本サイトでは、方向を指す場合の右・左の記述は、自分の進行方向に対する方向を意味します。
日時 | 2008-9-14 | 場所 | 兵庫県神戸市(六甲山) | 天候 | 晴 31℃(神戸市) |
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工程 | JR住吉駅 → 渦森橋 → 大月地獄谷 → バス・ケーブルにて下山 | ||||
時間 | 8時間 | 平面距離 | XXkm | ||
私的 分類 |
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本サイトでは、方向を指す場合の右・左の記述は、自分の進行方向に対する方向を意味します。
夏のシーズン終わりの沢として本当は氷ノ山山系の滝に行く予定だったが、天気がはっきりしなかったため、急遽近場の大月地獄谷に行くことにした。インターネットを検索して先達の情報を読んでいると、「みよし観音」のところに出る、との事。みよし観音は六甲ガーデンテラスの目と鼻の先。だったらお昼はそこでしよう♪という計画で出かけたものの・・・
この谷は半端じゃない藪と無数の堰越えが続き、いわゆる「沢」はどこにも無い。後半になるほど踏み跡がなくなり、谷筋は藪に埋もれて視界から消え、正しい方向への何の手がかりもない。
(自分達のように)軽い気持ちでいくと、とんでもない試練を味わうことになるかも。
ただ、大月地獄大滝は一見の価値あり。この滝を見たらすぐに引き返すのも選択肢の一つかと。
JR住吉駅前のバス停から、8:52発の38系統渦森台行きのバスに乗り込む。
「渦森橋」停留所で降りて少し下り、住吉霊園方向の車道にはいって進む。右へのヘアピンカーブのところで石積みの堰堤が見える。ここから山道に入る。道標はない。
時間は9:15AM
最初の石積み堰堤と次の巨大なコンクリートの堰堤を右手から巻いたあと、谷に降り立つ。
初っ端から泥だらけで、テンションが上がらず。
20分ほど歩いたところで小さな古い堰堤がある。こんな堰堤でもよじ登ることは難しくて、巻かなくてはいけない。この谷ではこんな堰堤が20個以上はあったような気がする。巨大なコンクリートの堰は数えただけで14個あった。
渓流シューズに履き替えるかどうかは微妙なところ。滝を直登して少しでも楽をしたかったら履き替えた方が断然安全だけど、それ以外はトラックシューズが正解。
殆どが藪漕ぎをしているか、泥沢を歩いているかなので。
9:50AM。少しだけ沢っぽくなるも、泥っぽくてなんだか楽しくない。
この泥っぽい沢を歩くこと10分くらいで、谷に入ってから最初の大振りのコンクリートの堰堤。この後、延々と堰堤が現れる。
10:14AM コンクリの堰堤 その2
10:28AM コンクリの堰堤 その3
10:54AM 石積みの堰堤
10:57AM 石積みの堰堤
11:03AM 石積みの堰堤
11:07AM 石積みの堰堤
11:11AM コンクリの堰堤 その4 (紅葉谷堰堤 ここで20分ほど休憩)
11:53AM コンクリの堰堤 その5
12:23AM コンクリの堰堤 その6 (紅葉谷第二砂防ダム)
泥と小石の楽しくない沢筋を歩き、背丈ほどの藪をかき分けながら、巻き道を通って堰堤を越える。藪にはイバラが交じり、それをかき分けるのは大変。堰堤を越えたら再び藪をかき分けて沢筋に戻る。
場所によっては背の高いブッシュの茂みで沢筋を目視で確認できず、かすかに残る「踏み跡」の痕跡を探しながら無理矢理、藪に突っ込む。
こんな事を繰り返しながら、少しずつ進む。時々赤テープがある事もある。
あーもう楽しくない。
紅葉谷第二砂防ダムからは、上流に向かって左側に切り立った崖が見え、結構上流に来たような気がするのに、まだF0(紅葉滝)にすら到達しない。
紅葉谷第二砂防ダムを越えると、すぐに分岐がある。これは右手方向にすすむ。
この辺りで、時々、水面すれすれを飛ぶ小鳥が、自分達を先導する。彼らはとても楽しげだ。
分岐から5分。やっと小ぶりな滝が現れた。
12:45。F0 紅葉滝到達。
この時点では、六甲ガーデンテラスのランチのラストオーダー間に合うかなぁくらいにしか考えてなかったのだから、のんきなものだった。
紅葉滝は滝の右側を、今にも切れそうな古びたロープを頼りに登る。
13:00。コンクリの堰堤 その7。
この堰堤からは壁にステップが取り付けてあり、直接、堰堤を昇降できる。良かった。・・・と喜んでいる場合じゃない。
この辺りも、すっかり藪で覆われている。
その茂みの向うに物々しい構造物が見えた。下の写真のような藪をかき分け進む。
13:05。この堰堤はそのまま下をくぐる。
この堰堤の前も後ろも猛烈な藪だというのに、ここには何もない。自分達にとってはほっとするものの、周囲の強烈な自然からは、浮いている。
パイプ構造の堰堤を越えて、巨石を越えていくと、13:20PM。ついにF1 大月地獄大滝に到達した。
両岸には切り立った岩壁。その岩壁に挟まれ留まる2つの巨大なチョックストーン。岩間を縫って吐き出される滝。大きな落差。この絶妙な自然の造形に思わず見とれてしまった。
比較物が写真に写っていないので大きさが分かりづらいが、滝の上部に見えるチョックストーンと身長170cmの人間が同じくらいの大きさではないだろうか?
・・・で、大月地獄谷はここまでで充分。
この滝を見れば充分にこの谷の素晴らしさを満喫できる。
ここで引き返すか、先のF0 紅葉滝の上部から石切道に抜ける道があるらしいので、その道を通ってエスケープするのがいいのでは?
ここから先は、悪夢のような堰堤越えの連続と、藪の強行突破を強いられる。それでも行こうという人は、どうぞお気を付けて。
さて、この滝は、すぐ左手の崖を、かなり頼りないロープを掴んで慎重に登った。もう少し手前に戻れば大きく巻く事もできる。もちろん、そこはとてつもない藪に埋もれている。
大月地獄大滝の素晴らしさに、かなり長い時間そこに留まったのと、その崖の登りに時間を要してしまったこともあり、次のF2の崩落跡には13:50到着。
実際には、地獄大滝の上部からは5分くらいで到着する。
このF2は阪神大震災で崩壊したらしい。両岸が崖になっていて、その崖がかつて一枚の岩壁だったらしく、そこを滝が流れていればかなりの迫力だったのでは?という気がする。
その先には早速、堰堤が見えている。ここから立て続けに4つの堰堤が行く手に立ちはだかる。
13:58PM コンクリの堰堤 その8
この堰堤もステップが取り付けられているので、登るのは簡単。ただ問題は、その先である。
堰堤に登って上流側を覗き込んで、絶句してしまう。
見渡す限り紫色の花が咲く背丈以上の藪が群生し、どこにも踏み跡などない。堰の壁際に藪の隙間があるが、他に藪の切れ目とかかき分けた跡とか全くない。
念のため堰堤の上を歩いて反対側まで行き、踏み後のような隙間はないものかと探してみるが、藪の海しかない。
ヤレヤレ、仕方ない。その壁際の隙間に降り立ち、壁際を沢筋までいき、その沢筋にある、わずかな藪の隙間に潜り込んで先に進む。
もうかき分ける、というレベルではい。とにかく潜り込んで隙間を見つけて、行く手を阻む枯れ枝を折りながら、強引にくぐり抜けるしかない。
とは言え、枝が張り巡らされていて簡単ではない。蜘蛛の巣もすごい。助けてくれである。
14:10AM コンクリの堰堤 その9
堰堤その8からの藪を抜け、やっと次の堰堤その9に突き当たり、ステップを使って登る。
堰堤の壁の向うには次の堰堤がすでに見えている。
上流を覗き込む。また絶句である。
今度は深い池になっている。池の水際まで藪がびっしり生えていて、最初はそこに降りていくという選択肢は無いと判断。
ところが、右の岩壁を巻いて降りようと一旦は登ってみるも、殆ど絶壁でかなり険しい。
もう一度池を覗き込む。
水際はわりと傾斜があり滑ったらポチャンだ。
やな感じ。でもこれしかないらしい。下りのステップを使って降りていくが、そのステップに覆いかぶさるように紫色の花の植物がありブユやハチが群がっている。
もういや。
水際をたどってまたまた藪の隙間を見つけて潜り込む。藪の中を腰をかがめて潜り抜け沢筋までたどり着き、そのまま次の堰堤まで進む。
14:28AM コンクリの堰堤 その10
この堰堤の左側の崖が崩落していて、堰堤の前後に巨石と土砂が崩れ落ちている。
この堰堤を越えた所には藪はなく、急勾配のガレ場を登っていく。
14:40AM コンクリの堰堤 その11
どうやら、ガーデンテラスでの3時のスイーツすら絶望的らしい。
堰堤の上で、持ってきたクッキーとコーヒーでしばし休憩。
堰堤11を降りて約10分。15:12PM。A7の看板がかかる滝に到達。
そこそこの落差で充分に迫力がある。が、もうゆっくり堪能している時間はないようである。先を急ごう。
この滝も巻き道があるようだが、滝肌の右手にかかった頼りないロープを使って直登する。沢シューでもけっこう滑る。
この後もまだまだ、堰堤は続く。上流にすすむ程に藪が深く重たくなってくる。
15:24PM コンクリの堰堤 その12
15:35AM コンクリの堰堤 その13
ステップがあるのは堰堤その12まで。古い堰堤13は右手から巻いて越える。
谷はどんどん鬱蒼としてきて、薄暗くなってくる。
「迂回路」という看板がかかっている。一体どこに迂回しろというのか?その看板を背にひたすら沢筋をすすむ。分岐は右手方向にいく。
A8の救難表示板を越えると、ほんの少しの間、沢の景色になり小滝をいくつか越える。
15:45AM コンクリの堰堤 その14。
古い階段が左手の斜面に残っていて、それを使って巻く。
コンクリートの大きい堰堤は14個目で終わり。あとは谷に埋もれかけた古い石積みの堰堤が次から次へと現れる。
この期に及んでもまだ堰堤があるわけ?
15:50PM 石積みの堰堤
15:58PM 石積みの堰堤
沢の流れは殆どなくなり、藪が覆いかぶさり、沢筋を辿る事が一層困難になってくる。
上空に廃止されたロープウェイのワイヤが見え始め、ルートを間違わずに辿っている事を確認できたものの、目印になるのはそれだけ。
ここでカメラが壊れてしまうというハプニングがあり、残念ながらココ以降の写真が撮れていない。
谷を覆いつくす背丈以上の藪の中、唯一わずかな隙間を残す沢筋を腰をかがめて進むうちに、その沢筋すら生け垣のような強固な藪に埋め尽くされて、前に進めない箇所が出てくる。
沢筋からそれたところに、隙間を見つけ四つん這いになって、そこに入り込むが、やっぱり生け垣状態。引き返して別のルートを探す。また強烈な生け垣風藪・・・どっちにも行けない。
生け垣のような密集した枝を刈りながらでも進むしかないのかな?と、しばし悩む。
とにかく、背丈以上の藪に囲まれた状態で、ルートが全く判然としない。
少し高くなった位置で藪の中から顔を出して、ルートを探すが、谷底から尾根にかけて見渡す限りの藪で何の手がかりもない。ロープウェイのワイヤが、東の尾根に消えていっているのが確認でき、西の尾根に太陽が隠れようとしている。
ヤレヤレ、ガーデンテラスでランチどころか、閉店時間にも間に合わないなんて事になりかねないな。
一番可能性の高そうな沢筋の左手の隙間を強引に進む。イバラが群生していてGパンの上からでもとげが刺さる。もううんざり。手探りで進むうちに再び沢筋に合流。
これ以降、石積みの堰堤を5,6個越える。
すべて左手を巻いて越えるが、右手から越える堰堤が出てきたら、それが最後の堰堤。
最後の堰堤を越えたらすぐにA9の救難表示板。ほっ。どうやら大月地獄谷を踏破できたらしい。
A9表示板の脇の踏み後を辿って山道に入り、登り詰めると、藪をガサゴソッとかきわけて「みよし観音」の脇に出る。時間は17:00PM。
色々な情報を調べて、楽しそうな谷を目指して出かけた結果、とてつもなく険しい谷に迷い込んでしまう事がこれまでにも何回かあった。まさに久々の「これじゃない」谷だった。
六甲山の谷は多くの情報を集める事ができ、大月地獄谷が堰堤地獄だという事は事前に分かっていたのだけど、堰堤だけでなくこれほどまでに藪に埋もれていたとは、認識が甘かった。六甲ガーデンテラスでランチだなんて、もう笑うしかない。
腰から裾まで泥だらけのGパンと、2人で4つのブユの刺され跡をひっさげて巡回バスと六甲ケーブルとJRを乗り継ぎ、フラフラになりながら夏のシーズンが終わった。
藪に埋もれ行く大月地獄大滝の看板