タイムスリップ185 中越地震5

26.07.23

注1:この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。
ご注意ですが、法令は物語の時点を記しており、その後、改正があって現時点と異なるものがあります。

注2:タイムスリップISOとは

注3:このお話は何年にも渡るために、分かりにくいかと年表を作りました。



第184話から続く

10月23日13:30 🕜
N市にある中越地震対策本部である。
ここにいるのは、行政つまり県と近隣の市町村の長又は幹部、県警、各消防組合(注1)そして災害派遣の陸上自衛隊などだ。

平田県知事 山田管理監
渡辺さん 川端五郎 平田知事 山田危機管理監 上西
警官2 陸上自衛隊
警官3 陸上自衛隊

佐川真一

消防士
鈴木市長 長田村長
Y村村長 N市市長 消防局 佐川

Y村への道路の第3検問所から、Cテレビの車が関所破りしたという報告が入った。


警官2 「現地からの報告では、テレビの中継車・・・現場で撮影したものを通信衛星経由で放送局に送る、俗に動くテレビ局といわれるものですな・・・それ1台と乗用車1台、乗っていた人数は未確認ですが見たところ10名ほどだそうです。

それが第3検問所で避難する役場の車が出るため車止めを移動した際に、スキを見て村の方向に走って行ったということです。
この非常時にたるんでいるというか、何というか」

警官3 「それを言ってもしかたない。さて、どうする?」

山田危機管理監 「佐川君、Y村は地形が変わるほどだったというが、村の中にいても安全上問題ないか?」

佐川真一 「細かいことは分かりませんが、安全なところはないと認識すべきです。いずれにしても地震後は、村と外部との道路はすべて寸断されますから、自力では脱出できなくなるでしょう」

警官3 「ということは地震前に、自発的に村の外に出るようにしなければならないということか?」

佐川真一 「今、13:40ですか。地震は18:00ですから、あと4時間はありますね。とはいえ日没は17時、捜索できるのは正味2時間半ですか。

でも違法な侵入者ですからヘリコプターからスピーカーで呼びかけたところで、出て来ることはないでしょう。
彼らは地震の撮影が目的でしょうから、今頃は納屋とか葉の重なりの厚いところにでも車を停めて隠れているでしょう」

警官2 「どこかの納屋にでも車を隠せば、目視では見つからないでしょう。また人は、建物内にいれば赤外線でも発見できません」

陸上自衛隊 「じゃあ、放っておくのか?」

山田危機管理監 「仮にヘリで見つけたとしても、隠れてしまって救出に応じないでしょう。
一応ですが、ヘリを飛ばして見えるところに出てこい、出ない場合は地震前の救出はできないと放送してください。
面積にして6キロ四方、500m間隔で飛べば6キロ5往復だから60キロ、時速60キロでも1時間か」

平田知事 「証拠作りか?」

山田危機管理監 「相手はマスコミですから、後で被害者意識丸出しでしょう」

警官3 「よし、山田さんが言うようにヘリを飛ばす。放送する文言は、『早急に危険地域から出ること。車が故障などの場合はヘリコプターに合図をしろ。出ない場合は地震後にしか救出はできない、今から地震が治まるまでの間、なるべく崖から離れた平らなところにいること』、それを文章にして、公報してくれ」

山田危機管理監 「では、それで行きます。ヘリは自衛隊から出してほしい。1機準備してください」

陸上自衛隊 「了解、今13:55ですので、14:10にはUH-60を離陸できるようにします」

山田危機管理監 「飛行の手間と費用は控えておいてください。あとでテレビ局に請求します」

警官2 「それだけでなく、関所破りで逮捕しますよ(注2)

平田知事 「この緊急時に、余計な仕事を作って捜索や救出に自衛隊の力をそぎ、対策本部の業務に支障を与え、被害縮小化への作業を滞らせる。
まさに反社会的犯罪行為だ」


一同、首を縦に振る。




14:30 🕝

Y村 廃校の建物内
10月になると山地でもあり結構寒い。餅搗(もちづき)記者を始めテレビ局と新聞社の一行は、Y村の廃校近くの森の中に中継車を停めて、人間たちは廃校の中に身を隠していた。
今は、教室の中で、10名ほどがコンビニ弁当を食べている。


ご注意!
似た御芳名の女性記者が実在しますが、この小説とは関係ありません。


「やれやれ、面倒事があって昼飯が遅くなっちゃったな」

<ruby>餅搗<rp>(</rp><rt>もちづき</rt><rp>)</rp></ruby>記者 「まあ、目的地には辿り着いたわ、後は待つだけ」


遠くにヘリコプターが飛んでいるのが見える。
スピーカーで何か話しているが、まだ遠く、言葉は聞きとれない。


「ヘリコプターが飛んできましたよ。なにかスピーカーで放送しているようです」

「危険だから速やかに退去しろとでも言っているのだろう」

やがてヘリが廃校の上空を通過していく。大きな音で放送しているのが聞こえる。

『間もなく地震発生の恐れがあります。ヘリコプターで救出するから手を振ってください。
現れない場合は地震後にしか救出はできません。その場合は地震が収まるまで、なるべく崖から離れた平らなところを見つけて避難すること』


「今、自首しないと地震を体験しろということかな?」

<ruby>餅搗<rp>(</rp><rt>もちづき</rt><rp>)</rp></ruby>記者 「地震なんて起きないわよ」

「昨日、自衛隊で聞いた話ですが、山間には谷川が多数あり、もし地震で土砂崩れが起きると、谷川が土砂崩れで堰き止められ、その越流水が村内を流れて泥沼状態になるそうです。
外部から車も人も通れなくなると言ってました」

<ruby>餅搗<rp>(</rp><rt>もちづき</rt><rp>)</rp></ruby>記者 「フン、そんなの嘘よ。まず地震が起きるかどうか、次に土砂崩れが起きるかどうか、更に谷川を堰き止めるかどうか、あげくに液状化するのかどうか、確率をかけ合わせれば1%もないわ」

「大丈夫ですかね?」

<ruby>餅搗<rp>(</rp><rt>もちづき</rt><rp>)</rp></ruby>記者 「連中はイラク支援に自衛隊を派遣したくて、大地震が起きると言って国民の目をそらそうとしているだけよ」




16:50 🕔
中越地震対策本部である。


山田危機管理監 「時間だ、侵入者が現れないので救出作戦を終了する。自衛隊のヘリは帰還するように。着陸時は日没後になるので厳に注意するように」

陸上自衛隊 「了解しました」

山田危機管理監 「おっと、本当の指揮官は県知事なのだ。私が命令して良いのか?」

平田知事 「良い、良い、元警視総監の山田さんが適任だ」

陸上自衛隊 「山田さんを官房長官代行と思えばよろしいのではないか。
ところで予知された時刻は17:56、あと1時間ジャストですな」

山田危機管理監 「それでは指令部以外は17:30をもって、屋外に避難するように、各省庁、各機関へ再度、周知徹底のこと。」

陸上自衛隊 「自衛隊は既に計画した地点に配置しております。
それからヘリは状況把握のため、ただいまより4機離陸させます。警察のヘリは地震が収まるまで待機とします」

鈴木市長 「N市の市長です。市民には地域ごとに避難場所を指定して、17:30までに避難するように周知しています。
拡声器 その時刻にサイレンと防災行政無線の放送をします。
避難対象外の病院は耐震を確認しております」

上西 「東北電力です。予め停電すると決めていた地域は17:00で給電を止めました」

渡辺さん 「避難できない施設で、病院などは自家発電のないところは転院などで対応済です」




17:30 🕠
Y村 廃校

ヘリコプターが去ってから20分くらい経つ。太陽はヘリコプターがいなくなる前に山の陰に隠れてしまった。山間の地は、暦の日没よりも遥かに早く夕闇がせまる。
連中も暗闇は飛べないらしい。自衛隊なんて技量があるのかないのか?
餅搗は、自衛隊などなくなれば良いと心底思っている。


「静かになったところで、村の様子を見て回りますか。中継車を出しましょう」

「村の撮影をするなら日没前の方が良かったなあ」

餅搗記者 「自衛隊のヘリに邪魔されたわ、役に立たず邪魔ばかり」

「ここは廃校になっても電気が来ていたのですが、なぜか30分ほど前から停電になったようです」

「地震で電気火災が起きるリスクを嫌ったのかな?」

「中継車があれば安心です」

餅搗記者 「上空から見たら、明るくて私たちがいる場所がバレちゃう?」

「まあ、そうですが、もう警察か自衛隊か分かりませんが、ヘリを飛ばしてはこないでしょう」


と言っているそばからヘリの爆音というかローターが回る パタパタ音(ブレードスラップ) が聞こえる。


「あれ、暗くなってからヘリコプターが飛んできた。N市の方角からだ。それも1機や2機じゃない。何機も飛んでいるようだ」

餅搗記者 「私たちを探しに来たの?」

「それほど我々に執着はないでしょう。なんでしょうかね?
とりあえず中継車の照明を消しましょう」


照明を消して、ついでに車のエンジンも止めた。照明を切ったならエンジンをかけておく意味がない。
遠くのヘリの音を除くと、まったく音がない。闇が一層濃くなった気がする。
時計を見ると17:45を過ぎたところだ。


餅搗は考える。官房長官は『23日頃』と言った。夜か昼か分からないが、仮に23日が正しいとすると、残りはあと6時間少々。地震は暗くなってから起きることになる。
ヘリコプターは我々を救出するためではなく、地震による被害状況を撮影とかするために飛んでいるのだろうか?

地震予知は何時何分まで分かるのだろうか?
そう考えて、急に震えが来た。官房長官が語ったことが本当ならどうしよう。
山が崩れるような大地震がくれば・・・この廃校の校舎もグラウンドも山から流れてきた土砂で埋まるだろう。
今は・・・17:50、あと6時間以内に
餅搗は急に気温が下がったように感じた。


餅搗記者 「万が一、地震が起きたらここは安全でしょうか?」

「さあ? 分からないけど明るいとき見たら、ここが一番広い平地のようだ。この村は山か谷か傾斜地しかない。
地震のときどこが崩れるのか知らないけど、ここにいてダメなら他所ならもっと危ないと思うよ」


誰か分からないが中継車のエンジンをかけてグラウンドから学校の前の道路に出した。
地震が来たとき避難するには、道路まで出しておけば安心と思ったのだろう。

ちょうどその時、17:56になった。
それは別段意味のある時刻ではなかったが、このときから中越地震が起きた時刻として記憶されることになった。

突然ものすごい揺れと大きな音が始まった。見ている前で学校前の道路が崩れ、中継車は横倒しになった。スローモーションのように見えたが、実際はあっという間なのか、それとも数秒かかったのか、分からない。
後でものすごい音がしたので振り向く。

学校の後ろ側の林は結構急な上り斜面になっているのだが、その斜面の表層数メートルがテーブルクロスのように滑ってくる。生えている木々もそのまま一緒に学校の方に流れて来る。
がけ崩れ 木々が倒れることなく100m以上の幅で自分の方に押し寄せてくるのを見ると現実とは思えない。
急に手を引っ張られた。カメラマンが餅搗の手をつかんで、校舎から遠い方に引っ張っていく。

小さなグラウンドで半分崩れた道路まで数十メートルしかない。要するに逃げる余地はそれしかないのだが、流れてきた林は校舎を飲み込み更に10mほど進んで止まった。

中継車を動かしていた運転手が、横倒しになった車のドアを何とか開けて脱出してグラウンドの方に戻ってきた。車の周囲は水が流れているとかで、ズボンはほとんど全部濡れている。

皆、山側は山から崩れてきた土砂で、反対側は道路が崩れて、その間、グラウンドの中央部の、幅20mほどの安全地帯に呆然と立っていた。上からまた土砂崩れが来ても、道路側の崖崩れが大きくなっても、もう逃げるところはない。


地震はどれくらい続いたのか分からない。後で調べると本震があって、3分後に余震があり、その後も数分おきに震度5以上の余震が10数回起きた。治まったのは8時頃、なんと2時間も揺れ続いていたのだ。
この中越地震が、地震計で震度7が記録された最初となった(注3)


「餅搗さん、道路は上流の小川が堰き止められたようで、泥水が冠水状態だ。
大分寒くなって来たし、運転手はずぶ濡れだ。このままでは下手すると凍死の恐れもある。
あの様子じゃ、校舎の中に置いた衣類は掘り出せませんね。
救助を呼べないかな」

餅搗記者 「既に私は何度もかけてみたけど、携帯電話がつながらないわ」

「村にも何カ所か基地局があると思う。携帯の基地局は二次電池が停電でも大丈夫なはずだけど」

「地震で設備そのものが、倒れたり・壊れたりしたかもしれない」

「ここは山間部だから、基地局を介せずに直接は都市部とはつながらないだろう。
高いところまで登って、見通しの場所、できれば明かりが見えるところから電話してみるか」

「都市部も停電で使えないかもしれないよ」

「うーん、それはありえるな」

餅搗記者 「誰か元気な人がチャレンジできないですか?」


結局、男たちが話合い、若手二人が高いところまで行ってみることになった。

いずれにしても夜の気温低下、そして上流で谷川が堰き止められたための越流らしき道路上を流れる水でほとんどのメンバーの衣類が濡れている。
そのため残りのメンバーは中継車から着替え、あるいは重ね着できるものがあるか探すことになった。

中継車の近くまで寄って見ると、中継車は90度横倒し状態で、入るには車体を登ってドアを引き開けて入らねばならない。
周囲は道路の下の地面が崩れて、道路の端の方は崖下にボロボロと崩れかかっている。しかも道路上は10センチほど冠水して泥水が勢いよく流れている。道具もなく人間の手だけでは、探す前からやる気が出ない。
とはいえ中継車を林の中やグラウンドに停めておいたら、今は土砂の下敷きだった。道路まで出しておいたのは幸運だった。




電話で救助を求める役になった二人は、学校の裏山と思った高みに向かって歩く。
実はそれ裏山ではなく越後山脈の尾根の一つだ。


「頂上まで何キロくらいあるんだろう?」

「たいしたことない。地図を見たけど市街地まで直線で6キロくらいしかない。
我々は途中にある尾根に登っていることになる。頂上というか尾根までせいぜい1キロでしょう。
だけど、この地震で山肌が流れてしまったようで、1時間は歩いたが、いかほど進んだか見当もつかない」

「500m以上1キロ未満か?」

「そんなところだろう。
連絡つかないと我々全員遭難か」

「地震が収まったら救助は来るさ」

「衣類が濡れたのと今晩の寒さで、凍死しなければ良いけど」


やっとの思いで尾根まで辿り着いた。街のある方向を見ても真っ暗で何も見えない。
二人は東北電力が給電を止めたことを知らなかったのだ。

  ・
  ・
  ・

とにかく、ダメもとで119に電話する。電話をする

「はい、こちらはN市消防局です。
火事ですか? 救急ですか?」

「遭難です。Y村にいて地震のため孤立しました」

「お待ちください、災害対策本部に回します」

  ・
  ・
  ・

ホイスト救助

幸運にも携帯電話は通じ、ヘリによる救助を依頼することができた。
尾根まで上がった二人は、そこを動くなという。そしてヘリが来て吊り上げて救出してくれるという。

学校跡地にいる人も着陸するスペースがないので、ひとりひとり釣り上げるホイスト救助しかないという。
ともかく役目は果たしたと、二人はホッとした。




21:00 🕘

餅搗たち一行が、Y市に作られたヘリポートに降ろしてもらったのは21:00過ぎであった。
テント すぐに病院に運ばれた。とはいえ病院の建物ではなく、自衛隊のテントの野戦病院である。


医者 「軽い低体温症が2名か、あとは少々の打撲だけだ。
軽くてよかったですね」

餅搗記者 「死ぬかと思ったわ」

医者 「そう簡単には死にませんよ。新潟県警の方が事情をお聞きしたとのことです。
あの警官と一緒に行ってください」

餅搗記者 「なにかしら? 村の状況でも聞きたいのかしら」




新潟県警と看板が出ている何個か先のテントに入り、ひとりひとり別の部屋というか仕切りに入れられた。事情聴取は1人1人するようだ。

結果として一行は村の状況を聞かれるのかと気楽に思っていたら、建造物侵入罪と公務執行妨害だと言われて驚いた。
ましてやお騒がせにヘリコプターで救助まで要請したとダメ押しされた。

話合い

餅搗が自分たちはマスコミだから、報道するときは多少の無理は許されるとか言い出して、余計心証を悪くしたようだ。
その間も地震が収まらず、皆、殺気立っている。物見遊山ではないかと何度も言われた。マスコミ報道とは法を無視した火事場泥棒のようなものかと厳しい。

餅搗は余計なことを言ったためか拘留された。
それと中継車を率いたのはCテレビのディレクターだが、検問所突破とかヘリコプターの呼びかけを無視したのは餅搗の指示だと同行者全員が証言したこともある。




大地震が起きた後は、これで当面の処置は完了というわけにはいかない。被災者住宅は事前に建設していたが、恒久的な住まいをどうするか、そもそも生活設計をどうするか、自治体を再建するのか否か、検討事項は終わりがない。

ともかく2週間もすれば地震直後の第一段階は終わった。
佐川が経験した歴史では死者68名(災害関連死含む)だったが、この歴史では死者ゼロを達成した。なにしろ佐川の情報を基に2年間も被害防止の対策をしてきたのだ。
それでもかかった費用は前の歴史の数割にとどまった。人的被害を考慮すれば黒字は間違いない。




11月半ばである。 最終的にT新聞の餅搗記者は略式命令で、罰金10万円、それ以外のクルーは同5万円の有罪となった。形の上ではめでたく前科者である。

それだけでなく検問所の破壊、ヘリコプターを飛ばした経費が請求された。燃料、人件費などを合せると200万を超えた(注4)でも10人で分割すれば問題ないだろう(たぶん)。


餅搗はT新聞社から懲戒処分を受けたが、退職願を出して受け入れられた。
新聞社を辞めてもジャーナリスト(注5)であることはできるだろう。なにしろプロゴルファーとは違い、「私はジャーナリストだ」と言えばそうなのだから。




11月下旬
略式命令が出た後、官房長官の定例記者会見でY新聞の記者から質問があった。


Y新聞記者 「ご記憶にあると思いますが、7月初めの記者会見で10月に地震があると公報されたとき、当時T新聞にお勤めの餅搗記者と、地震が起きなければ森官房長官が辞める、地震が起きたら餅搗さんがジャーナリストを辞めるという賭け、いや約束をされたと記憶しております。
公報通り地震が起きました。ついては餅搗記者についてのコメントを頂けますか?」

森官房長官

桐の紋章

森官房長官 「ハイ、しっかりと覚えております。
私が公報した通り地震は起きました。もちろん予知されたことに対して、新潟県及び該当する市町村、並びにJR東日本、東北電力などの協力、そして総務省、警察庁、防衛庁、内閣府、私の内閣官房も一致団結し力を合わせ事前対策を行いました。
その結果、史上初の震度7を記録した大地震でしたが、目標としていた死者ゼロを実現しました。

もちろん阪神淡路大震災の経験を生かしたこともありますが、予知を受けて対策したことの効果が大であると考えます。
この地震の対策には今まで約100億円のお金をかけたわけですが、手を打たなかった場合は死者100名、復旧に2,000億かかると見積もっております(注6)自画自賛ではありません、よくやったと思います。

今後とも地震予知の精度向上を研究者にお願いするとともに、行政も民間企業も被害削減、死者ゼロを目指して励んでいきたいと考えます」

Y新聞記者 「あのう~、餅搗記者がジャーナリストを辞める件ですが・・・」

森官房長官 「私にとっては、それは既に過去の話です。ご本人もご自身の発言を反省されていると思うので言うことはありません」

Y新聞記者 「ということは、彼女がジャーナリストを継続することを認めるということですか?」

森官房長官 「ジャーナリストを辞めるか辞めないかは、私が、どう思うかとは全く関係ありません。
彼女は私との勝ち負けではなく、地震が起きないと信じて己の名誉を賭けて発言したわけです。誤ったらジャーナリストを辞めると語ったわけです。

ですから、辞めることによって彼女の名誉は守られたのです。あれはなかったことにすることは、餅搗氏ご自身が誇り高い人間ではないことになります。
餅搗氏が自分の名誉を重んじる方なら、そんなことはあり得ないでしょう、違いますか?」

Y新聞記者 「いや、おっしゃる通りですね。納得いたしました」


このやり取りが報道され、誰もが餅搗記者のジャーナリストを引退することは本人の矜持であり名誉を守ることとで、復活はあり得ないという認識となった。
もし今後、ジャーナリストに戻りたいというなら、石を投げられ笑われるだけだろう。

自宅でテレビを観ていた餅搗は言った。


餅搗記者「悔しい」



うそ800 本日の言い訳

全然、地震対応が出てこないとおっしゃいますか?
地震対策はまず災害が及ぶ範囲での、徹底した事前避難によって死傷者が出るのを防ぎました。
建物、道路などは弱いところは補強した。また別の歴史であまり被害がなかった地帯でも、事前避難、事業活動の停止を徹底した。道路や建物内にいる人を最小限にした。

あとは出た被害を復旧し、問題や反省を次回にフィードバックするだけです。
人が残れば物は作れます。


今、「海軍ダメージコントロールの戦い(注7)という本を読んでいます。軍艦は戦うのが商売。勝っても負けても、戦闘によるダメージを受け、放っておくと戦闘ができなくなるし、最終的には船は沈んでしまう。

戦いながら船の損害を修理し機能を維持し戦いを継続すること、まさに究極の事業継続です。通常の災害と違い、考えてから実行しては手遅れ、手を動かしながら考えねばなりません。

BCMの本を10冊近く読みましたが、「海軍ダメージ・・・」の方がはるかに現実的で実用的で納得できます。
まさしく実戦に勝る訓練はない、実戦は最良の訓練です。
もちろん戦争するのが良いというわけではございません。



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文末脚注
  1. 消防組合とは、複数の市町村が共同で消防や救急活動を行うために組合を作ることが多い。小さな市町村では十分な消防体制を維持することが難しい。似たようなものに水道組合とか廃棄物処理などの組合を作ることが多くなっている。


  2. 規制線内に不法に入ったときの罪
    (1)軽犯罪法違反(第1条1号・第1条31号)
    警察官などの公務員が立ち入りを禁じている場所や、犯罪・事故の現場で立ち入りを制限している場所に正当な理由なく入った場合、拘留または科料に処す。

    (2)建造物侵入罪・住居侵入罪(刑法第130条)
    立ち入った場所が他人の住居や敷地、あるいは管理された建物であった場合、管理者の意図に反して侵入したとみなされ、重い刑罰(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)の対象になる。

    (3)公務執行妨害罪(刑法第95条)
    警察官が現場の保全や捜査を行っている最中に、制止を振り切って無理やり中に入るなど、警察の正当な職務執行を妨害したと判断された場合に適用される。


  3. 観測史上最初に震度7を記録したのは阪神淡路大震災となっているが、これは地震計で測ったのではなく、その後の調査で震度7とされたもの。地震計で震度7を記録したのは中越地震が最初である。

    震度7を記録した地震は2026年時点で6回である。
    ・阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)1995年1月17日
    ・新潟県中越地震2004年10月23日
    ・東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)2011年3月11日
    ・熊本地震2016年4月14日・16日
    ・北海道胆振東部地震2018年9月6日
    ・能登半島地震2024年1月1日


  4. 略式命令は100万以下の罰金に限られる。200万円は検問所の設備の損壊などの費用請求で、刑事事件ではないので別口である。


  5. ジャーナリストの仕事とは?種類・年収・なり方を徹底ガイド


  6. 中越地震の復旧に要した金額は6年間で2,000億以上とされる。
    ちなみに韓国からの見舞金は10万米ドルで、これは当時の為替レートで1,080万であった。そのとき清原和博からの見舞金は1,000万円であった。韓国はすこしケチではないですか?


  7. 「海軍ダメージコントロールの戦い」雨倉孝之。光人社、2019年







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