地蔵谷

日時 2010-8-13 場所 兵庫県神戸市(六甲山) 天候 晴 33℃(神戸市)
工程 JR新神戸駅 → 布引貯水池 → 市ヶ原 → 地蔵谷 → 掬星台 → 天上寺跡 →
虹の星駅から摩耶ケーブルで下山
時間 6.5時間 (地蔵谷遡行時間は2時間) 平面距離 km
私的
分類
道程:ウキウキ系 明るい

本サイトでは、方向を指す場合の右・左の記述は、自分の進行方向に対する方向を意味します。

2008年に行った、大月地獄谷ショックの後遺症がとても重くて、しばらくは六甲山の谷に行く気にはなれなかった。
とは言え、近場で、電車で行けて、帰りに焼き鳥屋の誘惑に負けてもいい六甲山の谷は、とても魅力的。三ノ宮からアクセスできる六甲山の沢があると知って、久しぶりに訪れてみることにした。

概要

地蔵谷は、若干砂がちで茶色い小岩が点在する、典型的な六甲山の沢の景色ではあるけど、流れは清流感があり、水量も多く、中流域きには、ダイナミックな岩場や大滝が点在し、西山谷に次ぐ、明るく楽しい沢である。

堰堤が少なく、それを越えていくのも大した事はなくて、六甲山の谷ではなんと言ってもこれが一番嬉しい。

ルート

10:30 新神戸駅を出発。

コンクリートで舗装された急坂は気温が高く、ポンプ滝の布引の滝は見向きもせず、死にそうになりながら、なんとか五本松かくれ滝に到着。
台風4号が去った直後で、貯水池が放流中らしくすごい水量

布引貯水池の遊歩道は日陰でアップダウンもなく、気持ちよく歩けるが、貯水池を離れ市ヶ原までがまた結構厳しい。

途中、境内のような場所に猪がいたが、完全に人なれしていて、カメラを向けると「なんかくれ」とばかりに寄ってくる。何も無いと見ると、さっさと元の場所に戻っていった。

やさしそうな顔をしたイノシシ。なんや、なんもないんか?と去っていった

市ヶ原からトゥエンティクロス・森林植物園方面に北上する山道は、階段が連なる勾配のあるルートで、暑さでモウロウとなりつつ11:50AM、地蔵谷の出会いに到着。

地蔵谷に足を踏み入れると、早速綺麗な渓谷が見え始める。さっきまでの猛暑の試練なんか、すっかり忘れて期待が膨らむ。はやる気持ちを抑えつつ、この谷に入ってから最初の堰堤である、地蔵谷第1堰堤までは、巻き道をそのまま登る。
出会いからの所要時間は5分弱。

第1堰堤を越えると山道は沢に降りるが、堰堤の上流側は、例によって大量に堆積した土砂とその上を流れるチョロチョロとした泥沢があるだけで、ここではとても入渓する気にはなれない。
この土砂の下にはさっきまで見えていた様な、美しい渓谷がうずもれてしまっているのである。

ともかく、もう少し蒸し暑い山道を辿る。

地蔵谷に入ってから10分程で下の写真のような構造物がある。
これをくぐってすぐの地点で、道が沢に近付くので、

ここで入渓♪ チャポン!!

早速、綺麗な渓谷美が始まる。澄んだ水と涼しい気温がとても心地良い。それほど水深もなく、険しい箇所もなく、傾斜も緩やかで、それでいて水量も豊か。まだこんな楽しい渓谷が六甲山にあったのか!と嬉しくなる。

激しそうに見えて、実は大した事がない斜瀑と戯れる図。

12:20 行く手に堰堤が見えてくる。左手に「登山用道路」という看板がある地点から巻き道に入り、第2堰堤を巻く。

第2堰堤を左手から越えてすぐのところで、再び入渓できるポイントがあるが、ちょっと行くと非常に落差の大きな「地蔵谷大滝」に突き当たる事になる。
実際に行ったわけではないので定かではないけど、この大滝付近からの巻き道はなさそうなので、滝を見たらまた引き返してきて正規の地蔵谷ルートに復帰するしかないようである。

それでも、この滝は一見の価値はありそう。この入渓ポイントから、滝まではそれほど遠くないので、時間と体力に余裕があれば、滝まで行って、再び帰ってきてもいいかも。

という事で、我々は時間も体力も無いので、地蔵谷大滝に寄り道しないでそのまま山道を進む。

地蔵谷大滝の上流部分は岩盤の地層になっていて、めっちゃ楽しそうである。

沢に降りたくなる衝動を抑えて(降りてしまっても良かったけど)、しばし進むと巨大な岩盤を削り取って落ちる滝があり、その上流部が渓谷を横切る渡渉ポイントになっている。

この滝の落ち口は、陽当たりがよく視界が開けた広い空間になっていて、少し上流に行けば木陰と清流と涼しい風が吹く絶好の休憩ポイントである。

お昼にするのは、ここ以外に考えられない!
時間は12:30
例によって、レジャーシートを広げて陽気なピクニック御一行状態である。
まぁ、この辺りは、明るく楽しい雰囲気なので、それほど違和感はないと思うけど:p

天狗道の尾根が良く見える。

景観と雰囲気と涼をゆっくり楽しんで、13:20出発。
ここからは再び、沢を直接遡上する。

下流よりも、スケールが大きくなり、小さな斜瀑が次々と現れる、ダイナミックな渓谷が続く。


20分ほど歩くと、左手から合流してくる支流との出会いがあり、その支流の先にはまだ新しい2段の堰堤が見えている。

右手に続く本流をさらに遡上すると、13:50、地蔵谷第3堰堤に到達。
堰堤の際までそのまま進み、壁際の右手側の緩やかな斜面を堰堤の上まで登る。それほど高くないので簡単に堰堤の上に出る事ができる。

堰堤上流部の水溜まりは、六甲山の堰堤上部にしては珍しく、透明で澄んだ池になっていて、結構水深があるにもかかわらず、底まで見えている。殆どの堰堤の上流側の溜まりは、“沼”と化していて気持ち悪い。

この池を巻きながら上流部の沢に降りれる地点まで山肌を進んでもよかったのかもしれないが、自分達はこの堰堤の遥か上方に見える、正規の地蔵谷登山道まで戻る方法を選択した。山肌をそのまま進めたのかどうかは、今となっては思い出せないが、藪漕ぎは必至だったという気がする。

この堰堤から上部の山道にいくには、殆ど崖を直登する格好になるが、握りやすい細さの、しっかり根のはった木々がたくさんあるので、それほど危険ではない。
どこかの谷のように猛烈な下草がないおかげで、薮漕ぎ状態でもないので精神衛生上も楽だし:-)

結構な高度があったが、山道の落下防止柵付近にイバラが群生している事をのぞけば、簡単に山道に到達することが出来た。

山道の柵はまだ遥か上方・・・

最後は柵に掴まって・・・、と。

山道に復帰!

手すりの設けられた山道に復帰し、そのまま進んでいると、すぐに沢に合流。
ルートは、まずは小さな支流を渡り、そのまま対岸の尾根に登っていく。

この支流を渡る地点で、下流の方からひょっこりと人が現れる。
「道、ありますか?」と聞かれる。迷子になってさまよって来たとの事。

「ええ、ありますよ」と答えたものの、これは正確ではない。
「柵のある箇所に来たら柵を越えて、堰堤まで降りてくださいね」と言うべきだったか?だって、自分達が正確に知っているのはそのルートだけだし。あの人、無事下山できただろうか?

それはともかく、この支流に降りた時点で山道を捨てて、迷子の人が辿ったであろうルートを辿る事にする。
すなわち、一旦支流を少し下り、地蔵谷本流との合流地点から再び遡行を開始するというルートである。

この第3堰堤を越えてからのルートも相変わらず、変化に富んだ楽しい沢が続く。
14:00を過ぎているけど、沢は涼しく木漏れ陽が心地いい。

14:20 石積み風の2段の堰堤に到達。

ここで、遡行終了とする。
六甲山では、いつも渓流シューズからトラックシューズに履き替えるロケーションに苦労する。普通の沢であれば、上流に行くほど、岩がちの険しい景観になり、いくらでも巨石の上にスペースがとれるのだけど、六甲山では大抵、堰堤の前で、ゴロゴロとした小岩しかなく、スペースが取れない。

この堰堤を越えても、渓谷と平行して地蔵谷は続くが、ここから上流は水量も少なく、泥っぽくなり、傾斜も増す。何より次々と堰堤が現れるので、遡行は困難だと思われる。

途中で黒岩尾根方面への道標があり、この地点で地蔵谷は終了。続いて同じ道なりに、そのまま天狗道が始まる。
15分ほどで六甲縦走路にぶつかるので、ゴロゴロ坂・掬星台を経由して下山した。

麓から地蔵谷にたどり着くまで結構な距離を登山する必要があり、夏はその点だけが難ありだけど、それでも行く価値のあるとても楽しい沢だった。
今回も、2人とも顔を虫に刺されて、エライ事になったが、これも六甲山の山歩きの恒例である(他の山の沢では、藪漕ぎをしない限り、虫に刺された記憶がない)

これも電車登山の恒例になりつつあるが、帰りに焼き鳥屋に吸い込まれたのは言うまでもない:D