合併を踏まえて、N市市長とその計画の実行の実務にあたっている。過去には優柔不断と逡巡があったが、今は真剣に人と物を安全に移動することに努めている。
Y村村民には地震発生とY村の想定被害の説明と対策の説明をして、それに伴う営農の対策、転校、引っ越しの説明をしており納得を得ている。
N市及び近隣町村にも地震については、7月の官房長官の説明会直後に自治体が各地で説明会を開いた。
地震発生を信じない人も多かったが、最近のドクター・マジックや今村博士の予知がズバリ当たっているので、餅搗記者のように嘘つき呼ばわりをする人はいなかった。
予測された日の前後数日は、地震発生に備えて避難することを了承した。
7月11日は参院選だったが、盛り上がりに欠けたまま終わった。
国民の関心は10月の地震予告の行方だ。
8月になった。
Y村や被害が大きいと予測されたいくつかの地域では、貴重品の安全を図って各所に建設した仮設のレンタル倉庫を作り、そこに保管するように広報した。
農業は地震予測日をまたぐ作物を作らないよう農協が指導した。稲は地震発生前に刈り入れは終わるし、農家の多くは兼業で米作だけだから問題はないと思われた。
やはり酪農とか錦鯉養殖などが問題となる。
県も市町村もいろいろ検討をしたが、結局地震の規模、被災地がどこか、明確でないので強い指導もできない。
Y村では家を片付け、貴重品は引っ越しで運び、大事な家具などはレンタル倉庫、車はもちろん仮設住宅に人や家財を運んだ。
地震発生日の数日前までは帰村するのは良いが、3日前からは帰村は禁止された。警察は災害が大きいと予測される地域への道路は、その時点から通行規制をする。
9月になった。
避難者は仮設住宅から勤め先・・・その多くはN市内・・・に通い、子供たちはN市の学校に通う。
専業農家には自治体が、被害が少ない地域の農家での農作業従事を斡旋した。しかし若い人が少ないため対象者は意外と少なかった。
その結果、予想されたことだが、もうY村に帰らなくても良いと考える人が増えた。
特に小中高の子供たちは、ひと月も被災者住宅に住んでいると、都市部の方が楽しいことが多くエキサイティングだからか、ずっとここに住みたいという人が増えた。
会社勤めが主、農業が従という家も、農業からの収入分はパートなりで稼げること、暮らしが楽なことから帰村する気は小さくなっている。
長田村長を始め村の中心の人たちや高齢者は、そういった風潮に危機感を持っている。もし、それが大勢となってしまえば、村が地震で被害を受ければ再興しようという意気込みは薄れてしまう。行きつく先は復興でなく廃村である。それで良いのだろうか?
Y村は平家の落人という伝承もある。それは伝説だろうが、牛の角合わせや錦鯉という産業を絶やしてはいけないと思う人もいる。
過疎地の問題が一挙に噴き出した感がある。
9月末、T新聞の餅搗記者がカメラなどを引き連れてY村を訪問した。
ほとんどの村人はN市に避難をしているが、農業や酪農でカタがつかない人達や、行政、つまり役場、水道、駐在所など、そして消防団は交代で、今も残って仕事をしている。人がいなければ空き巣が入る恐れもあり、火事がでれば消火しなければならない。
それと注意しなければならないのは不法投棄である。今は廃棄物を処理するのも多額の費用が掛かり、人がいない土地にさまざまな産業廃棄物を捨てる輩がいるのだ。
化学物質を捨てられると土壌汚染、地下水汚染で二度と農地に使えなくなる恐れもある。
注:不法投棄というのは山奥よりも農村の人の住む近くが多い。なにしろ捨てるにも車が入らなければならないから、4トン車が入れるくらいの道が必要だ。
福島に住んでいたとき、人家の近くでも人目の付かない場所(林の陰とか窪地とか)に多数の家電が捨ててあったり、瓦礫が山になっていたりするのを見かけた。
最近は太陽光発電パネルが壊れたりして放置されているのが多い。不要なものを自分所有の土地であっても放置するのは不法投棄です。
T新聞の一行が乗った数台の車が集落近くにくると、道路を横切って三角コーンが並んでいて、進入禁止の黄色テープが張ってある。
報道機関の人たちは自分たちを特権階級か高級国民と認識しているようだ。運転者が車を止めて躊躇なくテープを取り除き、三角コーンを道端に寄せた。
そうしているうちに、どこからともかく警官が現れて、公務執行妨害だと制止した。
なぜかと聞くと無人の住宅が多く、鍵も付けていない家も多く、また納屋などに農業機械などが置いてあり窃盗犯が入らないように警戒しているという。
どうしたら入れるかと聞くと、村役場幹部の許可を受けて案内してもらえるならば、警察は許可するという。
村役場はどこかと聞くと村役場に残っているのは、万が一が発生した時の対応者だけで、N市に臨時役場が開かれてそこに村長もいるという。
T新聞は事前に相談なしに来たから仕方がない。一旦N市に戻る。
車に乗って帰ろうとすると、警官は剥(はが)した進入禁止のテープを元通りしていけと指示した。
運転手が餅搗記者を見ると、餅搗記者は舌打ちして路上の小石を蹴飛ばした。
N市の公民館を借りて臨時Y村役場で事務をしていた。Y村の人口は2,000名で役場職員は現場も含めて40名、人口の2%だ。人口10万の都市なら1%、数十万の都市なら0.6%位で済んでいる。
考えてみれば、自治体の人口が少ないほど効率は悪いのは一目瞭然だ。
避難している今は、ゴミ回収も道路保全などの工事もないが、住民票や戸籍の窓口業務はあるし、学校関係は自前ではないが、村人の子女が通うN市の学校とのやりとりがある。
被災者住宅の番地と村の住所との対照表も作らないと郵便が届かない。更に被災者住宅に住む村人たちの、暮らし対応のお仕事は山積している。
餅搗記者が村長に会いたいというと、村長はN市との打ち合わせで今日はいないという。助役はいないのかと聞くと、被災者住宅を巡回していて戻るのは夜になるという。
もう仕事する気をなくした餅搗記者一行は東京に帰ることにした。
餅搗記者は10月下旬には絶対来てやると心に誓うのであった。
10月になった。
陸上自衛隊は新潟県知事の、史上初の災害発生前の災害派遣要請を受けて、約2,000名をN市に出動展開していた。
市消防局、建築士、防災士
崖などには近づかないように柵を設けたり表示を付けたりする。
施設科の一部はヘリポートの設営をしている。地震発生後には状況偵察や救助に多数のヘリが飛ぶだろうと航空管制も調整している。
航空自衛隊は毎日、RF-4を飛ばして空中写真を撮りまくっている。
森官房長官は23日前後と言った。それを餅搗記者は10月21日~25日と解釈した。
2日間は何事もなく過ぎた。この地震はまったく前兆はなく予測した専門家はいなかった。
M研のメンバーは基本、現地にはいかない。彼らの仕事は第一義に重大問題の情報提供であり、プランまで関わるがオペレーションには関わらない。
とはいえ、三人の若手議員は毎日一度は内閣官房に来て状況を見ている。
なお、2003年の選挙
山田危機管理監と伊藤、佐川はオペレーションまでアドバイス役を務める。3名は現地に入り危機管理監は対策本部に出ており、伊藤はその秘書である。
佐川は管理監のブレイン、相談相手である。
23日の朝
餅搗記者とカメラマンなど約10名の一行は、10月20日にN市に入っている。一日目、二日目と何事もなく過ぎた。
森官房長官は23日ごろと言った。地震23日と予測しているのだろう。時刻は言わなかったが、自衛隊や警察を見ていると緊張している気配はない。であれば午後だ。
臨時村役場に行って入村の許可をもらおうとする。
村長が出てきた。
「取材のため、入村許可を求めます」
臨時村役場の入り口に大きな模造紙が張り付けてあり「10月22日夜より、入村は禁止です」と大書されている。
村長はその張り紙を指さして言う。
「地震発生のリスクが高まっておりまして、今日以降、取材の許可は出せません。
それと本日以降は県の緊急事態が発令されまして、許可者は村長でなく県知事になります。
しかし、今日の正午をもって、村に駐屯していた民間人、警官、自衛隊も撤退する予定です。知事も許可を出さないでしょう」
「そうなの、じゃあ報道機関はどこまで行けるのかしら?」
「警察が通行止めしてるところまでです。山麓だと思います。車が通れる道は8本くらいありますが、いずれも通行止めになっています」
「歩いて行ける道もあるのでしょう?」
「車で行くのが禁止ではありません。村に行くのが危険なのです。
それに歩いて山越えは難しいですね。笹とかススキなどが密集していると草刈りしながらでないと進めません」
「分かったわ。ありがとうございました」
車に乗ると一路Y村を目指す。
途中、車の中でメンバーから話が出る。
「村に行くのですね?」
「もちろん、誰もいない村で地震が起きないことを確認するわよ」
「もし地震が起きたら?」
「撮影して送信するわ。報道機関は誰もいないからウチの独占よ。
報道大賞確定よ」
「崖崩れとか起きたら?」
「小さな崖なら崩れても、まさか、こんな山々が崩れると思う?」
「ないでしょうな」
「問題は通してくれるかどうかですが」
「強行突破よ」
道を行くと、警察が交通規制をしている。
道路に鉄でできた道路幅の車止めが置いてある。
「Cテレビのものです。取材に行きたいのですが」
「危険防止のため、ただいま道路は閉鎖中です」
そのとき反対方向から民間の車両が走って来る。
車止めのところで停まり、運転者が顔を出す。
警官が駆け寄り、中を確認する。
「これで避難する人は最後ですかね?」
「そう、この車に4名乗っています。名簿です」
「名簿確認しました。OKです。通過してください。」
道路をふさいでいた車止めを警官が道路の外に押して出すと、乗用車は低速で通り過ぎる。
その直後、停車していたC新聞の車が、向うから来た車の脇をすごいスピードで通り過ぎた。そして道路を上下に跳ねながら走り去った。
3人の警官はすぐに本部への通報、車止めを道路中央に戻すなど、分担して動き出した。
本日の興味
記者会見とか定例記者会見で、傍若無人の質問というか演説をしている女性記者がいる。
あの人の頭の中はどうなっているのか割って見てみたいと思う。
まあ、いろいろな考えがあって良いが、人に迷惑をかけないことは最低限だ。
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