Jeremy Wall: Cool Running - "Spyro Gyraを創ったKeyboard Player"

キーボード奏者 Jeremy Wall "Cool Running" を紹介します。Jeremy Wall といえば、今や超有名バンドとなったSpyro Gyraの創設メンバーの一人です。Spyro Gyraの原型は、1970年代始めにそのリーダーであるAlto Sax 奏者 Jay Beckenstein Jeremy Wall の二人を中心として作られたセッションバンドです。1976年のデビューアルバム"Spyro Gyra", そしてメジャーヒットとなった1979年の"Morning Dance"では、Wallはフルにキーボードを担当しただけでなく曲も数多く提供し、リーダーのBeckensteinAlto Saxとともに初期のSpyro Gyraサウンドの二枚看板となっていました。

Wallは、二枚目を最後にSpyro Gyraのレギュラーキーボードの座を Tom Schuman に譲り、三枚目の "Catching the Sun" 以降は曲の提供やアシスタントプロデューサとしてスタジオ録音に参加するだけになってしまいます。Wall Spyro Gyra を離れた理由は良く知りませんが、 Wall が抜ける前と後で Spyro Gyra のサウンドは大きく変わりました。まず第一に最初の二枚のアルバムには彼らの原点であるセッションバンドの持つ野性味がたっぷり残されていました。第二に、ひとひねりしたアレンジによる見せ場が多かったように思います。特に"Morning Dance"に収録されたナンバーにはリズム転換やダイナミックなパーカッションブレイク等がふんだんに盛り込まれていました。

Wall が抜けた3枚目からは、よくも悪くも今よく知られている Spyro Gyra のサウンドに落ち着いたという感じがします。もちろん、今の定番化した Spyro Gyra(ほとんどSmooth Jazz 界の「水戸黄門」)も好きですし、また、現キーボードの Schuman の力量も昔から定評の有るところです。とはいいながら、私の中では Jeremy Wall のいた初期のSpyro Gyraの印象が鮮烈すぎて、いまだに今の Spyro Gyra は自分の印象の中の Spyro Gyra とは別のものという感じがしています。

このような印象を持ち続けているもう一つの理由は、鍵盤奏者としての
Jeremy Wall のサウンドが好きであったというのも大きな理由だと思います。そう、Jeremy Wall のピアノ・キーボードのサウンドは「すっきり・くっきり」して一つ一つの音の輪郭が鮮明なのが特徴です。1991年に発表されたWall の初のリーダーアルバムの "Cool Running" というタイトルはまさに Wall のサウンドにぴったりマッチしています。初期 Spyro Gyra の持つ独特の透明感のあるサウンドは彼のキーボードによるところが少なくなかったことが良くわかります。

Jeremy Wall: Cool Running の収録曲(30秒ずつ試聴可)
1. Out Of The Blue
2.
River run
3.
Key West Strut
4.
Global Village
5.
The Way Home
6.
Cool Running
7.
Ancient Words
8.
Water Ryhthm
9.
Their Hands Are Blue
10.
Into The Sunset

Wall
は、その後もう一枚 "New World" というアルバムを発表しますがセールスはのびなかったとのことです。何だか、「ビートルズになれなかった男」のような感も有りますが、私の中では間違いなくJeremy Wall こそが Spyro Gyra でした。
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